暑熱順化しておこう

 だんだんと暑くなってきましたが、暑いのが苦手だったり、暑いのが嫌な人は、割と早めにエアコンを使っているのではないでしょうか。
 普段であればそこまで問題にならないかもしれませんが、暑さに慣れておかないと、屋外へのお出かけ時や、もしも災害で停電してしまったときには暑さに耐えられずに熱中症になってしまうので注意が必要です。
 無理をする必要はありませんが、暑さに身体を慣らすことで身体の熱ストレスへの耐性があがり、熱中症になりにくくなります。
 これを暑熱順化といいますが、ちょうどだんだん暑くなってくる今の時期に暑さを身体に慣らしておくと、その後の夏がある程度過ごしやすくなると思います。
 暑さへの身体の慣らし方としては、軽い運動をすることです。
 暑熱順化は、身体の冷却機能を身体に思い出させる作業なので、身体を動かすことで汗をかいたり血流による体温調整がしやすくなったりし、結果的に熱中症を防ぐ効果が期待されます。
 本格的に暑くなってくるこれからに備えて、運動をして熱に強い身体を作る、暑熱順化をしておくようにしてくださいね。

判断力を養う

 災害が発生したときに学校や学童クラブなどにいたときには、「子ども達は先生の指示に従いなさい」という教育をされています。
 これは子ども達よりも大人である教員などの方が正しい判断ができるということなのでしょうが、それは本当でしょうか。
 通常時はそれで問題ないと思うのですが、災害発生時には、とっさの判断と迷わない行動が必要になります。
 この判断や行動はそれまでその人がどうやって生きてきたかという人生に直結する話なので、自分で決めたことがない人にとっては判断も行動もできないということになります。
 ましてや、責任問題がついて回ることを考えると、どれくらいの大人が正しい判断をすることができるでしょうか。
 普段から行動基準を決めているのであればそれに従えば良いのですが、学校長や教頭、主幹教諭などの指示を受ければいいと考えている人では、まともに動くことすらできないでしょう。
 逆に、普段から防災教育を真面目に取り組んでいる子ども達の方が正しい判断ができると確信しています。
 判断と行動ができない人が指揮を執るとどうなるかは、東日本大震災のとある小学校の悲劇を考えればわかると思います。子どもも大人も関係ありません。普段から災害時にはどんな行動をすればいいのかを一緒に考え、話しておけば、いざというときにそれぞれが安全確保の行動をとることができます。
 もしあなたに子どもがいるのであれば、「いざというときには先生のいうことを聞くんだよ」ではなく、「いざというときには自分が安全だと思う行動を取るんだよ」と教えて下さい。
 自分の命を守るのは自分しかありません。
 過剰に大人に判断を任せるのではなく、子ども達も一人の人として自分の命を守る行動が取れるように、普段から意識するようにしてください。

避難するときには何がいる?

非常用持ち出し袋に関する記事を見ると、これでもかというくらいさまざまなものが書かれていて、それを全部一つの袋に収めると結構な大きさと重量になります。
とはいえ、必要なものを集めていくとそうなるわけで、持って行くなということも言えません。
ただ、絶対に必要になるものはある程度わかりますので、今日はそれを紹介していきたいと思います。
まず、絶対にいるものの筆頭はあなたの個人装備です。
例えば、入れ歯、眼鏡、補聴器、杖といった道具類、常備薬や生理用品といった衛生用品といった、自分には必要だが他の人にとってはそうでもないものや手に入りにくくなるものだが、自分にとっては必要なものがこれに該当します。
これは自分で用意しておかないと誰も用意してくれませんので、必ず用意するようにしてください。
次は携帯トイレです。大小兼用のものが望ましいですが、なければ小専用でも構いません。一日にトイレに行く回数を確認し、その回数分は持参するようにしてください。
飲むことや食べることは我慢できても、排泄は我慢できません。災害時に断水するとトイレが使用不能になる場合がほとんどですので、トイレを汚物で汚染しないためにも準備しておいてください。
三つ目は飲料水です。一人1日3リットル準備しようといった記事も見かけますが、そんな量を持って移動するのは困難な人もいますので、500mlペットボトル2本程度を用意してください。
傷の洗浄やものを濡らしたりすることもあるので、お茶やジュースでは無く、水を準備しておくことをお勧めします。
四つ目が身体を冷やさないための道具です。例えば非常用持ち出し袋ではお馴染みになっているエマージェンシーブランケットや使い捨てカイロなどです。着替えや下着も一組は用意しておいてください。
脱ぐことは簡単にできますが、着込もうとすると着るための服が必要です。ただ、避難所にはそんなものはありませんので、自分で自分のものを持ち込む必要があるのです。
何も無ければ、せめて雨合羽くらいは準備しましょう。体温が保たれているのであれば、必要なのは周囲から体温を奪う風を防ぐ道具になるからです。
五つ目は時間を潰せるアイテムです。いきなり災害後から始まる地震はともかく、台風や水害といった事前に避難の可能な災害の場合、避難完了から家に帰ることができるようになるまでには半日から数日はかかります。
ただ寝ているだけだと、人間はだんだん不安になってくるものですから、余計なことを考えなくても済む、暇つぶしのアイテムを複数準備しておくといいと思います。
そして、最後が自分の好きな食べ物です。そんなに長い期間避難するわけではないので、自分が楽しめる食べ物を持参していきましょう。
臭いの強いものや煙の出るものは無理ですが、自分の楽しめる食べ物があれば、それだけで不安な避難所の時間が解消されると思います。
これらを準備した上で、あとはあなたの好みや必要性にあわせてさまざまな道具を準備するようにしてください。

逃げる? 逃げない?

 地震はともかく、予兆がある台風や水害の場合には、高齢者避難や避難指示が致命的な被害が発生する前に予め発表されると思います。
 行政としては、○○地区という言い方しかできないので、「○○地区に避難指示を発表」といった表示になるのですが、では、○○地区の人は全員がその場から避難しなくてはいけないのかというと、必ずしもそうではありません。
 同じ地区内でも、急いで逃げなければ大惨事になる場所もあれば、避難せずに自宅待機している状態で充分だという場所もあるでしょう。
 ただ、その判断は行政がするのでは無く、避難を判断する各個人が個別にやらなければならない作業です。
 お手元に行政機関が作成したハザードマップや防災計画書を見ていただくとわかりますが、指定避難所には、とてもその避難所に収容しきれないだろうという人数が割り振られていることがあります。
 これは、該当する地区の人口を直接当てはめてしまっているだけで、実際に収容できるかどうかは問題にしていません。
 なので、実際には災害が発生しそうだからといって避難したら避難所に入れなかったといった出来事が発生することもよくあります。また、家はなんともなかったのに避難中に遭難してしまったという事例も、自分が避難すべき対象者かどうかをきちんと確認していなかったことが原因だといえます。
 お手元のハザードマップと、今自分のいる場所をしっかりと確認してもらい、該当する災害で避難すべき場所にいるのかどうかをしっかりと精査し、必要に応じて避難するようにしてください。

ペットの補給品問題

ケージの中にいられる時間は結構短いです。ペットをどこで解放しますか?

 ペット連れでの避難。ペットを飼っている人にとっては割と常識になってきていても、受け入れる側である避難所運営や避難者にとってはあまり常識にはなっていないようです。
 そのため、ペットの隔離場所が人の通りの多いところになったり、飼い主がペットを放置して鳴き声で周囲に迷惑を掛けたり、ケージに入れたままなので中が糞尿で汚物まみれになってしまったりと、かなり問題を引き起こしているなという気がします。
 実際、ペット同伴可の避難所とペット同伴不可の避難所を分けて設置している例も出てきているようで、命に貴賎はないとはいいながら、なかなか難しい問題になってきています。
 その上で問題になるのが、ペットのご飯やトイレのことです。
 避難所では、当たり前ですが人間の避難にしか対応していません。つまり、ペットのことは自分で全て準備しなければいけないのですが、それが理解できている飼い主はあまりいません。
 ペットの食事を何とかして欲しいといったり、排泄物について避難所運営側に処理させたりといった、そもそも同伴避難が理解できていない飼い主が非常に多いです。
 避難者の補給でさえままならない中で、ペット関係の補給がされるわけはありませんので、自分の非常用持ち出し袋の他に、ペット用の非常用持ち出し袋も準備しておかなければなりません。
 ただ、ペットを飼っている人には高齢者の方も多いです。自分の非常用持ち出し袋でさえ作れない人が、ペット用の非常用持ち出し袋を作れるとも思えませんので、何か対策を考えておく必要があります。
 ペット専用の避難所を作るとか、どこかにペット用の備蓄をしておくとか、ペット保険があるのですから、ペット用の防災備蓄倉庫を作ってもいいのではないかと思います。行政主導というわけにいかないと思いますが、愛好家の皆さんで検討する必要がある時期に来ているのでは無いかという気がします。
 あなたのペットの非常用持ち出し袋は準備ができていますか。そして、自分の非常用持ち出し袋と一緒に持ち出せるようになっていますか。
 今一度、点検をお願いします。

子どもの避難と保護者のお迎え

 学校やスポーツクラブ、学童クラブなどにいた子ども達が災害にあったら、子ども達をどのようにして保護者に引き渡すのかをルール化して保護者と情報共有ができているでしょうか。
 災害で避難した子ども達は、恐らくみんな不安になっていると思います。
 保護者の顔を見るとほっとするのではないかというのは、なんとなくイメージができるのではないでしょうか。
 ただ、知りうる限りの施設では、避難や避難先は内部で共有されていますが、保護者や外部には公表されていないのか、いざというときにどこに避難していて、迎えにいけばいいのかを把握してる保護者はすくないような気がします。
 これは少しだけ困った話で、子どもを引き取る保護者側はこどもがどこにいるのかさっぱりわからずに被災地内を駆け回ることになってしまいます。
 学校もそうなのですが、できる限り保護者も避難訓練に参加してどのような訓練をしているのかをきちんと確認しておいた方がいいと思います。
 そうすれば、どこに避難する可能性があるのかがわかりますので、こどもの居場所も予測しやすくなるはずです。
 被災後は、できるだけ早めに子ども達を保護者に引き渡さなければならない。
 そのことを念頭において、さまざまな会議や文書で保護者には知らせておいて欲しいなと思います。

側溝に気をつける

 大雨が降るかもしれないという予報が出ていますが、あなたの家の周りの側溝はきれいになっていますか。
 側溝は排水路ですので、水をせき止めるものが中にない限りは降った雨を川などに運んでくれるありがたいものです。
 ただ、注意が二つ。
 一つは側溝の中が汚泥やゴミなどで底が埋まっていたり、水がうまく流れなくなっていないかを雨が降る前に確認しておくこと。
 二つ目は、あなたの家の周りの側溝が、周囲と比べて低地になっていないかどうかということです。
 水がうまく流れるためには側溝にゴミがあったり、汚泥などで浅くなっていたら困るのはわかると思います。
 低地の問題は、側溝の排水能力を超える雨が降ると、低地部分から水があふれ出してしまうからです。
 もしも家の周囲がその低地に当たるのであれば、周囲に土のうを積んでおいたり、あるいは雨の様子を見て早めに安全な場所への移動を開始したりといった方策を考えておく必要があります。
 当たり前のことですが、水は高いところから低いところへ流れていきます。
 周囲から低い場所にあなたの家や避難経路があるのであれば、他の人よりも行動を早くしたほうが安心です。

簡易トイレと汚物処理

携帯トイレ各種

 災害で通常のトイレが使えなくなったときに登場するのが簡易トイレです。
 時間の経過と共に工事現場で見るような使いやすくてきちんと仕切られた仮設トイレが到着したり、使えなかったトイレが使えるようになったりしますが、それまでは汚物を自分で処理する必要のある簡易トイレを使わなければなりません。
 最近では避難所の備蓄品や非常用持ち出し袋の中のアイテムとして常備されていることも増えてきましたが、いざというときにそれらの道具を正しく使うことができますか。
 こういった簡易トイレは使用一回ごとに凝固剤で固めた汚物の入った袋の口を縛って可燃ゴミとしてゴミ置き場に出しておかないといけないのですが、残念ながら汚物をそのままにしてしまう人が多いようです。
 張り紙などで意識させるようにしていても、普段の慣習というのはどうしても出てしまうので、次に使う人との間で大きなトラブルになってしまいます。
 普段の避難訓練や避難所設営訓練時に実際に使ってみないと身につかないような気がするのですが、トイレの問題は「汚い」とか「くさい」といった感覚が先に立ってしまって設置まではしても実際に使用するところまではいかないようです。
 ただ、使うときには本当に困ってしまう部分なので、とりあえずは使用から汚物袋の処分までを入れた訓練はしておいたほうがいいと思います。
 ところで、簡易トイレは汚物袋と凝固剤を一セットにして一回ごとに使用するのですが、あなたは自分が普段トイレに行く回数とその時の大小について大ざっぱでいいので把握していますか。

座るところは段ボールでもバケツでも作れるが、処理袋は用意していないと作れない。特に凝固剤がないと汚物が可燃物で処理できないので要注意!


 大小で使う簡易トイレが異なることがありますので、回数を把握したうえで非常用持ち出し袋に備える簡易トイレの数を確保して下さい。
 災害備蓄として避難所においてあるトイレの汚物袋と凝固剤の数は、例えば2000セットあると聞くと多いと感じますか、それとも少ないと感じますか。
 その避難所に避難する人が100人いるとします。そうすると、一人が簡易トイレを使用できる回数は20回。一日に5回トイレに行くとすると、4日分しかありません。
 もし避難者が1000人だとすると、たった2回分です。
 自分の備蓄を準備しておかないと、簡易トイレさえ使えなくなるということを知っておいてください。
 各人が自分の簡易トイレを持っているほど、トイレ事情には余裕が出てきます。
 食べたり飲んだりは我慢できても、出すのは我慢にも限界がすぐ来ますので、簡易トイレの準備と取り扱い方の熟知、そしてゴミ処理についての計画を作っておくことをお勧めします。

逃げるべきか逃げないべきか

災害の原因はいろいろとありますが、その原因によって避難すべき場合と、自宅でやり過ごした方が安全な場合とがあります。
あなたはお住まいの場所やお仕事の場所がどのような災害の危険性があって、避難した方が良いか、するとすればどこに避難するのか、またはその場で待機している方が安全が確保できるのかを検討していますか。
いきなりやってくる地震の場合は、建物補強と落下物防止くらいしか事前対策はできませんが、他の災害は事前にどの災害で避難しないといけないのか、避難先はどこで、どうやって避難するのか、そして避難開始のタイミングはどうするのかを決めることができます。
また、逆に避難した方が危険な場合には、家にじっとしている場合も出てきます。あるいは、逃げ遅れた場合には自宅のどこが一番安全なのか、それも確認しておかないといけません。
行政機関が出す避難の呼びかけは地区・地域という面で発表されますが、実際に避難すべきかどうかは、あなたのいる場所の環境や条件によって異なってきますので、事前に地域の特徴を確認して、どのようにすべきかを決めておいた方が安心です。
逃げるかどうかがわからなければ、その先の準備がうまくできずに、実態とあわない状態になってしまいます。
まずはあなたのいる場所がどの災害に弱いのか、そしてどんな条件になったら避難しないといけないのか、そのことをしっかりと確認しておいて下さいね。

子どもと要支援者の避難先

被災地の避難所で生活しなければならなくなった場合、子どもと要支援者の方の取り扱いについては少し注意が必要です。
大規模災害で被災すると、被災地の衛生状態や医療体制は崩壊、または限定された対応しかできなくなりますので、いざというときの支援体制には非常に不安が残ります。
また、子どもの生活環境についてもかなり劣悪になります。常に見知らぬ人がいますので落ち着きませんし、何が起きても避難所の避難者に目の敵にされてしまうことが多いです。
いろいろと考えてみると、子どもと要支援者の方については被災地外に一時的に疎開した方がよいのではないかという結論に、今のところはなっています。
ただ、広域的に知り合いがいる方や医療機関同士の相互支援協定が結ばれていたりすればいいのですが、そうでない場合には疎開させるといっても受け入れ先の問題が出てきます。
そういった部分で、行政機関同士の連携が必要になってくるのかなと考えています。
大規模災害が発生しても、被災地の人は被災地で生活しなければならないという妙な前提条件があるような気がしますが、被災地の人が被災地外へ疎開しても全然問題ありませんし、子どもや要支援者といった配慮のいる人達が普段の生活に困らない場所に行っているという安心感は、復旧を早める効果があるのではないかとも思います。
原子力災害では問答無用で被災区域外へ避難をさせられてしまいますが、普通の自然災害でも、そういった対象になる人は被災地域外に移動させて、被災地の負担を少しでも減らすようにした方がいいのではないかと考えています。
ああ