大規模災害時における被災地支援では、支援者がどれだけ自己完結できる装備を持っているのかがカギとなります。
衣食住については、被災地では当然不足している状態ですので、被災地に負荷をかけないようにすべて持ち込むことが推奨されます。
水害のように地域がある程度限定されている状態であれば、被災地域外から通えばすむのでそこまでの負担にはなりませんが、大きな地震だと被災地のエリアが非常に大きくなるため、被災地外から通うというのはかなり難しくなります。また、宿泊用のテントや車を持参していても、それらを展開する場所が確保できない場合も想定されます。
大規模災害で被災地支援に入る組織は全て似たような悩みを抱えていて、例えば消防や警察はそれぞれの敷地内に輸送用バスや支援車両を置き、そこで寝泊まりしていますし、自衛隊は事前に行政側が幕営地を確保したうえで派遣を受けています。
一般の被災地支援者は行政側に頼るわけにはいきませんので、早い段階で被災地支援に入るのならば、それなりの覚悟をしていかなければなりません。
保温、食事、給水、排せつ、睡眠。
自前でこれを確保できない場合には、被災地がある程度落ち着くまでは立ち入ってはいけません。
被災地支援するための前提は、どこまで自己完結できているかです。
被災地や周囲の状況を確認しながら、被災地支援に入るようにしてください。
カテゴリー: 行動
カサカサとボソボソ
避難所など人が集まっているところの夜に起きるトラブルが「音」です。
その中でもポリ袋の「カサカサ」という音は非常に不快感を与えてしまうようで、避難所以外、例えば山小屋など多くの人が就寝している場所でトラブルになることがあります。
非常用持ち出し袋などの防水対策としてポリ袋を使う人も多いと思いますが、できればかさかさしないタイプのポリ袋を使うことをお勧めします。
また、たくさんの人が集まって就寝している場所では、緊張しているせいか寝ていない人のぼそぼそとした小さな話し声も気になるものです。
アイマスクや耳栓など、周囲の光や音を押さえる道具もあるのですが、善意の人ばかりではありませんので、確実に安全が確認されていない場合には、そういったものを使うのもどうかと思います。
対策としては、音が出ないようにすることと、人の声を気にしなくても済むような小型の自立型テントを持ち込むくらいでしょうか。
しっかりと眠れないと、気力はどんどん失われていきます。
あなた自身が他の人に被害を与えないように、そして周りから被害を受けないためにも、避難が必要な人は事前準備をしっかりとしておきたいですね。
防災計画は現実的ですか
東日本大震災における大川小学校の損害賠償請求事件では原告が全面勝訴しています。このことは割と有名な話なのですが、この中で裁判所が「事前防災の予見と不備」を大きな理由にしていることはご存じですか。
人が集まっている学校などでは、想定されうる災害についてきちんと精査し、条件変更のたびに防災計画をきちんと見直すことが必須とされています。
詳細は裁判所の判例をご確認いただきたいのですが、筆者の解釈では、この判例の前提にあるものは、学校に限らず、人が集まる施設では起こりうる災害とその対策についてしっかりと精査したうえで可能な限り犠牲者を出さないための対策を行う必要があるということなのではないかと思っています。
学校や病院、介護施設、保育所やこども園などでは、ほとんどの場合防災計画が作られていると思います。ただ、それはきちんとそれらがある場所の状況を反映し、的確に安全確保ができるものになっているでしょうか。
特に介護施設などでは、筆者の知る限りでは防災計画のひな型を適当に手直ししたものが備え付けられていることが多いですし、見直しや改訂もまったくされていないものもよくあります。
法律上は防災計画が立てられていて計画書が備え付けられているので問題がないと判断されるのですが、それで安全がきちんと確保されているでしょうか。
防災計画を一から作れというのは結構ハードルが高いと思うのですが、これらの施設に義務付けられている避難訓練の状況や結果を防災計画書に反映させることはできると思います。
もしあなたが防災担当をしているのであれば、今からでも遅くはありません。
自分の担当している防災計画書を見直し、地域の災害リスクや要件をきちんと満たせているか、そして実際に安全確実にできるような計画になっているかを確認し、しっかりとした安全を確保してください。
余談ですが、介護施設は特に地域の中では危険な場所に建てられていることが多いです。立地からすでにリスクがあるのですから、しっかりとした対策を作って実行できるかどうかを確認することをお勧めしておきます。
大川小学校津波訴訟判例文(裁判所のウェブサイトへ移動します)
とりあえず試してみること
災害後の生活では、さまざまな人がさまざまな代替品・代替手段の情報を提供していますが、その代替品や代替手段を実際に試してみた人はどれくらいいるでしょうか。
例えば、トイレ問題。
トイレが使用できない場合には大人用のおむつをつければ安心です、といった話を見ることがありますが、実際につけてみたところ、吸収した後の状態がかなり気になって気が散り、筆者自身は何かに集中することはちょっと難しかったです。
むろん全く気にならない人もいると思いますのであくまでも個人的な意見ですが、それを体験したことにより、筆者自身は便器につけられる簡易トイレを数日分準備することにしました。
ちゃんとしたおむつでもかなり気持ち悪く感じるのですから、赤ちゃんのおむつの代用品としてよく紹介されているタオルとポリ袋などは、赤ちゃん大泣きまっしぐらになると思います。
タオルとポリ袋の組み合わせは、普通の布おむつと同じ状態なので、赤ちゃんが排せつするたびに替えてやる必要があります。でも、被災直後にそれだけ衛生的なタオルを準備できるのであれば、最初から紙おむつを準備しておけという話になります。
試してみると意外なことがわかることは他にもたくさんあります。
いろいろとやってみている筆者ですが、印象としては普段の生活で使用しているものはできる限り普段通りのものが使えるように準備し、そうでないものについては代替品や代替手段を知っておくことがいいようです。
代替品はあくまでも代替品。代替手段はあくまでも代替手段。
とはいえ、代替品や代替手段でも自分は大丈夫かもしれません。それを確認するためには、平時にいろいろと試してみること。
そうすることで自分に必要な準備が見えてくると思います。
小さな危険で学ぶ
最近はちょっとでも怪我をすると管理責任を問われるそうで、自治体の作る公園などから遊具がどんどんと撤去されているようです。
ただ、怪我をしないということはそれが危ないということが体験的に理解できないということなので、本当にそれでいいのかなと考えてしまいます。
例えば、身近な話では包丁を子供に使わせるのは危ないからやらせないというおうちがあるそうです。
では、包丁が危ないということを、やらせないという人はどうして知っているのでしょうか。包丁で指を切ったりするような怪我をしているからこそ、危ないし痛いことを知っているのではないですか。
人の成長が基本的なことを体験や経験から判断するようになっている以上、ある程度の危ないことは体験しておかないと最終的に大けがや死を招くような失敗をやってしまうのではないかと心配してしまいます。
ちなみに、当研究所のやっている子どもの防災キャンプでは、直火や刃物を使うことがあります。また、さまざまなぱっと見に危ないことをやることもあります。
ただ、その中で指を切ったりやけどをしたりすることで、取り扱いに気を付けるようになりますし、同じ失敗はしないということが殆どです。
危険であることは変わらないのですが、その危険の危ない理由を知ることで、危なくない使い方、あるいは危険回避の方法を学ぶことができるのではないかと思います。
小さな危険を見守ってやり、大きな危険を防いでいくのも、危険なことをさせないという一つの方法なのではないかと思います。
消火器は備えていますか
災害時に限らず、日常生活でも火事を誘発するようなちょっとしたミスをすることがあります。
実際、どのタイミングでどんな場所から出火するかはわかりません。
消火用水バケツを用意している人もいるとは思いますが、てんぷら油などの油火災や漏電、ショートによる電気火災では水での消火は厳禁です。
消化能力やさまざまな火災に対応しているところを考えても、消火器は必須のアイテムだと思っています。
書いている筆者自身も、ある時立て続けにボヤを出し、スプレー缶タイプの携帯消火器がなかったら、家が丸焼けになっていたかもしれないという事態になったことがあります。
消火器は粉末式でなくても構いません。スプレー缶の炭酸ガス式のものでも初動であればしっかりと消せます。
気を付けるのは、できる限り普段火を使う場所に近いところに置くことと、冷静になることです。
そして、火が見えなくなってもスプレー缶からガスが出なくなるまでは徹底的に火元に吹き付けること。
どうせ中途半端に残っても使い道に困るので、完全に無くなるまで吹き付けてやりましょう。
本式の消火器は少々火が強くてもしっかりと消すことができます。
スプレー式の簡易消火器と、しっかりと消せる消火器。
それぞれに準備して、いざというときに備えておきたいですね。
基本は自宅避難です
災害対策の考え方の普及が進んだのか、それとも新型コロナウイルス感染症などで敬遠されているのか、在宅避難の人はかなり増えているのかなという気がします。
自治体が設定している指定避難所の収容人数を確認すればわかるのですが、もともとその地域の人間をすべて収容できるような避難所はほとんど存在しません。
避難しないといけない状況にある人が他に選択肢のない場合に自治体の設置する指定避難所に避難するというのが考え方の根底にあるからです。
また、物理的に避難地域の全ての人を収容できるような施設がないということもあると思います。
ではどんな前提で避難所に避難する人が決まるのかというと、以下の図のようになります。
まずは自宅にいることができるのかどうかがスタート。
自宅にいられない場合に、他の家族や知り合いなど、避難しなくてもいい人たちの家などに避難できないか、また、安全な場所にある宿泊施設などに避難できないかが選択肢に上がります。
そして、どうにもならない場合に初めて指定避難所への避難が選択されるということになります。
過去にはなんでもかんでも避難所に避難しろという乱暴な時代もありましたが、これだけ大規模災害が続くとそんなことも言っていられないということがわかってきたようです。
避難指示が出ても、それはあなた特定の話ではなく、その地域全体の話です。
まずはそれが自分に当てはまるのかどうか、そして当てはまっている場合にはどこへどうやって避難するのかについて、可能な限り事前にしっかりと決めておくことをお勧めします。
避難所支援で必要なもの
避難所ではさまざまな物資が欠乏することが多いのですが、これは時期によってどんどん変わっていくもので、情報が出されたときにはすでに充足している場合もかなりあります。
SNSで支援要請を行うときには「いつ時点」という表記を入れるようにするということがだいぶ浸透してきてはいますが、正直なところ「もの」を送るという行為に対しては素直に喜べないなと思うところがあります。
もちろん支援物資を抱えて自力で被災地に持ち込み、そして被災者に直接配布するのであれば、必要なところを探して回れますので、物資の配布という点だけなら、極端に大きな問題にはならないと思います。
ただ、「〇〇が不足」という情報を元にしてその「〇〇」を宅配便などで送りつけるのは止めた方が無難です。
これを行うと、そもそもいつ届くかわからない上に被災地までの物流に極端な負荷をかけることになり、届いた後は被災地での配布で人的・場所的資源を取られてしまいます。正直なところ、届く時期が「未定」や「1週間程度」となっている場合には送らないほうが無難です。
善意から出た行為が現地の負荷になってしまっては何の意味もありませんので、それを考えた支援が必要だと思います。
足りない物資を届けたいなら、自分で買い付けて自分で送る必要はなく、例えばアマゾンの「ほしいものリスト」などを選択して送ることは一つの手です。
また、被災している行政機関や支援団体に現金を寄付するのも手です。
例えばある避難所で水が足りないからと言って、被災地全体に水が足りないとは限りません。別の避難所では水が余っているのかもしれません。
そういった調整をせずに水が避難所に送り付けられる頃には、水の余っていた避難所から水が届けられて充足していて、あとは届いた大量の水が倉庫や保管場所を圧迫するという状態になってしまいます。
こういった事態を防ぐために現地で支援物資の調整を行っているのが被災している自治体や支援団体ですので、そういった人たちに支援金が届くと、かなり効果的にお金を使ってもらえます。
避難所支援というとどうしても物資に目が行きがちなのですが、それを届けるための物流や保管場所がどうなっているのかについてもきちんと確認してほしいと思います。
作っておきたいタイムライン
台風や大雨のようなある程度予測できるはずの災害で「逃げ遅れた」ということを割とよく聞きます。
逃げるタイミングを失ってしまったということなのですが、地震のように突然起きるわけではない災害なのに、どうして逃げるタイミングを失ってしまうのか。
答えは簡単で、逃げる判断をする時期をきちんと決めていなかったからです。
逃げるかどうかの判断ができないのですから、逃げられるわけはないし、また逃げるタイミングを失ってしまうのも当然です。
最近よく耳にする「マイタイムライン」ですが、これは災害時の自分の行動計画を作るもので、いざというときにはこれに従って行動すると、少なくとも逃げ遅れることは格段に減ってくると思います。
悩むのは行動計画を作成するときで、本番では作成しておいた行動計画に従って何も考えずに行動するようにします。
そうすることで、その時に判断に迷うという一番時間の無駄な使い方をしなくて済むことになるのです。
実際にマイタイムラインを作ってみると、避難が必要な人、そうでない人でかなり判断することやそのタイミングが異なってきます。
文字どおり「自分の」災害時行動計画を作るのだということが、研修会などで作成してみるとわかると思います。
また、タイムラインに何を書こうかと悩んでしまうことも出てくると思いますので、誰がどんなことを書いているのかを調べてみるのも参考になると思います。
マイタイムラインはあなたの逃げ遅れや準備不足をできる限り無くすために作成するものです。
自分の命を守る、そして生き続けることができるような計画をしっかりと考えてみてくださいね。
古いおうちと家具の固定
古いおうち、特に昭和56年以前に建てられた建物については耐震性が充分でないことから耐震診断と耐震補強は可能な限りやる必要があるものの一つです。
ただ、こういったおうちにお住いの方は、多くはお年寄りだったりしますので、耐震診断や耐震補強はお金がかかったり面倒くさかったりで、あまり作業は進んでいないようです。
では家具の固定を、と考えると、こういったおうちには古くからの家具がたくさんあって、そのうえそれ以外にもさまざまなものがあって、地震対策という視点からみると非常に危険な状態です。
とはいえ、断捨離としてお片付けすると、作業後にはどこに何が入っているのかわからなくなって大騒ぎになりますし、うかつなこともできません。
せめて寝室だけでも家具を撤去したいと思っても、長年慣れている場所と方向を変えることはかなり難しいみたいです。
命を守ることは必須ですが、とはいえ生活環境を守ることも大切なことですので、そのまま家具の固定をするわけですが、やっぱり危険な状態には変わらず、非常に悩ましい状態になります。
そうならないためには、引っ越した時の配置をしっかりと考えておく必要があるのかなと感じています。