避難所は複数確認しておこう

国土地理院の地図における避難所と対応している災害の種類のマーク。

 災害時に避難する避難所。ひとくくりに避難所と言いますが、災害によっては避難先として使えない場合もありますので、その避難所がどんな災害に対応しているのかを確認しておきましょう。
 もしも対応していない災害があったら、その災害に対応している近くの避難所を確認しておく必要があります。避難所は、基本的には各地区で避難する場所が割り当てられていますが、割り当てられた避難所の災害特性は考えられていないので、大抵のハザードマップには注釈として「適応している近くの避難所に避難すること」という記事が書かれていると思います。
 その避難所がどのような災害に対応しているのかを確認するためには災害対応一覧表を確認しますが、ハザードマップに避難所一覧がついていれば、必ずその避難所が対応している災害の記事があるはずです。また、一番新しいタイプの避難所の看板であれば、それを見ると対応している災害が一目でわかるようになっています。

一番新しいタイプの避難所を示す看板(吉賀町・吉賀高校体育館にある表示)。
これを見るとどの災害なら避難できるのかが一目で確認でき、旅行者なども安心できる。

 先ほど少し触れたのですが、避難所は各地区で避難すべき場所が指定はされています。ですが、施設の収容人員には限りがありますので、遅れていくと入れないという場合も出てきます。その場合避難所の場所をあらかじめ調べていれば次の避難先を慌てて探さなくてもすぐに移動が開始できます。
 避難所が想定外の事態で被災することもありますし、できれば複数の避難所を調べておいて、そこへの行き方や自分の脚でどれくらい時間がかかるのかなどを調べておいた方がいいと思います。

手作り簡易防災グッズをうまく作り出す方法

 非常用持ち出し袋や備蓄品は、基本的には家に置いてあることが多いと思います。でも、災害発生時にいつも家にいるとは限りません。お出かけ先に非常用持ち出し袋を常に持っていくというのはあまり現実的ではありませんし、何も持っていない状態で被災することもありえます。
 ちまたで流行っている新聞紙やゴミ袋を使った手作り簡易防災グッズあれこれは、そういった事態を想定して知っておいた方がいいことをお伝えしているのだと思っています。
 手作り簡易防災グッズはそこらへんに転がっているもので生き抜くためのさまざまなアイテムを作り出すわけですが、性能的にはその目的で作られているアイテムにはかないませんから、あくまでも代替品として考えてください。
 さて、手作り簡易防災グッズは、そのとき置かれている状況、または置かれるであろう状況を予測して、それに対して望ましい状況を作り出すために作り出すわけですが、いまいちな状況を作り出さないために、作成するときの基本を知っておいてください。
 それは「必要とされる機能を考えること」です。
 例えば「身体を温める」という行為をしようとします。「身体を温める」にはどうすればいいかというと、体内から暖める、体外から暖める、そして体温を逃がさないという機能があればいいわけです。
 体内から暖めるのであれば、暖かいものを口にできるようにすればいいですし、体外から暖めるのであれば、焚き火や使い捨てカイロを考えればいいわけです。そして体温を逃がさないのであれば、大きなビニール袋に穴を開けて着込めば風を防ぎ、体温の低下をある程度防ぐことができます。
 望ましい状況を作り出す方法は一つではありません。いろいろな方法を考えてその中でその時点で一番実効性の高いものを選択すれば、さほど問題なく命を繋ぐことができます。
 手作り簡易防災グッズの作り方を知るとその方法しかないように思われてしまうことも多いのですが、現在の状況と望ましい状況との差を埋める方法を考えれば、さまざまな方法を考えつくことができると思います。

非常用持ち出し袋は家族一人に一つずつ準備する

 非常用持ち出し袋を作るというお話をすると、なぜか一家族で一つ準備すればいいと思う方が多いようです。
 実際のところ、一家族に一つだと、いざというときにはどうにもならないことが殆どです。少々大きなリュックサックを準備しても、家族全部の生活を養うものを持つことは非常に難しいと思います。例えば、家族4人の生活に必要とされる水は、一人一日3リットルとして全部で一日12リットル。もし3日分持って避難となると、これが36リットル、つまり36キログラムの重量を一人が背負うことになります。これは極端にしても、非常事態の対応としても、自分の命を守るためのものが特定に人に集中している事態は避けるべきだと思います。
 非常用持ち出し袋は、家族一人に一つ必要です。リュックサックを背負うことが難しい人は仕方がありませんが、リュックサックを背負える人であるなら、子どもでも年寄りでも関係ありません。自分が持てる範囲の自分の荷物をきちんと持ってもらうことが必要です。
 例えば、3歳のこどもに一日分の水や食料、生活用品まで入ったリュックサックを背負えといわれても難しいでしょうが、例えば300mlのペットボトルのお水1本と簡単な非常用食料、着替えくらいであればきちんと背負えるのではないでしょうか。自分で背負える範囲の生活物資を持つことで、万が一はぐれたとしても背負っている物資で命を繋ぐことはできます。また、少しの荷物でもわけることができれば、その分他の荷物を持つことができるので、生活環境の低下を少しでも防ぐことができます。
 家族みんなで自分が避難所で生活するとしたらどんなものがいるのかを話しながら用意していけば、きっと満足のいく非常用持ち出し袋をそれぞれが作ることができると思います。
 非常時には、自分のことは自分ですることが基本中の基本です。小さい子でも責任を持たせて準備させ、いざというときに持ち出すように話をしておくことで、仮に大人がいないときでも自分のものを持って避難することができれば、命が助かる確率はかなり高くなると思います。
 3月末、生活環境が変わるついでに、それぞれが非常用持ち出し袋を準備する機会にもしていけるといいですね。

被災体験演習をしてみよう

 非常用持ち出し袋や備蓄品を準備しても、使い方がわからなければ宝の持ち腐れです。そこで、ゆっくりできる日に家族で被災体験をしてみるのはいかがでしょうか。
 ちょうど今はコロナウイルスの騒動でなかなか屋内での遊びが難しいときですので、おうちで、家族で準備してある非常用持ち出し袋や備蓄品だけで一日過ごしてみてください。
 電気やガス、水道は使わず、お風呂やトイレも、このときは非常用アイテムだけを使ってみます。食事も寝るのも全て非常時想定で生活してみるのです。
 平常時にやるのであれば、万が一何か困ったことが起きても普通に生活ができる環境がありますから困ることはありません。衣食住、全て非常用持ち出し袋や備蓄品で過ごしてみて、その後で実際にどうだったかを家族で話してみてください。
 よく問題が出てくるのはトイレと就寝ですが、それ以外にもさまざまな問題が発生すると思います。また、意外と余ったものや足りなかったものが出てくると思いますので、それに対しての解決策を考えてください。
 冬と夏では準備しておくものが異なりますし、体験できることも違います。慣れてきたら、四半期に一回やってみてください。そうすれば、わざわざ高い非常用食料を買わなくても普通のインスタント食品やレトルト食品で代替できますし、普段の生活と差補と違うご飯を食べることもないと思います。
 被災体験は、繰り返すほど困ることが減ってきます。そして、いざ本番の時にはそれまで体験した成果がありますので、生活の質をさほど落とさなくても被災生活を送ることができるようになっていると思います。
 せっかくやるのですから、家族で楽しみながら被災体験演習をしてみてくださいね。

口の中を清潔に保つ

 口の中がきれいでないと、さまざまな雑菌が繁殖します。その雑菌によるいろいろな病気にかかってしまう可能性が高くなるので、口の中をきれいに保つことは普段の生活でもとても重要なことです。
 通常は歯磨きやうがい、ゆすぐなどをして口の中に繁殖している雑菌を追い出しているのですが、災害時にはそれができなくなることがあります。特に発災から数日間は口の中がなんとなく気持ち悪くても、言い出せずに我慢してしまい、いつの間にかその気持ち悪い状態が当たり前になってしまうことが起きます。
 特に高齢者では口の中で雑菌が繁殖した結果誤嚥性肺炎を起こしてしまうことが多々あります。高齢者以外の方も免疫力が落ちていれば同じような症状になることはあり得ます。他にも虫歯やその他の疾患にもいろいろと口内環境が影響を与えているという話はありますので、気をつけるべき重要項目といっても過言ではないでしょう。
 口の中をきれいに保つために一番簡単な方法は、非常用持ち出し袋に歯磨きセットを入れておくことです。洗口液を一緒に準備しておけば水がなくても歯磨きから口をゆすぐところまで可能ですし、洗口液なら罪悪感もありません。

被災時の歯磨きでは水がない場合歯磨き粉は使わない方が無難。歯ブラシできれいにした後は、洗口液でゆすぎ口の中の汚れを撤去する。

 歯磨きセットがない場合には、清潔なティッシュ類や布をお茶や水に浸して絞り、歯を磨いてから少しの水でゆすぐようにすればとりあえずの口の中の衛生環境は守ることができると思います。

ティッシュや布を写真のように指に巻き付けて少し湿らせ、歯を磨く。

また、定期的に歯磨きの時間を生活の中に組み込んでおくことで、被災後の生活にもメリハリができて病気になりにくくなると思います。
 口の中は菌が繁殖しやすい環境が整っていますから、生活環境以上に衛生的であることに気を遣わなければいけません。
 あなたの非常用持ち出し袋にも、歯磨きセットは必ず入れておいてくださいね。

防災訓練は子どもも積極的に活動してもらう

 地域の防災訓練で主体となって活動しているのはどのような人でしょうか。多くの場合、自治会の方や地域対策を考えている方が中心となると思いますが、その中に子ども達は交じっていますか。
 防災訓練では、子ども達は仕事ができない「お客様」として扱われていることが多いのですが、実際の被災地の復旧では、子ども達がかなりの戦力として活躍しています。炊き出し、話の聞き役、衛生管理など、子ども達はありとあらゆる場面で復旧支援の手伝いをしてくれます。大人同士であれば大げんかが始まるようなぴりぴりとした状況を子どもが仲裁するというようなこともしばしば起きたりしています。歩いて会話ができる子であれば、それなりの仕事はできます。ただ、残念ながら子ども達は経験が不足しているため、最初に指示がないと動けないのです。そして、指示を出している大人達はそれを見て子ども達をお客にしてしまう。悪循環です。
 防災訓練でも子ども達に積極的に参加してもらい、さまざまな仕事のお手伝いをしてもらう。そうすることで、大人とは違った目線での意見ももらえますし、いざというときに頼れる戦力としても育成ができます。
 実際のところ、被災地の復旧が始まると働ける人達はほとんど働きに出てしまい、避難所には高齢者と子ども達が残されてしまいます。子ども達が避難所運営を手伝ってくれることで、大人達にも余裕が生まれてきます。
 もちろん、大人の思ったようにならないことは当然ありますが、子ども達も仕事があることで自分たちが活躍しているという満足感を得ることができ、精神的に安定することも期待できます。災害本番だけでなく、普段の防災訓練でも活躍ができるように、地域の子ども達にも打ち合わせに参加してもらい、守ってもらう側から守る側に変わってもらう。そうすると、地域も社会も変わってきます。
 最初は大変だと思いますが、子ども達も彼らなりにいろいろと考えていますから、防災訓練を企画される際には、ぜひ地域の子ども達を加えてみることを考えてみてください。

自助・共助のすすめ

 広域災害が発生すると、自衛隊や消防、警察と言った公助による救助はほぼあてにならないと思ってください。
 広域災害では救助を求める人の連絡で、公的機関の電話はパンク状態になりまずつながりません。つながっても、現場に出ることのできる戦力には限りがあることと、その機関にしかできない業務を持っているため、副次的な業務である個人の救助活動まで手が回らないというのが現実です。
 例えば、阪神淡路大震災のとき、倒壊した家屋から救出された人の実に95%が家族や友人・知人といった面識のある人に助けられており、警察や消防、自衛隊といった公的機関の救助隊による救助はわずか1.7%だったそうです。(出典元:平成28年度防災白書
 つまり、自分たちで救助しなければ助からない命が出てくるということです。
 自助でできる一番大切なことは、家屋を倒壊させないことです。例えば住家や建物の耐震補強や耐震強化を行えば建物の全壊を防ぐことは可能です。一部が崩れているのを片付けるのと、全部が崩れているのを片付けるのと、どちらの作業が早いかは想像がつくと思います。
 倒壊しないための処理が難しいのであれば、シェルターなどを使って倒壊建物に潰されないように備えておくということも重要です。
 全ての準備が諸事情でできないとしたら、少なくとも自分が生きていることを知らせるホイッスルくらいは身につけておいてください。。脱出時に怪我をしないように、着替えや靴を枕元に用意しておくことも重要だと考えます。
 後は「共助」として、ご近所と顔つなぎをしておくことです。ご近所づきあいは面倒くさいという話も聞きますが、こと災害に関してはつきあって顔見知りになっておくことが自分に取って不利になることはありません。高齢化や都市流出が続いていて、田舎では空き家が馬鹿みたいに増えています。倒壊した家屋全てに人がいるわけではありませんから、いることを知っておいてもらわなければ、そもそも救助にすら来てもらえないのです。ですので、そこに住んでいることを知っている人をたくさん作っておくことが大切なのです。別に濃厚なつきあいをしなくてもいいと思います。顔を見たらあいさつしておくだけでも、そこに人がいるという証拠になりますから、倒壊したときに気にかけてもらえる可能性が高くなるわけです。また、あいさつすることで周囲の人の顔がある程度はわかるようになりますから、状況によっては自分が助ける側に回ることもできるでしょう。
 人口減少や公務員削減などで、災害時に動員できる災害対応要員は年々減り続けています。いざというときに役所がなんとかするということは、もはや幻想でしかありません。都会であれ田舎であれ、それぞれの理由で公助は当てになりません。隣近所の人と顔見知りになっておき、いざというときにお互いに救助をすることができるようにしておくようにしたいものですね。

地震の時、自動販売機が危険なわけ

転倒防止処置をされた災害対応型自動販売機。非常時にオレンジ色のボックスを開けると中の飲料水が取り出せる仕掛けを持っている。

 地震が起きたときに気をつけなくてはいけないものの一つに自動販売機があります。特に飲料系の自動販売機は上部に販売する飲料が詰まっているため、重心が高くなっていて不安定ですので、揺れる兆候を感じたら、とにかくその前からは逃げる必要があります。
 自動販売機の設置会社も危険なのはご存じなので転倒防止用の板や脚をつけたりすることもあるのですが、スペース的な問題や見栄え、予算の都合や必要性を感じないなど、さまざまな理由で転倒防止策を採ることができていないことも多いようです。

飲料用自動販売機の中身。品物が上部に入るため、構造上重心が高い。

 もしも地震などで激しい揺れに合うと、転倒防止対策をしていない自動販売機は揺れに負けて倒れてしまう可能性が高く、そのときに下敷きになったとしたら、よくて大けが、悪ければ死んでしまいます。
 自動販売機は便利なものですから全廃しろと言ってもなかなか難しいと思います。ですが、用事のあるとき以外は近づかないということは可能だと思いますので、自動販売機の前でたむろするのは止めた方がよさそうです。

地震が来たらどうすればいいか?

地震対応訓練の一コマ。安全な場所で身を守ることが大事。

 3月13日の夕方、島根県西部地方を震源とする地震がありました。最大震度が3、時間は数秒という短いものでしたのでびっくりした程度のものでしたが、揺れを感じたときにあなたはどんな行動を取りましたか?
 ガタドン! 程度でしたのでなんだろうと思っているうちに終了したわけですが、地震はこういった音や揺れが激しく続きます。長くても1分程度と言われてはいますが、関東大震災では数分にわたって揺れ続けたという記録もあるようですので、一概にはいえません。
 地震の時に安全が確保できるかどうかは、普段から安全場所を意識して見つけておくようにすることです。天井、壁、床など、揺れが来たときにどこなら安全にやり過ごすことができるか、どのようなポーズだったらより安全かを考えながら行動をすることで、いざというときに速やかに安全な場所へ待避が可能になります。
地震の揺れそのもので死ぬことは殆ど無いと思いますが、立ったままだと転倒する可能性がありますから、まずはしゃがむこと。重心をとにかく低くすることで転ばないようにします。
 そして頭部を守ること。周囲に崩れたり倒れたりするものがあれば、しゃがんだ状態でできる限り安全な場所へ避難します。動けなければ、運を天に任せてその場で揺れが収まるまではじっとしていましょう。
 揺れが収まったら情報収集です。ラジオやスマートフォン等で地震情報を確認し、津波などに備える必要があるのかや避難すべきかどうかの判断もします。
慌てず、騒がず、確実に。まずはあなたの安全確保。命を守るための基本となりますので、忘れないようにしておいてくださいね。

地域の情報を共有しておこう

 ハザードマップを使った勉強会や、避難所運営ゲーム(HUG)など、最近は自治会が主体的に災害対策に取り組むことが増えてきました。
 そこでぜひやっていただきたいのが、地域の情報の可視化です。例えば、どこに誰が住んでいてどのような生活をしているのかということをできる範囲でいいので共有化しておけば、いざというときにその人が在宅しているかどうかはわかります。
 阪神淡路大震災で被災した淡路島では、倒壊家屋の下敷きになった人の救出は非常に早く行われたのですが、普段から誰がどこにいてどこで寝てるということまで地域住民の間で共有化されていたそうです。その結果、倒壊した家屋のどのあたりに人がいそうだということが分かって早い救出につながったと言うことです。現在ではそこまでの個人情報を出すのはいやな方がほとんどではないかと思いますが、濃厚で面倒くさいと言われる近所づきあいにも、そのような利点があるということは知っておいてください。
 また、どこにどのような設備があるのかを共有しておくと、心肺蘇生で必要となるAEDの場所や担架、救急資材、消火器といったものが必要なときにすぐ取りに行くことができ、救命につながります。
 例えば、地域の防災マップを作る中で、危険な場所だけでなく安全な場所やいざというときに使える資機材のありかを確認しておくと、本当に災害が起きたときに非常に役に立ちます。
 せっかくその地域に住んでいるのですから、いいところも悪いところもお互いに認識し合って、いざというときに備えておきたいものですね。