箱わな、どんなものが来る?

 箱わなはわなの中では取り扱いがしやすく、比較的安全な捕獲道具です。
 そのため、ホームセンターでも小型の箱わなはよく売られているのですが、野生動物を捕獲するのは、原則として有害駆除の許可が必要だということは覚えておいてください。
 ただ、悪さをするから捕獲しようとして箱わなを仕掛けても狙っている動物がかかるとは限りません。多くの場合、関係ない生き物がかかってしまって、箱わなから追い出すのに苦労することになります。
 小型動物用の箱わなだと、よく引っかかるのはネコ。蓋が閉まっているのでしめしめと思ってみたら、不機嫌な猫がいたというのは、小型動物用の箱わなをかけたことのある人なら経験があるのではないでしょうか。また、箱わなを仕掛けるときには、中に誘導するためにエサを撒きますが、下手にこれをすると単なる餌づけになってしまうことがあることも悩ましいところです。


 現在運用しているイノシシ用の箱わなは結構大きなものを使っているのですが、ここひと月ではタヌキ、アナグマ、アライグマ、からす、スズメ、テン、そして野ウサギが来ていて、肝心のイノシシは影も形も見えません。
 狙っている獲物を捕まえるのは相当難しいということと、寄せないように防除をするほうが結果的に簡単なことも多いということを知っておいてほしいなと思います。

イノシシと豚熱

 昨年の年末くらいから、仕掛けている檻にイノシシが寄らなくなりました。
 猟師とイノシシはお互いにいかに捕まえるか、捕まらないかを競っているので、檻にかからないのは仕方がないのですが、イノシシの姿が見えなくなったのです。
 当研究所が現在檻を仕掛けている場所は普段からさまざまな動物が行きかう交差点のような場所ですので、つかまらないにしても姿を見ることは多いはずなのですが、まったく姿を見せなくなったのです。
 聞いてみると、地元が豚熱の流行地域に入ったとのことで、捕獲されたイノシシのうちの7割が豚熱陽性の反応が出ているらしいとのこと。
 豚熱は豚やイノシシにかかる病気ですが、これが地域のイノシシに蔓延しているらしく、あちこちでイノシシの死骸があり、行政機関への通報が続いているそうです。
 地域からイノシシがいなくなると、有害捕獲をしている方としては助かるのですが、ジビエとして有効活用しようと考えている場合には非常に困ったことになります。
 捕獲されたイノシシは、現在全頭検査されて豚熱が陰性なら肉として使うことができるそうですが、7割が陽性だと、捕獲しても肉として売れずに処分の経費だけがかかるというリスクが大きいことになってしまいます。そのため、猟師さんもオリの稼働を止めている状態だそうです。
 猟師自体の高齢化もあり、仮に数年後に豚熱が収まった後、イノシシの捕獲をするための技術が失われてしまうのではないかという懸念はありますが、とりあえず被害がでなくなったことは喜ばしいことなのかなとは思っています。
 ただ、通常はある動物がいなくなると他の動物がその立場にとって代わることが多いですので、イノシシがいなくなった後に何が悪さをするのかというところが気になるところです。

虫対策と救急用品

 暖かくなってきてさまざまな虫が登場する季節となってきました。
 自分の家であれば何らかの虫対策をしていると思うのですが、災害後の避難所では、この虫対策は結構深刻な問題になります。
 避難所となる施設に網戸があればいいのですが、学校の体育館等にはそういった虫よけの装備を持っていない施設もたくさんありますし、持っていても災害で壊れてしまっている場合もあるでしょう。
 そうすると個人での虫よけ対策を行うことになるのですが、避難時に持って出る非常用持ち出し袋などに虫よけを入れている人がどれくらいいるのかと考えてしまいます。
 救急用品に入れるものとして、虫よけと虫刺されの薬は入れておいた方が安心だと思います。避難所によっては蚊取り線香を焚いたり、虫の寄らないスプレーを出入口に撒いたりすることもあるのですが、体質的にそういったものがダメな人もいるので、最終的には個人的な装備に頼ることになります。
 また、虫刺されの薬も避難所に置かれていないことの多いアイテムの一つですので、一緒に準備しておくといいでしょう。
 非常用持ち出し袋の救急用品には何を入れるのかについてはいろいろと考えることも多いのですが、普段は気にならないようなそういった部分も考えて準備しておくといいと思います。

【お知らせ】国内希少野生動植物種に新たに15種が追加されます

 絶滅の恐れがある野生動植物の種の保存を目的として、環境省が捕獲・採取や譲渡、販売などを禁止している「国内希少野生動植物種」は最近追加される動植物が増えてきていますが、この1月11日から新たに15種追加されることになりました。
 有名なものではゲンゴロウと二ホンザリガニが入っています。
 二ホンザリガニは北日本以北に生息しているのですが、もともと数が減っているのが心配されていたものなので妥当だと思いますが、ゲンゴロウの追加が意外な感じがしました。
 考えてみると、昔は普通に畔や溝、川や池などでよく見かけていたタガメもすでにこの国内希少野生動植物の一つになっています。
 護岸や圃場整備で土がなくなっていることや、さまざまな生物が生息できなくなっていることを考えると、肉食昆虫であるゲンゴロウも数が激減していくのは予測がつく話です。
 このままいくとどうなるのかなという気がしますが、割とその辺にいたゲンゴロウも絶滅するかもしれない種に入ってしまったのが驚きです。
 ゲンゴロウの全ての種類が対象になっているわけではないようですが、ゲンゴロウを捕まえるときには種類をしっかりと確認したほうがよさそうです。
 ちなみに、指定後にこれらの国内希少野生動植物種を許可なく捕獲・採取などした場合には、個人で5年以下の懲役または500万円以下の罰金、法人では1億円以下の罰金となっていますのでご注意ください。
 また、ネットオークションやネット販売などで出品されたことに気づかれた場合には環境省に報告してほしいいとのことなので、もし見かけたら環境省までご一報をお願いします。

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の一部を改正する 政令の概要(環境省のウェブサイトへ移動します)

ゲンゴロウ(wikipediaに移動します)

二ホンザリガニ(wikipediaに移動します)

イノシシと豚熱

イノシシの駆除は根気のいる作業。なかなかかからないので、知恵比べになる。

 当研究所では通年で有害捕獲許可を持つ猟師が有害捕獲活動をしています。
 普段なら猟期には猟もするようですが、今年はひたすら有害オリの管理に徹して自分ではワナはかけないとのこと。
 どうしてかと思ったら、地域で豚熱が発生していました。
 豚熱が発生してしまうと、その地域で捕獲したイノシシは販売ができなくなります。
 自家消費用として食べることは問題ないようですが、解体したイノシシの残渣についてもその場で埋められないなど厳しい対応が求められるため、とてもではありませんが捕獲する手間がかけられない状態になっています。
 ここ何年もイノシシが増えてきて農作物に被害を与えるということで、徹底的な駆除を求められ、ジビエの普及についても躍起になっているさなかでの豚熱発生。
 清浄化宣言が出るまでは猪肉を売ることができず、捕獲しても手間ばかり増えて赤字になってしまうため、猟期になっても猟をしないという選択を取る猟師が多いです。
 問題は、豚熱が発生しても、イノシシの増える数はそんなに変わらないということ。
 つまり、捕獲する圧がかからなければどんどん増えてしまうことになってしまい、農作物への被害も甚大になるのではないかと感じています。
 島根県農畜産課のウェブサイトによると、食べても害はないそうですから、捕獲して食べるという今までのやり方で問題なさそうなのですが、他方で流通はさせないとも書いてあります。
 「食べてもよいけど流通はさせないよ」となると、選択肢は自家消費しかないのですが、売れないものを手間をかけて捕獲する人はそうそういない気がします。
 ある程度まで増えれば、餌の取り合いになって自然淘汰されていくとは思うのですが、そこに至るまでに何が起きるのかが気になるところです。

豚熱(CSF)に関すること(島根県のウェブサイトへ移動します)

【活動報告】イノシシ対策その後(~2022.11.10)

右下が破壊された仕掛け。ねじ曲がったので修繕不能になった。

 9月に入ってイノシシの出没が見られたことから、仕掛けていた罠を起動させることにしました。
 9月中は見向きもされなかったのですが、9月後半からでっかい2頭と小さな4頭が餌を食べに来るようになり、こいつら家族かなと思っていましたが、10月に入ると連続してかかって合計で4頭捕獲することができました。
 このうちの3頭はまだ小さく、サイズ的に4頭いた兄弟の3頭だと思われるのですが、残りの1頭が90kg超えの雄。
 この大きなイノシシ、オリの中でかなり派手に暴れてくれたのでオリの仕掛けがぶっ壊れてしまい、修繕しないと稼働できない状況に追い込まれました。
 ただ、監視カメラでの観察を続けたところ、猟期に入ったとたんにイノシシが来なくなり、現在継続して様子を見ています。
 猟期に入ってイノシシが警戒しているのか、それとも最後の追い込みとして他の場所でおいしい餌をあさっているのかはわかりませんが、これから冬に向けて山の餌はかなり減ってしまいます。
 空腹のイノシシが街に出ると人を襲いかねませんので、様子を見ながら引き続き捕獲を続けていきます。

危険なくらげを知っておこう

 お盆が過ぎると、海の雰囲気が一気に変わって泳ぐのには悩むような波が出るようになります。また、クラゲが岸に寄ってくることもあって、海水浴場は閉鎖される場合が多いと思います。
 すでにそんな時期に入っていて今更感があるのですが、普段見かける危険なクラゲについて、今回はちょっとだけ触れてみたいと思います。
 泳ぐときに「クラゲが刺した」といわれることがあります。
 普段見慣れているミズクラゲも刺胞は持っていますので、刺されることがあり、肌の弱い人など腫れてしまうことがあるようです。
 はっきりとわかるような痛さの場合には、日本海側の場合だとアカクラゲやアンドンクラゲが該当する場合が多いようです。
 今日はアカクラゲとアンドンクラゲについて、ちょっとだけ知っておいてほしいと思います。なお、生きているクラゲは島根海洋館アクアスに展示してあるものを撮影しています。

1.アカクラゲ

 傘の部分に赤い線が入っていることからアカクラゲと呼ばれています。
 刺されると非常に痛みを感じ、みみずばれができます。
 乾燥したものがよく石に張り付いていたりしますが、乾いていても毒の有効成分は生きているので、できるだけ触らないようにしてください。

2.アンドンクラゲ

 傘の部分が四角形で行燈に似ていることからアンドンクラゲと呼ばれています。
 海水浴シーズンの後半頃から海水浴場に出現することがあります。
 複数個体でまとまっていることがあるので、それらに取り囲まれると体中がみみずばれになってしまうので、見つけたらすぐに陸に上がるようにしてください。

 不幸なことに、クラゲにもしも刺されたら、何をおいてもまず陸に上がって様子をみてください。
 クラゲの毒も蜂などと同じようにアナフィラキシーショックを引き起こすことがありますので、陸に上がって少なくとも15分から30分程度は様子をみてください。
 もしもクラゲの触手や刺胞がくっついているなら、様子を見ながらはしやピンセットなどでそっと取り除いてください。絶対に素手で触ってはいけません。
 また、痛痒い状態になると思いますが、クラゲの毒は40度以上の温度になると患部を40度以上にできれば痛痒い状態を緩和することが可能です。
 酢や水をかけるという記事を見ることもありますが、クラゲの種類によってはさらなる痛みを招く場合がありますので、何にやられたのかわからないのであれば、やらないほうが無難です。
 いずれにしても、様子を見て悪化したり、本人の様子がおかしいようなら、病院を受診するようにして下さい。
 前回虻やブユに対するところでも書きましたが、できるだけ素肌を露出しないことが刺されないことにつながりますので、ラッシュガードなどを着ておくのは有効だと思います。
 また、砂浜に不思議な色をした餃子のようなものが落ちていることがありますが、それはカツオノエボシの浮袋の場合があります。
 カツオノエボシの強力な毒はそんな状態になっても効果はそのままですので、絶対に触らないでください。

危険がわかるかどうか

動物園で見るとこんな感じだけど、実際に出会うとかなり怖く感じるのがクマという生き物。

 ラジオを聞いていたら、恐怖体験として「山でこぐまに出会ったので必死に逃げた」という話をしていました。
 パーソナリティーの方は「子供でもくまですからね。小さいけど」といった感じだったのですが、それを聞いていて、クマの生息域に住んでいる人やそういうところを登山する人ならこの話の本当の怖さがわかるのになと感じ、わからないというのはこういうことなのかと妙に納得しました。
 「子グマがいる」というのは、別に子グマが脅威なわけではありません。いえ、子グマでもよほど小さな個体でない限りは人間よりも力が強くて十分脅威なのですが、それ以上に怖いのが、その子グマのすぐ近くに母グマがいて、状況によっては問答無用で襲われるということなのです。
 たぶん、山に登る人も同じような印象を持つのではないかと思いますが、子グマは無警戒にいきなり現れます。そして、理不尽なのですが母グマは人を見ると子グマに対する脅威と見なしてかなり警戒していて、ちょっとでも母グマが子グマが危険だと感じたら、即座に攻撃をしかけてきます。
 話をしていた人はそのことを前提にしていたと思うのですが、子グマには気を荒くしている母グマがついているということを知らなければ、単に「かわいい小さなクマがどうして怖いんだろう?」という印象になってしまうのでしょう。特に動物園ののんびりしたクマしか知らない人もいるわけで、そうなると怖いということが理解できないのかもしれません。
 人が危険を感じるためにはそのことが危険であるということを知っておかないといけないのだなと、今回の話でちょっと考えさせられました。
 危険を知ること、できれば危険な目にあってみること。
 人が的確な判断をするためには、そういった経験が重要なのかもしれません。

犯人はともかく・・・

 先日、家の基礎に穴を掘ってきゅうりを埋めていた何かがいることを書きましたが、そのおうちから連絡があって、同じ壁面のちょっとだけ離れた場所にまたきゅうりが埋められていたとのこと。

わかりにくいが、真ん中の物体がキュウリ。地面に埋まって黒く見えるのは配管。

 現地を確認したところ、確かに新しい穴ができていて、その中に爪か牙かでつけられた穴がたくさんあるきゅうりの端材が転がっていました。
 ちょっと離れた場所には、同じきゅうりと思われる、別なものが地面に転がっています。
 きゅうりを食べて、かつ埋めておくというのは非常に珍しいような気がするのでおそらくは前回と同じ個体ではないかと思うのですが、たびたび続くとちょっと困るという施主様のご意向で、対策を考えてみることにしました。

壁際の土が柔らかいために掘りやすく、掘っていると予測されるが、配管もあって掘られると悪影響が出そうなので対策が必要と判断。

 この手の対策では、餌をとる場所とその餌が埋められる場所の両方の対策をしておくのが一番いいのですが、このきゅうりがどこから来たのかがわかっていません。
 ご近所で少し聞いた限りでは、特に被害にあっているところは見当たらなかったので、餌をとる場所の対策は諦めて、埋めている場所に埋められないような対策をすることにします。
 埋められない対策としては、この場所をコンクリ張りにすることや、電気柵を張ることなどが考えられますが、費用対効果が悪い上に、ここには小さな子供さんがいますので、万が一の事故が起こっても困ります。
 「穴が掘られなければいい」ということなので、幅45cm、格子のサイズが5cmのワイヤメッシュを敷くことにしました。

穴堀りを防ぐだけなら、ワイヤーメッシュが結構使える。

 これを敷くと、掘っている犯人の体重で掘ろうとしたときにワイヤメッシュを動かすことが難しいので、これで諦めるのではないかということでやってみました。
 これでうまく言えばよし、だめなら次の手を考えます。
 鳥獣対策は地味でこれなら万全というものは存在しません。
 相手を考え、その相手が来ては困る場所に来たくなくなる対策を考えていかなければいけません。
 じきに地生えきゅうりも終わると思いますので、それまでこれでうまくいくといいなと思っています。

犯人は誰だ?

 当研究所では有害生物対策もやっているのですが、有害生物といっても、当研究所の場合は野生の動物対策がほとんどです。
 野生動物対策をやっていると、さまざまな不思議な出来事に出会うことがあるのですが、今回出くわしたのもその一つ。
 「家の横、壁の下が掘られていてきゅうりが埋めてある。このきゅうりにはたくさん の動物の傷がついているが、どうしてだろうか?」
 というお問い合わせをいただき、写真を確認して現地調査したところ、建物の壁、コンクリートに沿った地面に穴が掘られていて、ご丁寧にキュウリが埋めてありました。

地面の中に緑色のものがあるのに気が付いて掘ってみたら出てきたとのこと。

鍬の手前のちょっと土が柔らかそうな部分が今回の現場。

 野生の動物には、こういった餌を隠す習慣のある生き物がいるのですが、ちょっと前からたまに悪さをするアナグマがいるので、今回はそいつの犯行ではないかと考え、犯人を特定したいとこのキュウリがどこから来たのかを聞いてみたのですが、キュウリの出所がわからないということがわかりました。
 近くにはキュウリを作っている方もいらっしゃるのですが、そちらでも被害は出ていないとのことで、犯人に加えて、このキュウリがどこから来たのかという謎も残ってしまいました。
 アナグマはそんなに遠くまで餌を持って逃げることはほとんどないので、そうするとカラスかなとも思ったのですが、それにしては穴がしっかりと埋め戻してあり、鳥ではあればお見事といいたくなる出来でした。
 ちなみに、見つけた餌を移動させて埋めておくという事例はさほど多いものではないようですが、アナグマ、タヌキ、カラス、クマ、猫などにそういった行動をとる個体がいるようです。
 結局犯人不詳のまま、キュウリは撤去して穴は埋め戻したのですが、わかるものであれば、この犯人がだれで、キュウリをどこから持ってきたのかを確認したいところです。
 さて、犯人は誰だったのでしょうか?