お中元に非常食?

 先日、益田市内の贈答品のお店に出かけてちょっとびっくりしました。
 お中元で溢れる店内の中の一角に、ずらりとならんだ非常食の数々。
 お中元商品の一つとして、味がよく品質の高い非常食を送ってみませんかという提案のようでした。置かれていたのは一社の製品でしたので、ひょっとしたらメーカーさんからの提案なのかもしれませんが、非常食セットとして作られているわけでは無く、個別の商品をお好みに応じて組み立ててオリジナルのセットを作るシステムです。
 「お店からの提案」として作られていたセットでは、レトルトの非常食に缶詰一つ、そしてお酒とおちょこの組み合わせで、防災を意識しない「お中元」として成立しており、非常食を好きな組み合わせで箱詰めにしたものを大切な方へ送るというのは面白い発想だなと感心してしまいました。
 ここ最近、ずいぶんと非常食の品数も増え、味も普通のレトルトと同等以上に良くなっている非常食。お中元で送られたなら、防災意識のある人にとっては思わずにやりと笑ってしまうでしょうし、防災意識の無い人は、普通に賞味期限の長いレトルト食品として食べていただくことができると思います。
 大半のものは1年程度の賞味期限でしたが、ものによっては3年から5年といったものもあります。

思わず買ってしまった非常食。あんこ餅と黒みつきなこ餅で、賞味期限は3年くらいありそう。
このセットは戻すための水がついているのが秀逸。

 お中元を送る習慣のある方は、いつもの定番商品ももちろん喜ばれると思いますが、たまにはこういったものを送られても、目先が変わって面白いのかなと思いました。

【終了しました】夏休み企画のご案内

 趣味の範囲でやっている当研究所ですが、夏休みに合わせていくつかのイベントを計画しています。
 興味のあります方は、ぜひお申し込みください。

1.大人と親子の着衣水泳体験

日時:2019年7月28日(日) 10:00~11:00
場所:益田スイミング 屋内プール
内容:着衣での水泳体験、浮き方の練習、履き物による歩き方比較他
対象:大人及び親子(子どもさんは自力で泳げる方に限ります)
講師:益田スイミング様講師
参加費:1,200円(会場使用料、保険料)
準備するもの:水着、水泳帽子、ゴーグル、タオル、長ズボン、長袖シャツ
申し込み締切:応募定員に達し次第
申込方法:参加される方の住所、氏名、年齢を申込時にお知らせください。当研究所へお申し込みの場合は、お問い合わせフォームの件名を「着衣水泳申し込み」としていただき、参加される方の住所、氏名、年齢をお知らせください。
申込先:益田スイミング様受付
    石西防災研究所(お問い合わせフォームに飛びます)

2.地域防災マップを作ろう・高津上市地区編

日時:2019年8月7日 13:30~16:30
   2019年8月8日  9:00~16:00
場所:高津公民館(旧高津地区振興センター)
内容:高津上市地区を回っていろいろなものを点検して防災マップを作成します。
   また、二日目の昼食では防災食を体験していただきます。
対象:小学生
講師:石西防災研究所・伊藤
参加費:無料
準備するもの:筆記具、飲み物(持ち歩きできる状態で)、帽子、カメラ(あれば)
申し込み締切:7月31日(水)17時
申し込み方法:お問い合わせフォームの件名を「防災マップ申し込み」とご記入いただき、参加される方の住所、お名前、学年、所属する小学校をお知らせください。
申込先:石西防災研究所(お問い合わせフォームに飛びます)

避難先では暖かいものを口にする

 梅雨に入ってから、あちらこちらで大雨が降っています。先日の雨では、九州南部で降り始めからの雨が1000mmを超えたところもあるそうで、大規模な避難勧告も出されていました。
 ところによっては、現在も避難継続中の方がおられるかもしれませんが、体調管理には十分に気をつけていただければと思っています。
 さて、大雨で避難所に避難したとき、例えば今回のような梅雨前線によるものだと避難が長期化することがあります。
 そのとき、気の利いた避難所で無い限りは自分が持参した食料や飲料などで過ごすことになりますが、できればその中に「暖かいものを一品」加えるようにしてください。
 暖かいものは、飲み物でもご飯でもおかずでも構いません。暖かいものが一品あると、それだけで人間は安心することができ、仮に災害で被害を受けても、そこまで気力が萎えることは起きにくくなります。
 避難所が電気、ガス、水道が通じている状態であれば、暖かいものを作るのはそんなに難しいことではありませんが、意識していないと温かい食べ物があること自体を忘れてしまっていることもありますので、意識して暖かいものをとるように心がけてください。
 ただ、避難先が学校の体育館のような給湯施設を持たない場所だと、少し準備が大変かもしれません。

 大規模災害でよく見るタイプの直火かまど。災害後の避難所生活なら使えるが、災害が起きている状態でこれをやるのはあまり現実的ではない。

 例えば電気ポットや炊飯器があれば何らかの暖かいものを作ることができますので、そういった家電製品を持ち込むことも必要になってくるでしょう。
 また、土間や昇降口、建物の外周でコンクリートなどの引火しない材料で作られている場所があれば、そこを使って固形燃料やカセットコンロを使った調理もできるでしょう。
 何も無い場合、使い捨てカイロでも、常温のものを暖かいと感じる温度にまですることは可能です。

火が使えないときに便利なのが水を注ぐだけで発熱してくれる発熱剤。まったなしの赤ちゃん用ミルクを調製するためのお湯を作るのに役立つ。また、液体ミルクの温めの可能。

 そうでなくても不安になってしまう災害時、暖かいものが一口でも口にできると、それだけで緊張をほぐすのに有効です。
 非常用持ち出し袋には暖めるための道具が入っていないことも多いですが、避難が長期戦になりそうなときには、非常用持ち出し袋に飲料食を暖めることのできる道具も一緒に持ち出しておきましょう。
 また、自主防災組織や自治会などで避難所の運営を行う際には、準備品の中に必ず何らかの飲料食を暖めることのできる道具を準備しておいてください。

消耗品は短期で入れ替えていく

アルファ米の写真
非常食の代表であるアルファ米。当然ではあるが、普通のお米よりも高い。

 非常用持ち出し袋や非常用備蓄品を準備しようと考えたとき、市販の情報誌や研修などでは「災害用の食料や水、消耗品などを備えなさい。ローリングストック方式の他に長期保存もできる災害用のものもありますよ」という感じの紹介をされることが多いです。
 そして、災害用備蓄品として3年から5年は保存がきくものがたくさん出ていて、備えようと考えたときにはやはり長期保存できるもので作ってみようと考えるものです。
 さて、あなたがこれから災害後、流通網が復旧するまでの命を繋ぐための非常用備蓄品を準備すると考えてみてください。
 長期保存ができるもので食料を選んだときに、普段から食べ慣れているものがどれくらい含まれているでしょうか。
 災害時などの非常時には、いかに普段の生活に近づいた環境を維持できるかが気力と体力を維持していく重要なポイントになります。特に食事はその傾向が顕著にあらわれます。
 例えば、アルファ米は非常に軽くて保存もきく便利な食料品ですが、普通に炊いたお米と比べるとやはり違いがあります。普段から食べ慣れていればさほど気にはならないでしょうが、そうでない人は地味に気力が削られていくことになってしまいます。
 アルファ米では無くて、無洗米を用意して普通のご飯を炊けるようにしておけば、災害前と同じものを食べることができることになります。
 また、特有の臭いはありますが、普通のお米でも研がなくても食べられます。
 いつも使うものを少し多めに買って在庫しておき、その在庫を入れ替えていくことで意識せずに常に新しい備蓄がある状態を維持することが可能になります。
 これは「ローリングストック方式」と呼ばれている方法で、あまりお金をかけずに生活を守ることができるということで積極的に取り入れてもよいと思います。
 ここで注意しないといけないことは、普段作っているおかず類に、たまにでよいので缶詰や乾物など保存がきくものを取り入れて使うということです。
 おかず類が生鮮食料品だけで構成されていると、いざ流通が絶たれてしまったときに提供される缶詰や乾物がひどくひもじく感じてしまうものになって、気力が削がれてしまいます。週に1回くらいでいいですので、保存食品を使った1品を作っておくと、舌も慣れるし在庫もちゃんと入れ替わり、自分にあったお気に入りを見つけることもできると思います。
 ところで、なぜ「災害用」飲料食は長期保存がきかなければいけないと感じるのでしょうか?
 これは、今までの災害の経験値から来るものだと考えています。
 災害時に配られる非常食や飲料水は会社や行政機関が緊急的に配布するもので、これらの品物が必要になるときは、一度に大量に必要になるためにすぐに準備することはとてもできません。そのため、大量に、長期間備蓄できるものが要求されていたということです。
 であれば、わざわざ賞味期限は長いけれど値段が高くて忘れやすい非常食を備えるよりも、非常用持ち出し袋や非常用備蓄品を普段から食料品の置き場としておくことで、普段から意識して管理できるようになるのではないかと思います。
 どんなものであれ、いつかは使えなくなる期限が来ます。せっかく用意した非常用持ち出し袋や非常用備蓄品ですから、意識して使うようにすることで期限切れを防ぎ、そしていざというときにさっと取り出して避難が開始できるような状態にしておくこと。
 この考え方で備えていきたいものですね。

飲むおにぎりを食べてみた

 いつぞや、どこかでみたテレビで忙しいときに便利な食事特集というのをやっていて、その中に「飲むおにぎり」というのが紹介されていました。
 片手で飲めて手も汚れず、保存期間も長めという夢のような食事だというような触れ込みだったように記憶しているのですが、これは水不要の災害食として使えるのでは無いか、きっとそのうち地元のコンビニでも売ることになるのだろうなと思っていたのですが、その後特に見かけないまま忘れていました。
 ある日、ネットショッピングでたまたまこの「飲むおにぎり」を見つけてしまい、当時忙しかったこともあるので朝ご飯代わりに使えると便利だなと思って、購入ボタンをぽちりと押して買ってみました。

飲むおにぎりはよくドリンクなどであるラミネートパウチに入っている。

 届いたものは写真の二種類。味は「梅カツオ」と「梅昆布」で賞味期限は1年くらい残っています。
 6パックセット、送料込みで3,000円ちょっとでしたので、一つが500円くらいでしょうか。コンビニのおむすびの4個分の値段なので、備蓄品なら許容範囲と感じます。カロリーは280kcal、分量は通常のおにぎり1.5個分だそうです。

 さっそく蓋を開けて覗いてみます。おにぎりというよりも、海苔の佃煮という感じです。

 お皿に出してみました。あまり食欲をそそるような見た目ではありませんが、口から直接飲むものなので問題なしとします。
 さっそく飲んでみました。
 ・・・塩辛い。味が均等にされているせいかどこまで飲んでも同じ味。お米の芯が残ったような感じもなんとも言えず、途中で少し気持ち悪くなりました。ご飯は上手にたかなければということと、おにぎりの塩気の濃い部分薄い部分が食欲を増進させていたんだなぁと感じさせられました。
 半分ほど飲んだのですが、どうにも受け付けなくなってギブアップ。
 通りかかった当所の研究員達が興味を示したので、「梅昆布」を提供して飲んでみてもらいました。
 その結果。薄味好きのS研究員は「味が濃い」として一口で終了。濃い味好きのH研究員はぺろりと嘗めた後、お茶碗にご飯をつけて佃煮代わりに使っていました。最後のM研究員は、一口食べてちょっと考えてからおもむろにお水を飲んでいました。
何でこんなに塩辛いんだろうと言うことで、改めて成分表を見てみると、梅昆布の食塩含有量は3.37g。

写真はうめかつお。食塩相当量は3.47gで、梅昆布よりも食塩量が多い。

 厚生労働省が推奨する一日の摂取目安が7.0g~8.0gですから、それは塩辛いはずです。
 貴重な水なしで食べられるかと考えていたのですが、このまま飲んだらのどが渇いて仕方が無いという結論になりました。
 ただ、アルファ米白米に混ぜれば、おいしいご飯ができるかなとも思います。
 また、汗をかいた時や濃い味が好きな人なら、ひょっとしたらおいしく食べられるのかもしれません。当研究所の所員はみな薄味になれていることもあると思います。味の好みは人それぞれですので、よかったら一度飲んでみてください。

広域避難の受け入れ計画は大丈夫ですか?

 平成31年3月末時点の「原子力災害に備えた島根県広域避難計画」の付属資料が公開されました。
 それによると、島根原子力発電所で何らかの大規模放射能漏れが発生した場合には、島根原子力発電所から30km圏内の住民は全て避難対象となっているようです。
 その数、121,460人。
 その中で、県内避難先として益田市、津和野町、吉賀町も入っており、益田市が17,950人、津和野町が1,970人、吉賀町が1,430人を受け入れる計画になっています。
 原発事故による避難はほぼ着の身着のままで生活物資も殆ど持たずに逃げ出すことになることが多いので、この数の人がもし避難してきたとしたら、その人達に対する支援はどうなるのでしょうか?
 現在の人口の2割から4割くらいの人が避難してくるわけですから、それまでの生活物資の流れのままでは、そこに住む住人達の通常の生活ですら破綻することになってしまいます。
 東日本大震災で広域避難自体がそこまで大きな騒ぎにならなかったのは、背後に首都圏という超巨大な物資集積地があり、避難者の数も避難先の住人の数に比べれば少なく、太い物流を活用できたためで、中国地方では岡山市や広島市も含めて首都圏ほどの太い物流網はありませんから、避難先の土地でさまざまな物資が不足することが簡単に予測できます。
 居住民の物資が欠乏するとその恨みは物資を消費する避難者に向けられるわけで、これに対する対策も事前に決めておく必要があります。
 どうしたら物流を滞らせずに増えた人口を安定して食べさせることができるのか? 避難所のトイレやライフラインの問題はどうすればいいのかなど、検討し、決めておかなければいけない問題は 山積みのはずです。
 もちろん行政機関だけの問題ではありません。受け入れ先として予定されている学校などの各施設は、避難者を収容するとその間授業などの通常業務はできなくなると考えた方がよさそうです。
 渋滞や犯罪の問題も起きるでしょう。自治会や自主防災組織、学校、企業など、それぞれに検討しておく課題は存在します。
 今現在、去年くらいからようやく広域避難の訓練が始まりましたが、受け入れ側の受け入れ訓練はまともにされているとは言えません。
 いざというときにトラブルが起きないように、付属資料の避難受入候補地を確認していただいて、受け入れた後どうしたら地域に問題が起きずにすむのかを考えておく必要があると思います。

水の運び方

 災害が発生すると、ライフラインの復旧が問題になってきますが、一般的に地面の中に埋まっているものは復旧に時間がかかるものです。
 中でも水は他に代替手段がないため井戸が無い限りは復旧まで給水車に頼ることになりますが、給水車は各戸に回って水を供給してくれるわけではありません。
 指定される近所の給水所まで水をもらいに行くわけですが、その給水所から家までどんな風に水を運ぶのかを考えたことがありますか?
 水の重量は500mlで500g。1リットルならほぼ1kgです。
 国の試算では、1日に成人が必要とされる飲料水は料理用も含めて最低3リットルですが、給水所から家まで3kgのものを抱えて移動することを考えてみてください。
 そのとき、どんな容器で運ぶことを考えていますか?
 例えばよく出てくるのはバケツですが、そのとき使えるバケツが常に清潔だとは限りません。
 こんなときにはバケツの内側にきれいなビニール袋を二重に入れれば、バケツを洗浄しなくてもきれいな水を運ぶことが可能です。
 また、バケツがなくても同じ方法で段ボール箱でも運ぶことができます。
 気をつけるところは、ビニール袋の持ち手があるものを使うこと。ビニール袋の中の7割程度に水を入れて口を縛れば、段ボール箱を濡らさずに運ぶことができます。
 例えば、燃えるゴミの袋などはどの家庭にでもあってこういう使い方もできる便利な袋です。製造元はこういった使い方は推奨しないと思いますが、非常時なので許してもらうことにしましょう。
 そして、輸送用の台車があると子どもや高齢者でも安心して運ぶことができます。わずか3kgと思われるかもしれませんが、これを抱えて移動するのは結構大変ですから、何らかの道具が使えると便利です。
また、ここからは支援者側の問題になりますが、被災者の輸送能力、給水を待つ人数、給水能力を考えると、給水所は半径500mごとくらいをカバーできるくらいで作るのが理想です。
 そして、給水装置の形によりますがなるべくこぼさないようまたこぼれた水が利用できるような準備、例えば下に水受けを用意するなどしておく必要があります。
 最近では5リットルや10リットル入りの給水袋に入れた水をそのまま提供することもあるようですが、給水時の給水方法を事前に周知しないと水を入れる容器と給水袋を抱えて途方に暮れるような辞退が起きないとも限りません。
 速やかに受け渡しができるような整理をしておく必要があると思います。
 そして避難所の場合は避難所として飲料水を確保することになるので、予定避難者に見合うだけの水を確保できる20リットル灯油缶などの専用道具が必要です。
 どのように貯水するのかについては、事前にしっかりと検討をしておかないといけません。
 いずれにしても、普段のように蛇口をひねれば水が出る状況ではありませんので、そういう事態に備えた準備をきちんとしておきましょう。

非常用持出袋の作り方・その1

 災害に備えて飲料食を含む生活用品を最低7日間は用意しておこうというのが、最近の国の方針ですが、これをどのように準備したらよいのか。
 災害対策の準備として、3段階に分けて考えてみてください。
 1段階は、何らかの理由で避難しなくてはいけない場合。だいたい1日程度過ごせるものを用意します。
 2段階は、とりあえず避難しなければいけない状況が終わってから落ち着くまで。3日から1週間程度の用意です。
 3段階は落ち着いてから生活再建の準備が始まるまで。ここでもおよそ1週間程度考えておけば大丈夫です。
 まずは第1段階。何らかの理由で避難しなくてはならない場合です。
 基本的には自宅避難が一番なのですが、その立地と発生する災害によっては避難しないといけない場合が発生します。そのときに、国の推奨する1週間分の災害用品を持って移動するのはまず無理です。
 1日程度避難先で生活できるものをリュックサックに詰めて非常用持ち出し袋として用意します。リュックサックが背負えて歩ける年齢であれば、一人に一つ、持てる範囲のものを詰めて自分で持たせるようにします。
 また、歩けない年齢の子どもの場合には、保護者のリュックサックに詰めることになりますが、保護者の数分散して詰め込むようにします。
 これはリュックサックが駄目になったとき、その子どものものが全て無くなることを防ぐためです。
 では、必要なものをリストアップしてみましょう。
 まずはその非常用持ち出し袋を使う人はどんな人ですか? めがねをかけていれば換えのめがねが必要です。飲んでいるお薬があればそのお薬を入れておかないといけません。
 乳児であればほ乳瓶やミルク、離乳食や紙おむつが必要になりますし、汗などの臭いが気になる人は無香料タイプの消臭スプレーがいるでしょう。
 入れ歯の人は洗浄セットがいるでしょうし、まくらが変わると寝られない人は、まくらも持って行く必要があるでしょう。
 人によって必要とするものが異なりますので、それを考えて洗い出すことが大切です。
 次は排泄物の処理です。トイレが使えないことを想定して1日分の携帯トイレを用意します。自分が普段一日に何回トイレに行っているかを基準にして、大小ともに準備をしておきます。臭い消し機能のあるゴミ袋も忘れずに準備しましょう。
 それから、次は飲料食です。保存ができてそのままで食べることができ、自分が食べやすいものを用意します。ゼリー、ようかん、チョコレート、おかきやポテトチップス、ナッツ類など、カロリーを重視したものを用意しましょう。
 また、飲み物については水またはお茶を用意します。自分が普段どれくらい水を飲んでいるかを基準にして考えますが、水の入ったペットボトルは重たいので、500ミリリットルのものを2~3本用意して移動しやすいようにしておきましょう。
 あとは着替えです。下着も含めて1セットを準備します。また、夏場でも長袖は1着必ず入れるようにします。1日程度の品の準備なので、たくさんの着替えは不要です。
 そしてできればで構いませんが、タオルケットとエアマットがあると、寝るときに快適に過ごせます。避難所で毛布が配られる場合でも、基本は一人一枚です。また、枚数が少ない場合には力と声のでかい人から取っていくケースも多いですので、自分のものを自分で準備しておくと困らなくてすみます。
 さて、ここまでで個人がそれぞれ必要なものを準備することができました。あとは全ての避難者に共通の避難用品を入れていきますが、それはこの次にご紹介します。

簡易型の炉でご飯を炊いてみた

 災害時にどうやって主食のご飯を炊くかという問題があります。
 支援物資として入ってくる弁当は食中毒対策のため冷えた状態で支給されますし、毎回炊き出しに頼るわけにもいきません。
 水が確保できればご飯は炊けるわけですが、大きな鍋だとなかなか上手に炊くのは難しい。ましてや、カセットガスが使えない状態を仮定すると直火で炊くのはかなり難しいのではないか。
 第一、安全に鍋が載せられる炉が作れない。
 そんなことを考えていたのですが、先日、江津市の少年自然の家で開催された「わくわくちびっこでー」に出かけて一つのヒントをもらうことができました。
 ここはセルフご飯炊きを体験できるのですが、使われていたものにびっくり。
 地面で直火を焚き、その上に使う炉として「プランタースタンド」が使われていたのです。
 そりゃなんだと思われる人がいらっしゃるかもしれませんが、要は植木鉢を支える台のことで、上の植木鉢を載せる部分に土鍋を載せてご飯を炊くという方法を取っていました。

矢印の部分がプランタースタンド。園芸が好きな人のところには大抵一つ以上あります。

 職員さんに尋ねると、土鍋もプランタースタンドもどちらも百円均一ショップで仕入れてきたものだとのこと。
 簡単に手に入り、しかも使いやすいということで、現地で実証実験した後、当研究所でもやってみることにしました。
 土鍋は以前にダイソーさんで売っていたのを覚えていたので行ってみたのですが、季節商品だったのですでにありませんでした。
 また、ダイソーさんのプランタースタンドは、高さが25cm。炉に使うには少し高いです。また、足の部分が皮膜されているので燃やすと大変そうです。
 イオンの中のseriaさんで100円で売ってた「ポールプランタースタンド6号用」を買ってきました。


 これは高さが約17cmで、たき火の上に置くのにちょうどいいサイズです。seriaさんでは鍋の取り扱いは終了したそうで、安く土鍋を仕入れようとすると、冬のダイソーさんで仕入れるしかなさそうです。

 試しに我が家の一人用土鍋を載せてみました。うまく収まります。
 スタンドの鉢が載る部分にはいろいろなサイズがあるので、自分が使う土鍋に合わせて準備したらいいと思います。
 ここからは、先日江津市の少年自然の家のわくわくちびっこでーでやってみたご飯炊きの写真を使います。

 まずはお米を研ぎます。災害時にはきれいに研ぐのは難しいかもしれませんが、ここではおいしいご飯が食べたいのでしっかりと研ぎます。
 水加減はお米の1,5倍を目安に注ぎ、水を吸わせたいので10分待ちます。
 で、プランタースタンドに置き、下に丸めた新聞紙と廃材を組み合わせ、新聞紙にライターで火をつけて火を起こします。

 着火したら、しばらくは木をくべて火力が落ちないようにします。
 すると、やがて沸騰して蓋の周囲にぽこぽことした泡がでてきます。
 泡が出なくなったら火をどけて10分以上蒸らします。

 うまくできたか、蓋を開けるときのどきどき感がたまりません。


 ふわりとした湯気があがり、白く光るお米が姿を見せてくれました。今回は成功です。水加減を間違えたり、火加減を間違えると黒焦げになってしまいますが、そこは練習あるのみです。

 スプーンを使ってご飯をよそいます。

 きれいになくなりました。今回は文句なしの出来で、底のお焦げもちょっとしかできませんでした。
 残ったお米も水に漬けてきれいに刮ぎ、最後までおいしくいただくことができました。ちなみに、直火では底が真っ黒になるので洗うのが大変だと言うことを付け加えておきます。これを防ぐには、あらかじめ中性洗剤や自動車用のガラスコーティング剤などを塗るとよいですが、土鍋の素材によっては使えない場合もありますのでご注意ください。

 しかし、思ってもみなかったところに炉として使える道具がありました。
 もちろん販売元はこんな使い方は想定していないですので、これをされるときには自己責任でお願いしますが、いざというときにちょっとしたアイデアで快適な生存環境を作ることができるということを再確認できました。
 ちなみに、最近ではなかなか直火で料理するのが難しくなってきています。
 初めてやる人は、ぜひ少年自然の家の「わくわくちびっこでー」で職員さんから教わりながらやってみるといいと思います。

非常食に駄菓子を加えてみる

 災害時に食べる非常食というと真っ先に思い浮かぶのが乾パンやクラッカー、ビスケットといった「乾パン類」だと思います。
 最近ではアルファ米やフリーズドライ食品なども出てきていますが、災害発生中は環境の変化や疲労感、不安感によりなかなか食事をしようという気にならないものですし、避難していると調理する場所や材料もなかなか手配しにくいものです。
 そのため、ちょっとつまめるものという感じの乾パン類は現在でも非常食として役立つものです。

 ただ、これらの食品はいずれも食べるのに水分が必要ですので、お茶やお水といったものも一緒に用意しておかないといけません。
 それならいっそのこと駄菓子も追加してみませんか。
 乾パン類は食べられなくても、「自分が好きでなんとなくつまめる駄菓子」ならなんとなく手が伸びて食べているものです。
 「甘さ」「酸っぱさ」「塩気」「苦み」「うま味」の5つの味覚を考えて数種類準備しておくと、気分によって食べられないという事態を減らすことができます。
 ジャムやはちみつや練りようかん、カリカリ梅やにぼし、おしゃぶり昆布など、単品ではなくいくつかを混ぜ合わせて準備しておくと安心です。

無意識に手が伸びるようなお気に入りのお菓子だと、緊張や不安を和らげてくれます。
もちろん非常用持ち出し袋には歯磨きセットも常備しておきたいですね。

 個人的にははちみつや小分けのジャム、ウィダーインゼリーのようなゼリー、食塩・油無添加のナッツ類あたりもお勧めです。
 これらを上手に使うことで不足しがちな栄養素を補い、仮に乾パン類が食べられなくても「何も食べていない」という事態は避けることができますし、避難している人たちが同じようにさまざまな駄菓子を持ち寄っていれば、そこで交換したりお話ししたりして不安を軽くすることもできます。
 「栄養素+心の安定」という効果のある駄菓子。普段使いのものを少し増やして、非常用持ち出し袋に加えてみてはいかがでしょうか。

登山で行動食として使われることの多い製品は非常食としても扱いやすい。
賞味期限にだけは注意が必要。