避難所にテントを持って行く

写真のテントは5人用。寝るスペースと荷物を置くスペースしかないが、避難所での設営には向く。

 コロナ禍での避難所運営では行政や避難所運営委員会の方々が試行錯誤しながら安全に避難所を運営するための手法について検討されています。
 現時点での安全策として、140cm以上の仕切りを建てることや2m以上の間隔を空けるといったことがルール化されつつあるようですが、仕切りが準備してある避難所は現状では皆無なのではないでしょうか。
 ブルーシートや新聞紙などで仕切るという方法も考えられているようですが、自分の安全を確保するという視点から、自立式のテントを準備しておいてはいかがでしょうか。
自立式のテントであれば屋内屋外問わずに使うことが可能ですので、避難所でも屋外でも避難先として使うことが可能です。
 スペースの問題はあるのですが、避難者一人あたり1×2mのスペースがあれば、自立式テントは充分に立てられます。
 以前に乳幼児向けに日よけテントを持参しようということを書きましたが、自立式テントであれば生活を人に見られなくても済み、その分のストレスは軽減できます。
 新型コロナウイルス対策とプライバシー保護をかねて、非常用持ち出し袋と一緒に自立式テントを用意しておくと便利だと思います。

子どもが避難したイメージ。風の通りが悪いので、夏場は風向きや排熱に注意が必要。

 自立式テントはアウトドアメーカーに限らずさまざまな商品が売られていますが、サイズがいろいろとあります。
 快適な生活空間を維持するための大きなテントもありますが、それを避難所に持ち込むとトラブルの元になりますので、適当な大きさのテントをご検討ください。

DIGをやってみよう

地図に情報を書き足していくことで防災マップが出来上がる。写真はとある仮想町を使っての演習。

 DIGというのをご存じですか。参加する人が地図を囲み、ゲームのように災害時の対応策を考える図上訓練のことで、Disaster(災害)、Imagination(想像)、Game(ゲーム)の頭文字をとってDIGと呼ばれています。
 一枚の大きな地図を用意してそこにハザードマップの内容や道路や水路、危険に見える建物や構造物、病院や薬局といった施設などを書き込みをしながら地域の強みや弱みを洗い出していきます。
 対象とする災害やテーマを絞れば短時間でもできますし、一人でも複数人でも楽しみながら作ることができます。
 また、情報を一枚の紙にまとめて図化するので誰でも理解できるものができますから、参加した人だけでなくその地図を見る人達の防災力の向上も期待できます。
 聞くと少しだけ取っつきにくい感じがしますが、実際にやってみると非常に面白く、意外な発見があったりしますから一度やってみることをお勧めします。
 参考までにDIGの作り方について記載したウェブサイトをご紹介しますので、興味のある方はぜひ覗いてみてください。

DIGってなぁに?」(静岡県庁のウェブサイトへ移動します)

マイタイムラインを準備していますか

 災害というのを大きく分けると、地震のようにいきなりやってきて被害が発生するものと、台風や大雨のようにある程度被害が来るのが予測できる時間があるものがあります。
 地震の訓練はシェイクアウトから安全な場所への避難という一連の流れが訓練されていることが多いのですが、被害が来るのが予測できる時間があるはずの台風や大雨の訓練というのはあまりされていない気がします。
 短時間に大量の雨が降って排水量を超えたことによる内水面越水のような事態ならともかく、そうでない場合には安全を確保して備えるための時間が与えられています。
 この時間をどのように使うのかということと、自宅の危険性、そして避難が必要だとするとどの時点で避難を開始すべきなのかといったことを事前に決めておくことをタイムラインといいます。
 なくても問題ないという人もたくさんいらっしゃるのですが、いざその時になってみると例えば避難の開始などのタイミングを決めかねてしまって、結局救助をしてもらわないといけなくなったといったことがよく起こりますので、安全なときにこそ災害時の自分の動き方の計画を立てておきましょう。
 タイムラインでは、「いつ」「誰が」「どこで」「どうなったら」「どんな行動をとる・どんな準備をする」ということを決めておきます。
 作るときのポイントは、資材の調達などは少し早めに行動をするということ。
 例えば大型台風による被害が想定される場合に、台風の来る前日、前々日にガムテープを用意するとタイムラインに書き込んだとしても、お店になければ調達ができません。
 一例を挙げてみますと、令和2年8月31日に大型の台風10号が発生しました。
 9月2日くらいから気象庁が警戒を呼びかける情報発信を始めます。9月3日には特別警報級の勢力になって沖縄・九州奄美地方に接近上陸する恐れがあるとの情報も発信されました。
 9月4日夕方には925hpaまで気圧が下がり、台風が西日本を直撃するという進路予測も出、マスコミがこぞって取り上げたせいでしょうか、台風に備えてさまざまなところが計画休業などを行うところがかなり出てきました。
 9月3日から、とあるホームセンターの養生テープとガムテープの棚の動きを定点観察していたのですが、3日は通常どおり、4日には棚に空欄が目立つようになり、5日には在庫がなくなっていました。
 このことから考えると、人が動く前に必要な部材を確保しておく必要があるということがわかると思います。
 その資機材の調達タイミングは意識しなければ殆どの人が同じ時期に集中してしまいますから、わかっているのならばそれ以前に調達しておくことで確実性を揚げることができます。そういったさまざまなタイミングを決めておくのが、マイタイムラインというものなのです。
 条件を満たしたら、そこでは考えずに定めてある計画どおりに行動をする。決めてないから迷うので、スイッチと行動を決めておけば確実に安全を確保することができます。
 タイムラインは簡単にできて絶大な効果のあるものですから、ぜひ一度作ってみることをお勧めします。

耐震化する意味

 各自治体が耐震補強に対する補助を行っているようですが、なかなか耐震補強が進んでいない現実があります。
 一般住宅に限らず、会社や古いビルなどでも耐震化が進んでいないのですが、予算がないからといって後回しにしていい問題ではないことに気づいている方がどれくらいいるのかなと考えます。
 震度6強以上の地震に遭った場合、古い家や会社、ビルなどは倒壊する危険性があります。
 石西地方でもいつ揺れてもおかしくないと言われている弥栄断層が存在していますが、これが動くと最大でマグニチュード7.7程度の地震が起きる(政府地震調査研究推進本部)と予測されています。
 情報が少ないためにいつ頃動くかは不明ですが、いつ動いても不思議ではないということでもあるので、今この瞬間にも揺れるかもしれません。
 でも、もし地震が発生したら、その時になって慌てて地震対策をしようとしても手遅れです。地震で生き残るためには、とにかくものの下敷きにならないことですが、古い家屋に人がいて倒壊した場合、かなりの確率で圧死することになってしまます。これは運が悪かったでは済みません。耐震補強しておけば助かったわけですから、想定外では無く人災になるわけです。
 特に会社やビルなどで倒壊が起きたとしたら、耐震補強にかかる経費以上にさまざまな出費を強いられた上に信用まで無くなるという、ある意味では致命的なダメージを負いかねない状況になります。幸い建物全てを耐震補強しなくても一部を補強したり一室だけを補強するなど、最近ではいろいろな方法がありますので、いくらかお金をかければ対策は充分に取ることが可能な時代になっています。
 地震の怖いところはいつ来るか分からないところですが、地震は地面が揺れるだけですから、対策さえきちんとできていれば死ぬ可能性を下げることができます。
 繰り返しになりますが、地震で倒壊した家屋の下敷きになって圧死することは想定外ということができません。
 耐震補強は高く感じるかもしれませんが、あなたや従業員、関係する人のの命の値段と考えてみたら、それでも高いと感じますか。
 かけた費用の分だけは確実に安全が確保できる。そういう意味では、地震は相手にしやすい災害なのかもしれませんね。

ハザードマップの検証をしていますか

DIGの風景
地域の強み弱みを知って考えよう

 各自治体ではハザードマップを作成して自治体内の世帯に配布していますが、あなたは見たことがありますか。
 ハザードマップは特定の条件下での被災状況を図化したもので、自治体や地域の避難計画作成の基礎となる資料の一つです。
 これには地震や浸水害、土砂崩れの危険性が色分けで表示されていて、とりあえずの危険な場所がわかるようになっており、あなたが避難計画を作るときには必ずこれを見ているはずです。
 ハザードマップの検証では、自宅からの避難だけでは不十分です。勤務先や通学先、途中の経路、よく買い物や遊びに行くところ、そして自分が避難すべき避難所の災害対応状況といったものも確認しておかなければいけません。
 避難所は災害から身を守るために避難するところなので、避難すべき避難所がどのような災害に対応しているのかを正確に把握しておかなければ、避難した避難所で被災したと言うことになりまねません。
 想定される災害のハザードマップに、地域の災害伝承の情報を追加すると、より安全な避難を行うことができるようになりますので、分かる範囲で確認して追加しておきましょう。
 避難経路は状況や環境の変化によって常に見直しが必要ですし、地域としての防災マップ作りも必要となるでしょう。
 今住んでいる場所だけでなく、自分が行きそうな場所の経路と安全性を確認しておいて、いざというときに備えたいですね。

パーソナルカードを作っていますか

 自分の情報や家族を始めとする大切な連絡先、家族の写真などをまとめて一枚のカードにしたものをパーソナルカードと言いますが、あなたはパーソナルカードを持っていますか。
 被災して動揺すると、知っているはずのことが思い出せなかったりすることがあります。そのとき、このパーソナルカードを確認することで非常時の連絡先や家族の集合場所、かかりつけ医などの情報を確認することができます。
 また、子どもやお年寄りに持たせておけば、非常時にそれを確認することで安否確認などの連絡を取ったり身元の確認をすることができます。
 こういった書式で作る、という指定されたものはありませんが、自分の名前、住所、血液型、家族構成、家族の連絡先、災害時の集合場所、持病や常備薬、かかりつけ医やかかりつけ薬局などの情報、そして家族写真を一緒にしておくと非常に役立ちます。
 とはいえ、このパーソナルカードは個人情報の塊ですから、いざというとき以外人に見られたくない方もおられると思います。
 そのため、作ったものをラミネートパウチしておいて、使うときにははさみで切って中を確認するといった方法をとることもあります。
 大切なことは、非常時に自分が誰で家族が誰で、どこへ連絡すればいいのかなどがわかることですから、作ったものを普段持ち歩くカバンや財布にいれて、いざというときに使えるようにしておきたいですね。

万能な新聞紙

 最近のご家庭で姿を見なくなってきたものの一つに新聞紙があります。
 さまざまな理由から新聞を取らなくなっているおうちが増えているのですが、こと防災の視点で見ると、新聞紙というのは非常に役に経つ道具です。
 床に数枚敷くととりあえず床からの寒さをシャットアウトできますし、服の中に着込めば暖を取ることもできます。もちろん焚き火の焚き付けや薪代わりに使うこともできますし、ちょっと工作すれば寝袋や食器、帽子や服まで作れます。
 広げて紐からぶら下げれば居住スペースの仕切り代わりにも使えますし、汚物処理などにも大活躍。あって困るものではありません。
 ただ、新聞紙を持っていても使い方がわからなければただの新聞紙にしかなりません。紙の特性を知って、いろいろなタイミングで試してみることで、自分に合った使い方や必要な枚数が分かってきますから、時間を作って一度工作してみてはいかがでしょうか。
 ちなみに、大きなビニール袋と新聞紙を組み合わせると、とても暖かい防寒着を作ることができます。
 見た目は美しくないのですが、暖かくて湿気も溜まりにくいので、割と快適に過ごすことができますから、興味のある方は調べてみてくださいね。

乾パンと氷砂糖

 最近でこそさまざまな防災食が登場していますが、少し前までの防災食の定番は乾パンが多かったです。
 長期保存が利いて湿気ない、そして単価が安くお腹がふくれるということで、サイズや量のあれこれはあっても、定番商品として君臨していました。
 長期保存の乾パンはだいたい缶詰になっているのですが、その中に乾パンと一緒に氷砂糖が入っていることをご存じですか。
 乾パンは名前の通り乾燥したパンなので、そのまま食べると唾液をみんな給水してしまいます。被災時には手持ちの水も無いことが多いので、乾パンだけだとのどが渇いて困ることになります
 氷砂糖はショ糖という糖の塊で、くどくない甘さが持ち味です。これを舐めることで唾液を呼び出すことができますから、乾パンを安心して食べることができます。
他にも乾パンの単調な味に変化をつけたり、甘いもので気分を落ち着けたり、成分はショ糖という糖分なので疲労回復もしてくれます。
何よりも、湿気に気をつければ半永久的に食べることができる究極の保存食でもあります。
 乾パンは固くて食べられないという子どもさんもいるようですが、乾パンも砕けばクラッカーのようになりますから食べることができると思います。また、氷砂糖なら舐めることができますから、非常用持ち出し袋に一袋、乾パンと氷砂糖を入れて置いてもいいかもしれませんね。

【活動報告】第3回高津小学校防災クラブを開催しました

 去る11月4日、益田市立高津小学校様で防災クラブの第3回目を開催しました。
 今回は「止血法と搬送法その2」と「校内安全点検」、それに「ビニール袋工作」の3つから子ども達に選んでもらう形にしたのですが、見事に3つにわかれてしまい、結局代表者がじゃんけんして「止血法と搬送法その2」をやることになりました。
 前回は直接圧迫止血法と前屈搬送法をやりましたが、今回は間接圧迫止血法といすを使った搬送法、そして実際にけが人の手当から搬送までを演習してみてもらいました。
間接圧迫止血法は止血帯を使った止血方法ですが、実際に子ども達がするの危険なので講師の腕に止血帯を巻き付け、止血帯を締める前と締めた後の手の温度を確認してもらい、締めた後手が冷えていくことを確認してもらって血流が止まっていることを知ってもらいました。

階段での搬送では、担架を水平に保つことはかなり難しい。二人では水平に保てないことを実際にやってみて理解してもらう。実際には運ぶ人の他に担架の状態を確認する人や進路を確認する人など、それなりに人手が必要。

 また、担架の搬送法ということで、階段での搬送を実際に担架を使ってやってみてもらい、二人では階段で水平が維持できなくなること、そして運び手の数が多いほど危険が少なくなることを実際に体験してもらいました。その後いすによる搬送をやってみて、担架での搬送がどれくらいやりやすいのかということを体験していました。
 最後は担当の先生をけが人役に見立てて圧迫止血から担架搬送までを実際にやってみてもらいました。

練習でやってみるのと、実際に倒れている人にやってみる演習ではかなり感じが違っていた様子。特に大人をどうやって運ぶのかについては一度しっかり考えてもらった方がいいかもしれない。

 先生の腕と足を怪我しているという想定で、実際に怪我している部分を圧迫止血し、血が止まったら包帯を巻いて固定してもらったのですが、なかなか思ったようにできずに苦戦していました。
 搬送では、床から担架へ先生を移動させるのにいろいろと試行錯誤していましたが、なんとか無事に載せて搬送することができました。
 実際にやってみると、なかなか思ったようにはできないということと、声をかけあわないと危険だということを理解してもらえたと思います。
 子ども達はノリノリでやってくれているのですが、そのノリを生かせないことにもどかしさを感じ、講師としてはまだまだ未熟だなと反省しきりでした。
 ともあれ、今回防災クラブでつきあってくださった先生と子ども達に感謝します。

安全の優先順位

 「安全は全てに優先する」というのが建設現場などで掲示されていることを見たことはありませんか。「セーフティーファースト」の日本語訳だそうですが、「安全第一」という方がわかりやすいかもしれません。
 ただ、この安全に順位があるとしたら、あなたはどう考えますか。
 災害対策では、この安全の定義がよく変わります。
 発災直後では、安全とは「身体の安全」に他なりません。何を置いてもまずは逃げて自分の命を守ることが最優先される安全です。
 発災後は、自分がこの先どうなっていくのかという不安を解消することが優先される安全になってきます。
 そして、発災後しばらくすると、今度は収入や仕事、衣食住といった生活の安全が優先されています。
 それぞれ全て安全には必要なものなのですが、時期と状況によって優先されるべき安全の順位が異なってくるということで、防災支援活動では時間の経過によって変わるこれらの優先順位にどう答えていくのかが大切になります。
 被災後にすべてが元通りになることはありません。ですが、被災者の居心地のよい安全を確保するためにさまざまな支援を行っていく必要があるのです。
 コロナ禍で起きた災害では、災害復旧を支援する人達はかなり限られた状態になりました。その結果、復旧が遅々として進まない状況の場所もあるようです。
 そんな中でも、被災者の安全を確保するために、現地の支援者達は様々な知恵や工夫を凝らして活動をしています。
 あなたに考えておいて欲しいのは、もしも自分が被災者になったとき、さまざまな安全をどうやって確保するのかということです。自分が対応策を準備しておけば、安全が安心に変わって激しく不安にならなくても済むからです。
 そのために作るのがBCP(事業継続化計画。ご家庭の場合だとFCP(家族継続計画)ともいいます)で、実はこれが一番の災害対策といえるかもしれません。
 安全の優先順位は変わっていきます。それに合わせた自分が生きるための継続化計画を、きちんと作っておきたいですね。