避難所の環境について考える

 避難所、避難場所、一時避難所(以後「避難所」とします)については過去にも触れているところですが、ここのところ続いている大規模な災害の報道を見ながら考えることがあります。
 それは、避難所の収容人数の問題です。
 例えば、内閣府の発表によると7月3日から4日にかけて降り続いた九州南部の大雨では避難指示(緊急)は約110万人に出されたそうです。そのうち、実際に避難した方が6,301人。率にすると0.005%となり、殆ど避難していないとみることができます。
 では、避難所の収容人員はどうなのでしょうか?
 市町村が定める防災計画に記載された避難計画を見る限りでは、避難所の周辺人口をそのまま収容するような計画になっていることが多いのかなと感じています。
 例として、当研究所のある益田市高津町の避難所で考えてみたいと思います。
 研究所から一番近い避難所は「高津小学校」です。平成30年度益田市防災計画の想定では、収容能力は1,000名。圏域人口は1,554名とされていますので、この時点ですでに収容能力を超えています。
 ただ、実際に避難してきそうな地区の数字を拾ってみると1,038名となるので、これなら大きな誤差ではなさそうです。
 一時避難所として校庭が指定されています。国土地理院の地図からざっくりと面積を拾ってみたら5,857㎡。圏域人口一人あたりの専有可能面積は3.76㎡となります。
 仮に車で避難するとして、車のサイズを5m×2m=10㎡と想定すると、3人で1台分のスペースは確保されることになります。また、単にテントを設営するのであれば圏域人口をなんとか吸収することはできそうです。
 次に、避難所開設時には普通最初に解放されるであろう体育館で考えてみます。
 校庭と同じく、国土地理院の地図でざっくりと体育館の大きさを拾ってみると、その大きさは926㎡。実際の避難者になりそうな1,038名で割ると、一人あたりの専有面積は0.89㎡となり、スフィア基準で定められている難民キャンプでの難民一人あたりに必要とされる面積3.5㎡を下回る数値になってしまいます。
 一人寝るのに必要な面積が2㎡と言われていますので、1㎡を切ると寝ることもできません。その上、実際には避難者はそれぞれ荷物を持ってきますので、間違いなく収容できないという状態になるでしょう。
 逆に考えてみると、926㎡の体育館で3.5㎡の個人スペースを確保しようとすると、避難が可能なのは264人ということになります。
 想定人口の1/5にも満たない数字ですが、大抵の避難所の設定はこんな感じですので、避難所周辺に住む全ての避難者が避難してきた場合には施設がパンクしてしまうわけです。
 これは過去の大規模災害で毎回繰り返されている光景ですが、これに対して打てる効果的な手段というのはさほど多くはありません。
 自分が悲惨な目に遭いたくなければ、なるべく自宅で過ごせるように、もし避難するのなら安心して過ごせる避難先をあらかじめ選んでおく必要があるということです。
 家の立地条件から見て避難すべきなのか避難すべきでないのか、避難するとしたらどこへどんな手段で行くのか、そして避難所でどのように生活をし、どういう状況になったら自分の避難を解除するのかということをきちんと決めておくこと。
 地震は突然やってきますが、それ以外の殆どの災害はあらかじめ起きるのはわかっている場合が多いので、被災想定区域外に出てしまうのも避難の一つです。
 もう一つ、大規模な災害が起きると医療・介護体制が維持できません。そのため病気や障害をお持ちの方は、あらかじめ何か起きた場合の対応方法をお医者様や介護担当者としっかり詰めておく必要があります。
 避難所では適切なケアはされないということを前提に、自分の避難計画を作っておくことをお勧めします。

家具の転倒防止は最初の一歩

 少し前に建物の耐震診断と耐震補強について触れましたが、建物に問題が無くても家の中で人が下敷きになってしまうものが家具です。

転倒防止用の支柱と壁と家具を貼り付ける不動王の組み合わせ。これ以外にもいろいろな装置や方法があるので、家の構造と家具の状態を考えて固定しよう。

  「防災の備えは、まず家具の固定から」と言われることも多いのですが、市内のホームセンターに出かけて転倒防止器具のコーナーを覗くと、あまり商品が動いているような気配がありません。
 お店の人に聞いても「大きな地震があったときはちょっと売れますが、それ以外は・・・」と苦笑される状況です。
 地域の歴史をさかのぼってみると、津和野町や吉賀町では震度6強の地震が何度も起きているのですが、そこまでしっかりとした家具の転倒防止対策をしているおうちがどれくらいあるのかなと考えてしまいました。
 大きな地震では、一番怖いのは家具の転倒によりその下敷きになることです。特に山間部の一軒家で一人暮らし状態のおうちも多いこの地域では、家具の転倒で下敷きになったら助けは来ないかもしれません。
 そのため、まずは家具類の転倒防止をしっかりとしておきましょう。とっさの時に動きが取れない寝室には、家具は置かないこと。
 そして台所の冷蔵庫や食器棚はしっかりと固定をしておくことです。
 地震だけは来る予兆がわからないので、いつきてもいいように準備だけはしておくことです。
 そして、転倒防止器具の取付はそう難しいものでもありません。
 できれば異なる方式のものを二つ以上備え付けておくことで、家具がひっくり返るのを止めたり、止められなくても逃げる時間を稼ぐことくらいは可能になります。
 さほど値段も高くなく、確実に命を守ることが可能になる転倒防止器具の取付をきちんとしておきましょう。

避難開始の合図を決めておく

 情報量が少なくても多くてもマスメディアからは文句が出るので難しいところなのですが、さまざまな場所で同時進行で起きている災害をその場で整理して判断を下すことは相当難しいことだということは理解していただけるでしょうか?
 行政の職員は行政のプロではあるかもしれませんが、災害対策のプロではありません。ましてや、行政改革で極限まで減らされている職員が、普段やっていないのに的確な災害対応ができるとは思わないことです。
 さまざまな警戒情報は、気象庁や国土交通省、都道府県、市町村からそれぞれに発信されており、そのままでは判断が難しいということで、先日導入された避難レベルにより一元的に管理しようとされています。
 ですが、本来レベルを発令すべき市町村は現場の対応に追いまくられることになりますので、避難勧告や避難指示(緊急)を出すべき市町村からの指示を待っていたのでは、遅れになる危険性があります。
 そのため、発表される情報の中から自分が避難を判断するための情報を決めておく必要があります。
 市町村が出す避難勧告や避難指示(緊急)は、その元となる情報もインターネット上で一般公開されていますので、自分が住んでいる場所で避難が必要な災害をあらかじめ確認しておき、例えば自分の住んでいるところが川のそばであれば、その川の水位を確認して、ある一点を超えたら問答無用で避難すると決めておけば、市町村の判断を待たずに避難を開始することができます。
 また、崖が気になるような場所に住んでいれば、都道府県が出している土石流警戒情報のタイルメッシュを確認すれば、自分のところが今どんな状態なのかを確認することができます。島根県の場合には土石流の警戒レベル3が発令されると住民への避難勧告を実施するとなっているので、これを目安に避難を判断すればいいと思います。
 今、行政は「災害レベル4は全員避難」ということを言っていますが、レベル4には避難勧告と避難指示(緊急)の両方が含まれています。お住まいの場所によっては、レベル4が出されたときにはすでに避難ができない状況になっている可能性もあるわけです。
 自分が行動を開始するための鍵を決めておいて、それを超えるような状況になったら速やかに安全な場所へ逃げること。
 それを徹底しておけば、命を守ることができます。
 そんな判断はできないといわれる方がいらっしゃるかもしれませんが、これは慣れでできるようになりますので、とりあえず一度やってみてください。
 難しい場合には、それができる人にチェックをお願いしておき、「逃げようコール」をしてもらうようにしたら、行政の出す避難情報よりも早く安全に避難ができると思います。
 いずれにしても、自分が逃げ出すための条件を整備して迷わずに逃げること。それが生き残るためには必要です。

体のケアとお化粧

 避難生活が続くと、だんだん気になってくるのが体の臭いとべとべと感です。
 若い人や女性では、特に気にされる人が多いのではないかと思いますが、お風呂にでも入らない限りは根本的な解決にはなりません。
 それでも、体を拭くことができればさっぱりしますし、水の入らないシャンプーを使えば、頭もそこそこすっきりとさせることができます。
 そこで非常用持ち出し袋に入れておいてほしいのが非アルコールタイプの「おしりふき」。
 これはそれなりに大きくて厚くて使い勝手がよいものです。夏場であればアルコールタイプもさっぱりして気持ちがいいのですが、体に合う合わないがありますので事前準備の時に一度試しておくことをお勧めします。
 また、水の入らないシャンプーは事前準備しておかないと、地方ではなかなか手に入りにくいアイテムですので、非常用持ち出し袋を作るときに一緒に準備しておくといいでしょう。
 それから、お化粧をする人は非常用持ち出し袋にもメイクセットとメイク落としは入れておいてください。普段メイクする人がメイクしない状況に陥ると、気力が萎えてくるものです。
 旅行の際に作られるようなお出かけセットを非常用持ち出し袋にセットしておくと安心です。
 そのとき、一つだけ気をつけておいてほしいことがあります。それは香り。臭いの強いものは御法度なので気をつけてください。
 避難所にはさまざまな人が避難し、生活をしています。その中には香りが苦手な人や気分が悪くなるような人もおり、あなたがいいと思う香りを悪臭に感じてしまう人もいるのです。
 さまざまな生活臭と混じるとせっかくの素敵な香りが周りの方に「悪臭」として記憶されてしまうことにもなりかねません。
 メイクの際に香水をつける方もいらっしゃるとは思いますが、避難所にいる間は香りのあるものだけは避けるようにしてくださいね。

災害関係の保険は自分で手続きをしよう

 災害が起きた後、何から手を付けようかと考えているときにやってくるのが、保険会社の手続きを代行してお金をたくさん受け取れるようにしてやろうと持ちかけてくる業者です。
 いかに申請手続きが大変かを力説し、保険会社と交渉して被害以上の保険金を受け取れるようにするということを言葉巧みに伝えて保険金請求手続きを代行しようと持ちかけてきます。
 手間のかかると思われる保険金請求手続きをしてくれて被害以上の保険金を取れるようにしてやるというのですから、そうでなくても災害の片付けでげんなりしている被災者に取ってみれば、面倒くさいことを肩代わりしてくれるありがたい存在のように見えます。
 もしも保険金請求手続き代行を依頼するのであれば、必ず契約書を交わすことと、その契約書を交わす前に必ず契約書に記載された手数料や成功報酬の額や率を確認してください。大概の場合、相当に法外なことが書いてあると思います。
 損害保険の保険金を請求する手続きは、業者を間に入れてやらなければいけないほど大変な手続きではありません。
 気をつけるのは、片付けを始める前に被災した状況の写真をたくさん撮っておくこと。
 被災者の数が多い場合、調査員が来るのが遅くなることもありますが、そこまで片付けずに待っているわけにはいきません。
 そのため、状況の確認できる証拠となる写真が必要とされるのです。また、この写真は行政機関で被災証明を発行してもらう場合にも使うことができます。
 ついでに書きますと、間に業者が入ったところで支払われる保険金には差はありません。手数料を払わないといけない分、自分が逆に損することになります。
 どうなんだろうと迷ったときには、面倒くさがらずに周囲の人の意見や、消費者センターへ連絡をしてアドバイスをもらうといいでしょう。
 また、自分の入っている保険のコールセンターや代理店に連絡をして手続きの方法を確認してみるのも手です。
 せっかく自分が支払ってきたいざというときのための保険金です。
 きちんと自分で手続きをして、自分の生活の再建に100%使えるようにしたいものですね。

避難先では暖かいものを口にする

 梅雨に入ってから、あちらこちらで大雨が降っています。先日の雨では、九州南部で降り始めからの雨が1000mmを超えたところもあるそうで、大規模な避難勧告も出されていました。
 ところによっては、現在も避難継続中の方がおられるかもしれませんが、体調管理には十分に気をつけていただければと思っています。
 さて、大雨で避難所に避難したとき、例えば今回のような梅雨前線によるものだと避難が長期化することがあります。
 そのとき、気の利いた避難所で無い限りは自分が持参した食料や飲料などで過ごすことになりますが、できればその中に「暖かいものを一品」加えるようにしてください。
 暖かいものは、飲み物でもご飯でもおかずでも構いません。暖かいものが一品あると、それだけで人間は安心することができ、仮に災害で被害を受けても、そこまで気力が萎えることは起きにくくなります。
 避難所が電気、ガス、水道が通じている状態であれば、暖かいものを作るのはそんなに難しいことではありませんが、意識していないと温かい食べ物があること自体を忘れてしまっていることもありますので、意識して暖かいものをとるように心がけてください。
 ただ、避難先が学校の体育館のような給湯施設を持たない場所だと、少し準備が大変かもしれません。

 大規模災害でよく見るタイプの直火かまど。災害後の避難所生活なら使えるが、災害が起きている状態でこれをやるのはあまり現実的ではない。

 例えば電気ポットや炊飯器があれば何らかの暖かいものを作ることができますので、そういった家電製品を持ち込むことも必要になってくるでしょう。
 また、土間や昇降口、建物の外周でコンクリートなどの引火しない材料で作られている場所があれば、そこを使って固形燃料やカセットコンロを使った調理もできるでしょう。
 何も無い場合、使い捨てカイロでも、常温のものを暖かいと感じる温度にまですることは可能です。

火が使えないときに便利なのが水を注ぐだけで発熱してくれる発熱剤。まったなしの赤ちゃん用ミルクを調製するためのお湯を作るのに役立つ。また、液体ミルクの温めの可能。

 そうでなくても不安になってしまう災害時、暖かいものが一口でも口にできると、それだけで緊張をほぐすのに有効です。
 非常用持ち出し袋には暖めるための道具が入っていないことも多いですが、避難が長期戦になりそうなときには、非常用持ち出し袋に飲料食を暖めることのできる道具も一緒に持ち出しておきましょう。
 また、自主防災組織や自治会などで避難所の運営を行う際には、準備品の中に必ず何らかの飲料食を暖めることのできる道具を準備しておいてください。

水は昔の流れを覚えている

 ずいぶん昔のことになりますが、昭和58年7月に起きた島根県西部水害で氾濫した益田川の氾濫部分と、どんなものだったのかは忘れてしまったのですが昔の絵図面とを比較してみたことがあります。
 すると、川から氾濫した水は絵図面にあるような場所に沿って流れていることがわかりました。
 度重なる河川改修で流れが変わっていても、氾濫したときには昔流れていた場所を流れていくのだなと妙に感心したことを覚えています。
 もっともそういう場所は、以前は田しか作られておらず、万一河川が氾濫したときに遊水池として被害を防ぐような作りになっていました。
 益田川と高津川の二本の川に挟まれた益田平野は、そのため河口に田の多い土地となっています。
 ただ、今の益田平野を見ると、元は河川敷だった場所や遊水池にかなりの建物や道路ができており、もしも河川が氾濫したらこれらの地域は氾濫した水に浸かってかなりの被害がでそうな気がします。
 あなたがお住まいの地域は水に浸からないくらいの高さが確保されていますか?
 万が一の時には、きちんと避難先が決めてありますか?
 少なくとも昔の川や遊水池だった場所に住んでいる場合には、水による被害は考えておかないといけないことだと思います。
 水は昔の流れを覚えています。
 そのことを忘れないように備えをしておきましょう。

避難の率先者になろう

 先日、ラジオの番組の中で「災害が起きそうなとき、あなたは避難をいつしますか?」という質問を町ゆく人たちにしていました。
 その中でちょっと気になったのが「周りが避難したら避難する」と答えた人がいたことです。
 日本人の特性なのか、周囲を伺って同じように行動するという考えの人は思った以上に多いみたいですが、こと災害に関していえば、周囲の人にあわせていると一緒に遭難してしまいかねません。
 「自分の命は自分で守る」ということを原則に、自分で自分の避難を決める必要があるのです。
 例えば、あなたがいつのタイミングで避難しようかと周囲を見ていると考えてください。実はあなただけではなく、あなたの周りの人もみんな同じように様子を見ています。その中で、もしあなたが早めに避難を始めたなら、それを見ていた周りの人も一斉に避難を開始することになりますから、あなたが避難することで周囲の人も助けることができるということになります。

避難するときに園児達は「おはしも(おさない、はしらない、しゃべらない、もどらない)」を教わるのだけれど、津波からの避難の時には大声で逃げることを知らせながらというのもありかもしれない。

 東日本大震災で「釜石の奇跡」と呼ばれる避難も、率先者となった中学生の「逃げろ!」の声に押されて多くの人が避難して助かりました。
 仮に、避難して何も無かったところで、誰も困りません。そう、「何も無くて良かったね」なのです。
 また、自分の足だと避難するのにどれくらいかかるのかを確認しておくことは非常に重要なことです。それがわかっていると、いつまでに避難を開始しないといけないのかがわかり、より安全な避難が可能になります。
 人の動きを見てから避難するのではなく、自分ならいつ避難すべきなのかを決めておいて、自分だけで無く、周りの人たちも助けることができるといいですね。

やっていないことはできない

ポンチョ着用
豪雨の中を非難するときには傘は役に立たない。帽子と雨合羽、それに運動靴を身につけての避難となることに注意しよう。

 梅雨に入ってからあちこちで集中豪雨の情報が出ています。
 今この瞬間にも、避難勧告や避難指示といった避難レベル4の情報が出ている地域があります。
 もしもそれがあなたのお住まいの地域だったとして、あなたのお住まいの場所は水害や土砂災害に強い地域ですか?
 避難が必要だとしたら、どの段階で何を持って誰とどこへ避難するかを決めてありますか?
 それが昼間でなく、夜だったとしたらどうでしょうか? 家にいるときだけで無く、仕事先や出かけた先でそうなったら?
 その状況になってからでも間に合うと、もしもあなたが思っておられるとしたら、それは大きな過ちです。
 災害が起きそうになったとき、通常時と非常時の切り替えというのはなかなかできないもので、あらかじめ決めておかないと、判断に迷っているうちに手遅れになってしまうことがよくあります。
 周囲に水がやってくる前に避難を開始しなければ、安全な避難はできません。
 もしも家の周囲に水があふれ出したなら、域外避難を諦めて、二階や屋根の上に逃げ出す垂直避難をするしかありませんが、垂直避難した後、水が引くまで待てるだけの備えがあるでしょうか?
 避難をするとしたら、どの経路をたどってどこへ避難しますか? そしてその経路は水に対して安全ですか?
 低地だったり、川になるような場所は通っていませんか?
 避難をしなくてはいけないときというのは、いつもとは異なる状況になっていることが殆どです。
 そして、いざ避難となって歩こうとしても、普段歩き慣れていない経路だと、どこに危険があるのかもわかりませんからどうしても動きが遅くなり、避難が間に合わなくなる可能性だってでてきます。
 いざというときに備えた避難の練習や避難場所の選定、そして避難するときに持参するものを収めた非常用持ち出し袋。
 これらを繰り返し確認し、練習しておくことでいざというときにも考えずに行動ができます。
 人間、やっていないことはできません。
 避難が必要の無い場所にお住まいならともかく、そうでない場合には、年に1~2回は避難の練習をしておきましょう。
 馬鹿馬鹿しいと思うかもしれませんが、その積み重ねが結局自分の命を守ってくれるのです。

避難所では生活音に気をつける

 災害で自宅が壊れたので避難所に避難すると、見ず知らずの人と一緒に避難生活を送ることになります。
 老若男女の生活習慣が異なる人たちが集まって集団生活をすることになるため、さまざまな問題が発生することがよくあります。
 その中でも一番良くトラブルになるのが、ビニール袋などのカサカサ音。
 ビニール袋はとても便利なものなので、ちょっとしたものを入れておくのによく使うわけですが、その中からものを取り出すときに耳障りなカサカサ音がします。
 お年寄りなどはこの音があまり気にならないようですが、気になる人は気になって寝られない状態になり、けんかの元になってしまいます。
 とはいえ、しまってあったものを取り出すために出る音ですので、必要悪の部分もあるでしょう。
 これを防ぐには、あらかじめ音の出ない布袋によく使うものを入れておくことで、本来は非常用持ち出し袋を作るときに意識しておかなくてはいけない部分だと思います。
 また、これに限らず夜中の足音や声、ラジオやテレビの音など、人が普段の暮らしで発生している音は、自分と生活リズムの違うだれかが不快に感じる音でもあるのです。
 避難所で自治運営組織が立ち上がると、こういった生活音にも配慮して避難所で生活する人たち全員が守るべきルールというのが設定されます。
 消灯時間、起床時間、食事や掃除の時間など、基本的にはある程度規則正しい生活を送ることになるわけですが、今度はそれが苦手という人も出てきます。
 本来長期的に避難するのであれば個別に入居できる部屋を持つ施設が望ましいのでしょうが、現在の災害関係法ではそのような考え方は取り入れられていません。
 そうすると、考えるべきは可能な限り自宅が避難場所として使えるように準備しておくことです。食事や各種支援は避難所で受けることにして、普段の生活場所は今までと同じ自宅にしておけば、さほど生活習慣を変えなくてもなんとかなります。
 建物の耐震化と、飲料食、燃料とそれを使う道具の備蓄をしっかりと整えて、そのうちに来るかもしれない災害に備えておきましょう。