避難所に持っていかないほうがいいもの

非常用持ち出し袋には、貴重品は持って逃げるということが書いてありますが、実際の避難者の方のお話を聞くと、貴重品は置いていった方がいいのかもしれないなと感じることがあります。
特に避難所に避難する計画の人は要注意です。避難所の防犯対策はまったく期待できません。
顔見知りだけが入っているはずでも、普通に物が無くなります。現金などは特になくなることが多く、俗にいう金目の物は気を付けていても気が付いたら見えなくなっていたといったことも十分に起こりうる話です。
印鑑と預金通帳は分けておくことが重要で、預金通帳は再発行してもらえることを考えると、印鑑だけあればよさそうです。
家に置いておくと安全かというと、避難区域ではコソ泥が発生します。住人が避難して人がいなくなると、どこからともなく空き巣が登場しますので、これまた安全とは言えないです。
できるのは、しっかりとした施錠をしておくことくらいでしょうか。急いで避難する必要のある場合でも、家の施錠だけは確実に行うようにしてください。
あとは避難区域への侵入を防ぐような警備体制をとるくらいしか手がありません。非常時ですので、こういったときの窃盗に対する罪は相当厳しくしておく必要もあると思います。
ただ、こうやって考えていくと、財産のある人は銀行などの貸金庫を利用するのが一番安全かもしれません。
大規模災害時の被害などは防げないかもしれませんが、家に置いておくよりも安全ではあります。
貸金庫を借りるのは、金融機関によってさまざまな条件があるようですので確認してみるといいかもしれません。
いずれにしても、貴重品はできるだけ避難所には持っていかないことが、避難後の生活を守るためには必要になると考えられますので、準備については気を付けるようにしてください。

避難所と人目

 何らかの理由で避難所生活をしなければならなくなった場合、いろいろと困ることが起きてきますが、その中でも他人の目については対策を講じておく必要があります。
 普段の生活では、例えば家にいたり、自分の部屋に入ったりすれば他人の視線を防ぐことができるのですが、避難所ではそういうわけにいきません。
 24時間常に人目にさらされる生活を送ることになりますので、それが嫌な場合にはしっかりとした対策を用意しておきましょう。
 具体的には、安いものでいいので自立型のテントを一張準備しておきましょう。それがあるのとないのでは、自分の中の安心感がまったく異なります。
 テントがあれば、最悪避難所以外でも安全な場所があれば、そこで張って生活する場を作ることができます。
 行政が避難所に届けてくれる目隠し用の壁は、数が少ない上に視線を遮るのには中途半端な高さであまりあてにはなりませんので、当座の安全な場所として、自立型テントを非常用持ち出し袋に入れておくことをお勧めします。

虫対策と救急用品

 暖かくなってきてさまざまな虫が登場する季節となってきました。
 自分の家であれば何らかの虫対策をしていると思うのですが、災害後の避難所では、この虫対策は結構深刻な問題になります。
 避難所となる施設に網戸があればいいのですが、学校の体育館等にはそういった虫よけの装備を持っていない施設もたくさんありますし、持っていても災害で壊れてしまっている場合もあるでしょう。
 そうすると個人での虫よけ対策を行うことになるのですが、避難時に持って出る非常用持ち出し袋などに虫よけを入れている人がどれくらいいるのかと考えてしまいます。
 救急用品に入れるものとして、虫よけと虫刺されの薬は入れておいた方が安心だと思います。避難所によっては蚊取り線香を焚いたり、虫の寄らないスプレーを出入口に撒いたりすることもあるのですが、体質的にそういったものがダメな人もいるので、最終的には個人的な装備に頼ることになります。
 また、虫刺されの薬も避難所に置かれていないことの多いアイテムの一つですので、一緒に準備しておくといいでしょう。
 非常用持ち出し袋の救急用品には何を入れるのかについてはいろいろと考えることも多いのですが、普段は気にならないようなそういった部分も考えて準備しておくといいと思います。

【活動報告】「やってみよう防災キャンプ・春の巻」を開催しました

 2023年3月25日から26日にかけて、益田市の北仙道公民館で「やってみよう防災キャンプ・春の巻」を開催しました。
 当日は15名の子にご参加いただき、段ボールシェルターづくりや心肺蘇生法、ポリ袋炊飯、暗闇体験などを体験してもらいました。

搬送法の一コマ。担架で安全な場所まで搬送する練習をする。

 今後の予定は未定ですが、次回もしやるとしたら、もっと内容を練り込んで、、リピーターも初めての人も楽しみながら防災を学んでもらえるような企画をしていきたいと思っています。
 今回参加してくれた皆様、参加を許可してくださった保護者の方、会場を快くお貸しいただきました北仙道公民館の皆様、そしてさまざまな形でこのイベントを支えてくださった皆様に心から感謝します。
 ありがとうございました。

やさしい日本語

 阪神淡路大震災から、大災害が起きるたびに注目されているのが「やさしい日本語」というものです。
 日本にはさまざまな国のさまざまな言語を使う人たちが来ているため、必ずしも英語が通じるというわけではありません。
 地域によっては、同じ国同士の人でさえ言葉が通じないことがあるので、伝える外国語はいくつあっても完ぺきにはならないのです。
 ただ、彼らに共通しているのが、コミュニティーの中には「日本語がなんとか理解できる人がいる」ということです。
 つまり、伝える言語を多国籍化するよりも、わかりやすい日本語を使うことで全ての人に情報を伝えられないかというのが、このやさしい日本語ができた経緯なのです。
 このやさしい日本語、実際に普段使っている日本語をより簡単な日本語に置き換え、状況や内容を理解してもらうことが目的で、やってみるとかなり難しいものです。
 特に災害時や災害後に出される行政からの文章は、より正確性を求められるためにかなり難しい言い回しをしています。
 そこから必要な情報を取り出し、言い換えを行って相手に伝わるようにしなければなりません。
 また、一つの用紙には一つの情報を書くようにした方がわかりやすいのですが、往々にして複数の情報が一文の中に収められたりしているので、これを分ける作業が大変だったりします。
 さらにややこしいことに、それにプラスして日本の習慣も伝えておかないとトラブルのもとになりますから、100%の正確な遅い情報よりも60%の正確性でいいので早く表示できるようにしておかないとまずいことが起こります。
 情報は生き物ですので、可能な限り短時間でタイムラグなく状況を伝えることが重要です。
 できれば情報の発信時にそれが作れることが理想ですが、現時点ではそこまで考えている行政はないと思いますので、なるべく被災者の近くでやさしい日本語に翻訳できるようにできることが求められると思います。そのためには、より多くの人がやさしい日本語に言葉を変えられるように語彙を増やすことと、言い換え言葉を普段から意識することが大切になります。
 また、やさしい日本語は伝えなければならない必要最低限の情報をできるだけシンプルにして作られるため、長文や小さな文字を読むのが難しい高齢者や小さな子供でも内容がわかりやすいというメリットもあります。
 普段から言い換えの訓練をしておくことで、いざというときにすぐ作業ができると思いますので、興味のある方は時間を作って、例えば新聞記事や行政の広報誌などをやさしい日本語に組み替える練習をしてみると面白いと思います。

災害用トイレは使えますか

自治会や自主防災組織の研修会では、仮設トイレの組み立てを実際にやってみてもらうことも多い。

 災害が起きると、断水や停電、浄化槽や下水道管の破損などでトイレが使えなくなるケースが結構多いです。
 トイレが使えない状態なのに無理やり使うと、トイレの中は大惨事になってしまいますので、できるならトイレがちゃんと使えることが確認できるまでは使用を禁止するようにしてください。
 そうなると必要になってくるのが仮設トイレや携帯トイレ。
 ただ、個人や自治会、自主防災組織などで準備はしていても、これを組み立てたり使ったりすることはほとんどないのではないでしょうか。
 普段使っていないものは、いざというときにも使えませんので、防災訓練のときには実際に使ってみてください。
 また、避難所で設営が必要な仮設トイレは、訓練のたびに出して組み立て、使いかたをしっかりと確認しておくことはとても大切です。
 トイレは我慢ができません。そのあたりに穴を掘ってすることにしてしまうと、周囲の衛生状態に深刻な問題が発生します。
 災害時のトイレ設営は最優先されることの一つなのです。
 いざというときに慌てなくて済むように、携帯トイレの準備、そして実際に使ってみること。
 仮設トイレは実際に組み立てて、これも使ってみること。
 この部分の訓練は手を抜かないようにしたいですね。

カサカサとボソボソ

体育館などでは思った以上に生活音がよく響く。

 避難所など人が集まっているところの夜に起きるトラブルが「音」です。
 その中でもポリ袋の「カサカサ」という音は非常に不快感を与えてしまうようで、避難所以外、例えば山小屋など多くの人が就寝している場所でトラブルになることがあります。
 非常用持ち出し袋などの防水対策としてポリ袋を使う人も多いと思いますが、できればかさかさしないタイプのポリ袋を使うことをお勧めします。
 また、たくさんの人が集まって就寝している場所では、緊張しているせいか寝ていない人のぼそぼそとした小さな話し声も気になるものです。
 アイマスクや耳栓など、周囲の光や音を押さえる道具もあるのですが、善意の人ばかりではありませんので、確実に安全が確認されていない場合には、そういったものを使うのもどうかと思います。
 対策としては、音が出ないようにすることと、人の声を気にしなくても済むような小型の自立型テントを持ち込むくらいでしょうか。
 しっかりと眠れないと、気力はどんどん失われていきます。
 あなた自身が他の人に被害を与えないように、そして周りから被害を受けないためにも、避難が必要な人は事前準備をしっかりとしておきたいですね。

基本は自宅避難です

 災害対策の考え方の普及が進んだのか、それとも新型コロナウイルス感染症などで敬遠されているのか、在宅避難の人はかなり増えているのかなという気がします。
 自治体が設定している指定避難所の収容人数を確認すればわかるのですが、もともとその地域の人間をすべて収容できるような避難所はほとんど存在しません。
 避難しないといけない状況にある人が他に選択肢のない場合に自治体の設置する指定避難所に避難するというのが考え方の根底にあるからです。
 また、物理的に避難地域の全ての人を収容できるような施設がないということもあると思います。
 ではどんな前提で避難所に避難する人が決まるのかというと、以下の図のようになります。


 まずは自宅にいることができるのかどうかがスタート。
 自宅にいられない場合に、他の家族や知り合いなど、避難しなくてもいい人たちの家などに避難できないか、また、安全な場所にある宿泊施設などに避難できないかが選択肢に上がります。
 そして、どうにもならない場合に初めて指定避難所への避難が選択されるということになります。
 過去にはなんでもかんでも避難所に避難しろという乱暴な時代もありましたが、これだけ大規模災害が続くとそんなことも言っていられないということがわかってきたようです。
 避難指示が出ても、それはあなた特定の話ではなく、その地域全体の話です。
 まずはそれが自分に当てはまるのかどうか、そして当てはまっている場合にはどこへどうやって避難するのかについて、可能な限り事前にしっかりと決めておくことをお勧めします。

避難所支援で必要なもの

 避難所ではさまざまな物資が欠乏することが多いのですが、これは時期によってどんどん変わっていくもので、情報が出されたときにはすでに充足している場合もかなりあります。
 SNSで支援要請を行うときには「いつ時点」という表記を入れるようにするということがだいぶ浸透してきてはいますが、正直なところ「もの」を送るという行為に対しては素直に喜べないなと思うところがあります。
 もちろん支援物資を抱えて自力で被災地に持ち込み、そして被災者に直接配布するのであれば、必要なところを探して回れますので、物資の配布という点だけなら、極端に大きな問題にはならないと思います。
 ただ、「〇〇が不足」という情報を元にしてその「〇〇」を宅配便などで送りつけるのは止めた方が無難です。
 これを行うと、そもそもいつ届くかわからない上に被災地までの物流に極端な負荷をかけることになり、届いた後は被災地での配布で人的・場所的資源を取られてしまいます。正直なところ、届く時期が「未定」や「1週間程度」となっている場合には送らないほうが無難です。
 善意から出た行為が現地の負荷になってしまっては何の意味もありませんので、それを考えた支援が必要だと思います。
 足りない物資を届けたいなら、自分で買い付けて自分で送る必要はなく、例えばアマゾンの「ほしいものリスト」などを選択して送ることは一つの手です。
 また、被災している行政機関や支援団体に現金を寄付するのも手です。
 例えばある避難所で水が足りないからと言って、被災地全体に水が足りないとは限りません。別の避難所では水が余っているのかもしれません。
 そういった調整をせずに水が避難所に送り付けられる頃には、水の余っていた避難所から水が届けられて充足していて、あとは届いた大量の水が倉庫や保管場所を圧迫するという状態になってしまいます。
 こういった事態を防ぐために現地で支援物資の調整を行っているのが被災している自治体や支援団体ですので、そういった人たちに支援金が届くと、かなり効果的にお金を使ってもらえます。
 避難所支援というとどうしても物資に目が行きがちなのですが、それを届けるための物流や保管場所がどうなっているのかについてもきちんと確認してほしいと思います。

仮設トイレで気を付けること

仮設トイレでもパーテーションで区切ることで入り口を別にすることができる。

 大きな避難所になると、トイレ問題を解決するのに仮設トイレが設営されることがありますが、その時に意識しないといけないことの一つに、男性と女性の入り口を分けるというものがあります。
 日本の公共施設のトイレでは、多くの場合出入口が男女同じ、またはすぐ近くにあることが多く、人目がない場合には平時でも危険な状況になることがあります。
 災害後に仮設トイレが必要な状況というのは、非常にストレスが発生しやすい環境にあると考えて間違いありませんので、性的なトラブルの発生を予防する意味でも、トイレは男女完全に引き離すことが必要です。
 そのほかにも、トイレの周囲は常に明るくしておくことや、人目のある場所に作るなどいろいろとあるのですが、事前にしっかりと検討しておかないといざというときにはそこまで意識が向かないものです。
 一般的に避難所において、寝床とトイレは、さまざまなトラブルが発生しやすいところですので、トラブル防止のためにも平時にしっかりとレイアウトを検討しておくことをお勧めします。