【活動報告】「やってみよう防災キャンプ・春の巻」を開催しました

 2023年3月25日から26日にかけて、益田市の北仙道公民館で「やってみよう防災キャンプ・春の巻」を開催しました。
 当日は15名の子にご参加いただき、段ボールシェルターづくりや心肺蘇生法、ポリ袋炊飯、暗闇体験などを体験してもらいました。

搬送法の一コマ。担架で安全な場所まで搬送する練習をする。

 今後の予定は未定ですが、次回もしやるとしたら、もっと内容を練り込んで、、リピーターも初めての人も楽しみながら防災を学んでもらえるような企画をしていきたいと思っています。
 今回参加してくれた皆様、参加を許可してくださった保護者の方、会場を快くお貸しいただきました北仙道公民館の皆様、そしてさまざまな形でこのイベントを支えてくださった皆様に心から感謝します。
 ありがとうございました。

避難の手段を考える

 避難の時には徒歩でといわれていますが、起きる災害と時期、そして場所によっては、避難の手段が変わる場合があります。
 例えば、歩いて行ける範囲に避難所がない場合には、何らかの交通手段を使用しなければそもそも避難をすることができない場合があります。
 山間部の小集落などの場合には集落そのものが危険な場合がありますが、他の場所へ避難しようとすると自家用車などを使わなければどうにもなりません。
 逆に都会地になると自家用車は使えません。徒歩でなければそもそも交通渋滞に巻き込まれて移動ができない状態になっているでしょう。
 また、来るのが予測できる台風や大雨の場合には、あらかじめ被害の出そうな時間が予測できますから、それまでに避難を完了すればよいことになります。交通機関などが通常通りに動いている状態のときに避難を行うのであれば、あらゆる手段を使うことができます。
 でも、地震のように突然発生する災害については、道路の被害や信号機の停止などによる渋滞が予測されますから、自由の利く徒歩での避難が推奨されるのです。
 いつ被害が起きるのかがある程度予測できる災害の場合には、早めの避難をするのなら悩まなくて済みますし、ぎりぎりになって避難しようとすると、避難に使うための選択肢はほぼ徒歩一択になります。
 可能であるなら、避難の手段がたくさんあるうちに避難行動を開始、完了するように避難の手段や計画を立てておきたいですね。

備蓄の種類

 災害時に備えるべきアイテム類は3日から1週間程度準備して備蓄しておくように国からは情報発信がされています。人によってはひと月程度準備しろと言っている方もいるようですが、都会地や消費地で生活している人の場合には、支援物資がどれくらいで届くのかまったく予測ができないので、国が言っているよりは長めに準備しておいた方がいいのかなとも考えます。
 ただ、どんなに少ない量でも1週間分のアイテムをリュックサックに詰めるのはかなり至難の業で、非常用持ち出し袋が嫌がられるのには物理的に無理だという誤解や錯覚があるのかもしれないと思うこともよくあります。
 もともと、備蓄には三種類あると筆者は考えています。
 一つ目は普段から持ち歩く防災ポーチ。本当の緊急時に自分の命をつなぐために必要な最低限のものが入っています。
 二つ目は、大雨や台風時などに1泊から2泊程度の生活必需品を詰めて避難に使う非常用持ち出し袋。
 最後は文字通りの備蓄で、5日から1週間程度家や倉庫などに保存してある状態の生活必需品となります。
 家に備えておく備蓄については、普段生活に使っているさまざまなアイテム類を少し多めに準備しておけば大丈夫です。特に食事と水に関しては普段使いである程度保存がきくようなものを重視して買い物をするようにしておけば、そんなに難しい話ではないと思います。
 住んでいる環境によって備えるべきものがかなり異なるので、家に置く備蓄品については各個人や家庭でそれぞれ備えるべきものを準備しておくようにしてください。
 避難に使う非常用持ち出し袋については、車などをお持ちの場合には、家と車の中の両方に準備しておけばかなり安心です。
 その際、車の中はかなり温度差が激しい空間ですので、クーラーボックスなど温度変化を緩やかにしてくれるような容器にいれておくといいと思います。
 そして、普段使いのカバンなどには、防災ポーチを入れておいてください。
 防災ポーチと飲料水が確保されていれば、一日程度は生命の維持が可能になります。
 一口に備蓄しろと言ってもさまざまな形がありますので、それぞれの目的に応じた準備をしておくことをお勧めします。

災害用トイレは使えますか

自治会や自主防災組織の研修会では、仮設トイレの組み立てを実際にやってみてもらうことも多い。

 災害が起きると、断水や停電、浄化槽や下水道管の破損などでトイレが使えなくなるケースが結構多いです。
 トイレが使えない状態なのに無理やり使うと、トイレの中は大惨事になってしまいますので、できるならトイレがちゃんと使えることが確認できるまでは使用を禁止するようにしてください。
 そうなると必要になってくるのが仮設トイレや携帯トイレ。
 ただ、個人や自治会、自主防災組織などで準備はしていても、これを組み立てたり使ったりすることはほとんどないのではないでしょうか。
 普段使っていないものは、いざというときにも使えませんので、防災訓練のときには実際に使ってみてください。
 また、避難所で設営が必要な仮設トイレは、訓練のたびに出して組み立て、使いかたをしっかりと確認しておくことはとても大切です。
 トイレは我慢ができません。そのあたりに穴を掘ってすることにしてしまうと、周囲の衛生状態に深刻な問題が発生します。
 災害時のトイレ設営は最優先されることの一つなのです。
 いざというときに慌てなくて済むように、携帯トイレの準備、そして実際に使ってみること。
 仮設トイレは実際に組み立てて、これも使ってみること。
 この部分の訓練は手を抜かないようにしたいですね。

周囲の間違い探し

 土砂崩れ、土石流、地すべりといった土砂災害は、多くの場合事前になんらかの予兆が起こりますが、それに気づかずに災害に巻き込まれるというケースが多いようです。
 注意してみていると、焦げ臭いにおいや斜面のふくらみや斜面からの小石の崩落など、さまざまな小さな変化が起こっています。
 先日、この話を子供向けの防災教室でしたところ、ある子が「それって間違い探しだね」と言ってくれて、なるほどなと思ってしまいました。
 小さな変化に気をつけようといっても、なかなか難しいかもしれませんが、例えば子供たちに「毎日観察して間違ったところ(普段と違った変化のある場所のこと)があったら大人に教えてね」と言っておくと、彼らは楽しみながら観察をしてくれるのではないかなと思います。
 小さな変化は間違い探し。
 これを意識して小さな変化に気づきたいですね。

いかに自己完結できるか

 大規模災害時における被災地支援では、支援者がどれだけ自己完結できる装備を持っているのかがカギとなります。
 衣食住については、被災地では当然不足している状態ですので、被災地に負荷をかけないようにすべて持ち込むことが推奨されます。
 水害のように地域がある程度限定されている状態であれば、被災地域外から通えばすむのでそこまでの負担にはなりませんが、大きな地震だと被災地のエリアが非常に大きくなるため、被災地外から通うというのはかなり難しくなります。また、宿泊用のテントや車を持参していても、それらを展開する場所が確保できない場合も想定されます。
 大規模災害で被災地支援に入る組織は全て似たような悩みを抱えていて、例えば消防や警察はそれぞれの敷地内に輸送用バスや支援車両を置き、そこで寝泊まりしていますし、自衛隊は事前に行政側が幕営地を確保したうえで派遣を受けています。
 一般の被災地支援者は行政側に頼るわけにはいきませんので、早い段階で被災地支援に入るのならば、それなりの覚悟をしていかなければなりません。
 保温、食事、給水、排せつ、睡眠。
 自前でこれを確保できない場合には、被災地がある程度落ち着くまでは立ち入ってはいけません。
 被災地支援するための前提は、どこまで自己完結できているかです。
 被災地や周囲の状況を確認しながら、被災地支援に入るようにしてください。

カサカサとボソボソ

体育館などでは思った以上に生活音がよく響く。

 避難所など人が集まっているところの夜に起きるトラブルが「音」です。
 その中でもポリ袋の「カサカサ」という音は非常に不快感を与えてしまうようで、避難所以外、例えば山小屋など多くの人が就寝している場所でトラブルになることがあります。
 非常用持ち出し袋などの防水対策としてポリ袋を使う人も多いと思いますが、できればかさかさしないタイプのポリ袋を使うことをお勧めします。
 また、たくさんの人が集まって就寝している場所では、緊張しているせいか寝ていない人のぼそぼそとした小さな話し声も気になるものです。
 アイマスクや耳栓など、周囲の光や音を押さえる道具もあるのですが、善意の人ばかりではありませんので、確実に安全が確認されていない場合には、そういったものを使うのもどうかと思います。
 対策としては、音が出ないようにすることと、人の声を気にしなくても済むような小型の自立型テントを持ち込むくらいでしょうか。
 しっかりと眠れないと、気力はどんどん失われていきます。
 あなた自身が他の人に被害を与えないように、そして周りから被害を受けないためにも、避難が必要な人は事前準備をしっかりとしておきたいですね。

防災計画は現実的ですか

 東日本大震災における大川小学校の損害賠償請求事件では原告が全面勝訴しています。このことは割と有名な話なのですが、この中で裁判所が「事前防災の予見と不備」を大きな理由にしていることはご存じですか。
 人が集まっている学校などでは、想定されうる災害についてきちんと精査し、条件変更のたびに防災計画をきちんと見直すことが必須とされています。
 詳細は裁判所の判例をご確認いただきたいのですが、筆者の解釈では、この判例の前提にあるものは、学校に限らず、人が集まる施設では起こりうる災害とその対策についてしっかりと精査したうえで可能な限り犠牲者を出さないための対策を行う必要があるということなのではないかと思っています。
 学校や病院、介護施設、保育所やこども園などでは、ほとんどの場合防災計画が作られていると思います。ただ、それはきちんとそれらがある場所の状況を反映し、的確に安全確保ができるものになっているでしょうか。
 特に介護施設などでは、筆者の知る限りでは防災計画のひな型を適当に手直ししたものが備え付けられていることが多いですし、見直しや改訂もまったくされていないものもよくあります。
 法律上は防災計画が立てられていて計画書が備え付けられているので問題がないと判断されるのですが、それで安全がきちんと確保されているでしょうか。
 防災計画を一から作れというのは結構ハードルが高いと思うのですが、これらの施設に義務付けられている避難訓練の状況や結果を防災計画書に反映させることはできると思います。
 もしあなたが防災担当をしているのであれば、今からでも遅くはありません。
 自分の担当している防災計画書を見直し、地域の災害リスクや要件をきちんと満たせているか、そして実際に安全確実にできるような計画になっているかを確認し、しっかりとした安全を確保してください。
 余談ですが、介護施設は特に地域の中では危険な場所に建てられていることが多いです。立地からすでにリスクがあるのですから、しっかりとした対策を作って実行できるかどうかを確認することをお勧めしておきます。

大川小学校津波訴訟判例文(裁判所のウェブサイトへ移動します)

とりあえず試してみること

 災害後の生活では、さまざまな人がさまざまな代替品・代替手段の情報を提供していますが、その代替品や代替手段を実際に試してみた人はどれくらいいるでしょうか。
 例えば、トイレ問題。
 トイレが使用できない場合には大人用のおむつをつければ安心です、といった話を見ることがありますが、実際につけてみたところ、吸収した後の状態がかなり気になって気が散り、筆者自身は何かに集中することはちょっと難しかったです。
 むろん全く気にならない人もいると思いますのであくまでも個人的な意見ですが、それを体験したことにより、筆者自身は便器につけられる簡易トイレを数日分準備することにしました。
 ちゃんとしたおむつでもかなり気持ち悪く感じるのですから、赤ちゃんのおむつの代用品としてよく紹介されているタオルとポリ袋などは、赤ちゃん大泣きまっしぐらになると思います。
 タオルとポリ袋の組み合わせは、普通の布おむつと同じ状態なので、赤ちゃんが排せつするたびに替えてやる必要があります。でも、被災直後にそれだけ衛生的なタオルを準備できるのであれば、最初から紙おむつを準備しておけという話になります。
 試してみると意外なことがわかることは他にもたくさんあります。
 いろいろとやってみている筆者ですが、印象としては普段の生活で使用しているものはできる限り普段通りのものが使えるように準備し、そうでないものについては代替品や代替手段を知っておくことがいいようです。
 代替品はあくまでも代替品。代替手段はあくまでも代替手段。
 とはいえ、代替品や代替手段でも自分は大丈夫かもしれません。それを確認するためには、平時にいろいろと試してみること。
 そうすることで自分に必要な準備が見えてくると思います。

小さな危険で学ぶ

空き缶クッキングでは刃物も使うし火も使う。でも、気を付けていれば事故は防げる。

 最近はちょっとでも怪我をすると管理責任を問われるそうで、自治体の作る公園などから遊具がどんどんと撤去されているようです。
 ただ、怪我をしないということはそれが危ないということが体験的に理解できないということなので、本当にそれでいいのかなと考えてしまいます。
 例えば、身近な話では包丁を子供に使わせるのは危ないからやらせないというおうちがあるそうです。
 では、包丁が危ないということを、やらせないという人はどうして知っているのでしょうか。包丁で指を切ったりするような怪我をしているからこそ、危ないし痛いことを知っているのではないですか。
 人の成長が基本的なことを体験や経験から判断するようになっている以上、ある程度の危ないことは体験しておかないと最終的に大けがや死を招くような失敗をやってしまうのではないかと心配してしまいます。
 ちなみに、当研究所のやっている子どもの防災キャンプでは、直火や刃物を使うことがあります。また、さまざまなぱっと見に危ないことをやることもあります。
 ただ、その中で指を切ったりやけどをしたりすることで、取り扱いに気を付けるようになりますし、同じ失敗はしないということが殆どです。
 危険であることは変わらないのですが、その危険の危ない理由を知ることで、危なくない使い方、あるいは危険回避の方法を学ぶことができるのではないかと思います。
 小さな危険を見守ってやり、大きな危険を防いでいくのも、危険なことをさせないという一つの方法なのではないかと思います。