避難所設営基本の「き」その5・情報の受取と公開の方法

さまざまな機関からさまざまな情報が送られてくる。どう処理するかが腕の見せ所

 さて、避難所設営も殆ど終わったと思いますが、設営のとき、一つ気をつけておきたいことがあります。
 最初に避難所、特に指定避難所と言われる場所では「地域の被災避難者の住居」と「被災者の支援を行うための物資集積所」という二つの性格を持っているということに触れました。
 小さな避難所や在宅避難者車中避難者などは、この指定避難所に支援物資を受け取りに行くことになりますが、その際に情報も持って帰る場所でもあるということを気にかけておいてください。
 自治体が発信している災害情報は多岐に及んでおり、しかも時間ごとに変わるような内容もありますので、それらが分かるように掲示しておかなければなりません。
 情報の受信方法は、届いていることが一目で分かるFAX一択だと思いますし、避難所への掲示も紙で行った方がわかりやすいし確実です。
 発信元の自治体がそれに対応しているか、そしてどのような掲示物をどのように張り出したら良いのかについてもあらかじめ決めておきましょう。
 ところで、自治体が発信する情報はなぜか言い回しが難しくて字が小さいものが多いのですが、高齢者や疲労の溜まった避難者、日本語が充分に理解できない人などはこれをそのまま読んでもたぶん理解ができないこともあると思います。
 貼り出すときには、あまりに難しい言い回しであれば「やさしい日本語」に変換して大きな字で掲示するのもよいと思います。

 ここまで、避難所設営の基本について書いてみましたが、もしかしたらご存じのやり方と違っているかもしれません。
 ここで書いた避難所設営の基本は、あくまでも筆者が経験と知識からやっておいたほうがよいと感じているものなので、恐らくたくさん抜けがあると思います。
 また、避難所によってはここまで考えなくても良い場所もあると思います。
 要は、避難所設営のときに混乱が起きずに避難者が無事に収容できて避難すべき期間快適に過ごせればよいのですから、そういう視点で避難所の設置について考えていただければいいと思います。
 「避難所はホテルではないし、避難者はお客では無い」ということを前提に、避難所設営を的確に準備していただけるといいと思います。
 ちなみに、避難所は行政や自治体、自主防災組織が運営するものだけではありません。さまざまな事情で自宅にそのまま留まる自宅避難や、医療施設、宿泊施設などに有償で避難するのも当然ありです。
 避難所を準備する方の基本は今回少しだけ触れましたが、避難する側も自分の状況や準備、そして経済状況などを考えて避難先を決めておくといいと思います。

避難所設営基本の「き」その2・管理者と運営者を決める

 前回は避難所のトイレ問題について書きました。
 今回は避難所の管理者・運営者のお話です。
 避難所に指定される施設というのは、学校や公共施設が圧倒的に多いのですが、避難所の管理者と運営者がきちんと定められている場所は少ないのではないかと思っています。
 集会所のような小さな地域の小さな施設であれば、その地域の自治会が管理者と運営者を兼ねることも多いと思うのですが、少し大きい施設になると管理者と運営者をしっかり決めておかないと、運用が開始されると途端に混乱が起きることになります。
 特に指定避難所の場合には「地域の被災避難者の住居」と「被災者の支援を行うための物資集積所」という二面の性格を持っていますので、なおさら整理しておかないとややこしい事態を招きます。
 例えば、避難者が自主的に避難所の管理運営組織を作ったとすると、被災避難者の住居としての維持管理はできるようになりますが、被災者の支援を行うための物資集積所の管理・運営は念頭にないので、送られてきた物資を巡って地域内にも配るのか、避難所だけで使うのかという判断に困る内容が一気にあふれ出ることになってしまいます。
 また、管理者や運営者がきちんと決められていない場合には、その施設の管理者がなし崩し的に施設運営者になってしまって、本来その施設の復旧をすべき立場の人達が避難所運営に手を取られて復旧ができなくなるという事態が起こります。
 避難所の設置者は市町村なのでよいとして、設置した後の管理者は誰か、そして運営者は誰がするのかについてあらかじめ決めておくことで、入り口以前での躓きを防ぐことができるのです。
 別に避難所になった場所の元々の管理者が管理・運営者になっても構いませんし、自主防災組織や自治会が管理・運営することになってもいいと思います。
 事前にここを決めておくのは、発災後に管理・運営者を決めようとすると絶対にトラブルが起きてまともに決まらないからです。
 管理者と運営者を明確化し、「避難所としての管理・運営」と「物資集積所としての管理・運営」が確実にできるようにしておきたいですね。
ちなみに、管理者と運営者を定めるときにはローテーションについても整理しておきましょう。
一人の人が毎日24時間避難所運営をし続けることは正直に言って無理ですので、一日8時間を目安に管理・運営部門の勤務交代を念頭に入れてローテーション表を組むようにしてください。
もちろん表の通りに進むことはまずないと思いますが、交代することがしっかりと認識されている場合には管理・運営に従事する人達の士気もそれなりに維持できます。
管理者・運営者をはっきりさせてから、避難所の設営についての検討を始めるようにしてくださいね。

【活動報告】高津小学校防災クラブを開催しました

 昨年度に引き続き、益田市立高津小学校様からご依頼をいただけたので、今年も防災クラブを開催できました。
 クラブ活動は年度ごとに参加してくれる子どもさんが入れ替わるのですが、去年に引き続いてこのクラブを選んでくれた子ども達もいて、講師としてとてもうれしい限りです。
 そういった子達の期待に応えられるように頑張りたいと思っています。
 4月26日の第1回は、「災害ってなんだろう?」をテーマにいくつかの事例を取り上げて考えてみてもらいました。
 普段耳慣れないけれど、知っておきたい警報音や、地震や大雨の映像を見たり、台車に乗って横揺れ体験をしてみたりしてもらいました。

台車に机を乗せ、先生の合図で机の下に潜り込んで横揺れを体験してみる。身体を支えるのが意外と難しいことがわかる。

 警報音を聞いて身を守る行動を取ってもらうという演習では、警報音を聞いても全員が椅子に座ったままで「同調性バイアス」を見せてくれましたので、周囲を気にせず行動して欲しいというお話をすることができました。
 最後にはハザードマップを見てもらい、家に帰ってから自分の家にあるハザードマップで家や通学路の危険な場所を確認しておくのを宿題にしてみました。
 見なかったからと言って別にペナルティはないことは説明してありますが、帰ってから確認してくれているといいなと思います。
 確認してみたところ、今年度は頭を使うことよりも身体を使う方がいいという肉体派の子どもさん達なので、できるだけ身体を動かす災害対策体験を組んでみたいと考えています。
 参加してくれた子ども達、そして担当の先生に感謝します。

「生きている」という情報を発信する

 「便りがないのは無事な証拠」と言いますが、こと大規模な災害にあったときにはそういうわけにもいきません。
 いち早く自分が無事、あるいは怪我はしているが生存していることは自分の知り合いに伝えておいた方がよいと思います。
 特に被災地外から見ると、被災地はどうなっているのかさっぱりわかりませんので、あなたが生存情報を発信することで、とりあえずは大丈夫だという安心感が確保でき、余計な気を揉ませずにすみます。
 一番安心できるのは声の聞ける音声電話あるいはテレビ電話なのでしょうが、大規模災害では通信規制が行われてまともに通じなくなります。
 そうすると、メールや災害時伝言ダイヤル、災害時伝言掲示板、SNSといったものに頼る必要が出てくるのですが、停電などで無線通信設備が止まってしまうと使うことができません。
 また、いずれも通信規制がされる可能性が高いので、うまく発信できても受信する側にいつ届くのかは神のみぞ知るといった感じになります。
 それでも発信しないよりは遙かにマシですから、自分が無事だと伝えるためには、積極的に情報を発信します。できれば複数の情報発信手段を持っておくといいでしょう。
 生存情報は、可能であれば文字情報だけで。通信規制時にメールやSNSで写真を送ると通信環境にかなりな負荷をかけてしまうので、写真は状況が落ち着いてから発信するといいと思います。
 生存情報としては「あなたが生きている」ということと、わかれば現在位置、これからどこへ避難するのかといった情報を出しておくと、あなたの関係者の人達はとりあえず安心すると思います。
 被災地外から被災地への連絡は、いろいろな通信手段はありますが、基本的には殆ど通じないと考えていいです。ただ、被災地から被災地外への情報発信は逆よりはかなり速やかにできるはずなので、被災して生きているなら、どんな手段でもいいのでまずは「生きていること」を発信するようにしてください。

ハザードマップを確認しておこう

 梅雨入りし、雨が続く毎日になりそうな感じですが、あなたがお住まいの場所はどんな災害の場合に避難しなくてはいけないのかを知っていますか。
 避難する対象としては、地震、水害、台風、そして土砂崩れや火事等があり、それぞれに安全に逃げる経路や安全な避難所を検討していることと思います。
 このうち、雨で気をつけないといけないのは、水害と土砂崩れ。
 水害では浸水を、土砂崩れでは巻き込まれることに注意しておかないといけませんので、これらの情報が一目でわかるハザードマップを確認しておきましょう。
 ハザードマップでの水害は、ある条件下での浸水状態を表しているもので常にそうなるとは限りませんが、急傾斜地や地すべりなどの土砂崩れが起きるかもしれない場所については影響範囲と危険な場所がしっかりと明記してありますので、お住まいの地域にある場合には、しっかりと把握しておいてください。
 これは避難時に限らず、通勤通学経路を決めるときにも確認しておき、できる限りそういった場所を避けて経路を設定しておくようにしてください。
 ちなみに、小学校の通学路に指定されている経路は安全という方もいらっしゃるのですが、小学校の通学路は車との事故を防ぐことを主眼にして設定されていることが多く、もう何十年も見直されていないといったものもざらにありますので、あまり信用しない方がいいと考えます。
 ハザードマップを元にしてできるだけ安全な場所を移動経路にしておくこと。そして自分が安全だと思われる避難場所を確認しておくこと。
 これからの時期、さまざまな災害が起きる可能性がありますから、それに備えて確認しておいてくださいね。

防災グッズと代用品

代用品作りの一つとして防災クラブでやっているゴミ袋で作る防寒着作成の一コマ。あるのなら普通に合羽の方が確実で安心。あくまでも代用品を知ることが目的の講座。

 防災グッズは防災用のためにだけ準備すると考えると場所をとってしまう厄介者になってしまいます。
 ローリングストックという言葉もありますが、必要なものを少し多めに準備することである程度以上はものを増やさず、生活の質も下げずにすむような災害への備えができると思っています。
 ここでよく聞かれるのが代用品の話ですが、代用品はあくまでも代用品でしかなく、そのために作られた道具と比べるといろいろな意味で不便を生じることになるので注意してください。
 よくあるのが、おむつの作り方。
 おむつがないときにビニール袋とタオルで作るよう書かれているものが多いのですが、避難生活を過ごすときにその代用品で凌ぐとすると、いったいどれ位の材料が必要になるでしょうか。
 タオルは吸水力はそこまで大きくありませんし、ビニール袋は蒸れて子どもの肌がかぶれたりします。汚れたタオルはそのままにしておくと汚臭が出てきますので、その処理についても対応が必要となります。
 本当に緊急時何も無い状態ならともかく、手間や発生する問題を考えると、紙おむつを1週間分くらい余計にストックしておいた方が役に立ちます。
 布おむつ派の人も、災害時には布を洗うことが難しい場合もよくありますから、数日程度凌げるだけの紙おむつを準備しておくようにしておきましょう。
 そして、心配だからといって大量にストックするのも御法度です。
 おむつが必要な年齢の子どもは、あっという間に大きくなりますので使える期間は短いです。そのため、目安としては1週間または普段使っているおむつを一袋多く準備しておくといいと思います。
 サイズアウトしたおむつは、例えば子どもの通っている保育園や子育て支援センターなどで使ってもらえないか聞いてみて下さい。割と喜んでもらってもらえることが多いです。
 そして、引き取り手がなかったからといって捨てる必要はありません。給水部分を何枚か重ねると、大人用の非常用トイレを作ることができます。これも代用品の一つですね。代用品のことは知っておいた方が絶対にいいですし、作り方もマスターしておいたほうがいいです。
 でも、最初から代用品で対応することは考えず、可能な限り普段使っているもので対応できる方法を考えておいてください。
 ちなみに、代用品としてよく出てくるビニール袋は、最近では地球温暖化やエコ問題から災害時に確実に手に入るとは限らない状況になっていますから、必要があれば非常用持ち出し袋に備えておくことをお勧めします。

避難勧告の廃止と警戒レベル

 今国会で議決された災害対策基本法の改正点については、報道発表の情報などを元にちょくちょく書いてきましたが、令和3年5月20日からいよいよ適用されます。
 ここ最近の災害と対応を検証した結果がいろいろと反映されているのですが、市町村が発令する警戒レベルについて大きな変更があるのでもう一度書いておくことにしました。


 市町村が発令する警戒レベルは、発生している状況に応じてレベル1から5まで区分されています。
 このうち、レベル3以上の記載が変更になっています。
 順番に見ていきましょう。
 まずはレベル3「避難準備・高齢者等避難開始」は「高齢者等避難」という表示になりました。
 正直なところ、これは元のままのほうがよかったのではないかという気もするのですが、住民がやるべきことは変わらずで、高齢者以外の人も避難準備や、可能であれば自主的に避難を開始することになっています。
 次にレベル4。「避難指示(緊急)」と「避難勧告」の二つがこの中に存在していたのですが、今回の改正で「避難指示」にまとめられ、従来の避難勧告のタイミングで発令されることになりました。
 「レベル4の発令=すぐ逃げろ」となったわけです。
 最後にレベル5。「災害発生情報」から「緊急安全確保」に変わり、レベル5ではとにかく身を守る行動をしろという風になりました。
 状況は変わっていないので、要約すると「災害が発生しているからとにかく身を守れ」ということです。
 今までのレベル5では「屋内の安全な場所に避難する」となっていましたが、今回の改正に併せて「屋内または近くの堅牢な建物等の安全な場所に避難する」と修正され、屋内避難にこだわらないようになっています。
 詳細はリンク先の資料をみていただければと思いますが、警戒レベルと行動の内容が全体的に前倒しされています。
 避難した結果、何も起きなかったのならただの笑い話。避難せずに災害に巻き込まれたら、そこで命が終わることも起こり得ますので、今回の警戒レベルの変更についてはしっかりと確認して置いてください。

避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月10日)(内閣府防災のウェブサイトへ移動します)

新たな避難情報に関するポスター・チラシ(内閣府のウェブサイトへ移動します)

熱中症対策をしておこう

経口補水液やスポーツドリンクは熱中症対策に重要。でも、飲み過ぎ注意!

 暑くなったり寒くなったり忙しい天気ですが、どうやらだんだん暑くなってきているのは確かなようです。
 寒かったものが徐々に暑くなっていくのであれば、身体が馴化していくので大きな問題にはならないのですが、寒かったところがいきなり暑くなると、身体がついていけなくなります。
 それだけならいいのですが、温度変化に適応できないと熱中症になる危険性があるので注意することが必要です。
 炎天下に日差しの下に長い時間いないことや、水分補給、休憩をきちんととること、そして何よりも無理しないことが大切になってきます。
 ある程度馴化すると、身体が楽になるのですが、それまでは行動するときには時間に余裕を持たせることや睡眠不足を防ぐこと、飲料水を常に持ち歩くこと、そして万が一に備えて経口補水液や冷却剤を用意することを忘れないようにしたいものです。
 体温調整がきかなくなって身体がオーバーヒートしてしまうのが熱中症です。事前の予想である熱中症警戒アラートも以前にご紹介していますので、そちらも参考にして、できる限りの備えを持っておいてくださいね。

線上降水帯に気をつけよう

 ここ最近の水害の傾向として、短時間にピンポイントで大量の雨が降って起きるというのがあります。
 これは線上降水帯が作られることによって特定の地域に次々に大雨をもたらす雲がやってきて雨を降らしていくことで発生しているもので、なかなか予測しづらく被害が大きくなりやすい現象です。
 この線上降水帯は南からの暖かい湿った空気と北からの冷たい空気がぶつかることで空気中の水蒸気が一気に雨となって降り注ぐのですが、雨雲レーダーや天気図を見ると、ちょうどその部分に三角形の形ができているのがわかります。
 雨がひどく降る場合には、この三角形が真っ赤に表示されることから、まるでにんじんのようだということで、にんじん雲と呼ばれることもありますが、このにんじん雲が天気図上や雨雲レーダーで自分の住んでいる地域の上空に確認できたら、急傾斜地や土砂災害警戒区域にお住まいの方はできるだけ早めの避難をお勧めします。
 できるだけ早めに避難して、身の安全を確保すること。
 これから雨のシーズンに入り、場合によっては線上降水帯も発生することがあると思います。
 雨が気になったら、雨雲レーダーや気象衛星の写真などを確認して、なるべく安全を確保するようにしてくださいね。

大雨警報の基準を確認しておこう

 そろそろ大雨に備えて準備をしておいても良い頃かもしれませんが、あなたの大雨対策は大丈夫ですか。
 大雨で行動を判断する一つの基準として、大雨時の警報があります。
 今日はこの大雨警報の基準を確認しておきたいと思います。

 

毎回書くことではありますが、自治体はどうしても地域を面で見ているので、点であるあなたの居場所がどうなのかは、自分の目で見て判断するしかありません。
 大雨では、気象庁が発信している情報や都道府県などが発表する土砂災害警戒情報などを元に地元自治体が避難の判断について発表をしていますので、見方を変えると判断に必要な同じ情報を自分でも得ることができると言えます。
 自分のいる場所の災害特性をしっかりと知った上で、気象庁や都道府県の基礎情報を見ることで、もしかすると地元自治体よりも早く行動を起こすことができるかもしれませんから、情報を得られる環境であるならば、天気がおかしいと感じたときに積極的に情報を調べるようにしてください。
 そのちょっとした行動が、あなたや家族、周りの人の命を救うことになります。
 とりあえずは大雨の基準を確認しておいて、いざというときの行動について再確認しておいてくださいね。