非常用持ち出し袋の中身としては非常に地味な存在ですが忘れてはならないものに歯ブラシがあります。
災害時には、普段にもまして口の中の衛生環境を維持するように意識しないといけませんが、食事や水、簡易トイレは入れても歯ブラシを入れ忘れることがよくあります。
ティッシュや歯磨き用のクロスでもいいのですが、歯茎への刺激や歯間の衛生を維持するのには歯ブラシがあったほうが衛生環境を維持しやすくなります。
歯ブラシを持って行くということは、うがいもする必要がありますから、そのための水も確保しておく必要があります。
災害時であろうとも、一日一回でいいのでしっかりと歯磨きをする習慣を忘れないようにしたいですね。
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非常用持ち出し袋に関するあれこれです。
水と食料
非常用持ち出し袋に入れるものの中で頭を悩ませるものに水と食料があります。
入れなければいけないことはわかっていても、水であれば「量=重さ」ですし、食料も何を用意すればいいのか考えてしまうと思います。
防災関係の資料を見ると、一般的には成人一人が一日に必要な水の量は2~3リットルとされていますが、これはあくまでも目安なので、自分がどれくらい水分を摂取しているかを知っておいてください。
人によって、一日3リットルでは足りない人、2リットルでも多い人、さまざまだと思います。目安はあくまでも目安。自分の消費量と、自分が持って移動できる量のバランスで考えればいいと思います。
持って歩くのであれば、2リットルのペットボトルよりも500mlのペットボトル4本の方が運ぶにも使うにも便利です。あくまでも自分で持ち歩ける量を前提に検討してください。
そして食料ですが、非常食とはいえ、食べ慣れないものを食べて、それが口に合わなかったら一気に気落ちしてしまいます。
備えようと考えている非常食があれば、とにかく一度は食べてみることです。そうすることで、自分がよりおいしいと感じる非常食を準備することができますし、食べる過程で作り方やできあがりの分量を確認することができます。
しっかり噛むのが難しい人であればレトルトパックのおかゆは重要な食料になるでしょうし、乳児がいるのであれば液体ミルクを準備しておくといいと思います。
非常食というとアルファ米を思い浮かべる方も多いと思いますが、常温保存できて作る場所を問わない食料であれば、非常食としては問題ありません。
人によっては非常食でポテトチップスを準備しているかたもいますが、それも有りです。どんなときにでも自分が食べやすい食事を準備しておきましょう。
また、一食一品ではなく、最低もう一品。つまり主食と副菜を考えて用意しておくと気分的にご機嫌になれます。
重要なのは、いかに普段の生活に近い環境を維持できるかということですので、普段の食生活を意識しながら非常食の準備をするようにしてください。
非常用持ち出し袋のかたち
「非常用持ち出し袋はリュックサック」だと言われていますが、なぜリュックサックでないといけないのかを考えたことがありますか。
リュックサックは背中に背負った形で固定ができるため、両手が自由になることと重心が背中にあるため、移動するときに変な方向に引っ張られたり、ひっかかったりしなくても済むという利点があります。
ただ、これは災害発生後に避難する場合に有利と言うことであり、災害が予測されるときにする予防避難の場合には無理にリュックサックにする必要はありません。
普段お使いの肩掛けカバンや手押し車、旅行用のキャスター付きのカバンでも問題はないわけです。
早めの避難を心がけるのであれば、袋の形はさほど意識しなくても構いません。
どちらかというと、カバンの形状よりもカバンをどこへ置くかの方が大切です。玄関や裏口、倉庫など不意にやってくる地震のときに持ち出すことができる場所に分散して置いておくのがコツです。
もう一つ付け加えるなら、最優先で守るべきは自分の命です。もし非常用持ち出し袋が見つからないようであれば、探すのに固執せず、逃げ出すことを優先してください。
ちなみに、リュックサックでもその形状によっては非常に背負いにくい、あるいはものが入れにくいものがありますので、改めてリュックサックを準備する場合には、口の広くて大きいものを選んだ方が使いやすいです。
登山用のリュックサックなら、口が広く、重量物にも耐えられる設計になっているのでお勧めですよ。
装備によくあるホイッスル
防災時に持ち出すさまざまなアイテムの一覧表を見ると、かなり高い確率でホイッスルが入っています。
これは生き埋めや孤立状態になったとき、声を出さなくても音で周りに自分の所在を知らせるために入っているのですが、防災セットを背負った状態で、必要な状況になったときにこのホイッスルを吹くことが可能でしょうか。
例えばホイッスルが肩当てや胸ポケットに入っていれば吹くことは可能かもしれません。
でも、買ってきたそのままの状態で保管されていた場合、ホイッスルを吹こうと思ったら相当な手間がかかりますから、生き埋めや閉じ込められている状態では、吹くことはかなり難しいのではないでしょうか。
つまり、自分が助かる目的でホイッスルを準備するなら、常にすぐ取り出せる場所につけておかないと意味がないと言うことです。
ホイッスルの構造に関して言えば、できるだけシンプルであることが望ましいです。
照明とセットになっていたり、中に自分の情報を記載したパーソナルカードを収納できるものもありますが、異なる機能のものを一緒にすると、本来のホイッスルの目的が達成できないものが多いので選ぶときには単純なものをお勧めします。
その中でも、水に濡れたり埃の中でも吹けるように、本体内に音玉のない単管タイプのものがおすすめです。また、市販品でも「防災ホイッスル」としていろいろ販売されています。
値段は単純な単管のものよりは高くなりますが、値段の分だけ性能はしっかりとしていて、例えば人に聞こえやすい周波数を出すとか、少ない息でも大きな音が出せるとか、値段相応の付加価値がつけられています。
もちろんそうでないものもたくさんありますので、選ぶときには自分にあったものをよく考えて選ぶようにしてください。
それから、別に一本だけ持つことにこだわる必要はありませんので、安いものをあちこちに入れておくというのも一つの方法です。
自分がやりやすい方法を考えて準備しておきましょう。
ちなみに筆者の場合、ホイッスルは家や車の鍵の束に一緒につけています。
四半世紀くらい前に防災研修会でもらったものですが、単純な単管式で管自体が肉厚のおかげか、未だにしっかりと甲高い音が出せます。
たまに音を出してみて、どんな音がするのかも試しておいてくださいね。
コーピングリストを作っておこう
コーピング、とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、災害や事故など何らかの事情で精神に負担がかかる状態を解消するための方法だと考えてもらえばいいと思います。
精神に負担がかかる状態、よくストレスと言われますが、このストレスを与えるものが無くなるのがストレス解消には一番の解決法です。
ただ、大抵の場合にはストレスを与えるものが無くなることはありません。
そこで、何か起きたときに自分が安心できたり落ち着いたりできる方法を紙などに書き出して平常時にリスト化する、このことをコーピングリストを作ると言います。
そのリストを普段からいろいろと試してみると、その方法が自分のストレス解消に向いているかどうかがわかると思います。
具体的には、ストレス解消なので、ある程度は自分が楽しいと感じられることが要件になると思います。
それが寝ることでもダンスすることでも音楽を聴くことでもいいです。なるべくたくさん見つけておきましょう。
そして、いざストレスを感じたときにその厳選されたリストに載っているあれこれをやってみることで精神的に落ち着きを取り戻すことができます。
短い期間であれば我慢するのも一つの方法ですが、長期戦ではそういうわけにもいきません。
心を折らないためにも、自分が楽しいと思えることをリストにして、ストレス解消の準備をしておくようにしてくださいね。
防水リュックと給水袋
災害時には、非常用持ち出し袋の中身を濡らさないため、防水リュックを非常用持ち出し袋にしている方もいると思います。
そんな方は、災害後の断水で水を給水してもらうのに、その防水リュックをそのまま使うといいと思います。
完全防水のリュックは、中のものが水に濡れないように縫い目などがないように作られています。逆に考えれば、中の水も漏れないということですから、重たい水を運ぶのにも適していることになるのではないでしょうか。
重量物を支えられる持ち手があることが前提になりますが、そのまま背負えるので楽ですし、水が零れる心配もありません。
普通のリュックの中にビニール袋を入れて作る給水袋もありますが、そちらよりもより安定性がある防水リュックの給水袋。
これから装備を準備する方は、検討してみてもいいと思います。
非常用持ち出し袋に手袋を
市販品の非常用持ち出し袋には、軍手またはビニール手袋がついていることが多いのですが、災害時の避難や災害後の後片付けに使おうとすると、どちらもやや心許ない装備です。
特に最初からセットされている軍手は玉石混淆で、耐火性のある純綿手袋もあれば火気厳禁の合繊軍手もあり、同じ軍手でもまったく異なる性質のものが入っていたりして困ることになります。
そこで、市販品の作業用手袋を一つ追加してみてはどうでしょうか。
災害後に必要とされ、かつ不足するものの中に作業用の手袋があります。
さまざまな作業時にしっかりとした手袋が一枚有るのとないのでは、作業効率がかなり変わります。
作業用手袋には皮、合皮、ゴム手袋などありますが、個人的には耐熱や耐火、耐切創性の機能を持っているものをお勧めします。
普通に買っても一つ1,000円あればお釣りがくると思いますので、軍手やビニール手袋に追加して、作業用手袋を準備しておいてくださいね。
緊急連絡先は紙でも持っておこう
最近では全て携帯電話やスマートフォンの中に電話番号が入っていて、自分で番号を選んでかけるということをしている人は殆どいないのではなくでしょうか。
ただ、災害時には携帯電話やスマートフォンを亡くしたり、その電源が切れてしまうことがあるかもしれません。
大規模災害の後には避難所に臨時の電話が配置されることがあるのですが、その時に安否の連絡をしようと思っても相手の電話番号がわからなければ電話のかけようがありません。
そこで、緊急連絡先は携帯電話やスマートフォンの電話帳とは別に、紙でもわかるようにしておきましょう。
非常用持ち出し袋に関係連絡先だけを書いたものを入れておくだけで、避難後の連絡もつけやすくなります。
平時の個人情報の管理に不安があるのであれば、連絡先を書いた紙を折りたたんでラミネート加工しておけば、普段は目に触れず、必要な時にはそれを開ければ連絡先がわかるようになります。
デジタルだけに頼らず、アナログでも準備しておくことで、いざというときに役に立つことも多いですから、念のため準備しておいてくださいね。
母乳と乳児用ミルク
災害発生後、母乳で子育てをしている方の中には被災したという精神的なストレスから母乳が一時的に止まってしまうことがあります。
また、摂取する水分量が少なくなると、母乳が詰まりやすくなって出にくくなることもあります。
そんなときに備えて、平時に乳児用ミルクが飲めるかどうか、どこのメーカーのどんな種類が好きなのかを試しておくことをお勧めします。
母乳育ちの子に限りませんが、乳児も自分の好きな味や嫌いな味があります。大人でも食べ物の好き嫌いがあるのですから、乳児も好き嫌いがあって当たり前です。
各メーカー、それぞれに特色のある乳児用ミルクを販売していて、味もかなり違いますのでお子さんの好みの味を見つけておくようにしましょう。
また、水が手に入らないときには液体ミルクを使用することがあるかもしれません。災害支援物資として、乳児用ミルクは最初液体ミルクが送られてくることが多いようなので、各社の液体ミルクを手に入る範囲で試しておくことも忘れないでください。
災害時だからこそ、母乳でも乳児用ミルクでも乳児にしっかりと飲んでもらって、普段と異なる環境のなかでもしっかりと育ってもらうことが重要となります。
また、離乳食も同様で、普段手作りのおうちでも避難所では手作りすることは難しいですから、平時に市販の離乳食を試してみることで、被災時でも食べてくれる離乳食を準備することができます。
離乳食もメーカーによって味が全く異なるので、ぜひお子さんの好みの味を見つけてください。
筆者の家でも、離乳食の時期にはさまざまなメーカーのものを試してみましたが、よく食べるもの、まったく食べないものがいろいろとあってとても面白かったのを覚えています。
乳幼児は成長段階に応じて、飲むもの食べるものの種類や量が変わっていきますから、一度決めて終わりではなく、その都度いろいろと試しておくことをお勧めします。
お薬手帳とかかりつけ
かかりつけ医とかかりつけ薬局を持とうということで、健康保険組合がさまざまなところでPRをしています。
防災の目から見ると、持病を持っている人はかかりつけ医とかかりつけ薬局は持っておくべきだと思っています。
というのが、かかりつけ医やかかりつけ薬局を作ると、過去にどのような病歴があってどのような薬を使い、その結果どのような問題が発生したのかについてがきちんと記録されるからです。
非常用持ち出し袋にはお薬手帳の写しを入れておくようにと言われていますが、情報は変わっていくものですから、薬や量の変更などがあったときにはきちんと写しも変更しておかないといけません。
最近ではデジタルお薬手帳というのも普及してきてはいますが、お薬手帳では投与された薬や量はわかるのですが、使った結果発生した過去の副作用まではわからないのが現実です。
そんなとき、かかりつけ医やかかりつけ薬局を持っていると、過去にどのような薬でどのような副作用の記録が残っていますので、その時にその薬が無い場合の代わりの薬で使ってはいけないものがはっきりとわかります。
最悪、広域避難となって避難先で巡回医による診察でも、そういった情報があれば的確な診断を下すことが可能になりますので、かかりつけ医やかかりつけ薬局はできる限り持つようにしましょう。