【活動報告】高津小学校防災クラブを開催しました。

 2023年11月1日に益田市立高津小学校で防災クラブを開催しました。
 今回は学校内のいろいろな施設を回ってクイズを解いていくオリエンテーリング。
 毎年クラブの子ども達には好評のプログラムなのですが、今回は事前準備が思ったようにできず、当日去年・おととしの問題を手直ししたものを持ち込んだのですが、一部の施設が無くなっていたり、担当する先生が不在だったりと、さまざまな問題が発生してしまいました。


おまけに参加している生徒たちに説明がうまく通じておらず、まったく違う作業をしてしまう子がいたりして、かなり大騒ぎとなった1時間でした。
でも、参加者たちはそれぞれの問題を一生懸命考えてくれて、終わった後にはどういった場所で自分たちが学習しているのかについて考えてくれた子もいました。
普段意識していないちょっとしたものも、意識すればきちんと意味のある存在になってきます。
いざというとき、今回やったオリエンテーリングが役に立つといいなと思います。
今回参加してくださった子ども達、そして準備してくれた担当の先生、いつも手伝ってくれるスタッフにこころからお礼申し上げます。

【活動報告】すみれ保育園の避難訓練の支援をしました

 去る6月23日、益田市のすみれ保育園で実施された避難訓練の支援をしました。
 この保育園は地震から津波発生に備えた大規模な避難訓練を毎年やっていて、ここ数年は当研究所もこの避難訓練の支援を行って、善かった点や問題点、改善点などを報告書として保育園に提出しています。
 この報告書は職員会議で共有されていて、毎年しっかりとした改善がされていますので、いざというときの対応はかなり的確に行われると、参加するたびに感じています。
 今年も大地震から津波発生、高台への避難という訓練を実施。総勢50名以上の園児の皆さんが、保育士の先生たちに誘導されて近くの益田東中学校に移動していました。
 保育士の先生たちは避難準備をしながら子供を見て、安全確認をしながら誘導をして、と目まぐるしく動く状況の中を的確に行動していく力量が求められます。
 こういった大規模な訓練を実地でやっていれば、訓練でさまざまな事態に出会いますから、本番でも慌てずに対応ができ、子どもの命も先生方の命もしっかりと守れるのではないかと思っています。
 今回もさまざまな改善点はありましたが、改善点は出て当たり前で、時代や状況、想定によってどんどん改善していくことで、災害に強い、命を守れる保育園になってもらえることを願っています。
 いつも聞かれるのですが、実は訓練で何も問題が出なかった方が問題です。
 訓練で問題が出ないというのは、すでに予定調和で訓練をしているということなので、本番ではほとんど役に立ちません。
 いつもの状況から非常時に切り替え、非常時の対応を行うことが、本当の訓練なのではないかなと思います。
 実は、事前に避難経路の安全確認をする方法についてお問い合わせがあったので、無線機を使う方法を提案し、当研究所の無線機をお貸ししたのですが、お貸しするときに設定を間違えて、保育園さんが避難経路の確認で出動させた先生と避難に備えて待機している本体との連絡が取れなかったという問題を起こしてしまいました。
 でも、このことについても、訓練後にどのようにすれば問題が回避できたのかについての検討事例として、先生方が話し合ってくれ、どんな状況でも安全確保という姿勢はブレないなという強い印象をうけました。
 益田市内にはたくさんの保育園があり、それぞれに創意工夫を凝らした保育を行っています。
 でも、災害に備えて、しっかりと子供たちと一緒に実地で訓練をし、専門家を入れて改善点や修正点を見つけ、より安全確保をしようとしているところはそんなにないのではないかという気がします。
 保育園を選ぶときには、普段の保育はもちろんですが、こういった非常時の体制がどのようになっているのか、そしてきちんと対応するための訓練ができているかも確認しておくといいかもしれません。
今回お声がけいただきましたすみれ保育園の先生方、一緒に訓練をしてくれた園児の皆様に感謝します。

機能を止めない方法を作っておく

どのようなお仕事でも、その仕事が無くなったら困るという方が必ずいるはずです。
特に人にかかわる仕事の場合には、災害でその機能が止まるとさまざまなところに大きな影響が発生しますので、平時に対策をきちんと立てておくようにしてください。
特に保育園やこども園といった小さな子供を預かる施設、高齢者を受け入れるデイサービスなどは、その機能が止まってしまうと家族はその世話をすることになってしまって、おうちの片づけすらできないことになってしまうので、代替策を準備し、災害が発生した時には速やかに代替手段に切り替えるようにして、家族が復旧に専念できるような体制を構築しておく必要があります。
そのためには、保育園やこども園、デイサービスといった施設の職員さんのおうちの災害対策がしっかりとできていなければなりません。
施設のBCPはその施設だけで完結するものではなく、施設にかかわるあらゆる人やもの、組織といったところも含めての対策を作る必要があります。
施設だけではなく、さまざまな企業や組織においても同様です。
自分のところの仕事だけでなく、周囲の人やもの、組織とも連動してBCPを構築することが、地域の素早い復旧のための重要な項目となります。

避難所の準備はできているか

日本の災害でもっとも進化していない部分は、ひょっとしたら避難所なのかもしれません。
写真や絵が残っている1888年の磐梯山噴火の写真と、1959年の伊勢湾台風、そして2011年の東日本大震災、それぞれを比較すると、ほとんど同じ状況であることがわかると思います。
体育館などの広い施設に避難者が雑魚寝。プライバシーもなく、情報も生活用品の配布もでたらめ。トイレは汚くて衛生環境もかなり劣悪。
新柄コロナウイルス感染症の蔓延によってソーシャルディスタンスという言葉が生まれ、初めて避難所がすし詰めにならない状況が生まれましたが、今度は避難所に避難できない避難所難民が発生している事態になっています。
最近では自宅避難が前提だということになって、できるだけ避難所への避難者を減らす方向で国も広報を進めていますが、自宅避難できない地域もたくさんありますので、避難所にどのように収容するのか、そして避難所での生活環境をどれくらい快適なものにできるのかは引き続きの課題になっていると思います。
人によっては避難所を快適にすると避難所から出ないという人もいますが、災害という非常事態で、さらにプライバシーがなく、生活用品や生活リズムが自分の思うようにできない環境では、心身ともに疲弊してしまうのは、災害からの復旧には大変なマイナスになるということを忘れないでほしいと思っています。
海外では、大規模災害が起きるとすぐに仮設住宅などが設置され、長期にわたって避難所での生活を余儀なくされるケースは年々少なくなっています。
これは災害からの復旧にはその人が疲弊しない生活環境の確保が必要だと考えられているからではないでしょうか。
避難所を現状のまま長期間運用する気であるなら、それなりの生活環境を維持できるような整備が必要となります。
避難所の準備、当事者も管理者も、平時にしっかりと考えて準備しておく必要があるのではないでしょうか。

マニュアルはできるかぎり具体化する

 学校や施設、企業などでは、基本的には災害時の対応マニュアルが作られているはずですが、あなたはそれに目を通したことがありますか。
 もしも目を通したことがあるなら、書き方がどうなっていたのかを思い出してください。例えば避難なら「近くの公園や施設に避難」といった抽象的な書き方か、「〇〇公園の〇〇に避難」といった感じで具体化されていたでしょうか。
 面倒くさいことと時間が取れないこと、そしてわからないことや責任問題に発展することを恐れてだと思うのですが、防災マニュアルではとにかく抽象的な書き方をすることが非常に多いです。
 ただ、抽象的に書くと、いざ災害の時には非常に悩むことになってしまいます。例えば、具体的にどこへいつまでにどのように避難するのかがしっかりと明記されていないと、避難すべきタイミングを失ってずるずると逃げ遅れることになります。
 緊急時に備えたマニュアルでは、より具体化し、単純化しておくことが大切です。
 防災マニュアルを備える前提は「命を守ること」、そして「被害を軽減化する」ことですので、何を最優先するのかを取り決めたうえで内容を具体化してマニュアルは作成しておきましょう。
 作るまでは非常に手間がかかりますが、一度作ってしまえば毎年きちんと見直すだけで災害時の行動基準となるマニュアルが手元にあることになり、災害時から復旧、復興時の手順がはっきりとわかり、手順が組みやすくなります。
 また、もしもその防災マニュアルを使うことがあったなら、状況が落ち着いてから内容に足りないものがなかったかや段取りはうまくできていたかなど、次回に備えた検証と反映をしっかりと行っておきましょう。
 担当する各省庁がそれぞれの所管に応じて防災マニュアルのひな型を作っていますが、あれは必要最低限の記載がされているだけですので、実際には自分のところにあわせたカスタマイズが必要になります。
 ひな型に文字を入れて出来上がり、ではなく、その内容も含めてしっかりと検討し、自分のところにあった具体化されたマニュアルを備え付けるようにしてください。
 マニュアルができたなら、そのマニュアルはしっかりと所属する全職員に情報を共有化しておかなければなりません。全部覚えることができないとしても、マニュアルがどこにあってどのページを使うのかがわかれば、非常時には心強い存在になりますので、作成から共有化する作業までを一連の流れとして、しっかりと整えてほしいなと思います。

大人の訓練、子どもの訓練

 防災活動の一環として、避難訓練などの支援をすることがあります。
 支援というのは、避難訓練のタイムスケジュールや訓練時の状況作成、訓練後の講評などさまざまですが、このうちで、一番喜ばれないのが訓練講評です。
 講評をするにあたっては、人の命を守るべき仕事のある人には厳しく、自分の命を守ればいい人はそれなりに見ていくのですが、どんなに頑張ったとしても、必ず一つや二つの修正点、改善点は発生します。それを指摘して改善や修正方法を提案するのですが、これを「あら探し」と感じる人もいて、非常にやりにくいことがあります。
 大人だけや子供だけの訓練はそれでも比較的楽なのですが、大人と子供が入り混じった訓練になると、途端に大人が傍観者になって参加している子どもたちの講評を始めてしまいます。
 そういった人は、たいてい自分の訓練が満足にできていない方なので、どうしても辛口の評価になってしまい、後で怒られることもしばしば。
 大人と子供が入り混じった避難訓練では、大人は子どもの講評ではなく、安全を確保するための誘導をしてほしいのですが、なぜか大人が指示を出し、子どもがそれに従って全員死亡の評価になったりするので、本当に難しいなと思います。
 大人であれ子供であれ、自分の命を守るのは最終的には自分でしかできません。他人に命を預けてはならないのです。
 本当は防災訓練でそういったことを徹底したいのですが、大人は指示慣れ、子どもは指示待ちになってしまっている場合が多いので、普段の生活を変えなければ、災害時に助かる人を増やすことは難しいのかもしれないなと思うことがあります。
 大人だけ、子どもだけの訓練ではこういったことは発生しないので、混ざったときにどうやって生き残るすべを身に着けてもらうのか。
 これができたとき、東日本大震災で子供達の避難が大人も救ったような状況が作れるのにと、少しだけ歯がゆい思いもしています。
 どのようにしたら大人も子供も一緒になって助かることができるのか、試行錯誤は続きます。

避難所にいかない避難

 大規模災害が起きると、行政の準備している避難所はほぼ確実に避難者でパンクします。
 そうなると避難所難民が発生してしまうわけですが、どこの避難所もパンクしているので避難先がない人が必ず出てきます。
 そう考えると、避難所に避難しない避難方法を考えておかないと、自分の身を守ることができないということになりますので、平時にしっかりと考えておくようにしてください。
 一番いいのは、自宅が避難先になることです。水没する場所にないこと、台風や地震に耐えられる構造であることなどが要件になりますが、自宅から出なくて済むのであればそれが一番落ち着くし、安心できる避難先だと思います。避難所に配られる食料品や日用品は自宅避難者も受け取ることができますので、生活環境を考えると、自宅が一番だということになると思います。
 次に、予測できる災害に限りますが、被災予想地域から出てしまうことです。被災予想地域から出てしまえば、とりあえず自分の命を守ることはできます。小旅行にしてしまえば、災害から避難しながら楽しむこともできるのではないでしょうか。
 あとは、安全な場所にいる親せきや家族の家を頼るか、知り合いのいるところに行くか、別荘や別邸を用意するかといったところですが、ここ最近の避難所の考え方は、避難所にしか避難先がない人が避難所に入るという設定に変わってきています。
 あなたが災害時に避難しなければいけない場所に住んでいるとしたら、避難所以外に避難する先を準備しておいた方がいいと思います。
 そして、何よりも早めに避難を開始することです。
 避難が空振りしたからといっても、誰も責めも笑いもしません。もし空振りしても「何もなくてよかったね」といえるだけの心の余裕も持てるといいですね。

管理責任を明確化しておく

  

 学校や公民館、集会所や体育館、大規模な寺社仏閣などは、平時はそれぞれの利用がされていますが、災害時には避難所やご遺体の収容所、応援部隊の仮宿など、さまざまなことに転用されることになります。
 もしあなたがこういった施設の管理者だった場合、転用されたときの責任は誰にあるのかについてきちんと明確化されているでしょうか。
 決まっていなかった場合には、かなり高確率でその施設を普段管理している人が災害後も引き続き管理させられる場合が多いですので、災害時にも普段の仕事にプラスしてややこしい仕事がやってくることを覚悟しておきましょう。
 避難所以外の場合には、行政職員や警察、消防、自衛隊、その他入居する団体がきちんと管理してくれるのですが、避難所だけはなぜか施設管理者に押し付けられるケースが多いのです。
 そうならないためには、例えば平時にその避難所を利用する可能性のある人たちを集めて避難所運営委員会を作り、その中で運営手順や管理責任者についてきちんと決めておくことをお勧めします。
 避難所の運営は避難者のことにプラスして、情報や物資の集積所、支援申請窓口などかなり多岐に渡ります。きちんと運営マニュアルややることになれている人がやるのなら問題はないと思いますが、そうでない場合には、自分のことは当座なにもできないことを覚悟しておきましょう。
 ちなみに、こういった避難所に派遣されてくる行政職員は当てになりません。行政職員という看板は背負っていますが、彼らは防災のことについてはほぼ何も知りません。基本的には災害や避難所運営の知識はないと考えておいた方がいいです。
 管理責任を明確化しておくことで、誰が責任者なのかが明確になります。責任者がはっきりしていれば、善かれ悪しかれ行動や判断が素早くできるようになりますので、平時のうちにしっかりとした検討をしておくようにしてください。

避難訓練

 避難訓練は少なくとも年に1回はやることになっているところが多いと思いますが、あなたは参加していますか。
 自治会や地区の避難訓練ではそうでもないのですが、学校や施設等の避難訓練だと、なぜか偉い人ほど参加しないという光景が見られます。
 例えば施設長や園長、校長や、担任の先生も参加せずに指示を出していることもよく見られる風景です。
 自分が目を光らせて全員を訓練に参加させるという考え方はいいと思うのですが、実際に自分もやらないと、本番では怪我したり、避難し損ねたり、場合によっては死んでしまったりすることも考えられますので、できる限り当事者として訓練に参加してほしいと思います。
 訓練参加者は、言われることではなく行動を見ています。
 偉い人が真剣にやれば、それは訓練参加者にもしっかりと伝わるので、きちんとした中身の濃い訓練になります。
 訓練の講評は、講評担当の人を毎回ランダムで選んでしてもらうか、当研究所のような防災の専門家に依頼すれば済む話なので、偉いからと傍観者にならずにしっかりと訓練に参加してください。
 新年度に入って、これから避難訓練を行うところも多いと思います。
 毎年同じような訓練になるかもしれませんが、その場所にあった知見を取り入れて行う訓練なら、必ず本番で役に立ちますから、訓練を目的にするのではなく、訓練によって得られる成果を目的に取り組んでほしいなと思います。

防災計画は現実的ですか

 東日本大震災における大川小学校の損害賠償請求事件では原告が全面勝訴しています。このことは割と有名な話なのですが、この中で裁判所が「事前防災の予見と不備」を大きな理由にしていることはご存じですか。
 人が集まっている学校などでは、想定されうる災害についてきちんと精査し、条件変更のたびに防災計画をきちんと見直すことが必須とされています。
 詳細は裁判所の判例をご確認いただきたいのですが、筆者の解釈では、この判例の前提にあるものは、学校に限らず、人が集まる施設では起こりうる災害とその対策についてしっかりと精査したうえで可能な限り犠牲者を出さないための対策を行う必要があるということなのではないかと思っています。
 学校や病院、介護施設、保育所やこども園などでは、ほとんどの場合防災計画が作られていると思います。ただ、それはきちんとそれらがある場所の状況を反映し、的確に安全確保ができるものになっているでしょうか。
 特に介護施設などでは、筆者の知る限りでは防災計画のひな型を適当に手直ししたものが備え付けられていることが多いですし、見直しや改訂もまったくされていないものもよくあります。
 法律上は防災計画が立てられていて計画書が備え付けられているので問題がないと判断されるのですが、それで安全がきちんと確保されているでしょうか。
 防災計画を一から作れというのは結構ハードルが高いと思うのですが、これらの施設に義務付けられている避難訓練の状況や結果を防災計画書に反映させることはできると思います。
 もしあなたが防災担当をしているのであれば、今からでも遅くはありません。
 自分の担当している防災計画書を見直し、地域の災害リスクや要件をきちんと満たせているか、そして実際に安全確実にできるような計画になっているかを確認し、しっかりとした安全を確保してください。
 余談ですが、介護施設は特に地域の中では危険な場所に建てられていることが多いです。立地からすでにリスクがあるのですから、しっかりとした対策を作って実行できるかどうかを確認することをお勧めしておきます。

大川小学校津波訴訟判例文(裁判所のウェブサイトへ移動します)