車と徒歩の避難の違い

 災害発生時の避難では、基本的には徒歩で行うこととされています。
 避難所が車で移動しなければいけない場所にあるような地方ではあまり現実的ではない表現だと感じると思いますが、そういった場所では車が使えるうちに早めの避難をすることが大切です。
 車は移動速度も運べる荷物も徒歩とは比較するのもはばかられるくらい差があります。
 ただ、車には車の欠点があるわけで、車が災害発生後の避難では使えないという理由を知っておく必要があります。
 一つは、道路が何らかの理由で破損している場合、車が移動できなくなって障害物になることがあります。
 道路上に一台詰まると渋滞を招き、緊急車両や復旧車両の移動を阻害することになり、修繕や復旧が遅れる原因となってしまいます。
 二つ目に、大雨などによる洪水や水害の場合、車が流されてしまう危険性があります。車は重たいイメージがありますが、最近の車は密閉性が高く中に空気がたまった風船のような状態になっています。
その結果、ある瞬間水に流されてしまうと、踏ん張りがきかず、そのまま流されていってしまうのです。そして流されているうちに浸水してしまいます。
また、水に浸かると車の電気系統が動かなくなってしまったり、水を吸い込んだエンジンが止まって動けなくなったりもします。
災害が発生する前であれば、車はそれ自体が避難所のような機能を持つことができるので、車で避難する人は、とにかく早めの避難が必要ということになります。
徒歩での避難は、ゆっくりですし荷物もさほど持って移動できるわけではありませんが、車での避難に比べると流されにくいという利点があります。
また、自分の足で移動する限りは、障害物にもなりえません。
そのため、災害発生時の避難には徒歩が原則となっているのです。
あなたの今いる場所が避難しなければならない場所なのかどうか、そして避難するのに徒歩でできるのか、車が必要なのかをしっかりと考えたうえで、避難計画をつくるといいのではないでしょうか。

豪雨で九死に一生「ピンポン玉のように車ごと流され…」1.5キロ流された女性が語る“水の恐怖”(yahoo!Japanニュースのウェブサイトへ移動します)

窓ガラスの飛散防止を考える

窓ガラスに物が当たるのを防ぐため、段ボールで窓ガラスを覆う。

 台風が接近していますが、おうちの台風対策は万全ですか。
 今回の台風は雨も風もある台風のようですので、どちらにも備えておく必要があると思います。
 避難指示が出た場合には避難ができない状態になっている可能性もありますので、行政の情報発表を待つのではなく、必要がある場合には、ご自身の判断で早めの避難をしてください。
 ところで、台風で怖いのは雨もですが、風もです。
 何らかの理由で強風が家の中に入ってきてしまうと、屋根が吹き飛ばされてしまうことがありますので注意が必要です。
 特に窓ガラスが割れた場合には悲惨ですので、割れないように、または割れても飛散せずに風が吹き込みにくい状態が維持できるような対策をしておきましょう。
 一番いいのは、雨戸や鎧戸でガラス面を物理的に守る方法です。窓ガラスに外側から段ボールなどを貼り付けておくのも有効だと思います。
 余裕があれば、窓ガラスに飛散防止フィルムを貼ることで安心が買えます。

窓には飛散防止フィルムを貼る。両面に貼るとより安心だが、無理なら屋内側に貼ると飛散防止になる。

 どちらもできないのであれば、せめて窓に布テープなどを貼り付け、大きな破片が飛散しないようにするとともに、窓からの強風の侵入を防ぐようにしましょう。

養生テープを屋内側に貼ることで大きな破片の飛散防止になる。

 カーテンを閉めるのは、割れたガラスで怪我をしないためには有効ですが、風の吹き込みを止めることはできません。
 いろいろと言われますが、窓ガラスが窓枠から外れないようにすることが、家を守るための重要な対策だと筆者は考えています。
 災害対策は0か100かではありません。51か49か、微妙なところで被害の増減が決まると思っています。
 被害が出るのだから対策しても無駄、ではなく、被害を最小限にするためにできる対策をしておくことを忘れないでほしいと思います。

トイレについて考える

手作りの簡易トイレ。便器が使えなければ、こういった感じで作る方法もある。

 災害時にもっとも最初に困るのは、おそらくトイレです。
 日本トイレ研究所のデータによると、地震後にどれくらいでトイレに行きたくなったかを被災者に確認したら、3時間以内という人が3割以上いたそうです。
 実は、水道が止まったり下水管が破断したりするとトイレは使えません。特に下水管の破断の調査はすぐにはできませんから、はっきりとわかる汲み取り式や簡易水洗でない限り、トイレは使えないと思ったほうがいいでしょう。
 でも、出るものは止められません。
 安心して使えると思われる仮設トイレが避難所に届くのが、早くても3日はかかるので、被災してから最低3日分のトイレを何とかしないといけないわけです。
 ちなみに、自宅のトイレが使えない場合にはどうするかというと、4割の人が公園などの公衆トイレ、1割強の人がコンビニのトイレを使うと回答しています。
 自宅のトイレが使えないときには、公園もコンビニもトイレは使えません。
 つまり携帯トイレや簡易トイレで仮設トイレが届くまではしのぐ必要があるのです。
 この携帯トイレや簡易トイレは、災害が起きてからでは準備が間に合いません。災害が起きる前に準備しておく必要のあるものです。
 自宅や避難先のトイレの構造や、自分が準備している携帯トイレや簡易トイレが自分で使えるかどうか実際に使ってみること、そして何より大切なのは、使えないトイレを使わないこと。
 つまり、被災後はすぐにトイレを封鎖しなくてはいけないということで、すぐにでも自分の準備した携帯トイレや簡易トイレの出番がやってくるわけです。
 さて、そのときあなたはトイレ問題をどのように解決しますか。

マスクと眼鏡

眼鏡とマスクの他に、土埃を落としやすくするための雨合羽を着るとより安心。

 地震が起きた後や水害の後しばらくすると、細かな土埃が舞うことがあります。
 この土埃、普段の土埃と異なり、さまざまな雑菌や小さなゴミがたくさん混じっていますので、できるだけ粘膜に触れないようにしたほうが安心です。
 そのために必要なのがマスクと眼鏡です。
 マスクつけることで、のどや気管に入ってくる汚染された土埃を防ぐことができるのはなんとなくイメージができると思いますが、眼鏡はどうですか。
 案外と意識されていませんが、目も立派な粘膜組織です。
 汚染された土埃が入ると、眼球に傷がついたり、病原菌が体内に侵入したりすることがありますので、しっかりと防御しておくようにしてください。
一番効果的だと思うのは水泳用のゴーグルですが、花粉症用の眼鏡でも大丈夫です。
単なる眼鏡やサングラスでも、裸眼の状態よりはましです。
目や気管を守ることはあなたの被災後の健康維持にかならず役立ちます。
このご時世なのでマスクは持っている人が多いのではないかと思いますが、できれば眼鏡も準備しておくようにしてください。特に子供さんは粘膜が弱いので、しっかりと準備してくださいね。

【活動報告】「初めての防災キャンプ」を開催しました。

 8月27日~28日に益田市立北仙道公民館で1泊2日の防災キャンプを開催し、総勢13名の子供たちが、夏の終わりの防災キャンプに参加してくれました。
 避難所開設や非常食体験、消火訓練や食べられる山野草探し、空き缶炊飯とあるもの野菜の料理、差し入れ花火で花火大会をし、そして避難所で一泊。差し入れフルーツの朝ご飯に洗濯、そして炊き出し演習と、内容盛りだくさんのキャンプでした。
 途中で数人、保護者の緊急お迎えもありましたが、それでもなんとか最後まで開催することができました。


 初めて会った子供たち同士が、普段あまり使わない包丁や缶切り、カッターナイフを使ってさまざまなことをしたり、避難所ではちょっと寝苦しいことがわかったり、大掃除をすることになったりと、さまざまな体験をしてくれました。
 また機会を見て開催したいと思っていますので、もし機会があればぜひご参加ください。
 今回参加してくれた子供たち、そして参加を許可してくれた保護者様、会場を快く貸してくださった北仙道公民館の皆様、いろいろなものを差し入れしてくれた皆様、そして、人数が少ない中で奮闘してくれたスタッフの皆様。
本当にありがとうございました。

台風に対する事前予測をしておこう

 台風のシーズンになりましたが、あなたのおうちの台風対策は万全ですか。
 台風の場合、ある程度事前に針路が予測できるので、早めの対応を取ることで、少なくともあなたの命を守ることは可能です。

台風の進路予想はかなり早い段階から出ている。進路予想図を見ることが大切。

 台風で怖いのは風と水。強風の中、水があふれてきたからと言って避難することはできません。
 少なくとも、周囲と比べて自分の家の高さはどうなのか、それくらいは地図や家の周辺をみるとわかると思いますので、周りよりも低い場所や、全体から見て低地の場合には、台風が来る前に安全な場所へ移動しておくことをお勧めします。
 また、背後に山がある場合には、その山の傾きや土質、どのような木が生えているのか、普段の水の出具合はどんな感じかなどを調べておきましょう。
 少なくともハザードマップなどの防災マップでイエローゾーンやレッドゾーンに指定されている場所にお住いの方は、これも早めの避難が大切です。
 避難先ですが、台風の影響のない場所に逃げるのが一番いいのですが、かなりの長距離移動になることが多いので現実的ではない場合もあります。
 高台でなるべく風の当たらない場所というちょっと矛盾した表現になりますが、そういった場所を普段から探して見つけておくか、もしくは安全な場所に立っているホテルなどの宿泊施設に宿泊するのもいいと思います。
 台風では、どうしても避難所の開設が遅れがちです。避難所が開設される頃には台風の真っただ中といった場合も想定されますので、なるべく早く安全な場所への移動を自己判断で行ってください。
 また、家は安全だという方は、窓ガラスが割れないような補強や、屋根の点検、雨どいや排水路の掃除などをしっかりとしておきましょう。

いろいろといわれるが飛散防止にはガムテープは有効。張る時は屋内側に貼ること。

 台風は事前に予測できる災害です。報道機関や行政機関が発表する情報を丹念に集めて、どのタイミングで何をしておくことが適切なのかを、しっかりと考えておきましょう。

ペットの避難

避難所で同行してきたペットの犬。トイレに向かい通路横が指定場所だったので、犬も避難者も困ったことになった。

 大きな災害が起きるたびに問題になっているのがペット。
 ペットを飼っている多くの人がペットの避難についてよくわかっていないというのが実情です。
 また、受け入れ側でもよくわかっていないので、混乱に拍車がかかっています。
 環境省では避難時にはペットと一緒に避難する同行避難を進めており、思ったよりもたくさんの避難所がペットの受け入れに関して可としているようです。
 一つ目の問題は、ペットの避難用語で「同行避難」と「同伴避難」という似て異なる言葉が使われていること。
 同行避難は避難所までは一緒に避難できるが、避難所内ではペットを別な場所に入れることで、同伴避難はペットと一緒に同じ部屋で過ごすことができるというものです。
この言葉の違いがなかなか理解できないので、避難所でペットの飼い主と避難所運営者が揉めることがよくあります。
 二つ目は、この「ペット」という言葉が何を指しているのかということ。
 同行避難可の避難所はペット用の場所や部屋を用意していますが、ここに入るのは「ペット」でくくられたさまざまな生き物です。
 犬や猫だけでなく、鳥やハムスター、蛇などの爬虫類、金魚などの魚類、そして昆虫類に至るまで、食物連鎖の関係にある生き物を一緒に押し込めることになります。
 対策としては、どんな生き物がペットとして避難してくるのかが事前にわかっていること、そしてどの種類をどこへ配置するのかを事前に決めておくことが非常に重要になってきます。
 また、飼っているペットの数が多い人は、避難所への避難は諦めたほうがいいかもしれません。
 避難所への避難を考えるよりも、自宅を災害の影響を受けにくい場所にするか、獣医師やペットホテル、そのペットに理解のある離れて住む家族や友人、知人と避難の話をしておいたほうが建設的だと思います。
 もともと指定避難所で優先されるのは「人」です。ペットを理由にして避難しない人が増えてきたので、ペットと一緒に避難するという考え方が出てきただけなので、人とペットを天秤にかけた場合、当然人を助けることになります。そういう意味でも覚悟をしておく必要がありそうです。
このペットの話はあくまでも一例。避難所の問題はさまざまありますが、普段はあまり考えられていません。
さて、あなたとペットが避難すべき場所はどこにありますか。

ペットの災害対策(環境省のウェブサイトへ移動します)

家族の料理と炊き出しの違い

当研究所が主催している”外遊びご飯の会”の一コマ。

 普段ご飯を作っている人なら簡単に炊き出しができるのではないかと思われる方もおられると思いますが、一度やってみるとその考えが間違っていることに気づくと思います。
 確かに、普段作っている分量を多くすれば、計算上は多人数のごはんづくりも可能ですが、実際には材料だけでなく、鍋や釜といった調理器具やコンロの火力、調味料の量などなど、想像以上に手間暇がかかって作るのがとても大変になります。
 避難生活で暖かいものを食べたいと考え、自分たちで炊き出ししようとすると、いきなりだと失敗する場合も結構あります。
 大人数の調理は、大人数の調理のコツがいろいろとありますから、できるなら年に1回以上、地域や職場で炊き出しの練習を兼ねた催しをすることをお勧めします。
 実際に作ってみると結構大変ですが、それらを食べることで仲良くなれますし、やり続けるとコツもわかってきます。
 そしてなにより、被災後にも調理ができるという自信につながりますから、万が一食料品が届かなくてもなんとかなるという安心感があります。
 ここ数年、新型コロナウイルス感染症の蔓延で一緒にご飯を食べるということが半ば禁忌扱いになっていますが、状況が落ち着いたなら、一緒に炊き出しして食べてみてください。
 いろいろな発見があると思いますよ。

食べたいものは季節によって変化する

 大雨が続き、あちこちで避難をされている方、そして被災された方には心からお見舞い申し上げます。
 早く天気が落ち着き、自宅に帰ったり復旧作業が進むことを願っています。
 さて、そんな災害の状況が悪化しない限り、指定避難所では行政からの食糧配給がある場合が多いようです。
 多くはパンやおにぎり、ちょっとしたお弁当になるようですが、それも長期になると飽きてくるものですが、自分の非常用持ち出し袋に自分が食べたい、食べるとご機嫌になる食べ物が入っていると、それだけで気持ちが落ち着くものです。
 ただ、この食べたいものというのが曲者で、季節の移り変わりによって食べたいものが変わっていくことが多いです。
 夏場だったら冷たいものやあっさりとしたもの、冬場なら、体の温まるものやこってりしたものが好まれるようですが、あなたの非常用持ち出し袋はそういった季節の変化に対応した入れ替えがされているでしょうか。
もちろん、季節を問わずにご機嫌になる食べ物があればそれが一番いいのですが、季節の変化とともにちょっとずつ非常用持ち出し袋の食料を入れ替えていくことで、どんな季節に避難をすることになっても、とりあえずの食べたいものが確保されている状態になります。
なかなか難しいかもしれませんが、季節によって変動する食べたいものも追加しておくと、防災食のレパートリーが広がって、避難所でもご機嫌で過ごすことができるかもしれませんね。
一つ注意しておきたいのは、温める際にはその避難所のルールに従うこと。
火気厳禁のエリアでは、たとえカセットコンロであっても利用はできません。
自分が避難する予定の避難所ではどういった状況で、どこでどんなものが使えるのかについても、避難訓練のときなどに確認しておくといいかもしれませんね。

リアルタイム被害予測ウェブサイト cmapを知っていますか

 これからの時期、秋の大雨や台風による被害が予測されますが、現在進行形で被害予測をしているウェブサイトがあるのをご存じですか。
 あいおいニッセイ同和損保が提供している「リアルタイム被害予測ウェブサイト cmap」がそれです。
 本来、このシステムは台風、大雨、そして地震の建物被害を予測して迅速に損害保険の調査や支払いの体制を組むために作られたそうですが、建物被害の予測ができるということは早めの避難を促すことにもつながるのではないかということで、現在無料で情報が提供されています。
 このシステムで被害が想定される場所にいた場合には、しっかりとした対策を取り、場合によっては域外避難も考えながら早めの命を守るための行動をとることができると思います。
 もちろんAIによる予測なので、実際には被害が出ない可能性もありますが、台風などは最大で7日前からの予測ができるそうなので、それを見ながらさまざまな備えをしていくことも可能だと思います。
 ハザードマップも表示でき、アプリもあるので、興味のある方は一度試してみてください。

リアルタイム被害予測ウェブサイト cmap(あいおいニッセイ同和損保のウェブサイトへ移動します)