災害遺構を訪ねて7・「平成25年山口・島根豪雨災害祈念碑」

 平成25年7月28日、一日の降水量が381ミリ(津和野町森村)という集中豪雨により、島根県津和野町から山口県にかけて大規模な災害が起きました。
 松江地方気象台の気象情報では、わずか半日で降り始めからの雨量が352ミリという量が降り注いだようです。

災害後に現地で撮影した写真。
土砂で道路が1m以上埋まっている。向こう側に見えるのは線路の残骸。

 そのため、津和野川はあちこちで決壊し、山口線も線路が地面ごとなくなるような大変な被害が起き、島根県内では高津川に転落して死者1名を記録しています。
近くだったこともあって何度もボランティアとして出かけていきましたが、別世界だったことをいまでも良く覚えています。
 この災害復旧が平成29年11月に完了したのを記念して作られたのが、今回ご紹介する祈念碑と小さな公園です。


 祈念碑は非常にシンプルで、表には「災害祈念碑」、裏には「平成29年11月」とだけ記されています。

駐車場脇にある小さな公園。川向こうにはJR山口線があり、SLの走る時期にはその勇姿を見ることができる。

 公園は災害対応公園のようで、小さな東屋には水道、電気、そしてベンチが備えられています。
 川の横に作られていることから、水害では無く地震に対する備えなのかなという感じです。
 この災害では地元の人が声を掛け合って避難した結果、この地域では大きな人的被害は出ませんでしたので、普段からの顔の見えるつきあいが大切なのだなと地元の人と話したことを思い出しました。

治水対策と堤防

 島根県出身の錦織良成監督が当石西地方を流れる高津川を舞台に映画を撮影され、先頃完成したようです。
 どのような映画なのか気になっているところなのですが、川を防災の視点で見るとやはり治水対策を切り離すわけにはいきません。
 総延長が長く、昔は水の水量も多く交通の要となっていた高津川は、治水対策は堤防を築くのではなく、遊水池を作ってしのいでいたのでは無いかと思わせる地形になっています。
 川の流域に広がる良田は、洪水などで水が溢れたときにその水を貯め込めるような位置に広がっており、古くからある住宅地からは少し離れた位置にあり、その位置関係を見たとき、昔の人たちは田で氾濫した水を受け止めることで、自身の命や財産を守ってきたのだろうなと思います。
 現在は川の両岸にはしっかりとした立派な堤防が建設されており、かつての遊水池にも家が建ちつつありますが、最近の豪雨を考えたら、堤防が川の水を支えきれるとは言えない状況になっています。もし川がはん濫したら、その住宅地は水の中に孤立してしまうことになりそうですが、新しくそこに家を建てて住む人たちは家が水没することを理解しているのかなと考えてしまいます。
 他の河川の流域で、人口が多く川がはん濫することが認められない地域では、昔からさまざまな堤防が試行錯誤しながら作られてきました。
 矢作川(やはぎがわ)の柳枝工(りゅうしこう)などはかなり有名ですが、川の勢いに逆らわず、柳の根の張り方を利用しながら、かつ柳の木が大水で流されないように堤防を維持し続けることは大変だったろうなと思います。
 そういった堤防を守ってきた文化がある地域と、遊水池を作ってはん濫を川にゆだねていた地域では、堤防に関する意識も違ってくるのでは無いかと思うのです。
 川がはん濫したときに浸かることが予想されている場所は、今なら防災ハザードマップを見ることですぐに分かります。
 その地域に家を建てるのならば、当然土地の嵩上げはしておかなければなりませんが、地域によっては、その嵩上げをすることが周囲に被害を与えると誤解している人たちもいるようです。水に浸水するのなら地区の人はみんな浸からないといけないというのはいかにも日本風ではありますが、復旧の拠点となる家が水に浸かってしまっては、自分の生活も地区の復旧もまったく目処が立たない状態になってしまうということだけは忘れないようにしておきたいものです。
 そして、長い期間堤防を守ってきたところでは堤防は切れるかもしれないものという意識がありますが、最近堤防を作ったところでは、堤防は切れないという意識でいるような気がするのです。
 どれだけ技術が進歩してさまざまな工法が開発されたとしても、100%守り切れるという保証はありませんしできないと思います。
 堤防を過信するのでは無く、水が氾濫したときに自分がいる場所はどうなるのかということをしっかり意識したいものですね。

災害時の警報レベル

 災害時に発令される警戒レベルについては以前書いたことがありますが、運用が始まってからの取り扱いで混乱が生じている部分があるようです。
 今回は警戒レベルのおさらいと、その発令条件を確認しておきたいと思います。

1.警戒レベルについて

警戒レベルはレベル1からレベル5までの5段階となっています。
警戒レベルの内容は、以下の表を確認してください。

2.何が問題なのか

 表の中の「行政が発信する情報」の発令元が異なるため同じ表でありながら異なるレベルが発令されることが起きうると言うことです。
 警戒レベルの発令元は「気象庁」「国や都道府県」「市区町村」にわかれており、発令元で分けると次のとおりになります。

 ここで気をつけないといけないのは、気象庁や国・県は雨量や水位などの情報を元に基準を超えると自動的に発令される情報であること、そして市町村は客観的な情報を総合的にとりまとめて判断して発令するという違いがあるため、発令される警戒レベルに食い違いが発生することが起こりえます。
 山陽新聞のWEB版によると、先日、岡山県真庭市でこの事例が発生したそうです。このケースでは、気象庁と県は雨量に基づき土砂災害警戒情報として緊急避難が必要なレベル4と判断し、真庭市は「地区の状況から被害エリアが限定され全域の避難は必要ない」と判断し、警戒レベル3を発令したそうです。

3.では、どうすればいいのか

 各行政機関が発令する警戒レベルは、地区や地域という「面」であって、自分のいるところという「点」ではありません。
 自分のいる場所がどんな場所でどういう状況なのかというのは、あくまでも自分で考えて判断するしかありません。
 雨が続いて裏山が不安であれば、警戒レベル2でも避難してもかまいません。
 また、高台で水に浸かる心配がないところであれば、レベル5でも自宅待機の方が安全という場合もあるでしょう。
 行政機関が出す情報はあくまでも参考情報で、あくまでも最終的な決断は自分が行うしかないのです。
 もしも判断に迷うようであれば、より安全な方を選んで行動するようにすれば少なくとも命は守れるのではないかと思います。

【終了しました】夏休み企画のご案内

 趣味の範囲でやっている当研究所ですが、夏休みに合わせていくつかのイベントを計画しています。
 興味のあります方は、ぜひお申し込みください。

1.大人と親子の着衣水泳体験

日時:2019年7月28日(日) 10:00~11:00
場所:益田スイミング 屋内プール
内容:着衣での水泳体験、浮き方の練習、履き物による歩き方比較他
対象:大人及び親子(子どもさんは自力で泳げる方に限ります)
講師:益田スイミング様講師
参加費:1,200円(会場使用料、保険料)
準備するもの:水着、水泳帽子、ゴーグル、タオル、長ズボン、長袖シャツ
申し込み締切:応募定員に達し次第
申込方法:参加される方の住所、氏名、年齢を申込時にお知らせください。当研究所へお申し込みの場合は、お問い合わせフォームの件名を「着衣水泳申し込み」としていただき、参加される方の住所、氏名、年齢をお知らせください。
申込先:益田スイミング様受付
    石西防災研究所(お問い合わせフォームに飛びます)

2.地域防災マップを作ろう・高津上市地区編

日時:2019年8月7日 13:30~16:30
   2019年8月8日  9:00~16:00
場所:高津公民館(旧高津地区振興センター)
内容:高津上市地区を回っていろいろなものを点検して防災マップを作成します。
   また、二日目の昼食では防災食を体験していただきます。
対象:小学生
講師:石西防災研究所・伊藤
参加費:無料
準備するもの:筆記具、飲み物(持ち歩きできる状態で)、帽子、カメラ(あれば)
申し込み締切:7月31日(水)17時
申し込み方法:お問い合わせフォームの件名を「防災マップ申し込み」とご記入いただき、参加される方の住所、お名前、学年、所属する小学校をお知らせください。
申込先:石西防災研究所(お問い合わせフォームに飛びます)

避難所の環境について考える

 避難所、避難場所、一時避難所(以後「避難所」とします)については過去にも触れているところですが、ここのところ続いている大規模な災害の報道を見ながら考えることがあります。
 それは、避難所の収容人数の問題です。
 例えば、内閣府の発表によると7月3日から4日にかけて降り続いた九州南部の大雨では避難指示(緊急)は約110万人に出されたそうです。そのうち、実際に避難した方が6,301人。率にすると0.005%となり、殆ど避難していないとみることができます。
 では、避難所の収容人員はどうなのでしょうか?
 市町村が定める防災計画に記載された避難計画を見る限りでは、避難所の周辺人口をそのまま収容するような計画になっていることが多いのかなと感じています。
 例として、当研究所のある益田市高津町の避難所で考えてみたいと思います。
 研究所から一番近い避難所は「高津小学校」です。平成30年度益田市防災計画の想定では、収容能力は1,000名。圏域人口は1,554名とされていますので、この時点ですでに収容能力を超えています。
 ただ、実際に避難してきそうな地区の数字を拾ってみると1,038名となるので、これなら大きな誤差ではなさそうです。
 一時避難所として校庭が指定されています。国土地理院の地図からざっくりと面積を拾ってみたら5,857㎡。圏域人口一人あたりの専有可能面積は3.76㎡となります。
 仮に車で避難するとして、車のサイズを5m×2m=10㎡と想定すると、3人で1台分のスペースは確保されることになります。また、単にテントを設営するのであれば圏域人口をなんとか吸収することはできそうです。
 次に、避難所開設時には普通最初に解放されるであろう体育館で考えてみます。
 校庭と同じく、国土地理院の地図でざっくりと体育館の大きさを拾ってみると、その大きさは926㎡。実際の避難者になりそうな1,038名で割ると、一人あたりの専有面積は0.89㎡となり、スフィア基準で定められている難民キャンプでの難民一人あたりに必要とされる面積3.5㎡を下回る数値になってしまいます。
 一人寝るのに必要な面積が2㎡と言われていますので、1㎡を切ると寝ることもできません。その上、実際には避難者はそれぞれ荷物を持ってきますので、間違いなく収容できないという状態になるでしょう。
 逆に考えてみると、926㎡の体育館で3.5㎡の個人スペースを確保しようとすると、避難が可能なのは264人ということになります。
 想定人口の1/5にも満たない数字ですが、大抵の避難所の設定はこんな感じですので、避難所周辺に住む全ての避難者が避難してきた場合には施設がパンクしてしまうわけです。
 これは過去の大規模災害で毎回繰り返されている光景ですが、これに対して打てる効果的な手段というのはさほど多くはありません。
 自分が悲惨な目に遭いたくなければ、なるべく自宅で過ごせるように、もし避難するのなら安心して過ごせる避難先をあらかじめ選んでおく必要があるということです。
 家の立地条件から見て避難すべきなのか避難すべきでないのか、避難するとしたらどこへどんな手段で行くのか、そして避難所でどのように生活をし、どういう状況になったら自分の避難を解除するのかということをきちんと決めておくこと。
 地震は突然やってきますが、それ以外の殆どの災害はあらかじめ起きるのはわかっている場合が多いので、被災想定区域外に出てしまうのも避難の一つです。
 もう一つ、大規模な災害が起きると医療・介護体制が維持できません。そのため病気や障害をお持ちの方は、あらかじめ何か起きた場合の対応方法をお医者様や介護担当者としっかり詰めておく必要があります。
 避難所では適切なケアはされないということを前提に、自分の避難計画を作っておくことをお勧めします。

家具の転倒防止は最初の一歩

 少し前に建物の耐震診断と耐震補強について触れましたが、建物に問題が無くても家の中で人が下敷きになってしまうものが家具です。

転倒防止用の支柱と壁と家具を貼り付ける不動王の組み合わせ。これ以外にもいろいろな装置や方法があるので、家の構造と家具の状態を考えて固定しよう。

  「防災の備えは、まず家具の固定から」と言われることも多いのですが、市内のホームセンターに出かけて転倒防止器具のコーナーを覗くと、あまり商品が動いているような気配がありません。
 お店の人に聞いても「大きな地震があったときはちょっと売れますが、それ以外は・・・」と苦笑される状況です。
 地域の歴史をさかのぼってみると、津和野町や吉賀町では震度6強の地震が何度も起きているのですが、そこまでしっかりとした家具の転倒防止対策をしているおうちがどれくらいあるのかなと考えてしまいました。
 大きな地震では、一番怖いのは家具の転倒によりその下敷きになることです。特に山間部の一軒家で一人暮らし状態のおうちも多いこの地域では、家具の転倒で下敷きになったら助けは来ないかもしれません。
 そのため、まずは家具類の転倒防止をしっかりとしておきましょう。とっさの時に動きが取れない寝室には、家具は置かないこと。
 そして台所の冷蔵庫や食器棚はしっかりと固定をしておくことです。
 地震だけは来る予兆がわからないので、いつきてもいいように準備だけはしておくことです。
 そして、転倒防止器具の取付はそう難しいものでもありません。
 できれば異なる方式のものを二つ以上備え付けておくことで、家具がひっくり返るのを止めたり、止められなくても逃げる時間を稼ぐことくらいは可能になります。
 さほど値段も高くなく、確実に命を守ることが可能になる転倒防止器具の取付をきちんとしておきましょう。

避難開始の合図を決めておく

 情報量が少なくても多くてもマスメディアからは文句が出るので難しいところなのですが、さまざまな場所で同時進行で起きている災害をその場で整理して判断を下すことは相当難しいことだということは理解していただけるでしょうか?
 行政の職員は行政のプロではあるかもしれませんが、災害対策のプロではありません。ましてや、行政改革で極限まで減らされている職員が、普段やっていないのに的確な災害対応ができるとは思わないことです。
 さまざまな警戒情報は、気象庁や国土交通省、都道府県、市町村からそれぞれに発信されており、そのままでは判断が難しいということで、先日導入された避難レベルにより一元的に管理しようとされています。
 ですが、本来レベルを発令すべき市町村は現場の対応に追いまくられることになりますので、避難勧告や避難指示(緊急)を出すべき市町村からの指示を待っていたのでは、遅れになる危険性があります。
 そのため、発表される情報の中から自分が避難を判断するための情報を決めておく必要があります。
 市町村が出す避難勧告や避難指示(緊急)は、その元となる情報もインターネット上で一般公開されていますので、自分が住んでいる場所で避難が必要な災害をあらかじめ確認しておき、例えば自分の住んでいるところが川のそばであれば、その川の水位を確認して、ある一点を超えたら問答無用で避難すると決めておけば、市町村の判断を待たずに避難を開始することができます。
 また、崖が気になるような場所に住んでいれば、都道府県が出している土石流警戒情報のタイルメッシュを確認すれば、自分のところが今どんな状態なのかを確認することができます。島根県の場合には土石流の警戒レベル3が発令されると住民への避難勧告を実施するとなっているので、これを目安に避難を判断すればいいと思います。
 今、行政は「災害レベル4は全員避難」ということを言っていますが、レベル4には避難勧告と避難指示(緊急)の両方が含まれています。お住まいの場所によっては、レベル4が出されたときにはすでに避難ができない状況になっている可能性もあるわけです。
 自分が行動を開始するための鍵を決めておいて、それを超えるような状況になったら速やかに安全な場所へ逃げること。
 それを徹底しておけば、命を守ることができます。
 そんな判断はできないといわれる方がいらっしゃるかもしれませんが、これは慣れでできるようになりますので、とりあえず一度やってみてください。
 難しい場合には、それができる人にチェックをお願いしておき、「逃げようコール」をしてもらうようにしたら、行政の出す避難情報よりも早く安全に避難ができると思います。
 いずれにしても、自分が逃げ出すための条件を整備して迷わずに逃げること。それが生き残るためには必要です。

体のケアとお化粧

 避難生活が続くと、だんだん気になってくるのが体の臭いとべとべと感です。
 若い人や女性では、特に気にされる人が多いのではないかと思いますが、お風呂にでも入らない限りは根本的な解決にはなりません。
 それでも、体を拭くことができればさっぱりしますし、水の入らないシャンプーを使えば、頭もそこそこすっきりとさせることができます。
 そこで非常用持ち出し袋に入れておいてほしいのが非アルコールタイプの「おしりふき」。
 これはそれなりに大きくて厚くて使い勝手がよいものです。夏場であればアルコールタイプもさっぱりして気持ちがいいのですが、体に合う合わないがありますので事前準備の時に一度試しておくことをお勧めします。
 また、水の入らないシャンプーは事前準備しておかないと、地方ではなかなか手に入りにくいアイテムですので、非常用持ち出し袋を作るときに一緒に準備しておくといいでしょう。
 それから、お化粧をする人は非常用持ち出し袋にもメイクセットとメイク落としは入れておいてください。普段メイクする人がメイクしない状況に陥ると、気力が萎えてくるものです。
 旅行の際に作られるようなお出かけセットを非常用持ち出し袋にセットしておくと安心です。
 そのとき、一つだけ気をつけておいてほしいことがあります。それは香り。臭いの強いものは御法度なので気をつけてください。
 避難所にはさまざまな人が避難し、生活をしています。その中には香りが苦手な人や気分が悪くなるような人もおり、あなたがいいと思う香りを悪臭に感じてしまう人もいるのです。
 さまざまな生活臭と混じるとせっかくの素敵な香りが周りの方に「悪臭」として記憶されてしまうことにもなりかねません。
 メイクの際に香水をつける方もいらっしゃるとは思いますが、避難所にいる間は香りのあるものだけは避けるようにしてくださいね。

災害関係の保険は自分で手続きをしよう

 災害が起きた後、何から手を付けようかと考えているときにやってくるのが、保険会社の手続きを代行してお金をたくさん受け取れるようにしてやろうと持ちかけてくる業者です。
 いかに申請手続きが大変かを力説し、保険会社と交渉して被害以上の保険金を受け取れるようにするということを言葉巧みに伝えて保険金請求手続きを代行しようと持ちかけてきます。
 手間のかかると思われる保険金請求手続きをしてくれて被害以上の保険金を取れるようにしてやるというのですから、そうでなくても災害の片付けでげんなりしている被災者に取ってみれば、面倒くさいことを肩代わりしてくれるありがたい存在のように見えます。
 もしも保険金請求手続き代行を依頼するのであれば、必ず契約書を交わすことと、その契約書を交わす前に必ず契約書に記載された手数料や成功報酬の額や率を確認してください。大概の場合、相当に法外なことが書いてあると思います。
 損害保険の保険金を請求する手続きは、業者を間に入れてやらなければいけないほど大変な手続きではありません。
 気をつけるのは、片付けを始める前に被災した状況の写真をたくさん撮っておくこと。
 被災者の数が多い場合、調査員が来るのが遅くなることもありますが、そこまで片付けずに待っているわけにはいきません。
 そのため、状況の確認できる証拠となる写真が必要とされるのです。また、この写真は行政機関で被災証明を発行してもらう場合にも使うことができます。
 ついでに書きますと、間に業者が入ったところで支払われる保険金には差はありません。手数料を払わないといけない分、自分が逆に損することになります。
 どうなんだろうと迷ったときには、面倒くさがらずに周囲の人の意見や、消費者センターへ連絡をしてアドバイスをもらうといいでしょう。
 また、自分の入っている保険のコールセンターや代理店に連絡をして手続きの方法を確認してみるのも手です。
 せっかく自分が支払ってきたいざというときのための保険金です。
 きちんと自分で手続きをして、自分の生活の再建に100%使えるようにしたいものですね。

避難先では暖かいものを口にする

 梅雨に入ってから、あちらこちらで大雨が降っています。先日の雨では、九州南部で降り始めからの雨が1000mmを超えたところもあるそうで、大規模な避難勧告も出されていました。
 ところによっては、現在も避難継続中の方がおられるかもしれませんが、体調管理には十分に気をつけていただければと思っています。
 さて、大雨で避難所に避難したとき、例えば今回のような梅雨前線によるものだと避難が長期化することがあります。
 そのとき、気の利いた避難所で無い限りは自分が持参した食料や飲料などで過ごすことになりますが、できればその中に「暖かいものを一品」加えるようにしてください。
 暖かいものは、飲み物でもご飯でもおかずでも構いません。暖かいものが一品あると、それだけで人間は安心することができ、仮に災害で被害を受けても、そこまで気力が萎えることは起きにくくなります。
 避難所が電気、ガス、水道が通じている状態であれば、暖かいものを作るのはそんなに難しいことではありませんが、意識していないと温かい食べ物があること自体を忘れてしまっていることもありますので、意識して暖かいものをとるように心がけてください。
 ただ、避難先が学校の体育館のような給湯施設を持たない場所だと、少し準備が大変かもしれません。

 大規模災害でよく見るタイプの直火かまど。災害後の避難所生活なら使えるが、災害が起きている状態でこれをやるのはあまり現実的ではない。

 例えば電気ポットや炊飯器があれば何らかの暖かいものを作ることができますので、そういった家電製品を持ち込むことも必要になってくるでしょう。
 また、土間や昇降口、建物の外周でコンクリートなどの引火しない材料で作られている場所があれば、そこを使って固形燃料やカセットコンロを使った調理もできるでしょう。
 何も無い場合、使い捨てカイロでも、常温のものを暖かいと感じる温度にまですることは可能です。

火が使えないときに便利なのが水を注ぐだけで発熱してくれる発熱剤。まったなしの赤ちゃん用ミルクを調製するためのお湯を作るのに役立つ。また、液体ミルクの温めの可能。

 そうでなくても不安になってしまう災害時、暖かいものが一口でも口にできると、それだけで緊張をほぐすのに有効です。
 非常用持ち出し袋には暖めるための道具が入っていないことも多いですが、避難が長期戦になりそうなときには、非常用持ち出し袋に飲料食を暖めることのできる道具も一緒に持ち出しておきましょう。
 また、自主防災組織や自治会などで避難所の運営を行う際には、準備品の中に必ず何らかの飲料食を暖めることのできる道具を準備しておいてください。