非常用持ち出し袋や非常用備蓄品を準備しようと考えたとき、市販の情報誌や研修などでは「災害用の食料や水、消耗品などを備えなさい。ローリングストック方式の他に長期保存もできる災害用のものもありますよ」という感じの紹介をされることが多いです。
そして、災害用備蓄品として3年から5年は保存がきくものがたくさん出ていて、備えようと考えたときにはやはり長期保存できるもので作ってみようと考えるものです。
さて、あなたがこれから災害後、流通網が復旧するまでの命を繋ぐための非常用備蓄品を準備すると考えてみてください。
長期保存ができるもので食料を選んだときに、普段から食べ慣れているものがどれくらい含まれているでしょうか。
災害時などの非常時には、いかに普段の生活に近づいた環境を維持できるかが気力と体力を維持していく重要なポイントになります。特に食事はその傾向が顕著にあらわれます。
例えば、アルファ米は非常に軽くて保存もきく便利な食料品ですが、普通に炊いたお米と比べるとやはり違いがあります。普段から食べ慣れていればさほど気にはならないでしょうが、そうでない人は地味に気力が削られていくことになってしまいます。
アルファ米では無くて、無洗米を用意して普通のご飯を炊けるようにしておけば、災害前と同じものを食べることができることになります。
また、特有の臭いはありますが、普通のお米でも研がなくても食べられます。
いつも使うものを少し多めに買って在庫しておき、その在庫を入れ替えていくことで意識せずに常に新しい備蓄がある状態を維持することが可能になります。
これは「ローリングストック方式」と呼ばれている方法で、あまりお金をかけずに生活を守ることができるということで積極的に取り入れてもよいと思います。
ここで注意しないといけないことは、普段作っているおかず類に、たまにでよいので缶詰や乾物など保存がきくものを取り入れて使うということです。
おかず類が生鮮食料品だけで構成されていると、いざ流通が絶たれてしまったときに提供される缶詰や乾物がひどくひもじく感じてしまうものになって、気力が削がれてしまいます。週に1回くらいでいいですので、保存食品を使った1品を作っておくと、舌も慣れるし在庫もちゃんと入れ替わり、自分にあったお気に入りを見つけることもできると思います。
ところで、なぜ「災害用」飲料食は長期保存がきかなければいけないと感じるのでしょうか?
これは、今までの災害の経験値から来るものだと考えています。
災害時に配られる非常食や飲料水は会社や行政機関が緊急的に配布するもので、これらの品物が必要になるときは、一度に大量に必要になるためにすぐに準備することはとてもできません。そのため、大量に、長期間備蓄できるものが要求されていたということです。
であれば、わざわざ賞味期限は長いけれど値段が高くて忘れやすい非常食を備えるよりも、非常用持ち出し袋や非常用備蓄品を普段から食料品の置き場としておくことで、普段から意識して管理できるようになるのではないかと思います。
どんなものであれ、いつかは使えなくなる期限が来ます。せっかく用意した非常用持ち出し袋や非常用備蓄品ですから、意識して使うようにすることで期限切れを防ぎ、そしていざというときにさっと取り出して避難が開始できるような状態にしておくこと。
この考え方で備えていきたいものですね。
カテゴリー: BCP
コミュニケーションボードを準備する
避難所の運営で一番問題になってくるのは、コミュニケーションです。
避難者は普段から顔見知りの人ばかりでなく、旅行者や通りすがりの人、住んではいるが面識のない人、日本語がうまく通じない人、障害を持つ人などが避難してきます。
この人達とどのようにコミュニケーションを取ったらいいのでしょう。
日本語が話せる人であれば、会話することでお互いにどのように考えているのかわかることができると思いますが、日本語が話せない、聞き取れない人とのコミュニケーションは、次々に人がやってきて大騒ぎになっている状況ではかなり困難なのではないでしょうか。
だからといって、その人が理解できる言語で会話できる人を常に受付に配置することもかなり難しいです。
そのため、受付にはコミュニケーションボードを準備しておくことを勧めます。
このコミュニケーションボードというのは、最近あちこちで見かけるようになりましたが、簡単な行動や問い合わせ内容、ひらがな、数字、時計などを一枚のボードにして、それを指さすことでお互いの意思を確認できるという道具です。
このボードに地域で多い国の人の母国語も併せて表示させておくと、会話が通じなくても最低限の意思疎通ができることから、災害対策の一つとして各自治体や社会福祉協議会などで作成されています。
もちろん、文字が理解しにくい方もいらっしゃいますので万能ではありませんが、それでもこれを予め用意しておくことで会話が通じないというお互いのストレスを軽減させることができ、一度にたくさんのことをこなさなければならない避難所開設時には威力を発揮するのではないかと考えています。
また、避難所を開設してからのさまざまなお知らせも、音声だけでなく、大きく書き出して貼り出すことで、伝わらない、聞いていないというトラブルを防ぐことが可能です。
どのようなものかイメージがつかないという方のためにいくつかのリンクを貼っておきますので、自分の地域で使えそうなものを見つけて、試しに使ってみてもらえるといいなと思います。
タイムラインを作ってみよう
BCPを語る上で切っても切り離せないのが「タイムライン」と呼ばれるシナリオです。
これは災害の発生前から発生後復旧するまで時系列にあわせて対応を決めておくもので、いざというときに見落としがないように、そして優先順位を間違えないために作成するものです。
作るときに必要なのは「何について」「何を」「誰が」「いつ」「どのように」判断するのか、そして「そのための判断材料は何か」を決めることです。
先日、保育園様のタイムラインを一つ、防災担当の先生方と作成してみましたので、それを例に考えてみたいと思います。
1.「何について」決めるのか
今回は「運動会」について判断を決めることになりました。
運動会は、なるべく中止を防ぐために屋外と体育館での開催を毎回検討しておられます。
ただ、去年は迷走台風により開催の判断をするのに大変苦労した上、当日の朝に大雨が降ったので急遽開催を延期することとし、保護者の方から「もう少しなんとかならなかったのか」という意見が寄せられていました。
そこで、今回、試しにタイムラインを作成することにしました。
2.「何を」を決めるのか
ここでは中止の判断、及び屋外と体育館での開催決定のための判断基準を作ります。
3.誰が決めるのか
決定権保育責任者である園長先生が、主任先生や担任の先生と相談して決定することにしました。
4.「いつ」「どのように」決めるのか
1)中止の場合
まずは中止の判断です。
この保育園の運動会の開催時期は9月なので、季節柄「大雨・洪水」「台風」「光化学オキシダント」「高温」が想定されます。
気象については気象庁がさまざまな予報を出しています。「高温早期警戒情報」や「台風の進路情報」「早期注意情報(警報級の可能性)」は5日前から予報が出されています。
これらの情報が発表された場合には、速やかに保護者に「中止の可能性」について予め説明しておこうということになりました。
また、当日の天気がどうあれ「中止する場合には『前日の午前中』」に決定する」こと、保護者には「基本的にはお迎えの時に伝えるが、必要な人は前日昼以降のところで電話により保育園に確認をしてもらうこと」を周知することとしました。
2)開催の場合
開催の場合には中止の判断と同様、前日の午前中に「屋外」なのか「体育館」なのかを決定することにしました。
この判断には昨今突風でテントが飛ばされる事故が多発していることから、「大雨・洪水」「台風」「光化学オキシダント」「高温」に加えて「強風」を加えることにしました。
①体育館の場合
判断基準である前日の午前中の時点で「光化学オキシダント注意報」が発表されている場合、当日の状況を問わず体育館開催することにしました。
また、天気予報で雨天が予測されている場合、グラウンドコンディションが悪い場合には、同じく体育館開催とし、事前に異常高温注意報が発表されている場合には、時間を短縮した上で体育館開催としました。
②屋外の場合
気象条件やグラウンドコンディションに問題が無い場合には屋外開催とします。
ただ、突風が起きることがあるので、風が強くなってきたときには園児のテント以外は倒しておくことと、園児のテントは飛ばされないようにしっかりと支柱を固めておくこととしました。
それから当日の光化学オキシダント発生や異常高温時については、予め省略するプログラムを決めておき、時間を短縮して開催することにしました。
これらの判断には、気象情報に加えて空の霞ぐあいやちょっと離れた場所の工場の排煙の煙も利用することにしています。
5.情報の共有化
保育園の運動会では、保護者だけでなくそれ以外の園児の関係者も多数来られます。
そのため、判断基準についてはあらかじめ保護者にも伝えて心構えしておいてもらうことが大切です。
今回の話し合いでは、「運動会のご案内」をプリント配布する時点で判断基準について併せて保護者にお知らせすることにしました。
また、保護者が判断に困るような天気になりそうであれば、3日前に「開催の判断についてのお知らせ」を改めてプリント配布すること、運動会のプログラムに「演目の省略があるかもしれないこと」を記載することとしました。
保護者に限らずですが、明確な判断基準があることがわかると、ある程度の予測ができるようになり、それぞれが準備できるためにトラブルが防げます。
この判断基準でも「もっと早く判断して」というお話が出るかもしれませんが、そのときにはもう一度判断基準を見直していけばいいだろうということで、今回はこれでやってみようということになりました。
タイムラインは作るまでは結構大変ですが、一度作ってしまうとあとは修正ですみ、だれがやってもそんなに大きく判断がずれないというメリットがあります。
今回の話し合いでは「短い時間の大雨などで保育園の休園はどのように対応したらいいか考えてみたい」というご意見をいただきました。
ちょっとずつでもタイムラインを整備していくことで判断に迷うことなく行動を取ることができます。
まずはよく使うものを一つ文章化して作ってみてはいかがでしょうか。
連絡先は紙にも書いておこう
最近は携帯電話の普及で、電話番号を覚えていなくても簡単に電話をかけることができるようになっていますが、いざ災害が起きると、連絡先を覚えていないので連絡したくても連絡できないという状況に陥ってしまいます。
また、例えば110番や119番など、普段なら間違えるはずの無いはずの電話番号を間違えてかけてしまったりすることもあります。
そんなときに備えて、あらかじめ災害時に連絡したい人や連絡すべき先、緊急連絡先などを紙に書き出しておくことをお勧めします。
普段手帳をお使いであれば手帳のメモ欄や住所録に書き込んでおくのもいいでしょうし、無くすのが心配な人は外から見にくい場所に貼っておくのもよいと思います。
あるいは、非常用持ち出し袋や防災ポーチに小銭と一緒に入れておいてもいいのではないでしょうか。
大切なのは、大切な連絡先は複数の手段で保管しておくことです。
そうしておくことで、携帯電話を無くしたり壊したり、電池が切れてしまったときでも大切な人への連絡だけは可能になり、お互いにいらないストレスを貯めなくても済みます。
極限時だからこそ、間違い電話をかけずに済ませたいですし、大切な人に心配をかけたくないですから、連絡先の保管方法にも気をつけたいものですね。
復旧のための権限をどうするか?
行政機関は基本的に災害時におきたさまざまなことについて、自分のところで管理監督しようとします。
ですが、実際のところは時間が経過するごとに対応事項が加速度的に増えていきますので、そのうちに破綻して何も指示ができなくなり、結果的に地域の復旧が遅れて地域の崩壊も進むことになってしまいます。
ではどうすればいいのか?
復旧のための権限を、それに対応できるところにあらかじめ任せておくという方法は採れないでしょうか?
例えば、災害後の道路開削の権限を地域の建設業者に任せてしまうのはどうでしょうか?
災害時に優先して開削する道路を指定しておき、もし道路に何かあれば行政の判断をまたずに開削作業を行うようにしておくのです。
当然その必要性や妥当性については検証しなくてはいけないでしょうが、災害が起きたときに、指示を仰げなくなった場合でも予めの指示で開削作業を進めることが可能であれば、復旧支援がその分早く進められることになります。
また、避難所の開設についても行政からの指示ではなく、地元自治会や地元の自主防災組織に委ねておけば、いちいち連絡したり人員派遣をしなくてもすみます。
平時には集中している権限を、災害時にはそれぞれに任せてしまうことで、素早い対応が可能になるのではないでしょうか。
行政は災害時には全体的な情報収集に特化し、落ち着いてからは予算措置と復興、災害の検証に力を入れればよいので、そこまでの無理が生じないと考えます。
災害時に頼りになる自衛隊はどこで何をしてもらうのかについて細かい指示が必要になるとは思いますが、できる限り対応作業を自動化することで、少ない人数でもパニックにならないようにしておくことが、これからの行政には必要なことではないのかなと考えます。
さまざまな組織といろいろな形で協定を結んでいますが、その協定を元にして具体的にいつ何をしてもらうのかについても、自立的に動いてもらえるように約束をしておくことが重要かなと思います。
二つの避難
災害時における「避難」という言葉には二つの定義があります。
一つ目は、発生した災害から身を守るための「避難」。これは「一時避難所」「避難場所」「避難所」が該当します。
ただ、万能なものは殆ど無いのが実情なので、対応している災害によって行き先を使い分ける必要があります。
二つ目は生活環境を維持するための「避難」。これは災害後、何らかの事情により自宅が使えなくなっている場合に行う避難で、対応しているのは「避難所」のみです。
「一時避難所」や「避難場所」は災害が収まるまでの仮の避難先ですので、生活環境を維持するための避難は「避難所」に移動する必要があるのですが、大規模災害だと避難所に収容しきれないために、しばらくの間は一時避難所や避難場所、避難所の区別無く避難者が鈴なりというになってしまいます。
それでも状況が整理されてくると避難所への移動を順次行っていき、一時避難所や避難場所は本来の業務を再開していくことになります。
この二つの避難がごっちゃになっているので、避難者が避難所へ移動する場合にいろいろな騒動が起きることになり、避難者も行政も施設管理者も振り回されてしまいます。
命を守るための避難と、命を繋ぐための避難。
何も起きていない通常期にこの避難の違いを理解して、スムーズに避難ができるようにしたいものです。
蘇生法を知ろう
災害時に限らずですが、負傷者がいるときに考えるべきことは、可能な限り早く確実な手当ができるところ、例えば病院に輸送して手当を受けさせることです。
ただ、可能な限り早くといっても本格的な手当が開始されるまで何もしなければ生存率は格段に下がってしまいますので、それまでどのようにして命を繋ぐかということを考えておく必要があります。
大きな出血があれば止血し、心肺停止していれば心臓マッサージや人工呼吸を行うことで、大けがをしている人の生存率を格段に上げることができます。
今回は、その方法について書いてみたいと思います。
ただ、最初にお断りしておきますが、止血処置や心臓マッサージ、人工呼吸を行うには正しい知識と正しい訓練が必要です。これには消防署や日本赤十字社が行っている救命講習を受講することが早道です。
それぞれの救命処置も時代によってどんどん変化していきますので、できれば年に1回程度定期的にどこかで受講して、知識を更新されることをお勧めします。
1.処置にかかるまでの準備
(1)まずは安全確保
負傷者がいる場合に最初に気をつけないといけないのは、まずは自分の安全です。救助者が被災しては何にもならないので、まずは安全な環境かどうかを確認します。
負傷者がいる場所が危険であれば、まず安全な場所へ移動させてからの処置となります。
(2)負傷者の全身の状態を確認する
どのような怪我をしているのか、呼吸や反応はあるかを観察します。大規模な出血などがある場合には、止血処置を優先するかどうかなどもここで考えます。
(3)意識の確認をします
顔を近づけて肩をたたき、耳元で大きな声で「大丈夫ですか!」と声かけをします。3回もやると、意識があればなんらかの反応が返ってくるので、反応がない場合には意識がないと判断します。
(4)支援者を呼ぶ
周囲に人がいれば、依頼する人を特定して119番通報とAEDの搬送を要請します。このときに、「救急車を呼んで」ではなく「119番通報してください」というように具体的な行動指示を行うようにしてください。
「○○さんは119番通報してください」「そこの赤いシャツの人はAEDを○○ストアから持ってきてください」といった感じです。
(5)呼吸の確認
胸及び腹の動きを観察します。呼吸があれば上下運動しているはずですので、それがなければ呼吸を停止していると判断します。
一般的には呼吸停止していても、しばらくの間心臓は動いています。心臓が動いていても心臓マッサージは問題ないという所見が出ているそうなので、「呼吸停止=心停止」と判断してよさそうです。
意識がなくて呼吸がある場合には、舌や吐瀉物で気道がふさがるのを防ぐため、頭と体を横向きにします。可能であれば頭に枕をするとよりいいでしょう。
2.処置の優先順位
放っておくと死んでしまう危険性の高いものから処置していきます。
出血と心肺停止の場合だと、まずは心臓マッサージと人工呼吸を行います。ただし、大量に出血していたり、心臓マッサージするたびに血が噴き出すような状態の場合には、止血を優先します。
可能であれば、止血処置と心臓マッサージ及び人工呼吸は同時並行で実施できればより生存率が高まります。
3.処置の方法
(1)心臓マッサージ
胸骨の下部分を押します。30回一セットで、手の腹の部分を使ってしっかりと体重をかけて押さえるようにします。圧迫の深さはおよそ5cm。少々のことではこの深さまでは押さえられないので、しっかりと圧迫してください。
1分間に100~120回のペースで行うのですが、わかりにくい場合には、「もしもしかめよ~♪」の歌を歌いながら行うとちょうどよいリズムで、1番が終わるとちょうど30回の心臓マッサージができています。
(2)人工呼吸を行う
意識がない場合、全身の筋肉が弛緩しますので舌も喉の奥に垂れてしまって気道を塞いでしまうことが起きます。
そのため、気道確保が必要となります。あごをしっかりと持ち上げ、鼻の穴を押さえて、負傷者の口を塞ぐように口を合わせて胸が膨らむ程度に息を吹き込みます。
あまり一気に吹き込むと肺がパンクすることがありますので、吹き込む量には気をつけてください。
これを2セット行い、そのあとは再び心臓マッサージを行い、人工呼吸を繰り返すことを続けます。
(3)AED
心停止の際には心室細動が伴うことが多いですので、それを排除しない限り心臓が自律的に拍動を再開してくれる可能性は低いです。
その心室細動を排除するのがAEDという機械で、だれでも使えるように可能な限り自動化がされています。
最近のAEDはふたを開けると同時に自動で起動し、処置の方法を1から説明してくれますので、その指示に従って作業を行います。
ただ、使用するに当たっては以下の点に気をつけてください。
①胸の周りが濡れていないこと。濡れていれば水気を拭き取ること
②湿布薬などが貼られていた場合には剥がす。
③ペースメーカーが入っていないか確認する。もしあれば右胸のところに凸があるので、パットはそれを避けて貼る。
④ネックレスなどの金属装身具はパッドに触れないように気をつける
⑤パッドは素肌に装着しなければ効果がないが、装着した後はなるべく上にタオルなどをかけて周囲の目にさらされないようにすること
AEDのパッドは外装袋に貼る場所がイラストで描かれています。心臓を挟むようにパッドを貼り付ける必要があるので、最悪の場合心臓の上と下にパッドを貼り付けても効果があります。
また、パッドは濡れてしまうと効果を発揮できなくなります。その場合、AEDには予備のパットが入っていますのでそれと取り替えてください。
注意点として、AEDにおける小児とは未就学児を指します。6歳以上は成人モードで使うことになりますので気をつけてください。
それからAEDについているパッドが小児用の場合、大人に貼り付けても電圧が足りない場合がありますので、パッドは大人用を使ってください。小児に大人用パッドを使うのは問題ありません。
AEDは一度装着したら外しません。そのまま救急隊に引き継ぎます。つけられたAEDは負傷者の心電図などのさまざまな情報を持っていますので、それを救急隊や病院が活用します。
使用後は戻ってきますので、パッドを交換して次の利用に備えてください。
(4)止血処置
止血処置を行うときは、二次感染を防ぐためにあらかじめビニール手袋やビニール袋などを手に被せ、直接出血部位に手を触れなくてすむようにします。
止血処置の方法は、次の3つがあります。
①直接圧迫止血法
傷口に清潔なハンカチやタオル、ガーゼなどを直接当てて手のひらで傷口を圧迫する方法です。傷口を心臓よりも高い位置にして行えば、より止血効果を期待できます。
止血処置の基本となる方法です。
②関節圧迫止血法
傷口より心臓に近い動脈(止血点)を圧迫し、血の流れを止めて止血します。
直接圧迫式の準備や処置をする間、流血を押さえるために行うものです。
③止血帯止血法
直接圧迫止血法では止められないような大量の動脈性出血の場合、手足に限ってですが最終手段として止血帯を使った止血方法があります。
これは傷口よりも心臓に近い部分の動脈上に布を当て、布の上から止血帯を巻きます。その止血帯の結び目に棒を差し込み、血が止まるまで棒を静かに回して棒を固定します。
そしていつ止血を開始したのかがわかるように「止血開始○時○分」と外れないようにつけておきます。
この止血帯止血法は非常な痛みを伴いますので、せいぜい20分程度しか持ちません。20分たったら一度緩めて細胞の壊死を防ぐようにしてください。
止血帯止血法を取った場合は、大至急処置のできる医療機関へ搬送します。
4.処置を止めてもよいとき
基本は救急隊が来るまで心臓マッサージ、人工呼吸、AEDを維持する必要がありますが、次のような場合には処置を止めます。
(1)生き返ったとき
当然のことですが、生き返ったときには心臓マッサージと人工呼吸は不要です。ただ、医療機関への受診は必要ですので、AEDはつけたまま、救急隊の到着まで安静にさせてください。
(2)救急隊に引き継ぐとき
救急隊が到着すると、救急隊員から作業の指示があります。そこで救急隊員に引き継いだ場合には、処置は終了となります。
(3)自分の安全が確保できない状態になったとき
災害現場で救助者の命が危険にさらされているような場合には、まず自分の安全の確保をしてください。一緒に遭難しては元も子もありません。
5.その他
心肺停止に対応する場合、AEDはかなり重要な要素となりますので、普段からAEDが備え付けてある場所を意識して確認するようにしましょう。
勝負は5分以内です。
また、知識はあっても練習してみないことには本当はどうなるのかがわかりません。
消防署や日本赤十字社の救急法講習を積極的に受講して、意識すればきちんと体が動くようにしておきたいものですね。
なお、ある程度の人数が集まれば講習会を個別開催してくれる場合もありますので、詳しくはお近くの消防署や日本赤十字社の各支社にお問い合わせください。
避難カルテを作ってみよう
益田市では先般新しいハザードマップが配られました。いろいろと新しい情報が追加されているので、これを利用してあなたの避難カルテを作成してみませんか?
避難カルテというのは、避難に関するいろいろなことを一枚の紙にまとめておくもので、いざというときにこれを見るだけで避難すべきかどうかやどの経路を使って避難すればいいかなどがわかって慌てなくてすみます。
今回は、高知県黒潮町で作られている避難カルテを参考に、順番を追って避難カルテができるように説明をしていきたいと思います。
1.まずは書式を印刷します。「避難カルテ」の書式を用意してみました。これをプリントアウトしてください。
2.最初に家族構成を記入します。世帯の全員の名前、性別、年齢、自力避難ができるか否か、家族の力で避難できるか否かを記入します。また、避難場所までの避難方法を決めておきます。原則は徒歩ですが、場所によっては自動車やバイク、自転車でないとたどり着けないことがあるかもしれませんし、移動するのに自力では難しい場合、例えばシニアカーや車いすといった避難手段を記載しておきます。
3.自宅の情報を確認します。いつ建てられたのか、耐震診断はされているか、耐震補強はされているか、家具は固定されているかを記入します。また、ハザードマップを確認して危険と思われる災害を確認して書き出しておきます。
4.避難するときの情報を記入します。避難場所欄に名前を記入し、その避難場所がどのような災害に対応しているのかを確認して書き写します。
予想される災害に備えるため、複数の避難場所を決めておきましょう。また、家からそこまでの避難訓練をしている場合には、いつ頃、どれくらいの時間がかかったかも記入します。
5.近所で助けてくれる人を洗い出しておきます。助けてくれる人の名前と連絡先を書き出しておきます。
6.次に住宅地図を用意します。googleやyahoo!などの地図を自宅と避難所及び避難所までの道がわかるように印刷をします。
7.6の地図に、ハザードマップを参考に浸水地域や土砂災害警戒区域などの危険箇所を記入していきます。
8.自宅から避難場所までの避難経路を8で作った地図に記入していきます。その際、7で記入した危険箇所は避けるような経路を作ってください。また、可能であれば避難経路は複数作っておいた方が安心です。
9.作成した地図を元に実際に歩いてみます。避難経路を自分がきちんと歩けるか、目で見て危険な場所や危険なものはないかを確認し、あれば地図に記入してきます。
10.もう一度地図を見直して、安全と思われる避難経路を確認します。その上で、一度自宅から避難所までの移動時間を計ってみます。
11.移動時間を4で記入した避難所の「避難所までの所要時間」に記入してください。
以上で避難カルテは完成です。年に1回は内容を確認し、記載する情報を更新してください。
また、これに非常用持ち出し袋や非常用備蓄品などのリストもつけておくと、一度に確認ができて便利ですよ。
是非一度作ってみてくださいね。
家族の集合方法を確認しておこう
災害というのはいつ何が起きるかわかりませんので、それに対する備えはしておかなくてはなりません。
今回は家族がバラバラなときに被災した場合どうするかについて考えてみたいと思います。
考えてみれば、いつも家族が一緒にいるわけではありません。避難訓練の時はみんな一緒でも、通常は仕事や学校、買い物やお出かけなどでそれぞれがバラバラな行動をとっていることが非常に多いのではないでしょうか。
そんなときに災害が起きたら、あなたはどんな風に家族と合流しますか?
まず、一番に自分が生存していることを家族に知っておいてもらわないといけません。
以前に少し触れましたが、携帯電話や公衆電話などの通信手段がある場合には災害時伝言ダイヤルの171番に自分の生存報告とどこへ避難するかを吹き込んでおくようにします。
また、音声回線がうまく繋がらない場合には、web171や携帯電話のキャリアが提供する災害時伝言板にメモを残すようにします。いずれにしても、鍵となる番号をあらかじめ決めておかないとメモやメッセージがうまく家族で共有できないことになりますのであらかじめ決めておいてください。また、LINE等のSNSも有効ではありますが、その場合には不急なメッセージのやりとりは事態が落ち着いてからにしてください。
次に連絡がつかなかったり、通信手段がない、もしくは失った場合に備えて、自宅のどこかに生存報告とどこに避難しているという貼り紙を貼るようにします。
空き巣などの不埒ものに備えて、玄関などの見える場所ではなく、家族でないとわからないような場所を決めておきましょう。
最後は、連絡がつかない、書き置きもできないような状況が起きた場合に備えて、集合場所と時間を決め、無事な場合にはそこにその時間こら一時間待つというルールを作ります。
こうすれば、通信手段を失い、家が跡形もなくなっていたとしても、その時間に集合場所にいけば家族がいるかもしれないという希望を作り出すことができます。
約束した時間以外は好きなように動けるので、例えば 避難所巡りをしたり、病院巡りをしたりといった行動を気兼ねなくすることもできます。
いくら手段があっても困るものではありませんから、どのようにするのかを家族しっかりと話し合って、災害にあったときでも素早く会えるようにしておけるとよいですね。
離れて住む家族のために「逃げなきゃコール」を活用しよう
住民避難は各自治体ともに悩ましい問題となっています。なかなか全戸に声をかけて回れるだけの人手がありませんし、声をかけたからと言ってスムーズに避難してもらえるというわけでもないからです。
ただ、さまざまな災害で避難を判断した理由の上位には、毎回「家族・近所の人の声かけ」が入っており、知っている人による「避難しよう」という声かけが判断に対する重要な要素を占めていることがわかっています。
そこで、このたび国土交通省が中心となって「逃げなきゃコール」を登録しようというキャンペーンを実施することになりました。
これは、「NHKニュース・防災」 「Yahoo!防災」 「au登録エリア災害・避難情報メール」で可能になっている地域指定を利用し、離れた場所に住んでいる家族の地域を指定しておくことで、いざ避難情報が発令されたときに家族から避難を呼びかけてもらおうという取り組みで、家族間でお互いを気にかけることにより、早めの声かけと避難を促そうというものです。
また、「避難して!」と言われて避難したら「避難したよ」と返事をするでしょうから、被災後の混乱の最中にわざわざ生存確認をしなくても済むことになり、関係する全ての人が助かります。
もし離れて住む家族がおられるなら、お好みの上記の3つのアプリをスマートフォンに入れておいて、家族同士でいざというときに備えておくといいですね。