トイレットペーパーの誤解

 災害時に使用する仮設トイレでは、トイレットペーパーは便器に流さずに別に用意されたゴミ袋にいれるようになっている場合があります。
 猫砂や吸水材を使った非常用のものならともかく、それなりにしっかりしているように見える仮設トイレにそのような取扱があるというのは納得いかない方も多いようなのですが、これはトイレットペーパーに対する誤解があるからなのかなと感じています。
 実は、トイレットペーパーは水に溶けてなくなるわけではありません。
 試しに、トイレットペーパーをちぎって平たい皿の上で水をかけ、指でかき混ぜてみてください。
 トイレットペーパーの原型はなくなっても、かき混ぜている指には紙だったものが絡みついてくると思います。
 トイレットペーパーに使っている紙は、繊維が水でほどけやすいようにして作ってあるため、水で溶けているようにみえているだけなのです。
 つまり、充分な水量が確保できなければほどけきらずに塊が残り、それが続くと塊のかたまりができて詰まってしまう事態になります。
 また、拭くときにはちぎったままではなく、ある程度厚さのある塊にして使うと思うのですが、塊になれば水の中でほどけにくくなりますから、ちぎったままの状態に比べると詰まりやすくなってしまうのです。
 もちろんティッシュペーパーに比べれば格段に水に流れやすいのですが、災害時、すぐに修理ができないような状況で、流せる水に限度のある仮設トイレとなると、万が一を考えると紙を流さずにゴミとして処分する選択をしなければならないのです。
 災害時、生命線とも言えるトイレを守るためにも、トイレの水が確保できるまでは指示に従い、トイレットペーパーは便器に流さないようにしてください。

充電器を持って歩く

 充電器、といっても大型のものではなく、ここでは携帯電話やスマートフォンに充電できるだけの容量のある、持ち歩きのできる充電池のことです。
 普段から使い慣れているアイテムは、災害時でも当然活用されるのですが、その中でも携帯電話やスマートフォンは情報収集や情報交換、暇つぶしにと大活躍します。
 ただ、案外と見落とされがちなのは電池の消耗。当たり前のことですが、使えば使うほど電池は消耗しますが、避難所では充電できる設備はないと思ってください。
 一時避難所にあるコンセントで、たまに自分のスマートフォンを充電している人がいますが、その行為は盗電ですのであまりひどいようだとその施設から追い出されたり、場合によっては逮捕されてしまうこともありえます。
 充電池を持っておくことで、少なくとも1回~2回は携帯電話やスマートフォンの充電ができるはずですから、そちらで対応するようにしましょう。
 携帯電話やスマートフォンの電池の問題は結構切実で、ちょっとした災害時でも避難所の電源が充電器で埋まっているような状態になります。
 携帯電話の会社が開設する臨時充電施設が設置されても、充電時間は15分~1時間程度しかもらえませんが、充電池を充電するためのソーラーパネルなどを持っていれば、電源の問題を自己解決できます。
 多くの人の生活から切っても切り離せない携帯電話やスマートフォン。災害発生時に電池の消耗を防ぐことはもちろん、自力で電源を維持できるようにしておきたいですね。

【終了しました】防災安全講演会が開催されます

 令和3年11月30日の13時30分から、大田市のあすてらすで島根県の主催する防災安全講演会が開催されます。
 講師は国崎信江氏で、演題は「災害時の避難所をめぐる課題について~女性・子どもの視点から~」。
 他に事例発表としてしまね女性センター小川洋子氏による「島根県の防災における女性参画の現状」があります。
 お申し込みやや詳しいことにつきましては、リンク先をご確認ください。

令和3年度防災安全講演会(島根県のウェブサイトへ移動します)

災害対応は長期戦です

 災害が起きると、できる限り短時間で復旧・復興をしてそれまでの日常生活を取り戻そうと関わっている全ての人が昼夜を問わず限界まで頑張ってしまうものです。
 特に被災した自治体や避難所運営担当者、自治会長さんなどは本当に大変な思いをされることになると思います。
 ただ、災害復旧は長期戦だと腹をくくってかかった方がいいと思います。
 数日、数週間程度ならともかく、ちょっと大きな災害になると、対応は年単位になることもざらになってきています。
 そんな中で、最初から担当者が限界以上の仕事をしていては、そのうちに関係者全員が枕を並べて討ち死にということになりかねません。
 しっかりとした対応をしなければならないときこそ、しっかりとした休養と栄養補給が大事になるということを知っておいてください。
 とはいえ、そんな話を発災中や発災後すぐにしたところで、現実の対応に追われてとても考えられるものではありません。
 あらかじめ、しっかりとした計画を作って、その中で休養と栄養補給が取れるように手を打っておく必要があるのです。
 災害対応は長期戦です。短期決戦と長期戦では、おのずから戦い方が異なりますし、長期戦で戦っても担当者の士気が下がらないような仕掛けは、平時から作っておかないと絶対にうまく行きません。
 被災した自治体でなぜかよく管理職の方が言われる「気合いと根性」では災害対応は乗り切れません。特に災害対応を指揮すべき人はそのことを念頭に常に置いたうえで準備をしておいて欲しいと思います。

ペットと避難

 災害が起きるたびに問題になっているのがペットのことです。
 ペットがいるから避難しない、というケースはさすがに減ってきていると思いたいのですが、同行避難で一緒に普通の避難所に避難してくると、その場でトラブルが起きることがあります。
 例えば、吠える、騒ぐ、かみつくといったよくあるものから、動物アレルギーを持っている人がアレルギー反応を起こしたり、ペットの糞尿問題、えさや水、そもそもペットを見たくない人まで、人間同士以上にいろいろな問題が発生してきます。
 大規模な避難所になればなるほどトラブルになるものなので、本来は平時に解決しておかないといけない内容の問題ではあるのですが、まだまだ真剣に考えられていないというのが実情のようです。
 地域によっては、ペット付きの避難所とペットお断りの避難所にわけて指定したりもしているようですが、現状ではペットを区分けした場所で留置する程度の内容しか決まっていないようです。
 一つ言えるのは、災害からの避難ではペットのことは100%飼い主が対応しなくてはいけないということです、吠えたり騒いだりしている場合には、飼い主はそれに対処する義務がありましし、トイレやえさの問題も同じ。避難所運営側で準備する性格のものではありません。
 誤解を受けていることが多いのかもしれませんが、ペット同行避難が原則とされた理由は、あくまでも「ペットを理由にして避難しない人を出さない」ための措置であり、「ペットの命も積極的に守る」というようなものではありません。
 ペットのことは飼い主がきちんと世話しないといけませんし、できないのならそもそも飼ってはいけません。

ケージに入るサイズのペットはケージ内に置くのが基本。


 実は筆者の家でもかつて猫を飼っていたのですが、避難の際には猫は家に置いていくことを決めていました。2階建ての家でしたので、2階にえさや水、トイレを数日分準備して避難行動をとることで、ペットの命を守ることができますし、避難所でも迷惑をかけることはありません。
 幸いハザードマップでは最悪のケースでも二階までは浸からないという想定になっていましたのでこういう方法が採れましたが、そうでなければどうしただろうかと今でも考えることがあります。
 事前準備だけで100%なんとかなるわけではありませんが、ペットをどうやって避難させるのか、どこへ避難させるのかについて、飼い主は飼う前から真剣に考えておく必要があると思います。

社会福祉施設と福祉避難所

 保育園や介護施設などの社会福祉施設では、非常事態に備えた事業継続化計画、いわゆるBCPを持っていると思いますが、そのBCPでは多くの場合、災害発生時の利用者や職員の安全確保については考えられていても、施設の復旧や早期利用開始についてまでは定義されていないことも多いのではないでしょうか。
 令和3年5月に災害対策基本法が改正され、社会福祉施設をあらかじめ福祉避難所として指定し、事前に指定している被災した要配慮者及びその家族を最初から避難者として受け入れられるようにすることができるようになりました。

 これにより、普段利用している要配慮者の心身両面の安全安心が確保でき、安心して早めの避難をしてもらえるようになります。
 ただ、現時点ではなかなか及び腰になってしまっているのが実際のところではないでしょうか。
 今までは営業中の被災について考えておけばよかったのに、福祉避難所としての機能を持たせることになるとより細かな規定を作る必要があるからです。
 例えば、その社会福祉施設がどのような災害に弱いのかやどうなったら福祉避難所の設営を行うのか、職員の確保はどうするのか、施設の復旧と要配慮者の避難受け入れの両立ができるのかなど、さまざまな問題が発生します。
 また、今まで以上に職員やその家族のBCPまで考えてもらわないといけませんから、手間と時間を考えるとどうしても二の次になってしまいます。
 BCPの修正期限まで3年間の猶予はありますが、その間に個別避難計画を策定し、避難所運営計画を作り、事業の復旧や支援受け入れ体制、他の社会福祉施設との応援協定や定期的な訓練など、やらないといけないことはてんこ盛りです。
 元々現在の社会情勢から考えて、社会福祉施設が機能を再開しないと社会全体の復旧が進まないという現実がありますから、営業を止めないことや要配慮者を受け入れることのできる環境を作っておくことは必然です。
 厚生労働省や内閣府防災担当が社会福祉施設に関するガイドラインを作っていますので、とりあえずはそれに当てはめてBCPを作成し、その上で問題点を見つけていくことになると思います。
 全ての社会福祉施設が服し避難所になれる要件を満たしているわけではないと思いますが、あなたの社会福祉施設はどのような条件なら福祉避難所になれるのか、そして福祉避難所をどうやったら運営できるのかについて、市町村などの行政機関から相談がある前に、準備を始めておいた方がよさそうです。

福祉避難所の確保・運営ガイドライン(令和3年5月改定)(内閣府防災担当のサイトへ移動します)

温かい食事を食べるには

 大規模災害になると、電気、ガス、上下水道といったライフラインは寸断されて止まってしまう確率が高いです。
 避難所で提供される食事は、基本的には被災地以外から輸送してくる関係上、温かいものはまず提供されません。過去の災害ではお弁当が遠くで大量に作られることになったため、冷凍せざるを得ず、凍っていたこともあると聞きます。
 災害後、避難所での炊き出し支援が非常に喜ばれるのは、温かいものを食べることができるからというのが非常に大きいのです。
 では、どうやって温めるのか。
 よくあるものではカセットコンロ。これは普段から簡単に手に入りますし手入れも楽ですので、一つは持っているべきアイテムです。
 これからの季節、お鍋などをカセットコンロで温めれば、使い方もわかりますし、備蓄もきちんとでき、おいしいものを食べることもできます。


 それから、発熱剤を準備しておくのも手です。これは耐熱パックに発熱剤を入れ、水を加えることで加熱することができる優れもの。安全に使うことができますが、費用対効果が悪いのが欠点でしょうか。
 真夏であればソーラークッカーも便利だと思います。市販品もたくさんありますが、アルミ箔と段ボールなどを使えば自分で作ることもできるようですので、試して見るとよさそうです。また、同じく夏しか使えませんが、黒く塗った灯油缶に水を入れて黒いビニール袋を包み、お湯を作り、それで湯煎する方法もあります。
 ともあれ、普通に提供されるだけではほぼ確実に温かい食事はできませんから、あなたの気力や体力を守るためにも、何らかの備えをしておいてくださいね。

避難所のトイレ事情

携帯トイレ各種

 家屋被災等で避難所生活をしなければならなくなったとき、最初に問題になるのがトイレです。
 水道が止まっていると下水道や水洗トイレは使用できなくなりますから、避難所になる施設では、まずはトイレを閉鎖することになります。
 くみ取り式や簡易水洗トイレであるならくみ置きの水でなんとかなりますが、通常の水洗トイレの場合、最低でも1回に15リットル以上の水を流さないと詰まってしまいますので、避難所を汚染しないためにも可能な限り早くトイレを閉鎖する必要があるのです。
 避難所では避難者数にあわせて仮設トイレを設置する必要があるのですが、業者から仮設トイレが届くまでの間をどうするのかという問題が残ります。
 段ボールトイレや簡易トイレなどが準備してあればいいのですが、そうでない場合には悲惨な状況になってしまいます。


 避難所が予定されている施設では簡易トイレを備えておいた方がいいでしょうし、避難するあなたも携帯トイレや動物用シートなどを準備しておいた方が安心です。
 また、簡易トイレでは洋式トイレが多いのですが、仮設トイレはほとんどが和式です。そのため、しゃがめないお年寄りや和式トイレを使ったことのない人は非常に困ったことになってしまいます。本当は避難所として使われる施設はトイレの一部だけでも簡易水洗式を採用しておくと安心なのですが、下水道が普及してしまっている地域ではそれも難しいようです。
 あなたの避難する予定の避難所のトイレ事情はしっかりと確認して、無用なトラブルが起きないようにしたいものですね。

避難所には何があるか知ってますか

大抵の体育館は場所は広いが何も無い。

 防災センターや備蓄倉庫など、普段から災害対策をしている場所が避難所になる場合を除いて、多くの場合、避難者に対して支給されるものは殆どないといっていいと思います。
 小規模な避難所であれば、それなりの備蓄がある場合もありますが、大規模で通常は体育館や学校として使われている場所の場合、備蓄は期待できないと考えて下さい。
 では、備蓄がある場合にはどのようなものがあるのでしょうか。
 一概には言えませんが、毛布や間仕切り、テントなどは置いてあることも多いと思います。場合によっては段ボールベッドやコッドといった簡易的な就寝用ベッドや敷物用の段ボールが提供されるかもしれません。


 ここで気がついた人もいるかもしれませんが、施設での備蓄品というのは、基本は腐らずに食べたり飲んだりしないものです。
 つまり、自分の命を繋ぎたければ自分の食べる食べ物や飲み物を準備しておかないといけないということなのです。
 最近多い大雨や台風による水害や土砂災害の場合には、避難者に非常食や飲料が提供されることもあるのですが、これはあくまでも被害がまだ起きていない、あるいは限定的で被災区域以外は通常どおりと言った場合に提供が可能なもので、大規模な地震や風水害では物流ルートが寸断されてしまうので、食べ物や飲み物は届かないと覚悟しておいたほうがあきらめがつきます。
 多くの自治体や自治会では、本番環境と同じ状態での避難所設営訓練や避難所運営訓練はあまりされません。かなり大規模にはなりますが、一度避難から避難所に一晩泊まってみると、どのような問題が生じてどういう風に解決すれば良いのかが蓄積できます。
 又、運用側もぶっつけ本番で資機材を使わなくても済むので気分的にもいいと思います。
「避難所には何も無い」
 そういう最悪の状況を前提にしてあなたの避難用アイテムを考えて準備しておくと安心です。

避難所・避難場所と対応する災害

現在推奨されている避難所表示の一例。石西地方では吉賀町のみ対応している様子。

 一口に避難所や避難場所といっても、災害の種類によってはその場所が危険な地帯にあることもよくあります。
 そのため、事前に地域防災計画やハザードマップを確認して目的の避難先がその災害に対応しているかどうかを確認しておかなければならないのですが、実際のところそこまでしていない人が多いです。
 かつては避難所の入り口にはそこが避難所であることを示すことがわかるものがあればいいといった感じでしたが、現在では避難所・避難場所名とそこがどのような災害に対応しているのかを示す表示が統一規格として日本工業規格(JIS規格)に掲載されました。
 全国統一の表示なので旅先で被災したり、日本語がわからなくても絵を見れば避難できるかどうかが分かるようになっているのですが、この規格に従っていない自治体もあるようです。
 ともあれ、お住まいの地域の避難所・避難場所と避難可能な災害についてはあなた自身がきちんと把握しておかないと、いざというときに慌てることになります。
 避難してみたら、避難所が内水氾濫で水没していたというようなことでは困りますので、地域で起きそうな災害と、その災害で避難が可能な避難所についてはきちんと把握するようにしてくださいね。
 そして、できれば複数の避難所・避難場所の確認と、そこに至るまでの避難経路についても決めておいた方がいいと思います。
 決めたとおりになるとは限りませんが、いざというときにあまり頭を使わなくてもすむようにしておくと、避難の時には安心できますよ。