災害訓練とゴミ

 災害対応訓練を一般の方向けに実施すると、結構な割合で炊き出し訓練がくっついています。
 その時には、基本的に使い捨て容器が使われるわけですが、この処分の方法が可燃物も不燃物も容器包装プラスチックもごっちゃになっていることが非常に多くて、ちょっと首を傾げてしまいます。
 確かにゴミの処理というのは大変ですし手間もかかり、燃やせるものは燃やしてしまえという考え方もわかります。
 ですが被災後のゴミは、そうでなくても膨大で多岐に渡るものが出ますから、分別できるものはできるだけ分別しておく必要があるのではないでしょうか。
 水を大量に使うことができないからといって発泡プラ容器で食事を提供し、そのまま燃えるゴミというのはよくある例ですが、そこまでリアルさを追求するのであれば、食器にビニール袋やラップなどを掛け、それらを使うことで食事後のゴミを減らすところまでしてもよいのではないかと思っています。
 訓練以上のことをできる人は殆ど居ませんから、訓練の時にこそ、ゴミをなるべく出さない、ゴミを減らすような練習もしておくといいと思います。
昨今は新型コロナウイルス感染症関係であまり炊き出し訓練はされていないようですが、もしされることがあるのであれば、ゴミの省力化まで考えて訓練することをお勧めします。

避難所の開設・運営方法を確認しておこう

 島根県では、避難所を開設するのは市町村が基本になっているようですが、災害時には職員でないと対応できない事が加速度的に増えていくので、災害時にあってはできる限り地域にお任せしたいところだと思います。
 本当は平時から避難所運営委員会を立ち上げて誰がどのような権限をもって何をするのかをしっかりと決めておきたいところですが、地域コミュニティがしっかりしているところばかりではありませんので、それを決めるところに至るまでが大変なようです。
 ただ、避難所の設営や運営について具体的にどのようなことをするのかについては、ぼんやりとしたイメージしかないのではないでしょうか。
 勘違いしがちですが、避難者はお客様ではありませんので、避難所の運営や維持について自分たちで出来ることは当然自分たちでやらなければなりません。
 避難所の開設手順や運営については、さまざまな地方自治体がマニュアルと設定していますが、今回はいろいろと見た範囲で筆者がわかりやすいと感じた千葉市の避難所開設・運営の映像をご紹介したいと思います。
 避難所の開設基準やトイレの状態、備蓄品の状態などはさまざまな自治体ごとに異なりますので全てがその通りになるわけではありませんが、必要な手順はきちんと触れられていて一通りの流れが理解できると思いますので、よかったら参考にしてください。

「避難所は住民の力で ~目で見る避難所開設・運営の流れ~」(youtubeのchibachityPRに移動します)

地区防災計画ってなんだ?

 最近防災界隈で騒がれているのが、いかにして地区の防災計画を作ってもらうかということです。
 国の防災計画と、都道府県や市町村が作る地域防災計画はあるのですが、これだけでは日本に住む全ての人が安全に避難をすることができるわけではありません。
 そこで、地区防災計画を当事者である住民に作ってもらおうというのがこの話のスタートなのですが、どうもここで規定されている地区を誤解している人がいるようなのでちょっと確認しておきたいと思います。
 ここに出てくる地区とは、例えば自主防災組織や自治会といったものではありません。もっと小さな単位、例えば集合住宅や、場合によっては各個人ごとに作る防災計画もこの「地区」に該当します。
 避難する判断や生き延びるための判断、避難先や受援方法などは、あまりに大きな単位だと条件が違いすぎて全く機能しません。
 より現実的に動かすためには、もっともっと小さい単位で同じような条件の人達を集めてその場所の防災計画を作ることが必要だと考えられているので、ここで出てくる「地区」というのは「地域よりも小さい単位」といったイメージで思ってもらえればいいと思います。
 そして、自分や近所の人がどのように行動するのかを定義することが、この地区防災計画の肝となるのです。
 その場所の災害事情はその場所に住んでいる人にしかわからないということがあります。そのため、その地域に住んでいる人達に自分が助かるための計画を作ってもらい、それを地域防災会議を経て地域防災計画に織り込んでいく。
 そのようなイメージで作るのが本筋です。
 行政機関によっては、自主防災組織や自治会などの単位で作らせようとしている動きもありますが、それでは結局地域防災計画の焼き直しになってしまい、行政が決めたルールの責任を地域に押しつけることにしかなっていません。
 基本はあくまでも小さな集団です。当研究所のある地域では自治会の組、つまり同じような地域条件で生活している5~10世帯を基本単位として作るくらい。
 お隣同士でも条件が異なるのであれば一緒にせず、それぞれに防災計画を作ることになります。
 正直なところ、個人の防災計画とどう違うんだという疑問はありますが、隣近所で話をしてみんなで行動することで逃げ残りや危険な目に遭う人を無くすことができるようにという意図もあるようです。
 お正月、ご家族や親戚が集まるこの機会に、あなたの防災計画についても見てもらって、助言をもらってみてはいかがでしょうか。
 そして、お正月が終わったら、ご近所の方と防災計画について話し合って、より安全に災害を乗り切れるようにしておくといいと思います。

みんなでつくる地区防災計画(内閣府のウェブサイトへ移動します)

みんなでつくる地区防災計画(日本防災士会のウェブサイトへ移動します)

大地震の予測と占い

 大地震が来る可能性の予測や「大地震が〇月〇日に起きます」といった占いなどが出される度に「来るぞ」といった風潮になるのが不思議で仕方ありません。
 大地震の予測は、あくまでも起きる可能性があるということで、地震の起きる確率を〇〇%と出してはいますが、0%でなければ起きるかもしれないと思えばいいだけの話で、例えば30年以内に70%の確率で大地震が起きるといっても、30%は起きないかもしれないのですから、そんなに神経質になる必要はありません。
 ただ、起きるとわかっているのですから、耐震補強や逃げる準備などは当然やっておかなければいけないはずなのですが、騒いでいる人達は案外と備えていないのではないでしょうか。
 「また外れた」といって喜んでいる人もいますが、まずはご自身の備えを確立して、その上で怖がったり喜んだり楽しんだりしていただければと思います。
 日本列島に住んでいる以上、地震はどこにいても必ず遭遇します。規模の大きなものに出会う可能性も高いと思います。
 ここまでさまざまに「起きる!」と言われているのですから、起きた後の「想定外」はあり得ません。
 自分自身が生き残り、生き続けることができるための備えを、きちんとしておくようにしてください。

避難所は健常者しか避難できない

 大規模災害が長期化すると、避難のための場所が生活のための場所に変わります。
 そういった避難所でよく観察してみると、避難している方がほぼ健常者だということに気付くと思います。
 妊産婦や赤ちゃん連れ、身体やこころに病気を持っている人を見かけることはほとんどないと思います。
 避難所で過ごす人達は、災害前の生活と比すと自分の思ったようにならないことから大なれ小なれこころに不満や不安を持っています。
 それが自分の常識の外の事態に出会うと、その対象者に対して言葉や物理的な暴力が振るわれ、危険を感じた人は避難所から退去することになります。
 例えば、乳児は泣くことでしか自分の意思を伝えることができません。おなかが空いたり、おむつが濡れているだけでなく、不安を感じたときにも大声で泣くのです。
 その泣き声は、普段鳴き声に接することのない人の耳にはものすごく耳障りに聞こえ、なかでも不満や不安を押し殺しているような人にとっては格好の攻撃材料になってしまいます。そしてそれが続くと、乳児を持つ親は危険を感じて退去することになり、それが続く結果、避難所は健常者だけになってしまうのです。
 同じ事が障害をもつ方にも言えます。結果として、本来は避難が必要な人が避難所を追い出され、避難しなくても生活できる人が避難所を占拠するという困った状態になるのです。
 現在避難レベル3で高齢者や障害者、乳幼児などを持つ親は避難するようになっていますが、そういった人達は避難準備を始めてから避難ができるようになるまでに時間がかかります。
 そして避難所に避難したときには健常者で溢れていて入れないということもよく起きます。
 そのため現在福祉避難所を避難所開設と同時に設置して支援が必要な避難者を専門に受け入れるような整備が進められているのです。
 地方自治体の中には、この福祉避難所の設置が地域に混乱をもたらすと消極的だと聞きますが、役割をしっかりと決めて説明しておくことで、無用な混乱が起きることは防げると思うのですが、あなたはどう考えますか?

やってみないとわからない

 「訓練しなくても理解しています」といわれる方がそれなりにいます。
 話を伺うと、確かに回答は具体的ですし、マニュアルは頭にきちんと入っています。
 面白いのは、そういった人に訓練の一コマをやってみてもらうと首をひねるが多いこと。
 「こんなはずでは・・・」と言われることが非常に多いです。
 例えば、消火器の使い方で見てみます。
消火器は、
1.上部の安全ピンを外す
2.ホースを火元へ向ける
3.放射レバーを押し込む
 これで消火器は仕事をしてくれます。
 でも、実際にやってみてもらうと、この手順に入る前に消火器の重さに驚く人がいます。
 他にも消火器を抱えて運ぶときに落としてみたり、消火器の操作をど忘れしてしまう人、ホースの押さえる場所を間違えて見当違いの方向に薬剤を散布する人など、頭で理解していても実際に動いてみるとずいぶん違うのです。
 訓練は、意識しなくても身体が動くように動作をたたき込むことが目的ですが、理解していてもそれだけでは行動はできません。
 何事もやってみないとわからないのです。
 例えば、とある場所の避難所設営訓練で妊婦さん用に用意された休憩用テントの入口が狭く、かがまないと中に入れませんでした。
 実は妊婦さんはかがむのが難しいのですが、男性だけでなく、妊娠・出産を経験した人でさえもそのことに気付いていなかったのですが、たまたま訓練に参加していた妊婦さんがそれを指摘し、その後立ったまま中に入れるテントに変更したということがありました。
 これらも、実際にやって該当する人が実際に体験したからこそわかった問題です。
 頭の中や図上で考えてみることには限界があります。
 組み立てて設計をしたら、実際に訓練をやってみること。それにより、本番のときに必要なものを確実に使うことができるのではないかと思います。

公衆電話の位置を知っていますか

 携帯電話(スマートフォン含む)は、恐らくあなたも含めて多くの人が持っていると思います。
 では、あなたの身の回りでどこに公衆電話があるか思い出せるでしょうか。
 また、公衆電話の使い方はご存じですか。
 災害などで停電が長引くと、携帯電話の電波の中継を行っている携帯基地局の電源が喪失され、携帯電話がつながらなくなります。
 携帯電話の普及で殆ど姿を見なくなってしまった公衆電話ですが、災害発生時には有線回線のため、基地局の状況に関係なく電話をかけることが可能です。
 また、公衆電話は大災害などで一度に大量の通信がある地域に集中したときに行われる通信規制の対象になりにくい特徴も持っています。
 いざというときに非常に頼りになる存在ではあるのですが、携帯電話の普及で公衆電話を使う人が激減したため、災害対策用に置かれているものを除いて、殆ど見かけることがなくなってしまいました。
 とはいえ、大規模災害時の携帯基地局の復旧にはある程度の時間がかかりますから、公衆電話というのはそういったときに自分の状況を被災地外へ伝えることのできる有力な手段となります。
 NTT西日本では、お住まいの地域の公衆電話の設置場所を地図にしたものを公開しています。
 あなたが作る防災マップやご自身の防災計画の中で、いざというときに備えてお近くの公衆電話の位置も把握しておくと便利です。
 そして、10円硬貨と公衆電話の使い方も身につけておくと、いざというときに困らなくて済むと思います。

公衆電話設置場所検索(NTT西日本管内)(NTT西日本のウェブサイトへ移動します)

公衆電話設置場所検索(NTT東日本管内)(NTT東日本のウェブサイトへ移動します)

「お・は・し・も」を考える

 避難訓練のときに良く言われているのが「お・は・し・も」というキーワードです。
 「おさない」「はしらない」「しゃべらない」「もどらない」の頭文字で、避難のときに気をつけるべき行動を並べているのですが、これは屋内避難の時に気をつけることだということがあまり理解されていないのかなという気がします。
 「押さない」は屋内でも屋外でも押されれば危ないですから危険なことはわかると思います。「戻らない」も、安全確保できたらわざわざ危険な場所に出向くことはないわけで、危険な場所にわざわざ戻る必要はないということはご理解いただけると思います。
 問題になるのは、「走らない」と「しゃべらない」。
 屋内では階段や出入口などで人が滞留しますが、その時に走ってくる人がたくさんいるとぶつかったり押したりすることになって将棋倒しになる危険性があります。
 また、屋内で火事から逃げる場合には、一酸化炭素を始めとする有毒なガスを体内になるべく取り込まないように、呼吸は浅く、行動は急いでとなります。ここで走ると息を大きく吸い込むことになるので危険です。
 次に「しゃべらない」。これも火災や屋内の場合には有毒ガスの吸い込みを防いだり、避難指示をきちんと聞き取るためにもできるだけ静かに移動した方が安全を確保できます。
 ですが、津波からの避難となると、なるべく大声で津波が来ることと避難を呼びかける行動をしたほうが多くの人を助ける行動に繋がります。
 「お・は・し・も」に限りませんが、状況に応じて正解は変わりますし、場合によっては正解がない状況も起こりえますので、言葉にとらわれず、その場その場でできる限り自分の命を守るための行動が取れるような判断力をつけるようにしたいですね。

まずは身の安全の確保から

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です

 地震のようにいきなり事象が発生するような災害の場合、まずは身を守る行動をとることが最優先になります。
 「身を守る行動」、というのは「怪我をしないための行動」ということで、例えば学校の教室などの場合には机の下に隠れたり、落下物が落ちてこないような場所に退避したりといった行動になります。
 建物が崩れる可能性が高いようであれば、揺れたら建物から脱出するような経路の確保や一部だけでも崩れないように補強するなどの方法を考えておかないといけません。
 とにかく基本は怪我をしないことですが、興奮していると大きな怪我をしていても気がつかないような場合がありますので、本当に怪我していないかどうかを、目と手での接触によって確認しておきましょう。
 地震の避難訓練では、想定した揺れが収まったらすぐに避難開始としているような場合が多いと思いますが、まずは自分の身体の怪我の確認、そして周囲の人の怪我の確認、それから避難という流れにできるといいなと思います。
 もちろん崩れそうな状態や危険な状態の場所では、まずは避難して身体の怪我の確認をするといった風にTPOにあわせた対応が必要になりますが、身の安全の確保としての怪我の確認、できるだけ習慣にするようにしてくださいね。

【活動報告】小学校の避難訓練の様子を見学させていただきました

 去る10月26日に益田市立高津小学校の避難訓練の様子を見学させていただきました。
 避難訓練の見学自体はこれで3年目となりますが、年を追うごとに動きがよくなってくるなと感心しています。
 今回の想定は地震から津波発生で高台への避難という想定。
 地震の緊急速報を流し、安全点検を行った上で校庭に避難、その後近くの翔陽高校へ避難という流れです。

小学校の周囲には歩道が殆ど無く、あっても幅が狭いため普段から安全確保は大変


 6年生は1年生の手を引いて移動するのですが、歩道のない狭い歩行者ゾーンを並んで小走りな移動はかなり気を遣って大変そうでした。

交差点や横断歩道など、流れがまっすぐでない場所はどうしても人が滞留して危険


また、途中で交通量のそれなりにある道路を横断する必要があるため、本番ではちょっと危険になるかもしれないと感じた場所もありました。
参加していた子ども達は真剣に取り組んでいましたし、先生方もかなり真剣に訓練に参加されていました。

避難訓練の講評を聞く。次回に活かせるような仕掛けが必要


 いくつかの課題や気になった部分、ご質問などがありましたので、それは後日報告書として提出させていただくことになっています。
 避難訓練は誰でもできる簡単な訓練ですが、簡単なだけに馬鹿にしてしまうことも多く、成功することが目的になっている場合も多々あります。
 訓練以上のことは本番では殆どできませんので、引き続きしっかりと訓練していただければ名と思います。
 今回、避難訓練の見学を許可してくださった校長先生始めとする先生方、そして訓練を一生懸命していた子ども達に感謝します。
ありがとうございました。