簡易型の炉でご飯を炊いてみた

 災害時にどうやって主食のご飯を炊くかという問題があります。
 支援物資として入ってくる弁当は食中毒対策のため冷えた状態で支給されますし、毎回炊き出しに頼るわけにもいきません。
 水が確保できればご飯は炊けるわけですが、大きな鍋だとなかなか上手に炊くのは難しい。ましてや、カセットガスが使えない状態を仮定すると直火で炊くのはかなり難しいのではないか。
 第一、安全に鍋が載せられる炉が作れない。
 そんなことを考えていたのですが、先日、江津市の少年自然の家で開催された「わくわくちびっこでー」に出かけて一つのヒントをもらうことができました。
 ここはセルフご飯炊きを体験できるのですが、使われていたものにびっくり。
 地面で直火を焚き、その上に使う炉として「プランタースタンド」が使われていたのです。
 そりゃなんだと思われる人がいらっしゃるかもしれませんが、要は植木鉢を支える台のことで、上の植木鉢を載せる部分に土鍋を載せてご飯を炊くという方法を取っていました。

矢印の部分がプランタースタンド。園芸が好きな人のところには大抵一つ以上あります。

 職員さんに尋ねると、土鍋もプランタースタンドもどちらも百円均一ショップで仕入れてきたものだとのこと。
 簡単に手に入り、しかも使いやすいということで、現地で実証実験した後、当研究所でもやってみることにしました。
 土鍋は以前にダイソーさんで売っていたのを覚えていたので行ってみたのですが、季節商品だったのですでにありませんでした。
 また、ダイソーさんのプランタースタンドは、高さが25cm。炉に使うには少し高いです。また、足の部分が皮膜されているので燃やすと大変そうです。
 イオンの中のseriaさんで100円で売ってた「ポールプランタースタンド6号用」を買ってきました。


 これは高さが約17cmで、たき火の上に置くのにちょうどいいサイズです。seriaさんでは鍋の取り扱いは終了したそうで、安く土鍋を仕入れようとすると、冬のダイソーさんで仕入れるしかなさそうです。

 試しに我が家の一人用土鍋を載せてみました。うまく収まります。
 スタンドの鉢が載る部分にはいろいろなサイズがあるので、自分が使う土鍋に合わせて準備したらいいと思います。
 ここからは、先日江津市の少年自然の家のわくわくちびっこでーでやってみたご飯炊きの写真を使います。

 まずはお米を研ぎます。災害時にはきれいに研ぐのは難しいかもしれませんが、ここではおいしいご飯が食べたいのでしっかりと研ぎます。
 水加減はお米の1,5倍を目安に注ぎ、水を吸わせたいので10分待ちます。
 で、プランタースタンドに置き、下に丸めた新聞紙と廃材を組み合わせ、新聞紙にライターで火をつけて火を起こします。

 着火したら、しばらくは木をくべて火力が落ちないようにします。
 すると、やがて沸騰して蓋の周囲にぽこぽことした泡がでてきます。
 泡が出なくなったら火をどけて10分以上蒸らします。

 うまくできたか、蓋を開けるときのどきどき感がたまりません。


 ふわりとした湯気があがり、白く光るお米が姿を見せてくれました。今回は成功です。水加減を間違えたり、火加減を間違えると黒焦げになってしまいますが、そこは練習あるのみです。

 スプーンを使ってご飯をよそいます。

 きれいになくなりました。今回は文句なしの出来で、底のお焦げもちょっとしかできませんでした。
 残ったお米も水に漬けてきれいに刮ぎ、最後までおいしくいただくことができました。ちなみに、直火では底が真っ黒になるので洗うのが大変だと言うことを付け加えておきます。これを防ぐには、あらかじめ中性洗剤や自動車用のガラスコーティング剤などを塗るとよいですが、土鍋の素材によっては使えない場合もありますのでご注意ください。

 しかし、思ってもみなかったところに炉として使える道具がありました。
 もちろん販売元はこんな使い方は想定していないですので、これをされるときには自己責任でお願いしますが、いざというときにちょっとしたアイデアで快適な生存環境を作ることができるということを再確認できました。
 ちなみに、最近ではなかなか直火で料理するのが難しくなってきています。
 初めてやる人は、ぜひ少年自然の家の「わくわくちびっこでー」で職員さんから教わりながらやってみるといいと思います。

非常食に駄菓子を加えてみる

 災害時に食べる非常食というと真っ先に思い浮かぶのが乾パンやクラッカー、ビスケットといった「乾パン類」だと思います。
 最近ではアルファ米やフリーズドライ食品なども出てきていますが、災害発生中は環境の変化や疲労感、不安感によりなかなか食事をしようという気にならないものですし、避難していると調理する場所や材料もなかなか手配しにくいものです。
 そのため、ちょっとつまめるものという感じの乾パン類は現在でも非常食として役立つものです。

 ただ、これらの食品はいずれも食べるのに水分が必要ですので、お茶やお水といったものも一緒に用意しておかないといけません。
 それならいっそのこと駄菓子も追加してみませんか。
 乾パン類は食べられなくても、「自分が好きでなんとなくつまめる駄菓子」ならなんとなく手が伸びて食べているものです。
 「甘さ」「酸っぱさ」「塩気」「苦み」「うま味」の5つの味覚を考えて数種類準備しておくと、気分によって食べられないという事態を減らすことができます。
 ジャムやはちみつや練りようかん、カリカリ梅やにぼし、おしゃぶり昆布など、単品ではなくいくつかを混ぜ合わせて準備しておくと安心です。

無意識に手が伸びるようなお気に入りのお菓子だと、緊張や不安を和らげてくれます。
もちろん非常用持ち出し袋には歯磨きセットも常備しておきたいですね。

 個人的にははちみつや小分けのジャム、ウィダーインゼリーのようなゼリー、食塩・油無添加のナッツ類あたりもお勧めです。
 これらを上手に使うことで不足しがちな栄養素を補い、仮に乾パン類が食べられなくても「何も食べていない」という事態は避けることができますし、避難している人たちが同じようにさまざまな駄菓子を持ち寄っていれば、そこで交換したりお話ししたりして不安を軽くすることもできます。
 「栄養素+心の安定」という効果のある駄菓子。普段使いのものを少し増やして、非常用持ち出し袋に加えてみてはいかがでしょうか。

登山で行動食として使われることの多い製品は非常食としても扱いやすい。
賞味期限にだけは注意が必要。

キャンプと避難生活の違いを考える

 あちこちで山開きがされ、キャンプ場なども本営業に入る季節となりました。
 よくキャンプ慣れしている人は災害時の避難生活にも強いと言われますが、実際のところはどうなのでしょうか?
 今回は、災害による避難生活とキャンプ生活との違いについて考えてみたいと思います。

1.キャンプ生活と避難生活の違い
 まずはなんと言っても自分が求めて出かけた環境か、それとも無理矢理放り込まれた環境なのかという違いがあります。
 キャンプであれば、事前に場所や道具、食事や生活全般に至るまで、全ての主導権はそれをする人にあります。
 でも、避難生活は場所や道具、食事や生活全般に至るまで、そのままだと主導権は自分以外のどこかにあり、これが一番の大きな違いなのでは無いかと思います。
 次に、キャンプはその気になればいつでもすぐ日常生活に戻れるので不便を楽しめますが、避難生活ではいつ日常生活に戻れるかわからないため、不安で消耗し、不便や不自由を楽しむという感情がなかなか出てこないと思います。
 そして、キャンプであれば周囲との関係は自分の思うままに調整することがある程度可能ですが、避難生活では否応なしに周囲の避難者との関係が出てきます。嫌だからと言って周りを拒絶すると、下手すると一切の救援を受けられなくなることもありますから、ある程度友好的な関係を維持し続ける必要もあると思います。

2.キャンプする人は本当に避難生活に強いのか?
 キャンプを楽しむ人にもいろいろなスタイルがあります。
 完璧に準備をし、事前に決めた計画に沿ってするようなキャンプをしている人だと、準備も無く条件も整っていない避難生活は苦手かもしれません。
 また、道具にこだわり頼りすぎるようなキャンプばかりしている人だと、あるものでなんとかしないといけない避難生活はキャンプをしない人以上にストレスが貯まってしまうかもしれません。
 ただ、キャンプに計画変更や忘れ物はつきものです。
 その変わってしまった状況や変化、忘れ物を楽しめるような人であれば、間違いなく避難生活には強いと言えるでしょう。
 場数を踏んでいれば、いやでもそういった経験をし、それでもキャンプを続けられているわけですから、必然的に避難生活には強い人たちが残っていることにはなりそうです。
 また、日常生活と避難生活があまり変わらなければ、やはり避難生活には耐えられると思います。

3.キーワードは「日常性と非日常性」
 災害による避難生活は、事前準備をすることによって実は限りなく日常生活に近づけることが可能です。
 例えば耐震補強を行って家をしっかりさせることや、水に浸からないまたは浸かっても大丈夫な構造にしておけば、わざわざ避難所に避難しなくても家で避難生活を送ることができます。
 それだけでも普段の生活の延長線上になるので、心身にかかるストレスはずいぶんと軽くなるはずです。
 食事でも、普段から家に備蓄品があってそれを使うようにしていれば、しばらくは食事もそれまでと変化無く食べられそうです。
 いつでも日常に戻れる準備さえしてあれば、災害という非日常を楽しめる精神的な余裕さえできるかもしれません。
 普段キャンプをしている人たちは日常と非日常を両方楽しめる性質を持っているような気がします。

 キャンプと同じような生活で自分自身がなんとかなるのであれば、あなたは人を助ける側に回ることができます。
 周りを助けられると言うことは、自分自身のことを決めるのに自分に主導権がある状態です。
自分に自分の主導権がある限りそんなに凹まなくても日常を取り替えることは容易になる。そのためのさまざまな準備の一つとして、キャンプを試してみるのもいいかもしれませんね。

職場からの避難場所を知っていますか?

 あなたは自分の家以外で災害にあったとき、例えば勤務先の周囲の避難場所や避難所を意識してみたことがありますか?
 災害を意識している人でも、家以外で災害に遭遇したときどこへ避難するのかは決まっていないということが多いです。
 自治会や自主防災組織の訓練でも自宅から避難することがほとんどで、それ以外の場合の訓練や避難先の確認というのはされていないことが殆どです。
 また、お勤め先で防災訓練をされるとき、どこへ避難するか、どこが避難場所なのかということは意識されていないと思います。
 これは別にお勤め先の防災担当者がサボっているわけではなく、その地域に住んでいる人以外は基本的に避難所に待避することは考えられていないことに原因があるからです。
 最近騒がれている首都直下型地震や東海・東南海地震に備えている自治体からは、地域の職場に対して職場を避難所にするため備蓄などを行うように依頼を行っています。
 お勤め先の建物が災害に耐えられれば、そこでとりあえずしのぐことは可能です。ただ、飲料食や排泄処理、環境がその場で待機できるようになっていないと、そこから避難所へ人が流出し、本来は地元の住民に対して準備されているさまざまなものを消費してしまうことが十分に予測されます。
 東日本大震災時、大規模な被害は受けなかった首都圏で、職場で飲料食を持っていなかった人たちがコンビニエンスストアに群がって店舗が空っぽになったことを思い出してみてください。
 また、大量の帰宅者が路上にあふれて交通が麻痺し、これからの防災対策に不安を残す結果になったこともありました。
 本来は雇用主が従業員の生命を維持するためのインフラを整備すべきだと思いますが、残念ながら職場の準備は進んでいないのが現状です。
 そうなると、自分で準備するしかありません。
 首都直下型地震や東海・東南海地震では、職場に3日間はいるようにという政府の依頼が出ていますが、そこまで行かなくても、せめて1日分くらいは職場で立てこもれるような飲料食やトイレの準備はしておいた方がよさそうです。
 また、家に帰る際にも大規模な災害の場合には自分の足に頼ることになります。
そのことも考えて、安心して歩ける運動靴を一緒に備えておいてくださいね。

悪いことにほど気を遣おう

 大規模災害に備えている人がどれくらいいるのかについて、平成31年1月29日~30日にかけて市場調査会社のマクロミルがインターネットで全国の20代から60代の男女1,000人にアンケートを行ったそうです。
 その結果、避難場所をあらかじめ確認した人は48.1%、食料品や日用品を備蓄している人は47.2%といずれも半数に満たなかったという結果が出されました。
 国の定める防災基本計画では、家庭では最低3日分、首都直下地震や南海トラフ地震が日の目を見てからは1週間分の飲料食の備蓄をするように求められていますが、その備蓄が進んでいないという現実がわかりました。
 研修会などでも「大地震が来ると思っている人」と問うとほとんどの人が手を上げますが「では明日大地震が来るかもしれないと思っている人」と問うと、ほぼ手が上がりません。これは「そのうちに起きるのは間違いないが、自分は被災しない」となぜか思っているということです。
 あれだけ津波が来ることを知っていた東北の人たちでさえ、東日本大震災では「まさか」という方が非常に多くて、結果的にたくさんの被災者の方が寒くひもじい思いをすることになりました。
 日本人の感覚として「悪いことに備える」というのは「悪いことが起きることを期待している」とイコールになっているのかなという気がしますが、備えなければ自分がひどい目に遭うのですから、周囲はともあれ、自らの備えだけはきちんとしておく必要があると思います。
 そして結果的に悪いことが起きなかったときに文句を言って回る人が多いのも、備えをさせない大きな原因なのかなと感じます。
 「備え」とは「万が一悪いことが起きたときの対策」なのであって、備えを使わないままというのが一番理想です。
 でも、そうすると「備え=無駄」と思ってしまう人の多いこと!
 「備えよ、常に」を念頭に、使わないことを期待しながら最悪に備えることは、災害に限らず、これからありとあらゆる場面で必要になってくる能力なのではないかと考えています。

要支援者と域外避難

 災害が発生すると、国の計画では発生後3日以内に必要と思われる物資を被災地に送り込むことになっています。
 この物資は命をつなぐためのものが最優先であるため、主に食料と水が中心となります。
 それから日用品に移行していきますが、全ての人が必要としない物資についてはどうしても遅れてしまう、または届かないという特性があります。
 たとえば、大人用おむつや乳児用ミルク、生理用品、アレルギー対応食などがこれに該当し、必要とする人の数が少なければ少ないほど支援物資として届く優先順位は下がります。
 これは医療現場でも同じで一般的でない病気や資機材のいる病気などへの対応はやはり遅くなってしまいます。
 東日本大震災では酸素吸入や透析が必要な方への手配が問題となりました。
 さまざまな理由で特殊な資機材や物資の支援が必要な人、つまり要支援者が一定数存在することを考えると、災害時には被災地以外の場所へ一度待避してしまったほうが支援が受けやすいのではないかと思います。
 受け入れの問題もありますが、都道府県や市町村といった行政機関や病院でお互いに受け入れ体制を作り輸送手段の確保さえすれば、要支援者への対応を被災地で考える必要がなくなり安全性も増すのではないでしょうか。
 復旧や復興にどれくらいかかるのか、いつ地元へ戻れるのかがわからない不安はありますが、資機材不足、物資不足による命の危険と併せて考える必要があると思います。
 行政機関同士では対口支援(たいこうしえん)と呼ばれる行政職員の相互支援協定が作られて、平成30年の西日本豪雨でも活用されました。
 行政職員を被災地へ送り込む制度ができるのですから、要支援者を被災地外へ搬出する制度もできるのではないか。
 いろいろと問題はあると思いますが、検討しておく重要なことの一つではないかなと考えます。

自分がどれくらい歩けるかを知ろう

 災害が発生するときには、避難は基本的に徒歩となります。
 たとえば地震であれば、路面の地割れや火災、落下物や倒壊した家屋などが道路上に散乱して車両が通れなくなることが過去の災害ではたくさん発生しています。
 水害であれば、道路に水があふれ出すと車が浮いて流されたり、貯まった水に突っ込んで動けなくなったりします。また、逃げようとしても扉や窓が開かないという事態も発生します。
 歩きであれば、少なくとも動けなくなるということだけは防ぐことができるため、歩いての避難が原則とされているのです。
 ただ、実際のところは車を使ってしまうのが現実で、あの東日本大震災を受けた東北三県でその後に起きた大きな余震と津波警報発令時(2012年12月7日)には「歩いて避難」とわかっていながら避難する車の大渋滞があちこちで発生しました。
 そのため、自分が「歩いてどこへ避難できるのか」ということを確認しておく必要があります。
 一度やってみると、案外と自分が歩けないなと言うことに気づくと思います。
 できれば移動開始から到着までの時間も計っておくと、自分が避難するのにどれくらいかかるのかが数値によって理解できます。
 歩くことは災害時の基本です。さまざまな場面で自分がどれくらい歩くことができるのかを把握しておくことはとても大切だと思います。
 津波や水害で自分が避難しようとする先にたどり着けるかどうかも、実際に歩いてみればわかります。
 そうすると「どの段階までに避難を開始しなければいけないか」や「どの災害の場合にはどこへ避難するのか」がはっきりと見えてくるわけです。
 「避難」は「避難場所に逃げる」でなく、「自分の命を守ることのできる場所に逃げ込むこと」です。
 水害や津波の場合、走っても逃げ切れないなと思ったら、近くにあるなるべく高い建物の高い場所に逃げ込むのも「垂直避難」と呼ばれる立派な避難です。
 自分がどこまで歩けるのかを知ることで、自分の命を守るために打つべき手が見えてきます。
 まずは歩いてみることです。

体を濡らしたままにしない

 雨天時や洪水時の避難では、いくら雨具をつけていても濡れてしまうものです。
 特に避難路が冠水している状態で避難を実施する場合には、足下が靴ということもあって必然的に体のどこかは濡れてしまいますので、避難が完了したら速やかに着替えて乾かすことをおすすめします。
 夏場に夕立ちにあって全身ずぶ濡れになって、寒い経験をしたことはありませんか。 あれと同じで、体が濡れたままにしておくと、濡れた服が体温で乾いていくときに体温を持って行かれてしまい、場合によっては夏でも低体温症になることがあります。
 それを考えると、非常用持ち出し袋には靴下や下着を含めた着替えを最低1組、それにフェイスタオルを一枚入れておく必要がありますよね。
 濡れたら体から水分を拭き取って着替える、それにより体の保温を維持することができます。
 海難事故の映画などで海から引き上げられた遭難者がそのまま毛布を着て震えているようなシーンがありますが、毛布が暖かいのは毛の間に空気が貯まっていて、その空気を体温で暖めるから暖かくなるわけで、濡れたままでは毛布もびちょびちょになってしまい、保温はできません。
 同じことが災害時にもいえます。毛布では無く、最近はやりのアルミ蒸着シートなら大丈夫という人もいましたが、薄く軽く熱を逃がさない特性を持っているアルミ蒸着シートであっても、熱の発生源である人間の体が冷えているのでは、決して暖かくはありません。
 濡れた服は脱ぐ。そして乾いた服を着て毛布やアルミ蒸着シートをかぶせて保温する。
 災害時には体調を崩すことも多いです。ともかく濡れたままにしないこと。これを徹底しましょう。
 ちなみに汗をかいても同じことが起こりますので、普段から体温調節や室温調整には気を遣ってくださいね。

避難場所の憂鬱

 テレビの映像などに映し出される避難所では、避難している方がそれなりにいろいろなものを持っていて生活している様子が映し出されることが多いです。
 これは避難所が開設されて運営されているから。
 でも、災害直後や事前避難の映像では、大概の場合「不安そうにテレビを見ている図」しか映像になっていないと思います。
 これは何故かというと、「他に絵になるものがない」からです。
 災害直後や事前避難で避難するのは、「避難所」ではなく「避難場所」。以前にもちょっと触れましたが、避難場所は「一時的に危険から身を守るために避難を行う場所」とされており、行政機関などは場所の提供のみを義務づけられていることになります。
 つまり「基本的には何もない」のが避難場所なのです。
 「行政機関の防災計画書では食料や水、毛布の備蓄はあることになっているじゃないか!」と言われるかもしれませんが、避難場所に対しては資材を提供する義務はありません。
 あくまでも場所の提供だけなのです。もちろん避難所を開設すれば備蓄資材を使うことも可能になりますが、行政機関が備蓄している資材は、対象人口に比べるとないに等しい量しか確保されていないのが現状です。
 自治会や自主防災組織が避難場所の管理者になっている場合にはその判断により避難所を開設して資材を解放することも可能ですが、大概の場合は自治会や自主防災組織が調達した資機材の提供となるはずです。
 この事はあまり知られていないのか、「避難所に身一つで行っても、とりあえず快適な避難生活ができる」と勘違いしている方が非常に多いのが現実です。
 災害が起きてから慌てて身一つで避難場所に移動し、何も物資がないと知って避難場所を運営している行政職員に対して文句をつけるというのが、残念ながら現在の避難所のパターンとなっています。
 繰り返しになりますが、避難場所はあくまでも「場所の提供」です。
 自分の食べ物や飲み物、避難所で過ごすために必要なものは、大原則として自分で準備しておかなければなりません。
 避難してから途方に暮れずにすむように、自分が避難中に使うものについては自分できちんと準備して避難の時にさっと持ち出せるようにしておきたいものです。

災害時に子どもを迎えに行くための準備をしておこう

 災害時には、保育園や幼稚園、小学校などの開設時間内だった場合には、原則として「子どもは迎えに行く」というルールになっているところがほとんどではないでしょうか。
 そのためには、迎えに行く側も迎えに来てもらう側もお互いに準備をしておかなければなりません。
 今回は、双方の立場に立って何をしておいたらいいのか、どのようにしたほうがいいのかを考えてみたいと思います。

1.迎えに行く側の準備

1)迎えに行く人を決めて優先順位をつけておく
 「迎えに行く」と一口に言っても、その災害が発生したときに誰が迎えに行けるのかという問題があります。
 そのため、保護者以外にお願いできる誰かを準備しておく必要があります。祖父母や親戚、近所の人や子どもをよく知っている友人など、いくつかお願いをしておくと、いざというときに頼りにできます。

2)歩いて迎えに行けるかどうか試してみる
 災害時には原則として徒歩による移動となります。そのため、自分がいる場所から子どものいる場所まで歩いて迎えに行けるか、時間はどれくらいかかるのかを確認しておく必要があります。

3)子どもが歩けるかを試してみる
 子どもをどのように移動させるのかについては、子どもの年齢や大きさによってかなり変わってきます。子どもは歩けるのか、歩けないとしたら、どうやって移動させるのかを考えて、試してみる必要があります。

4)子どもの預かり先の対応を確認しておく
たとえば大雨などの場合、道路が冠水するなど、ある時点でお迎えを断念しなければならない場合が出てきます。その場合に、預かり先はどのような対応をとっているのか、とれるのかを確認しておく必要があります。

5)避難先を確認しておく
子どもの預かり先の建物などに何か問題が生じた場合に避難する先を確認しておきます。状況によっては、預かり先ではなく避難先に直接お迎えに行くこともあり得ますので、預かり先だけでなく、避難先までの経路を確認し、歩いてみることが大切です。

2.迎えに来てもらう側の準備

1)誰が迎えに来るのかを確認しておく
「迎えに来る」と言っても、誰にでも引き渡すわけにはいきません。そのため、あらかじめ誰が迎えに来る可能性があるのかについて保護者に確認し、リストを出してもらう必要があります。
できれば3名以上の名前と連絡先を教えてもらっておきましょう。

2)どの時点で避難または籠城するかを決めておく
各種災害において、お迎えを強行した場合に保護者が遭難してしまうような場合が想定されるとき、どの時点で引き渡しを打ち切って避難または籠城するのかについて明示しておきます。
その際に、その時点で引き渡しを待っている子どもおよび保護者の扱いについてもあらかじめ決めておくようにします。

3)避難所への移動手段および避難にかかる時間および避難先の資機材の確認
避難する場合、避難先にどの時点でどうなったら、どのように移動するかを決めます。その上で、移動時間がどれくらいかかるのかを計測しておきます。
また、避難先にはどのような資機材があるのかを確認します。

4)避難または籠城時に利用できる資機材について定期的に確認し、きちんと使えるようにしておく。
 避難所で足りない資機材や籠城時に使う資機材について確認し、いつでも使えるようにしておきます。避難所への輸送手段についても決めておきます。

5)保護者との情報共有
 お迎えに来る保護者と情報共有をしておきます。災害時にお互いの動きを確認しておくことでトラブルを防ぐことができます。
 よくあるケースなのですが「どうなるかわからないから」と情報を内部で留めることのないように注意してください。仮にお知らせしている条件と変わったとしても、伝わっていないことは保護者の不安と疑心を招きます。
また、携帯電話やメール、ホームページなど、災害時の情報提供方法についてもお互いに確認しておいた方がいいでしょう。

 いかがでしょうか? 一言で「災害時にはお迎え」と言っていても、事前準備をしっかりしておかないと無用の混乱が起きることになります。
 災害時には、そうでなくても手が足りなくなります。事前準備をしておくことで、機械的に対応できる部分を増やしておくことで、突発的な出来事への対応がしやすくなるということを忘れないようにしてください。