地震に備えて枕元に履き物を準備しておくことについては、災害対策の準備の一つとして言われることが多いものです。
また、非常用持ち出し袋にも履き物を入れておくようにと書いてある防災関係の本もあります。
市販の非常用持ち出し袋にスリッパが入っていることが多いことは興味のある方ならよくご存じだと思いますが、自分で作る非常用持ち出し袋の中にも靴下1組とスリッパを備えておくようにしませんか。
というのも、非常用持ち出し袋にセットされているスリッパは、、履き物の代わりに避難に使うためだけのものではないからです。
例えば、避難後に自宅に帰ったとき、屋内にいろいろなものが飛散している場合に、確実に安全だとわかっているスリッパがあると安心して使えます。
また、被災したときに生活を送る避難所では、衛生管理上、人が生活する空間については殆どの場合土足禁止となるのですが、その避難所の生活する空間で使えるスリッパがあるとは限りません。
その際、スリッパがあると生活空間でも快適に過ごすことができます。また、避難所から緊急で逃げ出さなければいけないときにもとりあえずの足下の安全は確保できます。また、靴下があると足の裏の安全をより確実に確保できますし、例えば水害時の避難などでは冷えた足下を保温することにも使えますから、一組はあると助かります。
避難所で使うだけなら、スリッパは旅行用の折りたためて使い捨てるタイプのもので構いません。でも、避難用と兼用させたいと考えるのであれば、もう一組屋外でも使えるような丈夫なものを備えておくといいでしょう。
避難の時にはいろいろと気にすることの多い足下ですが、避難後のことも考えて準備をしておくとよりいいと思います。
投稿者: 所長@管理人
避難所に持ってくるものはあらかじめお願いしておく
平時から避難所運営委員会が機能している地域では、避難対象になるであろう地域の人達に「避難するときに持ってきてほしいものと持ってきてほしい量」についてあらかじめお願いをしているところもあるそうです。
考えてみれば、避難所として指定されている場所のうち、どこを最初に使うのかやどんなものが使えるのかなど、知っているようで知らないことがたくさんあります。
小さな集落で普段使っている公民館などが避難先であれば、ある程度どこに何があるかがわかっているので何を持って行けばいいのかイメージもつきやすいと思うのですが、例えば学校や体育館、行政施設といった場所だと、何があるのか何が必要とされているのかイメージが沸かないことも多いと思います。
避難所が避難所として機能するためには避難が長期化したときにも対応できるだけの設備が必要となりますが、残念ながら大きな場所になればなるほど、避難者用に使える道具がなくなっていくというのが実際のところで、避難時には家からさまざまなものを持参しなくてはいけないことになります。
でも、例えば「食料はそのまま食べられるものを2日分」とか「水は一日1リットルとして2リットル」といった風に具体的に避難所に持って行くものが指示されていれば、準備する方はそれに従って準備すれば良いのでかなり気分が楽になります。
いつ避難所が設置され、いつまで耐えればとりあえずの救援物資が届くのかがわかっていればそれまでの命を繋げばいいだけなので、避難所運営委員会の人達も具体的な目安を指定でき、初動は各自が賄ってくれることが基本になっているので、避難所の設置初期におきるさまざまなトラブルの一部でも心配をしなくても済むようになります。
災害時にその避難所が避難所として機能できるのかということは、恐らく災害が起きてみないとわからないところはあります。
ですが、地域の避難者を安全確実に受け入れて困りごとをなるべく減らすためには、平時からさまざまな約束事を地域全体で共有しておくことです。
せっかく地域に避難所が指定されているのであれば、その地域で避難者を受け入れるための避難所運営委員会を普段から開催してお互いの顔つなぎをし、さまざまな約束事を決めておくようにすることをお勧めします。
避難所に非常用持ち出し袋を持って避難することは自助ですが、避難所の設営や補給物資の管理、そして避難者に持ってきてもらうものを消えておくのは地域における共助になります。
自助と共助を上手に組み合わせて、避難後に飢えや渇き、睡眠不足で苦しむことがないように準備しておきましょう。
避難所のニーズと避難者のニーズ
災害で開設される避難所は、災害で住む場所を失った人にとって生活の核となる場所です。
また、支援物資や情報の集積地であり、場合によっては復旧支援の拠点ともなる、非常に多機能な場所でもあります。
最近はコロナ渦で在宅避難が推奨されていますが、それでもさまざまな事情で住むところを失い、避難所へ逃げ込む人がいなくなるということは考えにくいことです。
その時に少し注意をしなければいけないことは、避難所における支援物資の要求を始めとするさまざまな支援要請の仕方です。
避難所での避難者が多いほど必要とされる物資やサービスは多岐におよぶことになりますが、その際にその避難所でそれを必要とする人が多いほど要求の優先順位があがるということが起こります。
逆に言うと、そのアイテムがないと生活が立ちゆかなくなる人であっても、そのアイテムを必要とする人が少数であれば、避難所としての優先順位は下がると言うことです。例えば、乳児用のおむつが欲しいと思っても、その避難所で多くの人が必要としているのが大人用おむつであれば、届くのは大人用おむつが優先されて乳児用はいつまでも届かないことになります。
また、避難所では避難所を運営するための運営委員会が結成されますが、その委員達が不要と判断すれば支援物資の要求さえされないということになり、過去には生理用品を始めとする衛生用品が運営委員により不要とされてしまってその避難所で生活する人達が困ったというようなことが起きています。
こういった隠れてしまうさまざまな要求を発掘するためには避難者から直接意見を確認できる場が必須となりますが、行政はどうしても平等という部分に拘って後手に回ってしまうため、NPOや支援団体がそれぞれに立ち入ってそれぞれの対象者からニーズを引き出すという作業を行っています。
これはどちらがいいというわけではなく、避難所としてのニーズと、避難者としてのニーズが異なっているだけですから、対応が異なってくるのも仕方が無い部分があります。
最近ではSNSで避難所で不足しているものの支援要求をすることも増えていますが、そのSNSでの発信は「避難所のニーズ」なのか「避難者個人のニーズ」なのかをしっかりと見極めないと、SNSを見た人が一斉に支援に動くと避難所に同じものが大量に届いて逆に困ったと言った事態も起きます。
支援要求をする際には、それが誰のニーズなのか、いつ時点のニーズなのかをはっきりさせ、具体的に必要とする数量もあわせて発信する必要があるということを情報を出す側も受け取る側もしっかりと考えておく必要があると思います。
一番いいのは、できるだけ避難者のニーズは自分の非常用持ち出し袋に詰めておき、ある期間は自分のニーズを出さなくても大丈夫なようにしておくことです。わかっているものはあらかじめ避難所にある程度ストックしておくことも一つの方法でしょう。
避難所のニーズと避難者のニーズは異なり、それぞれに分けた対応が必要なのだと言うことを前提にして、支援物資やサービスを届けたいですね。
余談になりますが、避難所の支援でもっとも問題となってくるのが水です。避難した時点では確かに不足しているものなのですが、給水車や行政の支援物資として真っ先に供給されるのも水ですから、遠方で飲料水を買って宅配便などで送ったとしても届く頃には充足していることが殆どです。
もし送るのであれば、それが本当に支援になるのか、現地の場所取りになってしまうのではないかを充分に考えた上で送られることをお勧めします。
また、避難所支援といって古着を大量に送る人もいますが、被災者はほとんど着ません。逆の立場になってもらえればわかると思うのですが、さまざまな形で新品が供給されることが多いので、古着はただのゴミです。
災害ゴミを処分しなければならない環境にさらなるゴミを追加することは絶対に止めましょう。
台風の進路予想図の見方
近づいてきている台風14号は進路予測がちょっと難しいようで、かなり大きな予報円が描かれていますが、この予報円を始めとする台風の進路予想図について、あなたはご存じですか。
恐らく、なんとなくのイメージはあると思うのですが、それを言葉にしようとすると結構難しいものです。
今日はこの台風の進路予想図の見方を再確認しておきたいと思います。もしご存じでない方がおられたら、せっかくなので覚えていただけるとうれしいです。
1.台風の進路予想ってなんのため?
台風が発生すると、被害や事故を防止するために台風情報が発表されます。
これは台風が発生し、どのような状態なのか、そしてどこへ向かうのかを予測するもので、最近では気象庁を始め世界各国の気象担当機関がさまざまな予測を出しており、矢印のたくさんついた進路予想図を見たことのある方もおられるのではないでしょうか。
この台風情報、台風が発生すると発表時点から24時間後までの予想は3時間ごとに、120時間先までは6時間ごとにそれぞれ提供されます。また、日本列島に近づいて災害などが予測される事態になると、1時間ごとに現在位置と1時間後の推定位置が発表されるようになっていて、その台風の影響域から日本連騰が抜けるまではいずれかの方法で情報提供が続きます。
台風に備えるためにはいつ頃来るのか、自分の住んでいる地域はどうなるのかという情報が必要なので、この進路予想は非常に重要なものです。
2.台風の進路予想図
台風の進路予想図は次のような図面になっています。
青線は今までの進路です。
赤い円はその台風の「暴風域(風速25m/s以上)」です。
かなり見にくい状態になってしまったのですが、黄色の円はその台風の「強風域(風速15m/s以上)」です。
黒い丸印(わかりにくいですが破線です)の部分は、その時間にその円の中に台風の中心が来る確率が70%とされる予報円で、黒線(これも破線です)は予報円を結んでいるものです。
気をつけておいて欲しいのは、台風の中心は予報円の真ん中にくるのではないということです。台風の中心が予報円内のどこかに来る可能性があるというになっており、その確率は70%とされています。そして、予報円の外側にある赤線は、台風が予報円の中に来たときに暴風警戒域となる可能性のある範囲を表しています。
台風の中心位置によっては、暴風域にはいらない可能性があるということです。また、暴風域がなくなると予測されている時点でこの赤線は消えて予報円だけとなります。上のサンプルでも3日目には赤線が消えた状態になっています。
3.台風のサイズ
台風は10分間平均風速が17.2m/s以上の風を伴うものだということはご存じだと思いますが、その大きさや勢力を表す表現というのも、気象庁発表では決められています。
その用語は次のとおり。
例えば「大型で非常に強い」と書かれると強風域の半径が500km~800km未満で最大風速が44m/s~54m/sの勢力があることになります。
最近の台風は迷走するものも多く、進路の予測がかなり難しい状態のようです。
最初の予測で範囲ではなかったから安心するのではなく、定期的に気象情報を確認して予報円や暴風警戒域に変化がないかを確認し、もし影響がありそうな予報に変わったら、しっかりとした対策を取るようにしてくださいね。
災害遺構を訪ねて11「大神楽の農魂之碑」
益田市美都町都茂の大神楽地区。急な傾斜に棚田が作られており、益田の観光名所の一つとして紹介されているようなきれいな場所ですが、その袂に「農魂之碑」と書かれた碑が置かれています。
農地開拓地か、ほ場整備完了の地にはよく置かれるタイプの碑なのですが、調べてみるとこれは災害がきっかけとなってできた碑でした。
昭和47年の大雨で、この大神楽地区の棚田は地すべりを起こし、耕作が危ぶまれる状態になったそうです。
その後、地すべり対策とほ場整備を同時に行うことで、大神楽の棚田は立派によみがえり、その地すべり対策事業とほ場整備事業が終わったことを祝して建てられたのがこの「農魂之碑」だそうです。
完成した頃の写真ではこの農魂碑の向こう側に整備された棚田が見えていたのですが、現在は竹林が生い茂って見えなくなっています。
ただ、大がかりな農地整備をしてまでここを農地として再生させたかった当時の人達の思いを、この碑を見ていると感じます。
乳幼児のいるご家庭で用意して欲しい避難所グッズ
乳幼児のいるご家庭では、災害時には自宅待機が一番お勧めですが、さまざまな状況によってどうしても避難所に避難しなくてはいけないケースも出てきます。
その際に問題になるのが、乳幼児への授乳やおむつ交換、就寝場所の確保です。
だだっぴろい避難所の中で、乳幼児がたくさんいれば配慮してもらえるかもしれませんが、年寄りばかりの地域だとそういった配慮はなされない場合が多いです。
誤解のないように書いておきますが、年寄りの多い地域であっても、避難所の設置計画がきちんとなされていて乳幼児がいることが認識されていれば、そういった配慮はしてもらえる場合が殆どです。
ただ、避難所の設置計画がなくなし崩しに避難所が設置された場合には、どうしても声の大きなものや数の多い人に運営の意見が振り回されてしまい、乳幼児のいるご家庭だけでなく、障害者や要支援者など、俗に言われる「生活弱者」は切り捨てられてしまう傾向が強いと言うことです。
そんななかで避難を継続するためには、早めの避難で場所を確保することと、乳幼児への授乳やおむつ交換の風景を物理的に他者から見えなくする日よけテントを持って行くことをお勧めします。
日よけテントは屋外で使うことが前提とされていますが、簡単に設営できて自立して建ってくれるので避難所内で外部からの視線を遮りたいときにも役立ちます。また、おむつ交換などで発生する臭いをあるていど封じ込めることもできますから、ぶしつけな視線や臭いに対する苦情を受けなくても済みます。
余談になりますが、災害時には布おむつは洗濯できないことが殆どなので必然的に紙おむつを使うことになるのですが、交換後の臭いを抑えるために臭い抑制能力のあるビニール袋も一緒に用意しておきましょう。
それから、避難所は防犯上完全に消灯されることはまずありません。そのため乳幼児の生活リズムに影響が出る可能性がありますが、日よけテントがあれば、タオルや毛布をかけることである程度内部を暗くすることができるので生活リズムを守ることも可能になります。
また、母親が一緒に昼寝していても外部から見られる心配がありません。
正直に言えば、できる限り早く被災区域外に広域避難したほうが乳幼児のためであり、授乳している母親のためにもなりますので、避難計画を作るときにはそこまで検討しておいたほうが確実です。
大切なのは「乳幼児の健康と生活を守る」こと。そのことを前提にして、あなたの家の避難計画を立てるようにしてくださいね。
【活動報告】「災害時外国人サポーター養成研修」を受講しました
10月4日に江津で開催された島根国際化センター主催の「災害時外国人サポーター養成研修」に当所から2名参加し、研修をうけてきました。
「災害時外国人サポーター」というのは、主催者の説明によると災害時に島根県と島根国際化センターが共同で設置する多言語支援センターからの依頼を受けて、「掲示物の日本語をやさしく分かりやすく翻訳する」「被災した日本語がうまく使えない外国人の困りごとを聞き出す」といった仕事をするボランティアなのだそうです。
日本語しか話せなくても大丈夫なボランティアだということで、筆者も登録していたりします。
災害後、避難所に掲示される情報は日々更新されていきますが、日本語がしっかりと読める人が対象の文書が多く、言い回しも特殊なものが多くなります。
それらの文章をわかりやすく、やさしく、必要な情報に絞った日本語への再翻訳を行うことで、簡単な言葉なら理解できる外国人等に正確に情報を伝えることができます。
「やさしい日本語」といわれるこの翻訳は、普段使っている言葉の意味をわかりやすく書かなければいけないということで、結構頭を使います。正解はないのですが、どうやったらうまく伝わるのかを考えていくのはなかなか面白いものです。ある部分では普段使っている言葉を再発見しているのかもしれません。
また、避難所へ巡回して日本語がうまく使えない外国人の困りごとを聞き出すという仕事ですが、これは避難所内での意思疎通をうまく図るために必要なことでもあります。
避難所は避難所運営委員会が設置されてその避難所に関する必要なものや情報を避難者に提供することになるのですが、このときにどうしても少数派の意見は通りにくくなります。
例えば、大きな声で自分の意見を主張できる人の意見は簡単に通っても、言葉がよく理解できない外国人他の、いわゆる「言葉がうまく通じない人」のニーズは聞き取るのに手間なので放置されがちですし、「言葉がうまく通じない人」は自分のニーズを自分で上手に伝えることもできません。そのため、例えば災害時外国人サポーターが避難所に立ち入って「言葉のうまく通じない人」のニーズを聞き取り、避難所運営委員会や行政などに繋いでいく必要があるのです。
また、状況や何が起きているかわからないことからさまざまな方法で自分たちを守ろうとしますが、その姿勢が他の避難者にはうまく理解されずに軋轢が生まれてくることがあります。これらは情報がうまく伝わらないことから発生しているものなので、無用な軋轢や誤解を生まないためにも、情報を全ての人にきちんと伝わるようにする。そのために避難所巡回という形を取って被災した日本語がうまく使えない外国人の困りごとを解決する必要があるのです。
最近では「VoiceTra」といった優れた翻訳アプリもいろいろとありますから、通信環境が使えるのであれば、日本語しか話せなくても何とかなると思います。
ただ、気になったことが一つ。最近はコロナ禍で自宅避難が特に推奨されていますので、避難所だけで無く自宅避難している人達のニーズのくみ上げまで考えておく必要がありますが、対象となる人がどこに住んでいるのかがわからないと手のうちようがありません。その情報がどのように提供されるのか、されないのかが不明なため、自宅で放置される外国人被災者が発生するかもしれないと感じています。
避難所は地域の災害支援の拠点となるところです。そこを拠点としてきちんと機能させるためにも、あらゆる被災者に目を向けてニーズを吸い上げる手段を確保しておく必要があると思います。
ところで、今日の説明では島根県内でこの制度ができて3年目。そしてサポーターは55名だそうでまだまだ支援を行うには人が不足している現状です。
近いうちに島根県東部会場でも開催されるような話でしたし、おそらく来年も県西部で同じような研修があると思いますので、どのようなものか興味のある方は、是非一度参加して研修を受けてみてください。
「災害時外国人サポーター養成研修」とありますが、受講後に登録書を提出して初めて登録されるので、「受講=必ず登録」ではありません。あくまで話を聞いてから判断できるようになっていますので安心して参加してください。
そして、災害時にはさまざまなボランティアがありますが、こういうボランティアもあるのだということを知っておいて欲しいと思います。
量にあわせるか入れ物にあわせるか
非常用持ち出し袋のお話をしたときに良く出てくるものの一つに「食料品や水はどれくらい入れたらいいのか」というものがあります。
非常用持ち出し袋のサイズによって量が決まるので、「安全に持てる範囲で入れてください」という回答になります。
市販の非常用持ち出し袋を見ると、本当にいろいろなものがセットされています。ものによっては非常食や長期保存水までセットされていて、これ一つ備えればOKというようなものも売られています。
これらの非常用持ち出し袋に共通して言えるのは、持ち出すものの量によって袋の大きさが決まっていると言うことです。
妙な言い方になってしまいますが、袋に余裕がないので何か自分が必要なものを収めようとすると何かが入らないという事態が起こりえます。
例えば、あなたがコンタクトレンズのケアセットを収めようとすると、非常用持ち出し袋の中のクッションを追い出さないと収まらないといった感じです。
非常用持ち出し袋の中身は、いろいろ入っていれば入っているだけ精神的に安心しますので、非常用持ち出し袋は大型化する傾向にあります。
中には大型化した結果、背負うのではなくコロがついていて引っ張って歩くようなものも出ていますが、そこまでいくと非常時の持ち歩きに苦労するのではないかといらぬ心配をしたりもしています。
ともあれ、基本は「保温」「乾燥」「保水」「情報」「安眠」の条件を満たせるようなアイテムをセットしていけばあなたに最適な非常用持ち出し袋を作ることができます。
その結果として入れ物が大きくなるか小さくなるかは人それぞれですが、いずれにしても「飲料水」と「使い捨てカイロ」は必ず入れておいてください。
怖いのは体を冷やすこととのどが渇くことです。どちらも人の判断を鈍らせてしまうものなので、判断力を維持するためにも準備を忘れないようにしてください。
非常用持ち出し袋と嗜好品
災害が起きると、甘味や酒、たばこといった嗜好品が手に入りづらくなります。
特に酒やたばこは支援物資としてはまず来ませんので、流通が再開されるまではいずれもお預けとなってしまいます。
ただ、酒はともかくたばこが手に入らないといらいらする人も多いのではないでしょうか。
この際「禁煙」といけばいいのですが、なかなかそれは難しい。
そうであるならば、あらかじめ非常用持ち出し袋にセットしておく必要があります。
甘味やたばこは愛好者にとっては精神安定にかなり有効ですので準備していても損はないと思います。ただし、嗜むときには周囲の人が困らないように配慮することは重要です。
酒については、判断が鈍ったり他者に迷惑をかけたりといった事態が起こりえますので非常用持ち出し袋には入れない方が無難ですが、許す範囲で自分の精神安定に役立つものをいれておくといいですね。
ちなみに、嗜好品と同じようなものにゲーム機があります。スマホゲームなどもそうなのですが、避難先で自分が楽しめるものを持って行くのは大切なことです。
ただし、こちらでよく問題になるのは音。ゲームで流れている音はゲームをしている本人以外にとっては非常に耳障りで、場合によってはケンカや殺傷事件に発展しかねない危険性をはらんでいます。
ゲーム機を持って行く場合には、かならずイヤホンなどの音が周りに漏れない装備も必ず一緒に準備しておき、遊ぶ場合には必ずそれをつけ、周りを困らせないようにしておいてください。
飲料水の必要量
「飲料水は一人一日2~3リットル以上必要」と言われていて、災害が起きるたびにその分量が増えてきています。
家庭での備蓄量も3日分から7日分、現在では一部で10日以上用意すべきと言う声も聞こえてきており、この計算に従うと、水だけで一人30リットル。素直に従うと備蓄品で一部屋埋まってしまうような状況になってきています。
もっとも、ここで書かれている必要量は一般的な話で、実際には年齢や体の大きさ、季節や普段摂取している量などによって本当に必要な量は人によってかなり変化します。
本気で水の量を把握したいのであれば、まずは自分や家族が一日にどれくらいの水を摂取しているのかを大ざっぱでいいので確認してみましょう。水だけで無く、お茶やコーヒー、清涼飲料水といったものも全部含めます。また、食事を作るときに使っている水もこの計算に含めて家族の人数で割れば、一日一人あたりどれくらいの水が必要なのかが把握できますので、これを基準にして準備するようにします。
思ったよりも水を摂取していない人、思った以上に水を摂取している人、人によってかなりの個人差があることがわかると思います。
ただ、これらを充分に満たすための水の備蓄をしようとするとお金も場所も重さもありますので現実的ではありません。そのため、水道水を確保するためのバケツやジャグなどを用意しておくと安心です。
次に非常用持ち出し袋にいれるべき分量を考えてみます。
先ほどの飲料水としての一日摂取量に、非常食として用意しているものに必要な水の量を加えます。。例えば、アルファ米であれば水がないと食べられませんし、缶パンなら調理に水は不要です。
この二つを足すと非常用持ち出し袋に必要な水の量が計算できます。
次に重量を考えます。例えば、一日3リットルと考えて3日分を持って避難しようとするとそれだけで9kg。大人でも慣れていないと持って歩くのに躊躇する重さですし、この重さだとリュックサックもかなり大型なものでないと入りません。
では、最低量の1日2リットルだとしたらどうでしょうか。500mlのペットボトルが4本ですから、これなら持って歩けるかもしれません。
これでも重ければ、量を減らして自分が持てる重さにします。ただ、持たないという選択肢はありません。
考え方は「ないよりははるかにまし」なので、たとえ500mlのペットボトル1本だとしても、ないよりはずっといい。「飲むものがある」という安心感は精神安定上非常に大切です。
筆者自身は、子どもだろうがお年寄りだろうが自分で持てるものは自分でもってもらうべきだと考えていますので、どんなに少量でもいいので必ず水を持って避難するようにしてください。食事は一週間程度抜いても生きていけますが、水は3日も飲まなければ死んでしまいます。
最近はマイボトルを持って歩く人も多いと思いますが、それらも活用して、飲料水をしっかりと確保できるようにしてくださいね。