責任は誰が取る?

 災害対策を考えるとき、地域での「自主防災組織」の整備が脚光を浴びていますが、ちょっと考えさせられることがあります。
 それは、そもそもの自主防災組織の位置づけのことです。
 自主防災組織が立ち上げられた地域では、災害が発生しそうなときにはこの自主防災組織が組織のある地区の住民に避難を呼びかけることになっているところが非常に多いと感じます。
 新聞などで災害特集を見ると、自主防災組織が住民に避難を呼びかけるためにどうしたらよいかという記事が非常に多い気がしますが、私自身はこの考えはちょっとおかしいのではないかと思っています。
 そもそも、自分の命は誰が守らないといけないのでしょうか?
 今行われている災害への対応をどうするかという議論では、避難の実行役が自主防災組織や消防団が担わされるような方向付けになっていないかと気になります。
 本来は、「自分の命は自分で守ること」が大前提となるはずです。
 避難が難しい人や支援が必要な人に対して支援を行うというのが、自主防災組織の位置づけだったのではないでしょうか?
 通常時の避難訓練や、避難所の開設や運営などが本来の自主防災組織の仕事だと思います。
 住民に避難を呼びかけることや避難させることが設置の目的ではないはずです。
 自分が避難するためにどれくらいの時間がかかり、避難するためにはどのようなものを準備しておかないといけないのか。
 そしてどのタイミングで自分が避難を開始しないといけないのかということは、本来自分自身で考えて決めて、準備しておかないといけないことのはずです。
 ですが実際には、自主防災組織に判断を丸投げし、自分は自主防災組織に声をかけられるまでは知らん顔という人があまりにも多いような気がします。
 自主防災組織は決してその人のためにだけ作られた組織ではありません。
「自分の命は自分で守る」
 そのために自分が避難の判断をする情報の集め方や避難の仕方、そして避難所での自分の役割などを周囲の人と共有し、お互いに助け合って災害を乗り切るために作られているのが自主防災組織なのではないでしょうか。
 最近のさまざまな報道や行政の動きを見ていると、どうも何か勘違いしているような気がして、この先うまく行かなくなるのではないかと、余計な心配をしてしまいます。
 繰り返しになりますが、自分の命に対する責任は自分自身が取らなければいけません。
 「大丈夫だろう」ではなく「危ないかもしれない」という考え方で災害が起きるかもしれない時の行動を決める癖を付けておきましょう。
 何か起きたとき、悪いのは自治会でも行政でも自主防災組織でもなく「自分自身」なのだということを肝に銘じて、災害への備えをしたいものだと思います。

携帯用トイレを考える

 最近はさまざまなところで携帯用トイレを見かけるようになり、百円均一ショップなどでも「男女兼用」な携帯用トイレを見かけるようになりました。
 これだけ見かけるところを見ると、いざというときに備えて準備している人も多いのかなと思いますが、使ったことのある人はどれくらいいるでしょうか?

携帯用トイレ各種。一番左は百円均一ショップのもので小専用。真ん中と右は大にも対応しているが、真ん中のものはバケツなどが必要。右はセットに段ボール製のミニ便器が入っているが、座ると壊れる。

 基本的なことですが、百円均一ショップなどで売られているコンパクトな携帯用トイレは「小用」です。「大きい方」の時には使えないので気をつけておいた方がよいと思います。
 さて、この携帯用トイレは排泄時には投入口の口を開いて中に排泄を行うわけですが、男性はともかく、女性はかなり使いにくいようです。
 一応「兼用」とされていて受け口が広く折り返せば安定するのではありますが、うまく投入口に排泄部分が当たらずに周りに飛び散ってしまったりすることも多いとか。

ペットボトルの飲み口に取り付けて使う尿受け用のジョウゴ。携帯型トイレの受け口に差し込むと安定して小用を足すことが可能

 「小」を受けるためのジョウゴなどを使うなど、ちょっとした工夫が必要な場合もあるようです。
 また、子どもの場合になるともっと大変です。普通にトイレでできる子でも、小さな投入口に注ぐのは勝手が違います。
 子ども達に任せると、中には一滴も入らずに周囲が大洪水ということも起こりますので、場合によってはトイレで用が足せるようになっても「おまる」を準備しておくことも有効ではないかと考えます。

 座るタイプのおまるなら、おしりが収まればある程度大きな子どもでも使うことができる。そして大小どちらでも可能なため、あるなら準備しておいてもよさそう。

  準備したらまずは使ってみること。防災用品の基本ではありますが、簡易トイレもさまざまなものがありますので、使ってみて自分や家族にあったものを用意しておいてくださいね。

災害時にこれでは困る

 緊急時に避難をするにあたっては、避難先がきちんと決められていて使えるようになっていることが大切です。
 でも、出されている情報が矛盾している場合にはどうすればいいのでしょう?
 今回はそんな困った状態を一つ指摘してみたいと思います。

 しっかりした画像データを出したかったので、今回はかなり重めです。申し訳ありませんが根拠をはっきりさせたかったので、こんなことになりました。

 この写真は益田地区振興センターの前に掲示されている避難所の位置図です。
 気づかれた方がいらっしゃるかもしれませんが、赤線で強調している避難場所はすでに存在しないところです。

 ここに記載されている益田高等技術校も泉光寺も別な場所に移転していて、この地図どおりには避難できない状態です。

平成30年度益田市防災計画の中に避難所一覧から該当部分抜粋。

上記は平成30年度益田市防災計画の中の「避難所」の一覧です。
ここには益田小学校が「避難所」として書かれています。赤線部を見て欲しいのですが、片方では水害でも避難可、もう片方は避難不可となっています。

 益田小学校の前には「災害避難場所」の表示がされています。看板奥左手の建物が、恐らく避難所として使われることになる体育館です。

 しかしその体育館入り口には「避難先は益田地区振興センター」と記載された貼り紙が貼ってあります。
 そして、問い合わせ先として益田市役所の危機管理課の電話番号が書かれています。
 ちなみに、益田市防災計画の中の避難所の収容人員は益田小学校400人、益田地区振興センターは50人です。収容予定50人の施設にどうやってあと400人も入れるのかは正直「謎」です。

益田市役所が作成したハザードマップから該当部分を抜粋。

 でもって、益田市が提供しているハザードマップでは避難所として「益田小学校」も「益田地区振興センター」も表示されています。

 いったい何を信じたらいいのやら。
 地元の人さえ分かっていればいいということなのかもしれませんが、避難してくる人は地元の人ばかりとは限りません。
 何らかの問題が起こったのだろうと推測はしますが、平成30年度益田市防災計画は平成31年3月25日付けで公開されているので、それ以前から益田小学校に貼られている張り紙(少なくとも10月には貼ってあったのを確認しています)と矛盾する内容になっています。提供する情報はきちんと最新のものにし、矛盾が無い状態にしておかなければいけないと考えます。
 もっとも、あまり災害は起きないということで、ひょっとしたら益田市は本気度が低いのかもしれませんが・・・。

2019.11.07追記 少し前に益田市役所の方に確認したところ、防災計画は年度末にその年度の防災計画として作成しているそうで、おかしな点は気がついた年度末の益田市防災計画で修正するそうです。その都度直す方がいいのではないかと思うのですが年度中途での修正はされないそうなので、これらの資料を参考にされる方は充分に気をつけてください。

防災アプリを入れてみる

 スマートフォン用の防災アプリというと有名なところでは「NHKニュース・防災」や「yahoo!防災速報」などがあります。
 地方ローカルでは「東京都防災アプリ」や「大阪市防災アプリ」などがありますが、津和野町と吉賀町についてもこのアプリがあることはご存じですか?
 2016年から運用されているそうですが、津和野町と吉賀町をエリアにしている「サンネットにちはら」さんのアプリの中にこの機能が組み込まれています。
 ここではAndroidで説明しますが、iPhoneにも対応アプリが用意されています。

 これが起動画面。初回時のみ津和野町か吉賀町かの確認があり、アプリが起動。その後は画面下の「地域選択」で切り替えることができます。

雨量と水位は島根県防災システムからデータをもらっている。

 防災情報をタップすると、さまざまな情報が見られるようになっています。
 「最新防災情報」では気象情報を中心とする災害関係の情報が、「定点カメラ」では道路や河川にある監視カメラからの映像を簡単に見ることができるようになっています。

カメラは道路と河川にわかれている

 「雨量一覧」や「水位一覧」は選択した町の河川や降雨のデータが、「避難所」では同じく選択した町が決めている各種避難場所のメニューが出てきて、行きたい避難所名をタップするとナビで誘導までしてくれるようになっています。

各町で指定されている避難所の種類が違うため、それにあわせた表示になっている。
避難所の一覧。ナビボタンをタップすると、GPSのスイッチが入っていれば現在位置からタップした避難所までの誘導を始めてくれる

また「消防・防災」では役場からの消防・防災関係に特化した情報が掲載されています。
 いざというときに使える情報が使いやすくわかりやすく作られていますので、該当する地域にお住まいの方でスマートフォンをお持ちであれば、ぜひ一度インストールして使ってみてください。

 Androidの人はGooglePlayから、iPhoneの人はAppStoreで「サンネットにちはら」と入力すると見つかります。
 ちなみに、益田市は調べた範囲ではこういったアプリの存在がわかりませんでしたので、国土地理院の避難所マップに頼るしかなさそうです。

耐震と免震と制振構造

 建物の構造のお話をしていると、耐震と免震と制振がごちゃごちゃになっていることがよくあるなと感じます。
 ここでは整理を兼ねて、耐震と免震と制振の違いについて確認してみたいと思います。

1.耐震構造
よく言われる「この建物は耐震構造です」というのは、文字通り「地震に耐える構造になっている」ということです。
1981年以前は震度5強、それ以降は震度6強から震度7まで崩れない構造になっているものを指します。
建物が倒壊しないというだけですので、普通に揺れますし、建物内の家具などはひっくり返ったりします。
大きな地震が重なると、建物の強度が落ちて崩れてしまう可能性があります。

強度の足りない場合には力のかかる部分に補強をして倒壊を防ぐ耐震補強工事が行われることが多い。
写真は耐震補強工事後の島根県庁益田合同庁舎。

2.免震構造
地面と建物の間を切り離してその間にゴムなどの揺れを吸収する免震装置を置いた構造になっており、大きな地震でもあまり揺れを感じることはありません。
地震に対する効果はは絶大ですが、地下に空洞を作るため、台風や竜巻、水害などには弱い構造となっています。

建物の下につけられる積層ゴム型免震装置。上下左右の動きを受け流せる構造を持っている。
名古屋市立科学館の展示より

3.制振構造
地震の揺れを建物につけたダンパーなどで吸収して建物の揺れを押さえ、破壊を防止します。
エネルギーをダンパーなどで吸収するため、建物の強度が落ちにくく、大きな地震が重なっても崩れにくい特徴があります。

制振用ダンパー。建物構造物にかかる力を制御してダメージを抑える。
名古屋市立科学館にて

 免震構造や制振構造は大規模な建物や高層ビルなどによく使われる技術で、一般住宅にも一部採用されているようですが各装置の設定などが難しく費用も嵩むため普及するまでには至っていないのが現状です。
 2×4などの一般住宅は柱だけで無く壁全体で建物を支える構造になっているため、比較的地震には強いとされています。

 法的に決められているのは耐震基準だけで、その中に免震や制振があると考えてください。

母乳とミルクと備え方

 災害時、一般的に生活環境が劣悪になればなるほど母乳の威力が発揮されるなと感じています。
 ミルクはある程度衛生的な条件が整わないと雑菌等で赤ちゃんのお腹が下ったり病気になったりすることもあります。
 これは液体ミルクを使用する場合でも状況はあまり変わらず、ミルク育児をしている人にとっては子どものミルク関係の衛生維持はかなり優先度と重要度の高い問題にあると言えるでしょう。

ミルクの場合道具の衛生管理がきちんとできるかどうかが鍵となる

 解決策としては、使い捨てのほ乳瓶&乳首を1週間から10日分程度備蓄しておくか、煮沸消毒等、ほ乳瓶や乳首を衛生的に保つための水や道具の確保を行うことになります。

 最近災害時にはカップとスプーンで飲ませる方法が推奨されているようですが、それにしても汚れたものは使うわけにいきませんので、やはり備えをしないといけません。
 家庭環境や状況にもよるのでどの方法が一番良いかということは断言できませんが、衛生環境を確保するにはそれなりの備えが必要だと考えてください。
 では、母乳なら災害時でも大丈夫かというと、一般に言われるほど気楽に構えていることはできないみたいです。
 母乳の場合には、いかに母親の生活環境を維持できるかという問題があります。
 精神的なショックで母乳が一時的に出なくなったり、充分な水分が取れないために必要な母乳の量を身体が作り出せない場合もあるのです。

母体の健康管理が母乳育児を続けられるかどうかの鍵になる

 そのため、いかにそれまでの生活水準を維持するのかが母乳育児を続けることができるかどうかの鍵となります。
 例えば、避難所に避難して配給される弁当は、食中毒対策のために味が濃かったり油ものが多かったりしますが、そうなると乳腺炎が起きやすくなります。
 また、母乳の味が変わるためか、赤ちゃんによっては飲まなくなる場合もあるようです。
 普段食べているものをしっかりと食べ、必要な水分をしっかり取れること。
 そのための環境を整えられる準備をしておかないといけないと思います。

 直接の災害ではありませんが、私にもこんな経験があります。
 私は「赤ちゃんにも母体にも魚がよい」と聞いて、一時期食事には毎食お魚を出していました。
 すると、ある瞬間子どもが母乳を飲まなくなったのです。
 なんでだろうと思ったら、子どもが戻した乳からほのかに魚油の香り・・・。原因は脂ののった青魚の食べ過ぎでした。
 このときは笑い話で済みましたが、災害時に配給されるお弁当は値段や製造先の問題もあってほぼ同じものが毎食出されます。
 もしも災害時に元気なはずの赤ちゃんが突然母乳を飲まなくなったら、自分が食べているものを疑ってみてください。
 そして、なるべくさまざまなものが食べられるように保存食や非常食を準備しておくとよいと思います。
 発生する災害を親子で元気に乗り切れるように、そのための備えをしっかりしておくとよいですね。

ペットとの避難

 最近はペットが家族の一員としてなくてはならない存在になっています。
 ですが、ペットを家族の一員として考えるからこそ、そう思わない人たちとの間にさまざまなトラブルも起きるようになってきています。

 環境省の指針では「ペットは同行避難」となっていますが、そうするためには地域・飼い主・ペットがそれぞれにしておかないといけないことがあります。
 ペットをどのようにしたらよいのか、ここではそれを考えてみます。

1.事前準備として

1)避難所の受け入れ体制を確認する

最初にやっておかないといけないことは、もしも自分が避難することになったときに避難する先でペットの収容が可能かどうかを確認しておくことです。
地域によって取り扱いはさまざまですが、基本的にペットと人は一緒に収容しないことになっている場合が多いはずです。
そのとき、他にペット可の避難所があるのか、ない場合には避難先でどのようにしたらペットの受け入れが可能になるのかについて避難所の運営を行う自治会や自主防災組織にきちんと確認しておきましょう。
どうしても受け入れが不可能な場合には、どうやったら一緒に避難を行うことができるかについて検討をする必要があります。

2)予防接種や迷子札の装備をきちんとしておく

避難先が収容可能な場合でも、病気を他のペットにうつしたりもらったりしては困ります。そのため、決められている予防接種はきちんと摂取しておくことが大切です。
そして、万が一行方不明になったときに備えて、首輪などにペットの名前、飼い主の名前と住所がわかるものを備え付けておきます。可能であればマイクロチップを埋め込んでおけば、迷子になっても見つかる確率はぐんと大きくなります。

3)ケージにちゃんと入れるようにしておく

大型犬、中型犬など物理的に入れられるものがない場合を除き、基本的にはケージの中に収めて避難をすることになります。暴れないように、騒がないように、ケージにしっかりと慣れさせておく必要があります。

ケージは慣れると入っていい子にしてくれている場合が多いです。ペットに「ケージ=楽しいこと」という意識付けが必要になると思います。

4)非常用の餌とトイレを準備しておく

災害時の支援物資は人が優先になります。ペットには、基本的に人の食事を与えることが難しいと思いますので、自分のペットの食事やトイレについてゴミ袋もあわせて1週間から2週間程度準備しておく必要があります。

普段食べているご飯の方がストレスが無くてよいみたいです。

2.発災時

1)まずは自分の身の安全を確保する

 発災時にはまず自分の身を守ることを考えます。そのうえで、ペットの安全を考えてやりましょう。
 ペットを我が子と同じように考えている人は、地震が起きたときに慌てるペットを助けようとして倒れてきたり落ちてきたりしたものに当たって怪我をするというようなことが起きます。
 もしあなたが怪我をしてしまうと、残されたペットの面倒は誰が見てくれるのでしょうか。
 ペットは基本的に自分で我が身を守りますから、まずは自分の身を守ること。そして状況が落ち着いてからペットの安全を確認してください。

2)避難する場合には基本的には一緒に連れて行く

 家で飼われているペットは野に放つわけにいきません。飼い主が避難するときには、一緒につれて避難することが基本です。そのさい、事前に確認しておいた手順に沿って避難を行ってください。

3)避難所ではケージに必ず入れておく

避難所では野放しにすると他のペットとけんかが始まったり、人によってはアレルギーが出ることもあります。そのため、何か事情がある場合を除いてはケージに入れておくことになります。ただ、ケージに入れっぱなしになるとペットもストレスが貯まってきますので、適当なところでガス抜きしてやる必要があります。

ペットとの避難については、地域や理解度によってかなりの温度差があるのが実情です。
できればペット仲間やかかりつけの獣医さんも交えて、どのようにしたら自分もペットも安全に避難ができるのかについて検討しておく必要があると思います。

詳しくは環境省のホームページを確認して、いざというときにペットを置き去りにしなくて済むようにしてくださいね。

災害発生とトイレ

 災害が発生するとみんな大わらわになりますが、トイレの封鎖はまっさきに行ってください。

閉鎖されたトイレ(出典:災害写真データベース)

 くみ取り式は大丈夫でしょうが、浄化槽式や下水道式の場合、排水管が外れたり詰まったりする可能性があります。
 災害が起きたら、少なくとも人が避難する場所のトイレは封鎖し、すぐに仮設トイレを準備してください。それにより、衛生環境を保つのと同時にトイレの速やかな修理及び再開が可能となります。
 トイレは一般的に男性1に対して女性3と言われます。その通りに準備するのは難しいかもしれませんが、ある程度の余裕を持って設置した方が無難です。
 ある瞬間、トイレというのは行きたくなるものです。その時、使ってはいけないと頭では分かっていても我慢できないと「自分一人くらいなら」と考えて使ってしまいます。

仮設トイレセット。これをいかに早く設置できるかがその後の衛生環境を左右する。

 最初の一人が使うと、あとは止めることが不可能になります。
 最初の一人をいかに阻止するか、そして代わりのトイレをいかに速やかに提供できるか。
 これを防災訓練で取り入れているところはまだまだ少ないと思います。
 災害訓練ではこの仮設トイレのみを使うこととして、準備してあるものの使い勝手や処分方法の確認をしておきます。
 それにより、いざというときに「準備はしたが使えない」という事態を防ぐことが可能になります。
 どうやってもトイレというのは我慢ができないものです。
 詰まったりあふれたりしてから慌てるのではなく、すぐに準備して使えるようにしておくことが、衛生環境を守る一番の方法です。

懐中電灯は用途を考えて

 懐中電灯やヘッドライトは暗い場所では必須の道具です。

ヘッドライトや手持ち式、ランタンと兼用のものまで、種類はさまざま。

 ただ、できれば明るさが変えられる、もしくは光量の異なるものを2個準備しておいた方がよさそうです。
 というのも、移動時にはできるだけ明るい光量のあるライトが求められますが、避難所や自宅などで何か作業をするときには、あまり明るいとかえって作業がしづらくなってしまいます。
 それぞれに適した光量というものがありますので、普段、実際にやってみてどれが一番自分の好みに合うかをやってみておく必要があります。
 登山用や作業用のヘッドライトでは光量調整が出来るものがありますので、そういったものであれば一つでもよいかもしれません。
 また、複数のライトがついていてランタンとしても使える懐中電灯も出ていますから、電池の確保さえできるなら、便利でいいと思います。
 いずれにしても、買って安心するのでは無く、実際にさまざまな条件で使ってみて、自分の目的にあっているかどうかをしっかりと確認しておきましょう。

災害のピクトグラムを知ろう

災害関係に限らず、あちこちで見ることの多いピクトグラムは、あなたも一度は目にしたことがあると思います。
「絵文字」や「絵単語」とも言われるようですが、その絵を見ることでそれは何を示すことなのかがわかるような表示のことです。
ところで、災害に関係するピクトグラムはつい最近まで全国で統一されたものがありませんでした。
そのため、地域地方によって同じ意味でもさまざまなピクトグラムが採用されています。
平成28年にこれをようやく統一するということになりましたが、義務ではなく努力規定なので、看板等が更新されるまでは、当分さまざまな表示が混在することになりそうです。
今回は、この統一された基準について見ていきたいと思っています。

1.避難場所

左の図は「避難場所」を表しているピクトグラムで白地に緑の絵で構成されています。
私はこれを最初見たとき「マンホール注意」と勘違いしたのですが、この絵は決して落とし穴に人が落ちることを示しているわけではありません。
緑色の丸は安全地帯を表し、そこに人が駆け込む絵を合わせることで、避難場所の表示を構成しています。

 「丸い地面+駆け込む人」で表示するこのマークは平成28年に決められたもので、割と急速に普及しつつありますが、それまでの「緑十字+青枠」という表示も併設表示されていたり、切り替えが終わっていないところもあるようです。これらの避難場所の表示は細かくみると仕様が微妙にちがっていたりしますので、観察してみると面白いです。

名古屋市港区役所の表示

  津波に対する避難場所は、他に津波から高台に逃げる人を描いたものや左のような津波と逃げる人、それにビルを表示した津波避難ビルの避難場所図も存在します。

2.避難所

右の図は「避難所」を表示しているピクトグラムで、緑地に白の絵で構成されています。
建物と人が駆け込む絵を合わせることで、避難所の意味を表現しています。

3.災害種別注意

高潮、津波、土石流、崖崩れ・地すべりには、その区間に注意を促すピクトグラムが黄色時に黒の絵で三角表示されています。
津波は「波」を、土石流は「川+岩」を、崖崩れ・地すべりは「崖と岩」を表現しています。

4.災害種別一般図

割とシンプルです。

災害を表すための図で白地に黒の絵が四角の黒枠で表示されており、主に避難所がどの災害に対応しているのかを表すために用いられます。
災害種別注意図と同じような絵ですが、「水」を示す波線二本で表示される「洪水・内水はん濫」、「家と火」を表す大規模火災が追加になります。

5.地図記号

国土地理院が作成する地図データに表示される時にはまた異なった表示を使っています。
国土地理院が提供している避難所データには、以下のような表示がされますので、確認するときの参考にしてください。

出典:国土地理院

 インバウンドが増えていることや東京五輪があるということで災害関係のピクトグラムをようやく統一する気になったようですが、一度表示したものはなかなか変わることはありません。
 中には両方併記している避難所もあるみたいですが、いずれにしてもわかりやすい表示で避難者が迷わないようにしてあるといいなと思います。

 そういえば、今日のニュースで避難所で使うピクトグラムについて学生さんが作ったものが大阪市東淀川区で正式採用されたというニュースがありました。日本語の読めない人たちでも避難所に避難してくれば中のどんな場所で何が行われているのかがわかるようなわかりやすいピクトグラムとのことなので、標準化していけばいいなと思っています。
 ちなみに当研究所のある市では、一部地域を除いて災害関係の表示をみることはありません。といいますか、そもそも表示がされていないような・・・。