避難所の運営は誰がする?

 災害が起きて避難所が設置されると、それからは避難所運営という仕事ができます。
 ただ、この避難所の運営については誰が行うのかが結構曖昧な状態で置き去りにされていて、避難所になった施設の職員や教員、行政の職員、自治会関係者、どうかすると「自分以外の誰か」という方までいらっしゃいます。
 避難所は、本来はその避難所に避難する対象となっている地元の自治会や自主防災組織が運営をすべきなのですが、残念ながら開設時に準備した人がそのまま運営に巻き込まれてしまうというのが実際のようです。
 ただ、施設の職員や学校の教職員、行政職員は本来は災害時、災害後にやらなければならない業務が山積していて、避難所の運営にかかわっている場合ではありません。
 例えば、熊本地震ではある市町村で職員が全て避難所運営に出払ってしまったために応急復旧や被災地支援、支援受け入れといった本来行政がやらなければならない業務が全て停止し、現地に応援で派遣された他所の行政職員によってその市町村の災害対応業務が行われることになり、さまざまなことが遅れに遅れる結果となりました。
 また、ある学校ではその地に転勤してきたばかりの教員が避難所運営に巻き込まれてしまい、何も分からないまま右往左往する羽目になりました。
 その地元をよく知っている人が運営の主体となり、施設職員や教員、行政職員はそれぞれの立場から運営を支援するという状態を作れていれば、それぞれが自分の得意な部分で復旧や支援に取り組むことができるようになります。
 また、地域を知っているからこそ避難所の機能である「避難者の受け入れ」と「被災地区の物資や情報支援」という業務を効率よく行うことができます。
 「自分たちは素人だから」とか「税金払ってるんだから行政がやればいい」というスタンスだと、いつまでも復旧が前に進まず、結果的に自分が苦しむ羽目になっていきます。
 避難所をきちんと運営するためには、避難所の訓練だけでなく、いろいろな組織や行政との連絡や段取りをつけ、それを的確に避難者や住民に伝える必要があります。
 防災訓練をするのであれば、そこまで踏み込んだ訓練を行って、いざというときにきちんと機能する避難所運営をしていきたいものですね。

【活動報告】薬局様のコロナ対策整備をさせていただきました

 新型コロナウイルス対策で医療関係はいろいろと大変な状況になっていますが、当研究所創立以来協力していただいている薬局様のBCPとして、お客様・従業員様を感染の危険から守るための店内の新型コロナウイルス対策作業をさせていただくことになりました。

薬局の投薬カウンター。薬剤師とお客様の距離が近く、感染の危険がお互いにある。

 作業の内容としては、お客様用トイレの閉鎖、感染対策のために車で待機してもらうことを促す貼り出し、そして処方箋受付、薬の説明や受け渡しを行う投薬カウンター、会計レジに飛沫防止用の透明なビニールカーテンを設営する作業で、今回は飛沫観戦用の透明なビニールカーテンを設営する作業をさせていただきました。
 ただ、このビニールカーテンに関してはさまざまな接客業種で同じような作業をされているようで店頭在庫がなく、緊急措置として厚手のビニール袋を切って代用することにしました。

 突っ張り棒を支柱代わりに各机の上に準備して、支柱の間にビニールをかけ、飛沫対策のビニールカーテンの代わりとしました。

 今回のビニール袋は厚手で透明度がそれほどでもないため、ちょっと見にくいのが難点ですが、使い勝手も含めて、運用しながら修正していただくことにしました。

 今後もさまざまな対策をしていくことになると思いますが、現在緊急事態と言うことでいつもと違うさまざまな案内が店舗前や店内にされています。
 お店を利用する前にそれらの表示を確認して、私たち利用者もお店の方も、お互いに安全に過ごせるようにしたいものですね。

2020年4月20日追記:透明なビニールカーテン用の資材が手に入ったと言うことで、さっそく交換されたそうです。

家具を固定しておこう

 新型コロナウイルスばかりが毎日話に出てきますが、東海・東南海地震や首都直下型地震など、今後30年以内に起きるとされている大規模な地震が発生しなくなったわけではありません。
 新型コロナウイルスの話が出る前には地震ネタばかりが世間を賑わせていましたが、新型コロナウイルスが流行して以来、ぱたっと止まってしまいました。現在の報道のあり方についてこれでいいのかしらと思うこともあります。
 ともあれ、いくつかの都府県では緊急事態宣言がされたようですが、さまざまな理由で家にいないといけない状態なのであれば、重要度は高いけれど普段の生活には直接支障のない家具の固定作業をしてみてはどうでしょうか。

L字金具による固定。方法はいろいろある。

 寝室については倒れたり落ちたりするものは置かないにこしたことはありませんが、さまざまな理由でなんらかの家具を置かないといけないこともあるでしょう。
 対策としては、家具をしっかりと固定しておくことです。地震の時にそれらの家具が倒れてきてしまっては、そこからの脱出に貴重な時間を取られてしまうことになります。阪神淡路大震災では、多くの家が倒壊しましたが、倒れた家具の下敷きになり、その上家の下敷きになってしまって救助が間に合わなかったというケースがたくさんありました。
 家の倒壊は耐震補強しか手がありませんが、家具の下敷きになるのは部屋から家具を追い出したり、しっかりと固定することで防ぐことが可能です。また、さまざまな部屋にある家具をしっかりと固定しておくことで、地震の際に自分の安全を確保することができます。

突っ張り棒と固定具を併用した固定方法。複数の方法で固定する方が効果が高い。


 家から出られず、テレビ見ても気が滅入るだけですから、普段できないけれどやっておいたことがいいことのひとつ、家具の固定をしておいてくださいね。
 なお、固定が難しい場合には背の低い家具や収納ボックスに変えるという方法もあります。自分の生活スタイルにあわせていろいろと検討してみてください。

情報を伝える方法

 情報を伝える方法はいろいろとありますが、大きく分けると「文字」「音声・音」「写真や動画」「五感」にわけられると思います。
 この中で一番冷静に内容を伝えることができるのは、おそらく「文字」になるでしょう。感情やリアルタイムさを感じるのは「音声・音」ですし、一目で状況を伝えられるのは「写真や動画」、そして自分の安全判断の基準としては「五感」が上げられると思います。
 日々の情報はこれらの内容を組み合わせてあなたに伝えられ、そしてそれを元にあなたの行動が決められていくわけですが、伝えたい内容と伝える手段が間違っていると、あなたが何を伝えたいのかが相手に理解されないことが起きてしまいます。
 災害発生時、避難行動をしないといけないときに自撮りをしても見た人があなたが伝えたいことを理解できるとは思えませんし、避難先でどのような状況にいるのかは、文字情報よりも写真の方が知りたい情報を見ることができて便利です。元気かどうかを確認するのなら声を聞かせるのが一番でしょうし、自分の安全確保は五感の情報を付け加えてやるとイメージがしやすくなります。
 学校や施設など、人を預かっている場所で被災した場合には、第一報は文字情報、落ち着いてから写真や動画、音声情報という風にすると受け取る側の混乱を防ぐことができます。
 災害時にラジオを使うのは、それがあなたの行動を止めずに情報を得られる道具だからですが、冷静に状況を判断するためでもあります。被災した映像や写真を見てしまうとその映像や写真に意識を取られてしまって自分の取るべき安全対策ができなくなってしまいます。また、あまりにひどい状況だと将来への希望や望みを最初から失ってしまうことにもなりかねません。
 情報は複数の経路で伝えることが基本ですが、状況に応じて適した提供方法を採るようにしたいものです。また、どのような情報であれば受け取る側が判断しやすいのかについても、支援者や保護者とお互いに確認し合って、いざというときに備えるようにしてくださいね。

施設利用者の緊急連絡先を確認しておこう

 4月に入りました。教育機関やスポーツクラブ、介護施設などさまざまな施設の利用者がいろいろと入れ替わる時期でもありますが、利用者の緊急連絡先についてきちんと確認が取れていますか。
 通常、申込書などの緊急連絡先を記入する場合には、電話番号を一つという場合が殆どなのですが、災害対策で考えるのであれば二つ以上、できれば第3順位までの緊急連絡先を確認しておいた方が確実です。また、緊急連絡先は電話連絡先だけでなく、メールなど連絡手段も複数確保しておくことが必要です。
 一般的にはメールやSNSということになるのだと思いますが、これらの手段を利用者から全て記入した上で提出してもらっておきましょう。気をつけないといけないのは、緊急連絡先なのですから常に連絡がつかないものは駄目だということです。例えば仕事中は携帯電話を離しているということであれば、その携帯番号は緊急連絡先にはなり得ませんので、そのことを意識して記入してもらうようにしましょう。
 また、緊急連絡先を教えてもらうのにあわせて、施設から緊急連絡先にかけるであろう電話番号もお知らせするようにしてください。緊急時にはどの番号から電話するかわかりません。もしも代表番号しか書いていなかったら、他の番号から電話をかけた場合にはくん急連絡先になっている人が不審電話と思って電話に出てくれないことも想定されます。
 ところで、災害発生後の施設の状況を知らせるのはメーリングリストやSNSが最適です。全員に知っておいて欲しいことをそれらで流すようにしておくと、電話対応に忙殺される可能性は低くなります。
 施設は利用者の安全を確保する義務が存在します。ただ、災害発生後、永続的に利用者を預かり続けることが難しいことも確かですから、相互に混乱しないような連絡体制作りをきちんと行っておきましょう。