【活動報告】青原小学校の避難訓練を見学しました

机の下に避難するときには足をしっかりと持つ。基本的な行動ができているのがすごいです。

 去る2月22日に津和野町立青原小学校で行われた避難訓練の見学をしました。
 当日は地震からの避難ということで、地震時の身の守り方から校庭への避難までを実際にやってみました。
 こういった訓練では、避難開始から避難完了までの想定で行われることが多いのですが、実際には避難完了後からが長い時間となりますので、その時間を安全に過ごすための対策もしておいた方がいいなと、避難訓練後の状態を見るたびに思います。
 先生方は一生懸命に取り組んではおられますが、やはり専門家ではないのでどうしても視点が学校や研修会などで教えられたものになってしまいます。
 そのため、訓練でどのような視点を持つのがよいのかや必要な対応方法などを専門家が助言できる環境ができるとよいなと思っており、当研究所もできる範囲で各学校に協力できればと考えています。
 このたび見学の機会をいただきました青原小学校の皆様にお礼申し上げます。

避難する人の心構え

高いところへ避難するのを習慣づけておくと、少なくとも洪水や津波対策はできる。

防災訓練などでは、高齢者を始めとする要配慮者は自主防災組織などがお迎えに出かけて避難させることがよくあります。
ただ、毎回の訓練でそれを毎回やってしまうと、要配慮者の方は「迎えに来るまで待っていればいい」といった判断をしてしまい、津波などに対する避難が間に合わないことが発生します。
避難に支援がいる方々ですから、急いで避難させるためにはどうしてもそういった行動になってしまうのですが、緊急時に迎えが来ず、いつまでも自宅にいると危険な場合も想定しておく必要があります。
ご本人が判断に迷うような場合もありますので一概には言えないのですが、そういった場合には、ご近所の方が危険が迫っていることだけでも知らせるような仕掛けを作っておいた方がいいでしょう。
もっとも、危険が迫ってくることを知らせると、なし崩しにその人の避難支援を行うことになる場合が想定されますので、最終的には非常時に備えて自主防災組織だけでなく、普段地域に在住している人たちもそういった支援を行えるようにしておく必要があるかもしれませんね。
そして、避難訓練では災害発生のタイミングや避難行動開始をすべて主催者が説明してしまうこともよくあります。
時間内に終わらせようとするとどうしてもそうなってしまうのですが、本番では誰も避難開始など教えてくれませんから、何が起きたら避難を開始するのかについて「行動するための鍵」を自分の中で決めておくことが大切です。
言うまでもありませんが、自分の命を守るための行動は自分が主体的にとらなければ誰も助けてはくれません。
そういう意味では、要配慮者の方であってもできる範囲での行動はやってもらったほうが安心です。
訓練のための訓練ではなく、本番の状況に合わせた訓練も、慣れてくるとやってみたほうがよいですし、発生する災害の想定も変えてみる必要があります。
その避難所が、想定されるすべての災害に対して安全だとは言えないのです。
避難する人は、自分の命は自分で守るという心構えを持って、行動をしていきたいですね。

【活動報告】よつばキッズスクール様の避難訓練を見学させていただきました

益田市あけぼの西町にある民間学童施設よつばキッズスクール様の避難訓練を4月21日に見学させていただきました。
今回は火災想定で火災発生から避難の手順や消火について、実際に動いて確認をされていました。
外が雨天だったため、実際に予定している避難場所までの移動はしませんでしたが、初めてとは思えないくらい参加した先生方や子ども達の動きが機敏で非常に安心しました。
当研究所は今回は訓練内容を見させていただき、少しだけ火災からの避難についてのお話をさせていただきました。
また、施設的に気になったところをお話ししたところ、すぐに改善されたそうで非常にうれしかったです。
このよつばキッズスクール様では、毎月避難訓練を行うそうで、万が一に備えて定期的に訓練をするということは非常に大切だなと思っています。
今後もお手伝いできることがあれば当研究所も積極的に関わっていきたいと思っています。
今回避難訓練のお手伝いを快く許可いただきましたよつばキッズスクールの岩田先生を初めとする皆様方に厚くお礼申し上げます。

おうちの中の避難経路図を作っておく

 3月16日の夜に宮城県や福島県を襲った震度6強の地震ですが、被害に遭われた方にはこころからお見舞い申し上げます。
 今回のように大きな地震では、揺れが収まったらいったん建物の外に出ることが安全確保に必要だとされています。
そのため、人の集まる施設や宿では避難経路図が作られていて、その経路図に示された経路は安全に避難ができるように他の場所よりも注意を払って管理がされています。
 では、あなたのおうちでは、地震後の屋外避難をするとき、どの経路を使って外に出れば安全を確保できるかを理解していますか。
 小さかろうが狭かろうが、避難経路がきちんと確保されているかどうかの確認は家族みんなでやっておくことをお勧めします。
 ものが多いおうちでは、どこもかしこもすっきりと片付けることは難しいと思います。でも、避難経路に指定した場所だけを意識して片付けるのであれば、そこまで難しくは無いと思います。
 また、避難経路を考えることで思わぬおうちの問題に出会うこともありますから、こういった点検は定期的にやって、避難経路にものが置かれていないかなどをしっかりと確認しておいてください。
 余談になりますが、耐震補強や耐震建築物と呼ばれている建物は、震度6強から震度7に耐える構造になっていますが、それは1回被害にあっただけの場合です。
 2回目以降は倒壊しないという保障がありませんので、耐震補強や耐震建築物であっても、いったんは建物の外に逃げて様子をみたほうが良さそうですよ。

マニュアルとパクリ

 学校や施設には必ず災害対応マニュアルが備え付けられているはずですが、そこにお勤めの方でそれを読んだことがある人はどれくらいいるでしょうか。
 マニュアルというのは、作業手引きのことですから、読んで中身が理解できるようになっていないと役に立ちません。
 ところが、作られたマニュアルを見ると、本当にこれで大丈夫なのかと思うものもたくさんあります。
 とあるところでは、なぜ災害対応マニュアルが必要なのかということや、作成した意義などが延々と書かれているのに、実働の部分では『管理者が判断する』としか書かれていないものがありました。
 確かに最終判断や起きたことの責任は管理者が行うべき性格のものですが、得てして管理者不在のときに災害対応マニュアルを見たいといけないような大きな出来事が起きたりします。
 災害対応マニュアルは「誰が」「どのタイミングで」「何を」判断し、「どこまで」「どのように行動するのか」について、誰が責任者になったとしても判断が可能なものを作っておかないと意味がないことになります。
 また、非常に良くできているマニュアルもあったのですが、その施設には無いはずの高層階からの避難手順が記載されていて、どこからか内容を拝借してきたのだなとわかることもありました。
 パクることは著作権法で定める範囲を守る限りはまったく問題ありません。
 よいものはりどんどんまねるべきですし、そうすることでより現実的なマニュアルが整備できます。
 ただ、パクった中身はしっかりと確認しておかないと自分のところとは合わない場所が必ず出てきますし、いざ本番でトラブルになるのも、そういったところだったりします。
 マニュアルは現実の行動に即して作成し、パクったら中身を必ず自分のところにあわせてカスタマイズすること。
 そして、出来上がったら実際にそのとおり行動してみることで、マニュアルにあるもの、ないもの、追加記入がいるもの、削除すべきものが次々に出てきます。
 防災訓練を経て、災害対応マニュアルをより実戦に即した形にしていくことが大切なのです。
 どこから拝借してきてもいいのですが、それをそのまま使ってお茶を濁すのでは無く、自分のところにあった内容に書き換えていく手間は惜しまないようにしてほしいと思います。

まずは身の安全の確保から

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です

 地震のようにいきなり事象が発生するような災害の場合、まずは身を守る行動をとることが最優先になります。
 「身を守る行動」、というのは「怪我をしないための行動」ということで、例えば学校の教室などの場合には机の下に隠れたり、落下物が落ちてこないような場所に退避したりといった行動になります。
 建物が崩れる可能性が高いようであれば、揺れたら建物から脱出するような経路の確保や一部だけでも崩れないように補強するなどの方法を考えておかないといけません。
 とにかく基本は怪我をしないことですが、興奮していると大きな怪我をしていても気がつかないような場合がありますので、本当に怪我していないかどうかを、目と手での接触によって確認しておきましょう。
 地震の避難訓練では、想定した揺れが収まったらすぐに避難開始としているような場合が多いと思いますが、まずは自分の身体の怪我の確認、そして周囲の人の怪我の確認、それから避難という流れにできるといいなと思います。
 もちろん崩れそうな状態や危険な状態の場所では、まずは避難して身体の怪我の確認をするといった風にTPOにあわせた対応が必要になりますが、身の安全の確保としての怪我の確認、できるだけ習慣にするようにしてくださいね。

【活動報告】小学校の避難訓練の様子を見学させていただきました

 去る10月26日に益田市立高津小学校の避難訓練の様子を見学させていただきました。
 避難訓練の見学自体はこれで3年目となりますが、年を追うごとに動きがよくなってくるなと感心しています。
 今回の想定は地震から津波発生で高台への避難という想定。
 地震の緊急速報を流し、安全点検を行った上で校庭に避難、その後近くの翔陽高校へ避難という流れです。

小学校の周囲には歩道が殆ど無く、あっても幅が狭いため普段から安全確保は大変


 6年生は1年生の手を引いて移動するのですが、歩道のない狭い歩行者ゾーンを並んで小走りな移動はかなり気を遣って大変そうでした。

交差点や横断歩道など、流れがまっすぐでない場所はどうしても人が滞留して危険


また、途中で交通量のそれなりにある道路を横断する必要があるため、本番ではちょっと危険になるかもしれないと感じた場所もありました。
参加していた子ども達は真剣に取り組んでいましたし、先生方もかなり真剣に訓練に参加されていました。

避難訓練の講評を聞く。次回に活かせるような仕掛けが必要


 いくつかの課題や気になった部分、ご質問などがありましたので、それは後日報告書として提出させていただくことになっています。
 避難訓練は誰でもできる簡単な訓練ですが、簡単なだけに馬鹿にしてしまうことも多く、成功することが目的になっている場合も多々あります。
 訓練以上のことは本番では殆どできませんので、引き続きしっかりと訓練していただければ名と思います。
 今回、避難訓練の見学を許可してくださった校長先生始めとする先生方、そして訓練を一生懸命していた子ども達に感謝します。
ありがとうございました。

問題点はなんだろう

 災害に備えてさまざまな訓練をするわけですが、その訓練の目的は2つあると思っています。
 一つは資機材に習熟すること。訓練でしっかりと取り扱いができるようになっているからこそ、いざ災害のときでも問題なく資機材を使うことができるので、災害対策で備えている資機材は必ず使って慣れておく必要があります。
 そしてもう一つは、いざというときに発生するであろう問題点をあらかじめ洗い出しておくことです。
 実戦を想定した訓練では、どんなに完璧に行動しようとしても必ず問題が出るものです。その問題への対策を考えて又訓練し、という繰り返しによって、いざというときに機敏で確実に助かるための行動をとることができるようになります。
 ただ、なぜか訓練ではシナリオに従って完璧にこなさなければいけない風潮があり、訓練のための訓練になっているような気がしてなりません。
 訓練だからこそ、さまざまな意地悪な想定をしてさまざまな失敗をし、それを踏まえてより安全に助かる方法を考えることができるのですが、「うまくいかなかった=失敗」となると、心情的に失敗は嫌なので失敗させるような訓練は阻止しようという意識が働くものです。
 訓練のための訓練だとやる側は考えなくて済むので楽ですし、運営側も理不尽に怒られなくて済むので、本当に災害が起きるかもという考えがない限りは自然にそちらへ流れていくのは仕方のないことだと思います。
 それはともかく、訓練をしたときにどのような問題が発生したのかをチェックすることは非常に重要なことです。
 本当は参加者全部から訓練に対する意見を出してもらって訓練結果に反映できるようにすることが理想ですが、もしも意見を集める場がないとしても、あなたが災害対策の訓練に参加するときには、ぜひ問題点を考えながら参加して欲しいと思います。そして、できればその問題点の解決方法も併せて考えてください。
 訓練のための訓練であっても、問題点を探す目と解決策を考える頭が動いていれば、その訓練はあなたにとって必ず役に立つものになります。
 せっかく訓練に参加するのですから、あなたが生き残る確率を上げるために、少しだけ目線を変えてみて下さい。

避難訓練の本気度

 避難訓練の支援をさせていただいていると、「他人事」になっているなと感じる人達が殆ど全ての場所で確認できます。
 「かっこ悪いことはしない」という感じで、なぜ訓練をしなければいけないのかを理解いただけていないのかなとも考えますが、他人事になると退屈ですので見物状態やおしゃべりに夢中になってしまい、訓練参加者がシラケてしまうという事態が発生します。他人事になっているのは殆ど100%避難する人ではなく、避難誘導すべき立場の方なのを考えると、本当にこれで大丈夫なのだろうかと不安になります。
 避難訓練をやることが目的になってしまっていて、やる前、やっているとき、やった後の検証作業もせず、かなり適当に実施して終わったことにするような場合もあり、これならいっそやらない方がいいのかもしれないなと思うようなものもあります。
 もっとも、防災担当がいるような会社や組織は殆どなく、たまたま仕事のついでに防災担当をつけられたような人が片手間にやるのであれば、毎回同じマニュアルで訓練をすることも仕方がないのかなと思います。同じ内容であれば、毎回参加する側は考えなくてもいいので非常に楽ですし、参加者の評判もいいわけですから。
 ただ、本番ではマニュアル通りにできることはまずありません。状況を無視してマニュアル通りにしようとするとどうなるのかは、「想定外」という言葉を考えてもらえばわかるのではないでしょうか。
 訓練では、失敗が起きることが大切です。その失敗の解消方法を検討して実行することで、より本番に近い訓練ができ、結果的に本番でも命を守ることができるのではないかと思います。
 また、避難訓練の参加者それぞれが、自分の命をどうやって守るのかを考えながら行う避難訓練であれば、いざ本番でも確実に自分の命を守るべき行動をとることができるようになっていきます。
 せっかく訓練をするのですから、しっかりと考えて避難訓練が本番で生かせるようにしておきたいですね。

防災訓練で思うこと

避難訓練の一コマ。津波に備えて階段を駆け上る。ただ、このとき揺れたらどうなるかは想定されていないし訓練もされていない。

 学校や施設の防災訓練を見学させていただくときにいつも考えてしまうことがあります。
 それは、放送によって状況や行動を説明すること。
 地震や火災の場合、何らかの原因で放送設備が損壊する可能性があります。行政の防災無線のように災害対策がきちんと取られていればよいのですが、学校や施設の放送設備でそこまでの対策が取られているものがどれくらいあるでしょうか。
 放送が使えなくなった状況下の訓練をしておかないと、本番で逃げ遅れたり混乱が起きたりするのではないでしょうか。
 どんな状況下にあっても避難をすることができるような体制、それぞれが自律的に判断して動けるようにしておくことが、訓練だからこそやっておかないといけないことだと考えます。
 防災訓練は失敗することが必要だと、筆者は考えています。
 さまざまな想定をし、その状況に応じてさまざまな判断をし、自律的な安全確保をできるようにするために、防災訓練では大いに失敗をしておくこと。
 本番では失敗は許されないのですから、訓練で失敗をして経験をしっかり積んでおくことが非常に重要です。
 防災訓練は、やることが目的ではありません。やった結果、身を守れるようになることが目的なのです。
 災害ではどのようなことが起きるか誰にもわかりません。
 だからこそ、さまざまな状況を想定して訓練を行うことが必要なのです。
 「訓練は嘘をつかない」という言葉があります。しっかりとした訓練は必ず本番で役に立ちます。
 せっかく実施する防災訓練だからこそ、少しだけ予定調和でないものを入れる必要があるのではないか。
 筆者はそう考えています。