車の移動と低地走行

 あちこちで大雨が続いています。
 大きな被害が出ないことを願っていますが、報道を見ると、車で移動していて動けなくなり救助要請という事態が起きているようです。
 大雨でも普段使っている道が冠水して池になっているというのは考えにくいようで、いつものように走っていて水没し、動けなくなるということのようです。
 人間というのは不思議なもので、普段から慣れ親しんでいるところが急激に変化するとはあまり考えないようになっているらしく、多くの方がひどい目にあって、「こんなはずではなかった」と言うことが多いです。
 ほんのちょっとしたことなのですが、緊急時に安全な場所まで逃げるための避難路の点検と同じように、普段使いしている道路の高低差や経路で土地が低かったり排水がうまくできないような場所を確認しておいたなら、こういった事態にはならなかったかもしれません。
 アンダーパスでの浸水の危険性はかなり周知されてきていますが、アンダーパスだけでなく、周囲から見て一段低い場所も水が溜まって危険です。
 大きな水たまりに見えていても深いことがありますから、基本はそういった水たまりはできるだけ避けて運転することです。
 雨の日にちょっと気を付けていると、水のたまりやすいところや掃けにくいところがわかると思いますので、普段と比べて水の量がどうなのかがイメージできれば、そこまでひどい目に遭うことはないのではないかと思います。
 実際に現地を歩いてみたり、国土地理院の地図などで周囲の確認をしたりして、大雨の時にはできるだけ水たまりとなるような場所を通らない。
 できれば普段からそういった場所を避けるような経路を作って、それを常に移動するような癖をつけておくといいと思います。

垂直避難で気を付けること

 あちこちで大雨が降っていますが、あなたのお住いの地域ではどのような状態でしょうか。
 ここのところの雨の降り方は数時間で河川氾濫や内水越水が起きるような強烈なものになっているため、行政の避難情報が間に合わない事態も起きているようです。
 自分の命を自分で守るためには、自分で避難すべき基準を作り、確認しておく必要がありそうです。
 ところで、こういった雨の降り方をすると、場合によっては安全な場所に逃げるための水平避難が間に合わない場合が想定されますので、いざというときに備えてご自宅の二回以上に避難する垂直避難も逃げる選択肢に入れておいたほうがよさそうです。


 垂直避難では、基本的に二階以上に避難したら、水が引くまではそこで過ごすことが原則となります。地域によっては水防団などが救助に来てくれる可能性もありますが、基本は避難した場所から移動ができません。
 そのため、そこで過ごすために必要なあれこれをあらかじめ備え付けておくようにしてください。
 水、携帯トイレ(もしくは簡易トイレ)、食料、着替え、布団、ポータブル電源、テレビやラジオなどの情報が確認できるもの、そして暇つぶしのできるものなどを用意しておくといいと思います。
 ただし、垂直避難できるのはその地域の水没する水の高さが1階の高さ以内に収まることが前提となりますので、二階以上が水没するようなハザードマップが出ている場合には、危険だと思ったらすぐに域外へ避難することです。
 一番いいのは安全な場所にいますぐに引っ越しをすることですが、それができない人は、雨には十分に警戒するようにしましょう。
 最近は精度の高い雨雲レーダーの情報(リンク先は日本気象協会)や気象庁のキキクルなどもありますので、自分できちんと情報を集めてどうするかの判断をするようにしてください。
 そして、自分で判断が難しい場合には、そういったことが得意な人に注意を促してもらうようにしておくといいでしょう。
 いずれにしても、垂直避難は決して安全な避難ではありません。
 もし垂直避難するのなら、避難後に困らないような準備を、二階以上に備えておいてくださいね。

母乳とストレス

 災害時には母乳が出なくなって乳児にあげられなくなるという話をよく聞きますが、これは正しくないようです。
 母乳はどんな状態であっても作り続けられていて、ストレスなどにより体が警戒することで、母乳が出なくなっているというのが実際のところのようです。
 つまり、まずはお母さんと乳児を安心できる環境にすることで、ストレスが軽減して母乳が出るようになるということで、できるだけ普段の生活環境に近づけることで、体の警戒態勢を緩めてやることで、母乳はきちんと乳児に与えることができるということになります。
 例えば避難所であれば、しっかりとした目隠しや仕切り、できれば人ごとに仕切られた授乳室を作ることで体の警戒態勢を緩めることができると思います。
 母乳がでなければミルクを与えるのも手ですが、ミルクが嫌いだったり、諸般の事情でミルクを受け付けない子もいますので、母乳を出すための周辺環境を整えてやることが重要だと思います。
 また、ストレスを与えないという視点で見れば、自宅や親兄弟の家といった行きなれていて見慣れた人たちがいる場所を避難先として選ぶといいと思います。
 場合によっては、被災地外に出て状況が落ち着くのを待つという方法も選択肢に入れたほうがいいと考えます。
 乳児を抱えての避難所生活はかなり大変です。
 支援体制がきちんと整っている乳児向けの福祉避難所、または避難所ではない避難先を平時に決めておいて、いざというときに途方にくれないようにしたいですね。

AEDは機械の指示をしっかりと聞く

 AEDは現在ではかなりメジャーな救命器具となりましたが、あなたは使ったことがありますか。
 AEDは自動体外式除細動器といい、心臓を動かす電気信号がおかしくなっているのを正常に戻すための道具で、現在の救急救命法の講習会では、ほとんどの場合、心臓マッサージと併せてこのAEDの取り扱いを実施しています。
 複数回、違う主催者の訓練で使われた方はお気づきかもしれませんが、AEDはさまざまなメーカーから発売されていて、それぞれに特長があります。
 そして、AEDの作られた時代によっても扱い方が異なりますので、AEDを使ったことがあるからと教わった手順でAEDを被害者に取り付けても、そのAEDと手順が違うことも起こりうるのです。
 ただ、AEDは機械が起動すると、すべて作業手順を機械が教えてくれるようになっていますから、その手順通りに作業すればAEDは正常に仕事をしてくれますから、どんなに慌てていてもAEDの手順をしっかり聞いてそのとおりに作業を行うことがもっとも重要なことになります。
 慌てずに、AEDの指示をしっかりと聞いてそのとおりに手順を行っていくこと。そうすることで、AEDは最大限の効果を発揮します。
 まずは電源を入れる。あとはAEDの指示通りに作業する。
 この手順を忘れないようにしてください。
 ちなみに、最近のAEDはAEDが収まっている入れ物の蓋を開けると自動で電源が入り、電極パッドの設定が終わると自動で電気ショックを与えてくれるものも出てきています。
 逆に電源ボタンを人が押さない限り起動しないAEDもまだまだ残っていますので、電源が入るかどうかだけは機械を気を付けてみてほしいと思います。

体温調整には血管を使う

 体温の調整システムがうまく機能しなくなると、体にさまざまな障害が発生します。代表的なものだと、熱中症は体の排熱調整がうまくいかなくなって熱がたまってしまい発生するものですし、低体温症は体の熱生成機能がうまく働かなくなって熱を作れなくなってしまい発生するものです。
 どちらもそのまま放っておくと死に至ってしまうかもしれない危険な状態なので対処をしなければいけないのですが、すぐに病院に搬送ができないときには、血管を使って体温の調整をしてみてください。
 体の中のおおきな血管を冷やしたり温めたりすることで、体の体温がある程度調整できますので、緊急時に打つ手の一つとして知っておいて損はありません。
 大きな血管は首やわきの下、鼠径部といった場所で体表に近いところに露出しています。そこに向けて熱中症であれば冷たいものを、低体温症であれば暖かいものを置いてやることで、外部から効率的に体温の調整ができます。
 もちろん体内の温度は簡単に変動しませんので、冷たいものや暖かいものを飲む必要はありますが、外部からと内部からの両方で体温調整をしてやることで、本来持っている体の恒常性を取り戻すことができるのです。
 余談ですが、低体温時には体で熱を作ることが難しくなっていますので、例えばエマージェンシーシートや毛布などで体を覆っても体温は上がりません。
 もしも体が濡れていればすぐに乾いたものに着替えさせること、そして外部から暖かな熱を与えることが必要になりますので、対処するときには気を付けてください。

生活用水を考える

 災害対策の中で大きな問題になるのが水です。
 そのうち、生活用水については量も多く必要で飲料水よりも優先順位が低くなるため、なかなか確保が難しいのではないかと思います。
 ただ、生活用水は飲料水ほどの清潔さは求められませんから、あらかじめ準備がしてあれば確保は非常にしやすくなると思いますので、水の確保という意識を持つとよいのではないでしょうか。
 例えば、排水に影響で他者に影響がなければ、風呂おけはおそらく家の中で最大の貯水場になりますので、災害が起きる前にそこに水をためておくのは一つの手です。
 庭などに井戸があるなら、それらを定期的に使えるかどうか確認しておくと、いざというときに非常に頼もしい存在になります。
 電気が来ているのであれば、除湿器の水やエアコンの排水なども使えるかもしれません。また、雨水タンクや太陽熱温水器なども貯水装置としては優秀です。
 最近では配水管の中に貯水できる空間を確保したものもあるようですので、ちょっと意識するだけで水の確保はある程度できると思います。
 普段からどのあたりに水があってどうやって処理しているのかを意識するだけで、ある程度の水の確保は可能です。
 全てを準備するのは大変かもしれませんが、できる範囲での生活用水の確保の方法を考えてやってみてください。

弱者ほど厳しい避難所生活

 災害の避難情報では「レベル3・高齢者等避難」と「レベル4・避難指示」に別れています。
 このうち、レベル3の高齢者等の「等」には障がい者や乳幼児、妊婦といった生活に対してさまざまな配慮のいる人達が含まれていて、そういった人達は元気な人よりも早く避難を促されています。
 その理由はいろいろとあるのですが、一番大きな理由は、元気な人と同時に避難を開始したら、生活に配慮のいる人達は元気な人に避難する速度が負けてしまうからです。
 生活に配慮のいる人いない人の区別は、避難所にはありません。考え方としては、避難者は平等に避難者としての取り扱いがされてしまいます。
 そのため、生活に配慮のいる人達は元気な人と同時に行動を開始すると、どうしても速度で負けてしまって、避難しても避難所等に収容してもらえないという事態が発生します。また、元気な人に交じって避難するのが難しい場合もありますのから、せっかく避難したにもかかわらず、結局自宅に戻ってしまう例も起きています。
 これはまずいということで、現在は配慮のいる人達は最初から福祉避難所に避難できるように法改正されているのですが、普段から施設を利用している人達はともかく、乳幼児や妊産婦を最初から受け入れてくれる場所は、保育園や病院、助産院などになり、福祉避難所としてはあまり聞きません。
 また、元気な人でもアレルギーを持っている人がいますが、避難所で避難者に支給されるさまざまな支援物資はアレルギーの配慮はありませんので、自分でものを見て判断していくしか手がありません。
 これも避難者として平等に扱われることから発生する問題です。
 一般的に生活になんらかの配慮がいる人達は避難所では隅に押しやられ、その上生活再建することも時間がかかってしまうために最後まで避難所にいる羽目になることが多いです。
 あなたがもし、生活になんらかの配慮が必要な人だとしたら、避難所に避難するとひどい目に遭うことは目に見えていますので、避難所以外で自分が安心して過ごすことのできる避難先を用意しておくことをお勧めします。
 生活弱者ほど厳しい生活になってしまうのが避難所です。
 避難しなくても済むような場所に住んでいることが一番の理想ですが、さまざまな事情でそれが難しい場合には、最低1カ所、できれば複数箇所、自分の安心できる避難先を見つけておいてください。

公衆電話を確認しておこう

 とある携帯通信会社の回線が長時間ダウンしてしまっています。現在では概ね復旧したようですが、未だに繋がらないところもあるようで、該当するユーザーさんはかなり大変だと思います。
 普段何気なく使っている携帯電話ですが、データ通信も含めた通信環境が全てダウンしてしまうと、思った以上に困ってしまうことが分かった方も多いのではないでしょうか。
 以前は家庭に普通に置かれていた固定電話も、そもそも引いていない家が結構ありますし、家族割りなどもありますから、家族全部が同じ携帯通信会社という方も多いでしょう。危機管理上は固定電話はあった方がいいと思っていますし、家族でも事情がない限りは携帯通信会社は別である方がいいとは思います。
 とはいえ、それは普段の生活とを天秤にかけての選択肢になりますので、普段からかかる経費をなるべく安くしたいと考えると、現在の状態になってしまうのでしょう。
 ただ、今回のようなケースだと、家から緊急時に電話をする手段がなくなってしまっているわけで、何らかの代替え手段を考えておかないといけません。
 そこでお尋ねしますが、あなたは自分の近くにある公衆電話の位置を2台以上思い出すことができますか。
 携帯電話が使えないときには、公衆電話を使うしかありません。
 一時期公衆電話不要論なども出ましたが、現時点ではまだ数百メートルに一台程度は残っていますので、いざというときに備えて場所を把握しておきましょう。
 また、その公衆電話で使える支払い方法もきちんと確認しておくことです。
 公衆電話は、基本的には10円玉は必ず使えるようになっているはずですので、公衆電話の位置の把握と同時にお財布には数十円が常にあるようにしてください。
 それと、当たり前のことですが、公衆電話のかけ方をきちんとマスターしておいてください。
 公衆電話も止まっているかもしれませんが、それでも携帯電話よりも使えなくなる確率は低いと思いますので、散歩のついでに確認しておいてくださいね。

小銭を少しだけ持つ

 災害後にはさまざまなところにいつもとは異なる問題が発生します。
 よく起きるのが、支払いの問題。
 最近ではスマホ決済やカード決済などで普段は支払いが簡単にできてしまうのであまり意識されませんが、いざ災害が起きると、被災地域の電源や通信が失われてしまうことも多いです。
 そうなると、買い物をしようと思っても手元に現金がないと何一つ手に入れることができなくなります。
 コンビニによっては対策をしているところもあるようですが、多くは電気や通信が止まってしまったら代替手段は人力ということになっているようです。
 そして、高性能なレジは電気や通信環境がなければただの箱なので、人力計算時にはまったく役に立ちません。
 おつりもレジからだせませんので、できるだけ細かく、できればちょうどの支払いが要求されてしまいます。
 よくある「念のために1万円しまっておいた」というのは、災害時には自分の助けになってくれないこともあるということを知っておいてください。
 では、いくらくらい持っていれば良いのかというと、あまり高額になると非常用持ち出し袋などが盗まれてしまうかもしれませんし重たいですから、1~2千円程度をくずして持っておくといいのではないでしょうか。
 もちろんある程度は持っている方が安心なので、あとはその人のお財布事情に合わせてと言うことになりますが、そんなにびっくりするほど持っていてもしかたがありません。
 あくまでも急場しのぎとして、常に小銭を持ち歩く習慣をつけておきましょう。

ただ寝るだけでも立派な避難練習

ただの段ボール箱でも使い方で立派な寝具に早変わり。

 災害時、特に雨や台風の場合には、大抵の場合一晩を避難先で過ごすことになります。ホテルや親戚宅などならとりあえずの寝具はあると思いますが、避難所に行くとそういうわけに行かない場合があります。
 事前に避難先に準備しておくか、早めの避難で一緒に寝具を持ち込まない限りは、寝るときには布団が無い状態です。
 そして、基本的に体育館の備品は一時避難では使わせてはもらえませんので、寝るための方法を考えなければいけません。
 最近ではコッドや段ボールベッドなども準備されるようにはなってきましたが、それも基本的に高齢者が優先で数が足りているわけではありません。
 つまり、寝るための道具も自分で準備しておく必要があるのです。
 テント泊に馴れている人なら寝袋やその下に敷くマットなどは持っていると思いますのでそれなりに快適な就寝ができると思いますが、そうでない場合にはどうするか。
 そのためには、家で布団を使わずに快適に寝るにはどうしたらいいかを練習しておくといいと思います。
 やってみると、意外なものが役に立ったり、使えるとSNSで言われていたようなものが案外役に立たなかったりと、さまざまな体験ができます。
 その中で、携帯性に優れていて自分がそれなりにしっかり寝られるような道具が見つかっていくと思います。
 衣食住は大切ですが、それ以上に必要なものの一つが睡眠です。
 可能な限り眠りの質を落とさなくてもすむように、しっかりと練習をして自分に向いているアイテムを見つけるようにしてください。