【お知らせ】Youtubeによる動画配信を開始しました。

 当研究所がいろいろとやっている実験や工作について動画にしてみました。
 1つあたり1~2分程度でまとめてある短くて簡単なものですので見やすいとは思いますが、あまり内容は濃くないかもしれません。

 今後座学や野外活動、活動報告なども追加して、できる範囲で少しずつ内容を増やしていきたいと思っていますので、興味のある方は一度ご覧ください。

https://www.youtube.com/channel/UCAc2P8BFRrjXWhxKOdoCTXA

(石西防災研究所のYouTube動画サイトへ移動します)

災害遺構を訪ねて14・石碑「益田川災害復旧竣工記念碑」

「益田川災害復旧竣工記念碑」と書かれており、益田川災害復旧工事が完了したことを記念して建てられたもの。

 災害に関する碑には大きく分けると3つのタイプがあると思っています。
 1つ目は死者や行方不明者に対する慰霊碑。2つ目が後世に教訓を伝える碑、3つ目が復旧に関わった人達を称える碑です。
 個人的な感想としては、碑の大きさ、立派さは3、1、2の順番になっているような気がしますが、今回ご紹介するのは3のタイプの碑です。
 昭和58年の水害で氾濫した益田川の河川復旧工事が完了したことを記念して建てられた碑ですが、碑のお隣には河川改修が終わったことを称える文字と、それに関わった期成同盟会の人の名前が彫られた石が置いてあります。

益田川改良復旧期成同盟会のお歴々のお名前が記された石版。災害復旧は普通に行われると思うが、このお歴々の活躍で無事に終わったと言うことなのだろうと考える。

 確かにこの河川復旧工事と益田川ダムの完成もあって、益田川は越水していないのですが、わざわざ工事を施工したわけでもない人達の名前を刻む理由がよくわかりません。
 行政機関が復旧工事をすると必ずこの手の碑が設置されるのですが、どうせお金をかけるのであればもう少し何かの役に経つ碑が作れないのかなと思ったりします。
 この竣工記念碑は、「災害遺構を訪ねて1」で紹介した「58災害防災祈念碑」の川向こう、益田川を挟んで反対側に置かれており、道路脇にありますのですぐわかると思います。

雪道の歩き方

 普段雪になれている地域はともかくとして、普段雪の降らない地域で雪が降ると大騒ぎになります。
 公共交通機関のマヒや交通事故の増加はともかく、歩くときに雪や氷で滑って転倒、救急搬送になってしまうのは、本人の注意次第で防げると思いますので、今回は雪道の歩き方について考えてみたいと思います。

1.滑るワケ

雪道や凍った道でなぜ滑るのかというと、靴の裏の接地面と地面の間にある雪や氷が接地圧によって溶けて水になり、その水によって滑っています。
逆に言えば、靴底と地面との間にできる水を上手に排水できれば、滑りにくくなるということになります。

2.滑らないようにするには

1)雪道では歩幅を狭くする

 慣れている人にとっては当たり前以前に身体が覚えていることなのですが、雪道や凍った道を歩くときには歩幅を小さくするのが基本です。

2)接地には足の裏全体を使う

 いろんな歩き方があるのですが、凍結した道や雪道に関して言えば、足の裏全体で地面を踏むように歩きます。
 蹴り出すのではなく、足の裏全体で移動させるといった感じで歩くと、滑りにくくなります。

3)両手は空けておく

 歩くときにバランスが取りやすいように両手は空けておきます。もし転倒したときにも、手が出ることで身体本体へのダメージを減らすことができます。

4)裏にパターンがしっかりとある履き物を使う

 革靴や女性用の靴などではよく裏が真っ平らの靴がありますが、雪道や凍った道でそのような靴を履いていたら水の逃げ場がありませんから滑らない方がおかしいです。
 長靴や登山靴などの靴底のようなビブラム形状の靴底か、そこまでいかなくてもしっかりと凸凹のある靴底のある靴を履くようにしてください。

5)滑り止めを使う

 どうにもならない場合には、滑り止めを使いましょう。市販品の滑り止めもありますし、なければ包帯や麻縄といったものでも十分に滑り止めになります。
 滑るのは接地面と地面の間に水の膜ができることによって滑るので、膜となる水をどけてやれば格段に滑りにくくなります。
 ただ、上記(1)から(4)までがうまくできていないと、滑り止めをつけても大きく滑ることがありますのでご注意下さい。

 最後の滑り止めについては、包帯を巻いたもので歩いてみた映像がありますのでリンクしておきます。
 興味がある方はご覧になって下さい。

羽毛のベストの暖かい着方

 強烈な寒気のせいで一気に寒くなっていますが、あなたのところの暖房は大丈夫ですか。
 暖房器具で部屋をしっかりと暖めることは大切ですが、もしも停電などで暖房がうまく使えないときや寒い中を過ごさなければならない状態になったとき、手元に羽毛ベストがあれば試してみて欲しいことがあります。
 それは、羽毛ベストを下着の上に着て、その上に服や外套を着るということです。

こんな風に肌着の上に羽毛ベストを着込む。この上に服を着ると服の上にベストを着るよりも格段に暖かい。

 羽毛は体温で温めることによって膨らみ、羽毛の間に空気を貯めて冷気を遮断する構造になっています。
 体温を感じられるところに近づけば近づくほど冷気を遮断しやすいので肌の上に着るのが一番なのですが、羽毛系の着る物は簡単に洗濯できないという欠点があるので、下着の上に着込んでください。
 それからその上に服などを着て羽毛ベストが外気に触れないようにすると、かなり暖かくなります。
 寒くてたまらないときには、一度試してみて下さい。

除雪用スコップあれこれ

 除雪用スコップは素材と形状で異なる使い方をする必要があります。
 ご存じだとは思うのですが、今回はこの除雪用スコップについて整理したいと思います。

1.形状

 スコップの形状は2種類あります。
 一つが「平スコップ」と呼ばれる先端が平らになっているもの。
 もう一つが「剣先スコップ」と呼ばれる、尖っているものです。
 平スコップは柔らかいものを大量に運ぶのに向いており、逆に剣先スコップは堅いものを突いて破壊し、掘り出すのに適した形になっています。
 積もりたてなどの柔らかい雪であれば平スコップ、圧雪や凍結で堅くなっている場合には剣先スコップが向いています。

2.素材

 剣先スコップは殆どが金属でできています。これは堅いものを突いて破壊し掘り出すために使うため、必然的に金属を使わないと役に立たないからです。
 平スコップは、柔らかいものをたくさん運ぶという目的から、除雪用スコップではいくつかの素材があります。

1)プラスチック

耐久性はありませんが、とにかく軽くて取り回しがしやすいです。
少し堅い雪や氷だとまったく歯が立ちませんし、掘ったら壊れてしまうこともありますが、先端が金属で補強されているものであれば、それなりに使えます。

2)ポリカーボネート

プラスチックと同じく軽く、プラスチックよりも丈夫に作られており割れにくいのが特長です。ただ、プラスチック同様圧雪や氷には歯が立ちません。

3)鉄

とにかく丈夫。曲がっても叩けば直せますし、少々手荒く使っても大丈夫です。ただ、重たいのが難点。

4)アルミ

 鉄には劣るがやはり丈夫。重量は鉄に比べると軽いが、耐久性も鉄には劣る。

 金属製のスコップは、全部が金属でできているものと持ち手や柄の部分が木や他の素材のものがあります。
 全金属製のものは持ち手や柄が木製のものに比べると重量が軽くてよいのですが、持つときに凍傷にならないように断熱のしっかりとした手袋などを着用してください。

 除雪用スコップはさまざまなものがあります。自分の住んでいる地域の雪質にあわせて準備しておきましょう。

大雪が降る前に

 大雪が降るような気象条件だと、停電や電話の不通、水道管の凍結などが発生することがあります。
 また、積雪により流通網が混乱し、食品などが届かなくなることも起こるでしょう。
 短時間に一気に降り積もるような状態だと、玄関扉やドアなどの出入口が雪により開かなくなることも想定されます。
 それを考えると、ある程度家から出なくても済むような準備をしておく必要が出てきます。
 大雪もいつまでも続くものではありませんが、さまざまなトラブルが解決するまでを考えると、5日~7日分の食料備蓄が必要です。また、水道が凍結していると水も得られませんので、水も食料に合わせた日数分を準備しておきましょう。
 通常の大雪であればガスは普通に使えますので、ご家庭でガスを使っている場合には、調理用の燃料の心配はありませんが、オール電化のおうちの場合にはカセットガスコンロなどを準備しておいた方がいいでしょう。
 長期の停電になると、電気を使った暖房器具は使えませんので、石油ストーブやカセットガスストーブなどを用意しておくと安心ですが、換気には充分に注意してください。また、炭を屋内で使用すると一酸化炭素中毒になる危険がありますので、特に断熱のしっかりとしたおうちでは使わないようにしてください。
 暖房機器が無い場合でも、発熱素材を使った衣服の着用や使い捨てカイロ、白金カイロなどの準備があると家の中でもそれなりに快適に生活が可能です。開き直って布団の中にいることに決めてしまえば、湯たんぽも有力な暖房器具となります。
 トイレの問題もあります。
 汚水管が凍結することはあまり心配いらないと思いますが、水洗トイレの場合、水道が凍結してしまうとトイレも使えなくなります。
 お風呂の残り湯を確保しておいて、水洗トイレが使えるようにしておいた方がいいでしょう。
 また、雪が降り終わった後の除雪ではスコップが必要です。スコップにもさまざまな種類がありますから、お住まいの地方に応じた除雪用スコップを準備しておきましょう。
 最後に、お車をお持ちの方で露天駐車の場合には、降雪前にワイパーブレードを上げておくのを忘れないようにしましょう。
 普段大雪を経験していない地域の方が混乱が起きやすいですので、普段雪がなくて大雪の予報が出ている地域の方は気をつけてください。

奇妙なランタン

 先日とある百円均一ショップで面白いものを見つけました。

 商品名は「ベースライト」。ペットボトルの下に置くと、ペットボトルをランタンにしてくれる道具だそうです。
 単4電池3本で48時間連続点灯可能だそうなのですが、私が買った物はスイッチが甘く、offにしてもたまに点灯しているという不思議な状態になってます。
 これはどんな目的に使うのかよくわからなかったので一つ購入して考えていたのですが、ひょっとして災害対策商品なのかなと気がつきました。
 台風などで停電したとき、懐中電灯をランタンに変える道具としてペットボトルとの組み合わせがあったことを思い出したからです。
 ただ、あれはあくまでも懐中電灯しかなくてそれをランタンに変えるために急場しのぎでつくられたものであって、予め準備できるのであれば、こういう道具よりも素直にランタンを勝った方が早いし使い勝手もいいのではないかと考えてしまいました。

表面は鏡面加工がしてあって、水の反射を上手に利用できる加工がしてある。

 もっとも、これをジュースなどの色水でやってみたら面白そうではあります。
 どんな目的で作られたのかはよくわかりませんが、いろんなことを考える人がいるものだと感心してしまったので、ちょっと取り上げさせていただきました。

ベースライトを使ってできたランタン。それなりに明るい。

災害遺構を訪ねて13 石碑「昭和18年大水害死者菩提碑」

 益田市七尾町にある妙義寺は由緒あるお寺です。
 こちらのお寺の道路を挟んで反対側の敷地の一角に、「昭和18年大水害死者菩提碑」がひっそりとお祭りされています。


 菩提碑、といういい方はあまり馴染みがないのですが、菩提という言葉を調べてみると「死後の冥福」という意味があるそうなので、「昭和18年水害の死後の冥福を祈る碑」といった意味になると思われます。
 昭和18年水害は、戦時中と言うこともあってかあまり情報が見当たらないのですが、こういった碑があることを考えると、益田市一帯でそれなりの死者が出たのかなと考えられます。
 碑そのものには細かいことは書かれていなかったのでよくわかりませんでしたが、敷地はきれいに管理されていました。
敷地の形から考えると、元々は妙義寺の境内地なのかもしれません。
敷地内には益田兼堯像や行者が寄進したと思われるお地蔵様、喜捨により作られたと思われる天保年間の刻みのある石橋などがあり、ちょっとした公園のようにも感じました。
柵などはないので出入りは自由にできますが、住宅地の中ですので行かれる際にはお静かにお願いします。

避難所としての神社やお寺を考える

益田市高津町にある柿本神社から街を望む。かなり高い位置に建てられていることがわかる。地元の人達は過去の水害ではここに避難して難を逃れていたという。

 古来から神社やお寺は災害の際の避難所の役割を担ってきた施設です。
 最近でこそ公民館や学校と言った施設が避難所として割り当てられていますが、地域の人にとって身近な神社やお寺といった施設はみんなが知っていて安心して逃げ込める公共施設だったと言えるからです。
 そこで知っておいた方がいいなと思ったのが、古い神社は水害や津波からの避難所という性格を持っていたと言うことです。
 江戸中期以前の神社に関して言えば、このルールはほぼ間違いないのではないかと思っています。
 どこかへ旅行や出張などで出かける際には、避難所を確認することはもちろんですが、古い神社の位置も確認しておくといざというときに逃げ込む選択肢が増えると思います。
 お寺に関して言えば、このルールはあまり当てはまりません。なぜなら、江戸時代の統治の方法として寺社を利用していましたので、必然的にお寺は街場にできることが多くなりました。
 江戸時代以前から同じ場所にあるようなお寺であれば水害や津波からの避難所としての性格を持ち合わせているかもしれませんが、その確認はなかなか難しいのではないかと思っています。

益田市染羽町の天岩勝神社。水害浸水想定区域に入っているが、写真奥の本殿までは水が来ないと予測されている。

 もしも興味のある方は、古い神社や古いお寺の位置と水害や津波の想定区域、あるいは実際に被災した場所と突合してみてください。 少なくとも古い神社はこの条件にほぼ合致していると思います。
 ただ、都会地では公共事業に伴う移転などで元の位置から動いている神社も多くありますので、そこの部分については意識しておいてください。
 また、神社もお寺も境内地を間借りして避難させてもらうのですから、その場の所有者に対してだけでなく、お祭りされている神仏に対しても礼儀を忘れないようにしたいですね。

災害対策は適材適所で考える

 個人だと全部を自分でしなければ誰もやってくれませんが、施設や自治会、団体になるとそれなりに人がいますので、業務を分担すると言うことが可能です。
 災害対策にとって分業できるというのは非常に大切なことなのですが、分業するに当たっては担当する業務の向き不向きをしっかりと確認した上で割り当ててみてはいかがでしょうか。
 というのも、往々にして「この役職はこの仕事」とか、「新人はこれ」などといった通常業務と同じような割り当てをしてしまいがちなのですが、災害対策は平常業務と違って優先度が割と低くなる傾向のある業務ですので、やる気のない人に当たってしまうと全く何も備えのない状態で災害を迎えることになってしまうことが多いからです。
 そこで、業務を整理して誰がどれをやりたいのかについて募集を行い、希望した人にやってもらってはいかがでしょうか。もちろん全体の動きは全員がある程度把握していないとうまく動けませんが、全員が同じことができるよりは、得意な人が得意なことをやるほうが楽しいし効率的です。
 お互いの得手不得手や好きなこと嫌いなことなどをオープンに話し合って決めていくことで、それぞれに納得感が生まれるのではないかと思います。
 特定の人に仕事が偏らないように割り振る仕事は肩書きのある方達にやっていただくことにはなりますが、備えなくてはいけないことなので好きな人に段取りをしてもらうのが一番だと思います。
 災害対策を通常業務の一つとして位置づけ、業務時間の中で予算をもらってきちんと対策をすることが、その施設や自治会、団体にとって非常にメリットが大きいのではないでしょうか。もちろん当研究所もご相談があれば、できる範囲にはなりますがお手伝いさせていただこうと思っています。
 コロナ禍で業務が落ち着かない現在だからこそ、新しい年になった今だからこそ、一度考えてみて欲しいと思います。