段取り8分な災害対策

 昨日も書きましたが、「災害対策=特別なこと」としてしまうと、対策は長続きしません。
 あくまでも日常生活の延長線上で考えていかないと無理が来ます。
 そして、災害対策は決して難しいことではありません。日々の生活の中で、ちょっとした意識を持てばいいのです。
 災害対策とは「災害が起きた後、日常生活の質をいかに落とさなくてもすむようにしておくか」という準備ですから、住んでいる地域や今いる場所がどのような災害に弱いのかを知り、それに対する備えをしておけばよいのです。
 例えば、山のてっぺんに住んでいる人が浸水被害や津波の心配をしてもあまり意味がありませんし、平地に住んでいる人が土砂災害のことを気にしても自分の生死には直接の影響は少ないです。
 あなたがいる場所にあわせた対策をとることが、災害後の生活の質を落とさなくてもすむ一番の方策なのです。
 災害に弱いからといって、いま住んでいるところを変えるのは難しいかもしれませんが、引っ越しや家を買うときなどは、土地の形や周囲の状況といったものをしっかり確認しておくだけで、災害時に避難しなくてはいけない状況を減らすことができます。
 また、建物がしっかりとした耐震化がしてあれば、地震後に慌てて避難所に駆け込まなくてもすみますから、家を買う際にはそこもしっかりと検討しておいてください。
 普段からの生活の質を落とさないという点では、避難所へ避難するよりも自宅で過ごせる方がいいはずですので、まずは住むところが安全出ることが必要です。
 そして、食事、水分、排泄がきちんと確保されていること。
 特に排泄は絶対に我慢ができませんので、トイレの排水が無理だというときにどうやってトイレを確保するのかについてはしっかりと決めておかなければいけません。
 仮設トイレを作るのか、トイレの排泄部分だけを仮設化するのか、それとも使えるトイレを事前に調べておくのか。
 そういった決めごとをきちんと定めておくと、災害のショックで頭が回らないときにでもトラブルの回避はできます。
 最近の災害は多種多様なものが起きているので、そのときにどのようなことに困ったのかはさまざまな事例が今ご覧のインターネットなどにもたくさん出ています。
そういった事例を見て、自分のところの対応がきちんとできているかを確認しておくようにしてください。
 災害対策も段取り8分です。訓練していないことはできませんし、準備していないものはありません。
 仮設トイレや段ボールベッド、物資の配給訓練などさまざまな訓練はされていると思いますが、その訓練に使っている資材についても、きちんと使えるものを準備しておくようにしてください。

日常の延長の災害対策

 災害対策というと身構えてしまいがちですが、その目的は「日常生活を守ること」です。
 普段の生活を守るための対策を行うので、日常生活の延長として考えるといいのではないでしょうか。
 乾物や缶詰など、長期保存できるものを日々の食事のメニューに組み込んだり、風呂の水を貯めておいたり、カバンに水の入った水筒を入れておいたりといった、ちょっとした気遣いがあなたにとっての立派な防災になります。
 無理に災害対応用の特別なものを準備するのではなく、普段の生活の中で備えをしていかないと、特別にしてしまうといつかは忘れて存在しないのと同じ状態になってしまいます。
 日常生活、例えば電気やガス、水道が止まったときにどうやったら質を下げなくて済むのかを考えて準備をしておくと、それが災害への備えになります。
 個人の災害対策は身構えるほど難しくはありません。できるところから少しずつ手をつけて、災害時に日常生活をできる限り維持できるように準備しておくことをお勧めします。

消火器は火を扱う全ての部屋に個別に準備する

 お恥ずかしいことですが、昨日小火を出しました。
 古いオーブントースターから出火しまして、火が大きくなるのに「火事、火事、水、水!」としか出ない言葉の貧弱さ。
 消火器は準備していたのですが、少し離れた場所に置いていたので取りに行くのに間に合いそうになく、火を消す水を汲むにも道具がありませんでした。
 ただ、筆者の声を聞いた子ども達は「濡れたタオル」「洗面器に一杯の水」「電話機の前で消防への通報準備」とそれぞれに動いてくれており、濡れたタオル+みずぶっかけで事なきを得ることができました。
 我が家では先日防災センターでの訓練で消火訓練もしており、そのときに職員さんが教えてくれた手順を元に、子ども達はそれぞれの判断で行動してくれていました。
 火を消して鎮火したオーブントースターを安全な場所へ撤去し、徹底的に水をぶっかけてからの反省会で、「小さな火でも消防へ通報する」と「火を扱う場所には消火器を置く」ことを決め、本日買ってきました。
 中型の消火器の方が確実性は高いのですが、置き場所の問題で当面は写真のようなエアゾール消火器を導入することになりました。
 日々の訓練はもちろんですが、資機材についてもきちんと整備し、いざというときにすぐに使えるようにしておかなければいけないと深く反省した筆者でした。

水は重い

水の確保はTPOにあわせて量を考えよう。

災害時に不足するものとして、トイレと水があります。
トイレは絶対に我慢できないものですし、水分補給できなければ3日以内に動けなくなります。
食べ物は、成人の場合1週間程度は食べなくても生きていけるようですので、とりあえずトイレと水について確保する方法を考えておきましょう。
トイレについては過去に何度も触れていますので、今回は水について考えてみます。
非常用持ち出し袋に水を入れると、とにかく重たくなります。
一日の飲料水とされる3リットルだけでも、3kg。これを3日分持って避難しようとすると、恐らく他のものは持てなくなります。
山歩きなどでリュックサックになれていて、リュックサックも山用の丈夫なものであればよいのですが、普通に町歩きで使うようなリュックサックだと、9kgでもへとへとになると思います。
そうすると、水はあらかじめ避難先に保管しておいたり、家の中に分散しておいたり、車の中や倉庫といったさまざまな場所に分散して保管するという対策を考えておく必要があります。
非常用持ち出し袋には500mlのペットボトルを3本程度にして、あとは2リットルのペットボトルで保管しておくようにすれば、腐敗や重さをそこまで気にしなくてもよくなります。
また、ウォーターサーバーが停電時でも動くのであれば、そういったものを上手に使うとより快適に安全な水が確保できます。
繰り返しになりますが、水は重たいです。
しかし、あなたの命を繋ぐためには絶対に必要なものでもありますから、あなたの知恵を絞って、災害後に確実に手に入れられるようにしておいてくださいね。

避難所とお客様

「避難所は、あなたの命を守り繋ぐための場所の提供であって、避難者をお客様扱いしてくれる場所ではない」
 当たり前のことなのですが、普段災害対策から遠ざかっている人ほど、避難所で周囲に迷惑をかけるというのはもはや定番のようです。
 もし避難先でお客様として過ごしたいのであれば、避難所ではなく、被災地外の民間ホテルや旅館に避難しましょう。対価は要求されますが、対価相応のお客様扱いはしてもらえるはずです。
 避難所はあくまでも「場所の提供」なので、衣食で必要なものは全て持参しなければなりません。
 ですから、水や食事が配給されないからといって文句を言うのはお門違いです。
 布団がないからといって文句を言ってはいけません。寝具が必要なら、避難時に持参しなければいけません。
 明るかったり、うるさかったりしても、一般的常識の範囲であるなら、文句を言うべきではないでしょう。
 そして、他の避難者が衣食や寝具を持参して快適生活をしていたとしても、それに対して文句を言ったりうらやんだりすることは御法度です。
 あなたののどが渇いていたり、お腹が空いていたり、寒かったりするのはあなたの準備不足です。
 避難所で家と同じような生活を送ることは難しいでしょうが、できるだけ生活の質を落とさないようにするためには、事前のしっかりとした準備が必要なのです。
 さて、あなたの準備はできていますか。

情報が入るようになっていますか

 災害時、あなたはどのように情報を入手する手段を用意していますか。
 メール、アプリ、電話、防災行政無線など、いろいろな手段があると思いますが、できれば複数の手段を準備しておくようにしてください。
 特に防災行政無線に頼っている場合には、手元に情報が届かない恐れがあります。
 例えば、屋外の放送は雨音や風の音などで聞こえないことが多いですし、家屋ごとに受信機がある場合でも停電したり、本体の電池が切れていたりすると受信ができません。
 メールやアプリによる配信を確認できればいいのですが、人によっては携帯電話が無い方や、やり方がわからないという方もおられるのではないでしょうか。
 電話というのは割と確実なのですが、いざというときに電話してくれる相手を事前に見つけておかないと、そもそも電話がかかりません。
 お隣や近所と顔見知りであれば、そちらに頼んでおくのも手だと思います。
 災害時に自分が安全に生き残るための情報の入手方法は、平時に自分が準備しておかなければなりません。
 自分にどのような情報入手方法があっているのかを考えて、いざというときにきちんと手元の情報が来るように、今から準備しておくことをお勧めします。

歯磨きセットは必須アイテム

 非常用持ち出し袋を作るときに見落としがちで、市販品の非常用持ち出し袋に入っていることが殆どないものの一つが「歯磨きセット」です。
 歯ブラシと歯磨き粉、それにうがい用コップをひっくるめて歯磨きセットと呼んでいますが、あなたの非常用持ち出し袋にはこの歯磨きセットが入っていますか。
 実は、被災後の生活では口の中の衛生環境を維持できるかどうかで病気にかかる率がまったく違うことがわかっています。特に高齢者の方の場合は、歯磨きは絶対にしないといけません。
 口の中はさまざまな雑菌の温床になっており、それを歯磨きしてうがいで流すことで一定以上の数を増やせないようにしています。
 でも、災害が起きて歯磨きができない状態になると、口の中にさまざまな雑菌が繁殖し、特に高齢者ではその雑菌が肺炎を起こしたりすることが非常に多くなります。
 避難生活で体調を維持するためには、口の中の環境を維持することが必須なのです。
 歯ブラシが無ければ、口をゆすぐ洗口液や歯磨きシート、ティッシュペーパーなどでも構いませんので、口の中の汚れを落とす習慣だけは忘れないようにしてください。
 災害後の避難生活では、さまざまな理由から免疫が弱ってきます。そうすると、身体のあちこちにいる雑菌が一斉に悪さをしようと活動を始めます。その中でも、口は内臓に直結している部分ですので、口の衛生を死守することが元気に災害後を過ごすことの絶対条件です。
 入れ歯の方の場合には、入れ歯洗浄剤なども非常用持ち出し袋に入れておいて、口の中の衛生環境をできる限り守るようにしてくださいね。

お風呂の残り湯をどうするか

 災害対策のお話をしていると、割とよく出てくるものの一つに「お風呂の残り湯は抜くのが正解か、貯めておくのが正解か?」という質問です。
 答えは「あなたがお住まいの環境によります」ということにしているのですが、お風呂の残り湯というのは案外と使い勝手の悪いものですので、そこだけは留意しておいてほしいと思います。
 お風呂の湯を抜かずに1日おいておくと、なんともいえない臭気がお湯から出てくると思います。特に夏場はひどいのですが、これは人が入浴した後のお湯なので、さまざまな汚れの入った水で雑菌が繁殖した結果です。
 夏場などは特にひどくなりますので、人に直接使うのはちょっとためらわれます。
 浄化キットがあればそれを使えばある程度使える水に変換はできますので、残り湯を使うことを考えるのであれば、水の浄化キットは準備しておいてほしいと思います。それがない場合、庭木の水やりか打ち水、トイレを流すかくらいになりますので、大容量の水ではありますが、過大な期待はしないほうがいいでしょう。
 また、集合住宅で2階以上にお住まいの場合には、大きな地震のときに湯船から残り湯がひっくり返って階下のおうちを水浸しにしてしまう危険性もあります。
 残り湯は抜くのが正解なのかと言われると、集合住宅の2階以上にお住まいなら抜くのが正解と答えます。
 単独住宅の場合には、風呂場が1階にあり、使い道を考えた上で残り湯を残しておくのは良いアイデアだと思います。
 ただ、小さいお子様がいる場合には、残り湯で溺死する危険性は排除できませんので、残り湯は抜いておくことをお勧めします。
 あなたのお住まいの環境でその水をどのように使うのか、そしてそれはどれ位必要なのか。それをきちんと踏まえた上で考えることをお勧めします。

【お知らせ】「日本海南西部の海域活断層の長期評価」が公表されました

 令和4年3月25日に地震調査研究推進本部(地震本部)が日本海南西部の海域活断層の長期評価を公表しました。
 今回は実際に機材を使って調査した結果だそうですが、調査前の想定よりもずいぶんと活断層が多い感じがします。
 島根県西部は今回の評価では南西部中部という位置で評価されていますが、1872年の浜田地震や1026年の万寿の大海嘯についても触れられています。
 30年以内にM6.8程度の地震が起こる確率は6-9%となっていますが、0%では無いということで、いつ地震が起きてもおかしくない状況です。
 充分な調査ができていないということで、評価も難しいようですが、沿岸部に住んでいる人は、地震と津波について対策をしておいたほうがよさそうです。
 詳しくは地震本部のウェブサイトをご覧下さい。

日本海南西部の海域活断層の長期評価(地震本部のウェブサイトへ移動します)

どのような調査をしたのかに興味のある方はこちらもどうぞ
日本海南西部の大地震 海域活断層対象の評価初公表 地震調査委」(NHKのウェブサイトへ移動します)

避難所の表示に注意しよう

 災害が起きた、あるいは起きそうなときは近くの避難所へ避難するように、以前は誘導されていました。
 密を防ぐ必要があるとされている新型コロナウイルス感染症が蔓延してからは、できるだけ安全なおうちでは在宅で過ごし、危険エリアなどに住んでいる人が避難所に避難するように変わってきていますが、災害時には「○○地区に避難勧告」といった風に安全かそうでないかを考えない状態で避難指示が出させることが多いです。
 ところで、避難所にはそれぞれの災害に対応しているか否かがわかるようになっています。以前は「避難所は災害全てに対応」のようなイメージだったと思いますが、現在では「該当する災害に対応している避難所へ避難」となっていて、ハザードマップはもちろん、避難所にも可能な限り対応表を貼り出すようになっています。

 この対応表、どこの避難所でも周囲からよく見えるところに貼ってあるのですが、結構気がつかない人がいるようで、水害が起きそうだからといって水に浸かるエリアにある避難所に避難しようとする人がいます。
 せっかく貼り出してあるのですから、お住まいの地域の避難所がどのような災害に対応しているのかをしっかりと確認し、避難所で被災することがないようにしてください。