新型コロナウイルス第2波到来?

 新型コロナウイルスが島根県内でもじわりと広がってきている感じで、松江市ではクラスタが、そして県西部の益田市でも新規で感染者が報告されています。
 相手はウイルスなので100%の防御をすることはできませんが、それでもある程度の防御を行うことは可能です。
 現に同じコロナウイルスが原因の一つである普通の風邪は手洗いとマスク、そして飛沫感染防止対策を取ったことで感染者が激減したことは知っておく必要があると思います。6月頃に新型コロナウイルスに変異が起きてそれから後現在の流行が始まったとみられていますが、基本的な防御方法は変わらないと思います。

1.手洗いは石けんを使ってしっかりと手や手首を洗うこと。

 アルコール消毒はあくまでも流水による手洗いができない時の代替手段であり、使ったからといって確実に大丈夫だと言えない場合があることを意識しておいてください。

2.不用意に人が触りそうなものに手を触れないこと。

 新型コロナウイルスは生存性がかなり高いウイルスで、一般的に店舗で売られているような商品の表面だと、数十時間や数日は感染する可能性があることを知っておいてください。
 商品に触るのはその商品を買うときだけにしておいたほうが無難です。

3.人と会うときや人の多い場所に行ったり通過したりするときにはマスクを着用すること。

 マスクは基本的に感染しないためでは無く感染させないために着用しますが、お互いにマスクを着用することで安全度を高めることができます。
 時節柄暑いのでマスクをつけたくない場合には、人と会ったり直接顔を見て会話することは避けましょう。

4.飛沫感染防止対策をしっかりと意識すること。店舗では対策がしっかりとできているところを選ぶこと。

 消毒をしっかりとしていても、唾液やつばからもウイルスは感染しますから、向かい合っての会食はしないことや、距離をしっかりととること、飲食中以外はマスクをしっかりとつけて大声を出さないことなども非常に大切です。

 人間は基本的に群れる生き物ですので、いつかどこかで誰もが感染する可能性はずっと続きます。
 新型コロナウイルスの免疫取得がせいぜい数ヶ月くらいだという中国の報告を考えると出来上がるワクチンでも完全に防ぐことは難しいのではないかという気もしますが重篤化を防ぐという視点で見ると早くできあがってほしいと思います。
 繰り返しになりますが、誰もが新型コロナウイルスには感染する可能性があります。感染しない努力は必要ですが、感染するかしないかはこれだけ人が動いていると運任せの要素が非常に強いと感じています。
 感染者や家族を執拗に探して攻撃をするよりも、まずは自分が感染しないような対策をとり続けることが重要ですから、手洗いとマスクと飛沫感染防止対策をもう一度見直して徹底した方がいいと筆者は思っています。

 もしも風邪の症状があるなと感じたら、かかりつけのお医者様に出向く前に、お近くの新型コロナウイルス関係相談窓口(島根県の場合はしまね新型コロナウイルス感染症『健康相談コールセンター』)へ電話して指示を仰ぐようにしてください。

参考リンク

新タイプの遺伝子配列、ウイルス6月に出現」(読売新聞8月8日電子版)

新型コロナ回復患者の抗体水準、2-3ヶ月で急低下」(ニューズウィーク日本版)

新型コロナウイルス感染症関連情報」(益田市役所)

新型コロナウイルス関連の電話相談について」(島根県)

スポーツドリンクと経口補水液

スポーツドリンクと経口補水液の代表例。薄めて飲むと効果も薄まるので注意。

 暑い季節になりました。猛暑日や熱中症という言葉が飛び交っていますが、あなたの体調は大丈夫ですか。
 屋外や狭い場所、高温になる環境などで作業をしなければならない方は、体温管理と水分補給には充分に気をつけてください。
 さて、そのときに気になるのがスポーツドリンクと経口補水液の違いです。
 両方とも汗をかいたときに、その汗に含まれる水分だけでなく塩分やミネラル分などを補給するように作られている飲み物なのですが、この違い、ご存じですか。
 簡単に言うと、糖分とナトリウムなどの塩分(電解質)の量が異なっています。
 スポーツドリンクは水分、ミネラル、塩分、糖分をバランスよく配合したもので、経口補水液と比較すると塩分は少なく、糖分は多めに作られています。
 スポーツドリンクの名前のとおり、激しい運動での水分や栄養補給であれば向いていますが、単に汗をかいているだけの場合には、糖分過多になりやすいです。
 経口補水液は脱水症状の時に塩分や水分を補うために作られていて、身体への吸収を考えて糖分は控えめです。塩分が高いので、飲み過ぎると塩分過多になってしまうことがありますので、塩分やカリウムなどに摂取制限がある場合にはかかりつけ医に飲む前に相談してください。
 どちらにも一長一短があり、対象とする人や飲み方によって飲んだ方がいいものは異なってきます。
 スポーツドリンクにも経口補水液にもさまざまな種類があってそれぞれ向いている用途がありますから、悩んだときには医師や薬剤師などに相談してみるといいと思います。
 どちらを使うにしても、のどが渇いたと感じたときには脱水症状が始まっていますので、こまめに少しずつ飲むことをお勧めします。
 また、アルコールやカフェインが入った飲み物は利尿作用によりかえって脱水症状を助長してしまうことがありますので注意してください。
 ちなみに、経口補水液は家庭でも作ることができますので、レシピを紹介しておきます。

材料

水1リットル
砂糖40g(大さじ4と1/2杯)
塩3g(小さじ1/2杯)

作り方

上の材料を混ぜる。しっかり混ぜたら出来上がり。
※酸味が好きな方は、レモン汁を小さじ1杯加えるとさわやかになります。

手洗いと衛生概念

 災害時に避難所で衛生的な環境を維持するのは非常に困難です。
 ですが、通常時よりも人が密集して集団生活を行う環境であることから、災害時の避難所は通常時以上に衛生的な環境を維持するための努力をしなければなりません。
 ただ、こういった非常時にはその人の行動が先鋭化してくることに注意が必要です。
 特に衛生的な環境を維持するための基本である手洗いを見るとよくわかります。普段あまり手洗いしていない人はこれ幸いと手洗いをしなくなりますし、これでもかと手洗いする人は消毒液を持ち歩くような状態になってきます。
 衛生的な環境を維持することで、避難所内での感染症の流行をできるかぎり押さえるようにすることは、避難所運営の中でかなり上位に位置する仕事です。地域医療に過度な負担をかけないためにも、衛生管理は徹底しなければなりません。
 清潔な水を確保することはもちろんですが、石けんや消毒液の準備、ドアノブや手すりなどの定期的な消毒、トイレ掃除など、衛生管理はいろいろとあるのですが、手洗いという点で考えると、どんな人でも手洗いをしなければならないような仕掛けを作っておく必要があります。
 例えば、避難所に出入りする動線上に必ず手洗い場があるように設計しておくことや、出入り口に大きな手洗いの掲示をしておくこと、館内放送で手洗いをするように働きかけることなど、その避難所に応じてさまざまな方法があると思います。
 一つ有効なのは、子ども達に手洗いをしっかりとさせること。大人というのは不思議なもので、子どもが正しいことをやっているとなぜかそれをまねする人がたくさん出てきます。
 それを利用して手洗いを習慣づけるようにしていくのです。
 最近はやっている新型コロナウイルス対策でも、手洗いは最上位にくるような感染対策になっていますし、手洗いをしっかりするだけでかなりの感染症を減らすことが可能だと言うことを、マスクの入手が困難となった今回のコロナウイルス騒動は教えてくれました。
 避難所において感染症の大流行を防ぐためにも、手洗いだけは徹底しておきたいものです。

【参考】上手な手洗いの方法(厚生労働省のウェブサイトに移動します)

抗菌・殺菌・滅菌・除菌

 昨日の「紛らわしい」つながりになりますが、今回はよく出てくる抗菌、殺菌、滅菌、除菌の違いについて説明してみたいと思います。
 結構混同や誤解をしていることが多い内容なのでよかったら参考にしてください。

1.抗菌

 抗菌は菌を増やさない状態を言います。手すりやドアノブ、便座などによく「抗菌仕様」と書かれているのは、菌を増やさないという効果を謳っているだけで、菌はそこにいます。繁殖しにくいだけと考えてください。

2.殺菌

 文字通り菌を殺すことです。煮沸や消毒液、界面活性剤などを使ってウイルスや細菌を物理的に殺すことを言います。

3.滅菌

 全ての菌やウイルスが死滅もしくは除去された状態を指し、日本薬局方では標準状態と比較して100万分の1以下の量にまで殺菌処理されたものを言っています。
 ただ、滅菌処理されたものに滅菌をする効果は無いことに注意してください。

4.除菌

 ある特定の場所やものから最近やウイルスを除去することです。除去することが目的なので、殺菌や滅菌されているかどうかは問われません。

 似たような言葉なのですが、強さとしては「抗菌<除菌<殺菌」となり「滅菌」は別枠となります。
 また、殺菌にきちんとした定義はないようなのですが、薬事法により表示できるものが医薬品及び医薬部外品に限定されているため、殺菌効果があるものでも除菌となっているものが存在します。
 現在新型コロナウイルス騒動で消毒が注目されていますが、言葉の違いを意識しておかないと思ったのと異なることが起きてしまうことがあります。
 表示されている内容を確認し、自分の目的に合った製品を選べるようにしてくださいね。

消毒あれこれ

 消毒薬についてはいろいろとあるのですが、今回のコロナウイルス騒動を見ていると、かなりあちこちで混乱が起きているような気がします。
 今回は間違いやすい消毒液についてちょっとだけ触れてみたいと思います。

1.エタノールとメタノール

 学生時代に理科や科学の授業で教わったと思いますが、アルコールにも大きく分けると二種類のものが存在します。
 一つはエタノール。これはエチルアルコールで、「消毒用アルコール」「消エタ」と呼ばれています。一定濃度でウイルスや細菌を殺傷できる能力があることから、今回の新型コロナウイルス騒動では店頭から消えて無くなってしまい、普段から医療ケアが必要とされている方に届かなくなってしまいました。
 消毒に使えるのは60%から95%の濃度のエタノールです。濃度が95%以上ある無水エタノールというものがありますが、こちらは濃度が高すぎで薄めないと消毒効果がありませんので気をつけてください。
 もう一つはメタノール。これは工業用アルコールで、アルコールランプなどの燃料用として使われるものです。人体に使うのは危険です。戦後、アルコールの無かった時期にこのメタノールを飲んで失明や亡くなった方もたくさんいたそうで、呑むと目が散るアルコール、つまりメチルアルコールと覚えろと筆者は教わりました。

2.次亜塩素酸ナトリウム液と次亜塩素酸水

 同じような名前なのですが、効果は全く異なります。
 次亜塩素酸ナトリウムは、ハイターなどの塩素系漂白剤を希釈すると作ることができ、主に食器やドアノブ、テーブルやいすといった「物の消毒」に使います。
 強アルカリ性ですので、手指の消毒など人体に直接使用することは厳禁です。また、霧吹きやスプレーで空気中に散布することも止めてください。
 次亜塩素酸水は塩化ナトリウム水溶液を電気分解したりして得られるもので、基本的な用途は次亜塩素酸ナトリウムと同じく「物の消毒」に使うようにしてください。
 次亜塩素酸ナトリウムと比較すると使用期限や濃度など気をつけないといけないことがかなり多いです。時間による劣化が早いこと、有機物や紫外線によって分解されてしまうこと等、取り扱いには気をつける必要があります。
 いろいろと騒動になっているのですが、製品評価技術基盤機構、通称(NITE)の試験結果では次亜塩素酸水での殺菌はかなり量が必要だということでしたので、空気中に散布することは止めた方が無難かなと、筆者は考えています。
 ともあれ、この二つは名前はよく似ていますが作り方や性質はかなり異なるので混同しないようにしてください。
 ちなみに次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性、次亜塩素酸水は酸性です。

 消毒液にはいろいろとあっていずれも一長一短があります。
 手の消毒で一番確実なのは流水を使って石けんでしっかりと手洗いすることみたいですが、消毒液を手配するときには事故が起きないように、消毒の目的にあった消毒液を準備すること、そしてまぎらわしいものがあるので充分気をつけてください。

【参考資料】
新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について最終報告をとりまとめました。~物品への消毒に活用できます~(製品評価技術基盤機構のウェブサイトへ飛びます)

新型コロナウイルス騒動と避難所の環境改善

 各地の災害発生によって避難所が開設されていますが、新型コロナウイルス感染や蔓延を警戒して収容する人数を絞っているという話を聞きます。
 ソーシャルディスタンスを確保しようと思うと、従来のような詰め込めるだけ詰め込めという感じの避難者受け入れはできなくなるわけで、今後は自分が避難所に避難すべきなのか自宅避難すべきなのか、それともどこか違う別の場所へ避難すべきなのかについてしっかりと考えておく必要が出てきていると言ってもいいと思います。
 現在の避難所の設計は一人あたり横1m×縦2mのスペースが確保できればという感じでなされていますが、ソーシャルディスタンスを確保しようとすると、避難者同士の距離を2m開けることになります。
 その結果、避難者同士のプライバシーの保護もしやすくなり、人の視線も気にすることが少なくなって避難所ストレスが軽減できるような事態が発生しています。
 おかしな話になるのですが、新型コロナウイルスの影響で避難所の収容状況が改善されるという状況になっているのです。
 この先、喉元過ぎれば熱さを忘れるにならないように、あなたの避難計画についてしっかりと見直しをかけてみてください。
 どのようになったら避難所へ避難するのか、それとも自宅避難でいいのか、はたまた被災地域外に高飛びするのか、それぞれケースバイケースだと思いますので、災害が起きる前にしっかりと行き先を複数決めておいてください。
 また、その行動を起こすための鍵についてもしっかりと整理して決めておくようにしたいですね。

低体温症を救うには

 大雨や台風の中を安全な場所へ避難しようとすると、多くの場合全身がずぶ濡れになってしまいます。
 雨風にさらされたこともありますし、道路や田畑を流れる濁流の中を移動することで、たとえ夏であっても身体は冷え切ってしまっていると思います。
 雨などの水に当たらない場所で身体の水分をしっかりと拭き取り、乾いた服に着替えれば大抵元気になっていくのですが、長時間に渡ってずぶ濡れの状態でいると、身体の熱が服についた水分の蒸発で持っていかれて体温が下がっていきます。
 身体を触ると冷たい状態が続くようであれば、低体温症を疑って対応をするようにしてください。特に高齢者や乳幼児では周囲の注意が必要です。
 がたがたと震えているようであれば、身体を動かすことで熱を作り出そうとしています。温かい飲み物を飲ませ、携帯カイロや湯たんぽを血管の集中している脇の下や鼠径部などに置いて加温してください。
 震えが止まっても意識がはっきりしない状態であれば、毛布などにくるんで周囲を暖めて安静を保ちます。
 また、低体温症が悪化すると心肺停止を招くことがあります。その場合には救急車の手配を行い、心臓マッサージをして命を繋ぐようにしてください。
 いずれにしても、可能な限り暖がとれる状態にしておく必要があります。
 よくすぐエネルギーに変わる非常食としてチョコレートがあげられていますが、低体温症の人にはチョコレートの油を溶かす熱量がないことと、分解に水分が必要とされるため脱水症状を引き起こしやすくなります。
 もし与えるのであればココアなど温かな甘い飲み物を飲ませるようにしてください。
 最後に、たばこは末梢の血管を収縮させる働きで低体温症が悪化します。アルコールも同様で皮膚の血管を広げる働きが熱を奪う効果を起こしてしまいます。
 安心すると嗜好品が欲しくなるものですが、嗜好品はしっかりと元気になってから適量を楽しむようにしてください。
 低体温症は意識していれば悪化を防ぐことのできる病気です。避難をする際にはできるだけ身体は濡らさない。もし濡れたら安全な場所ですぐに拭き取り・着替えを行うよう心がけてくださいね。

被災地の片付けで病気や怪我をしないために気をつけること

 大雨が収まると待っているのはお片付けですが、作業するときの格好に少しだけ気をつけてもらえると事故が減ると思います。
 水害でみんな流れてしまったらあるもので作業をするしかないのですが、できる限り長袖長ズボンで、底の厚い長靴と同じく厚手のビニール手袋、それにマスクとあればゴーグルを着用してください。
 というのも、水害で片付けなくてはいけない汚泥にはさまざまな雑菌が含まれており、ちょっとしたかすり傷でも膿んだりすることがあります。
 また、汚泥の中には壊れた家具や建具が埋もれていることがあります。それらについている釘や鋲、ねじなどが足や手に刺さると、その部分から破傷風菌が入って破傷風になってしまうこともあります。
 破傷風については、以前に「災害ボランティアと破傷風」で少し触れているのでよかったら参考にしてください。
 そして汚泥が乾いてくると細かな砂のような感じになって辺りに舞うことになりますから、それが呼吸器や目、鼻と言った粘膜に付着すると結膜炎や炎症を起こしたりします。作業終了後は顔や手をしっかりと石けんで洗ってきれいにしておきましょう。可能であれば、着ていた服もしっかりと洗濯していただきたいと思います。
被災後は衛生環境を維持するのが大変になりますので、なるべく怪我しない、病気にならないための対策を取ることが必要です。
 余談になりますが、建物や家具、建具については洗って乾かすことが基本です。特に建物の床下はそのままにしておくとカビの温床となってしまいますので、汚泥をどけたらしっかりと消毒して乾かしておきましょう。
 参考までに厚生労働省のウェブサイト「被災した家屋での感染症対策」をリンクしておきます。上記に書いたような内容のより詳しいものや消毒液の作り方なども出ていますので、そちらの記事をご確認いただき、怪我や病気をせずに復旧に向けて進んでいただければと思います。

炊き出しで気をつけること

 大規模な災害が起きると、さまざまな場所で炊き出しが行われます。
 被災者同士が材料を持ち寄ったり、ボランティアの方が避難所まで来て調理したり、さまざまな形はありますが、行政からの配給弁当はパンか冷たいお弁当が多いですから、温かい食事ができるのは非常にありがたいことです。
 ただ、その時には衛生管理を徹底することがいつも以上に大事になりますので気をつけておいてください。
 例えば、水道が損傷して潤沢に水が使えない状態であるなら、素手で食材を触ることは厳禁です。手には普段からさまざまな雑菌がついていることはご存じだと思いますが、満足に手洗いのできない状態だと間違いなく汚れた状態になっています。アルコール消毒すればいいとお考えの方もいると思いますが、あれはあくまでも普段の手の状態がある程度衛生的であることが前提ですので、水と石けんによる手洗いの補助だと考えてください。
 素手で食材を触らないためには、使い捨ての手袋を着用すればいい話なので、自治会などで準備する災害セットの中には必ず使い捨て手袋を加えておくようにしてください。そして、使い捨て手袋はゴム製でない方が安全です。これはゴム製が食材に悪さをするわけではなく、ゴムアレルギーの方がいることを想定する必要があるからです。
ゴムアレルギーの方はゴムに接触すると赤くなって腫れたりかぶれたようになったりします。災害後には病院も稼働できていないことが殆どですから、抗アレルギー薬も手に入りません。
 非常時にはそういったことに意識が向きにくいですから、手袋はゴム製以外、例えばポリプロピレンなどの素材のものを用意しておく方がいいです。
 次に食材の温度管理。肉や魚は常温だと腐敗が進みます。クーラーボックスに入っているからと言っても安心はできません。しっかりとしたクーラーボックスにしっかりと冷やせるだけの保冷剤を入れ、必要時以外は開け閉めせず、炊き出しで材料を全部使い切るようにしてください。
 また、生肉や生魚を使った道具は雑菌に汚染されていると考えて、しっかりと洗浄もしくは処分を行ってください。充分な消毒ができれば良いのですが、そういった環境でない場合も多いと思いますので、使い捨ての割り箸などを使って利用後は処分するようにした方が安全です。

炊き出しの基本は素手では触らないことと食べ物全てに火を通すこと。


 最後に、出来上がったらすぐに食べること。暖かいものであれば2時間以内を目安に食べきるようにしてください。食べられなかったものは、もったいないですが全て破棄をしましょう。
 もし食中毒になったら助からないかもしれないと考えて、間違っても食中毒が起きないような衛生管理をするようにしましょう。
 なお、発生した生ゴミは液体と固体を分離した上で固体はビニール袋などでしっかりと密閉してゴミ袋へ、液体は猫の砂や吸水ポリマーなどに吸収させた上で、ビニール袋に密閉してやはりゴミ袋へいれるようにしてください。
 生ゴミは固体も液体もハエやゴキブリ等が発生する格好の温床となりますので、処分までしっかりと衛生管理をすることが大切です。
 被災地では食中毒を出すと死者が出てしまうかもしれません。そうならないためにも、衛生管理をしっかりと行って、安全に暖かくておいしいものが食べられるようにしておきましょう。

災害ストレスと向き合うには

 災害ストレスという言葉があります。被災した人達がさまざまな理由から受ける通常とは異なるストレスで、不安やイライラ、不眠、感情のコントロールができなくなる、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、さまざまな形で発露します。
 でも、これらの災害ストレスはそれを受けるとわかっていると、ある程度の予防ができますし、何らかの事情で症状が出てきても適切な治療を受ければ症状を抑えることができます。
 例えば不安やパニックを感じたときには大きな深呼吸をゆっくりと繰り返すことで落ち着きを取り戻すことができます。
 また、誰かと話をすることで心に抱えたさまざまなストレスは軽くなることが多いです。家族、友人・知人、地域の人などと会話することで気持ちが楽になることもよくあります。知り合いに話すのがちょっと憚られる気がするなら、巡回相談の保健婦や傾聴ボランティアの方に話を聞いてもらうこともできます。
 災害ストレスで一番よくないのは一人で頑張ろうとすること。そして頑張らないといけないと思い込んでしまうことです。
 被災後、気持ちを切り替えて復旧・復興にあたることになりますが、周囲の様子は気にしないことです。あくまでも自分のペースで復旧・復興を進めること。まわりと差がついても気にしない。「まぁ、いっか」が合い言葉です。
 そして頑張りすぎず、疲労を感じる前にしっかりと休憩したり、リラックスタイムを設けて気持ちを休ませてください。被災したことによるストレスを抱えているのですから、休み休みの復旧でちょうどいいのです。
 どうしてもなんとかしたかったら、ボランティアなど他人の手を借りてください。一人での復旧はまず無理ですから、助けてもらうことは決して恥ずかしいことでも情けないことでもないのです。
 そうやって意識していても、災害ストレスは多くの人に襲いかかります。もしもあなたがいつもと違うなと思ったら、そのときに「ああ、今災害ストレスなのか」と思ってください。そんな風に自分の状態が分かるとなんとなく落ち着くことが多いですが、おかしい状態が続きそうな気がしたら、お医者様に相談してください。
 ストレスは早めに治療すれば症状を抑えることができる病気です。
 そして、災害復旧は長期戦ですから、体調管理をしっかりと行いながら復旧をしていくくらいでちょうど良いのです。
 災害ストレスは感じ方が一人一人みんな違います。自分の違和感、周囲の違和感、そういったものを意識して上手にいなしていきたいものですね。