アルコール消毒とストーブ

 ストーブに限りませんが、火を扱っているときにアルコール消毒をするときは、火の周りには吹かない、かけない、拭かないを気をつけてください。
 当たり前だと思われることも多いと思いますが、火がついていることを意識せずにアルコール消毒を行って引火するということが起きないとも限らないからです。
 言うまでもありませんが、アルコールは可燃物です。アウトドアで直火を使う人なら、助燃剤や着火剤にアルコールが使われることをご存じなのではないでしょうか。
 アウトドアの現場でよく起きる事故の一つに、燃焼中の着火剤追加による引火というのがあります。
 アルコールは気化が早くて燃焼温度も低いことからとても着火しやすいものなのですが、火がうまくつかなかったり急いで火を大きくしようとして容器のまま着火剤を投入しようとして引火事故になっています。
 このコロナ禍でアルコール消毒はどこででも見るようになりましたが、使われる際にはくれぐれも火元に注意してください。

誰が迎えに行くのか?

 家族一緒に一日中毎日生活している人は、恐らくいないと思います。
 子どもが学校に出かけたり、親は仕事に出かけたり、家にいるお年寄りもディーサービスに出かけていたりして、案外と家に誰もいないということも多いのではないかと思います。
 さて、そんな状況下でもし災害が起きたとしたら、子どもと年寄りをどうやって家に帰らせますか。
 学校や施設が責任持って家まで送ってくれるのであれば問題なのですが、そんなケースはほとんどないと思います。
 多くの場合、何か起きたなら学校や施設まで利用者を迎えに来るように決められているのではないでしょうか。
 もしも災害時の引き渡し方法がきちんと決められていない、または知らないようでしたら、すぐに確認されることをお勧めします。
 保育園や幼稚園では、ほぼこの引き渡し方法が確立されていて、園児の親も大体ルールは知っているのですが、学校に入った途端どうなっているのか分からない場合も多いからです。
 また、お年寄りが出かけている施設でも同じ事が言えます。普段は送迎してくれていても、災害時にどうするのかについては取り決めがないこともあるのではないでしょうか。
 そして、ご家族が学校の近場でお仕事をしているのであればいいのですが、家族が全て遠くに働きに出かけている場合もよくあると思います。
 そういった場合には、家族以外で誰に迎えに行ってもらうのかをあらかじめ決めておかなければなりません。
 誰が迎えに行くのかという情報は、迎えに行く側だけで無く引き渡す側にも伝わっていなければ、引き渡しの際に揉める元になります。
 学校や施設、あるいは避難先に誰が迎えに行くのか。
 ご家族で検討して、家族みんなが知っているようにしておいてくださいね。

避難所の鍵

避難所としてよく使われる体育館。ここは誰が鍵を開けるのでしょうか?

 小さな自治会の避難所であれば、避難所の鍵がどこにあるのかというのは皆さんご存じだと思います。
 災害対策や施設の利活用に熱心なところであれば、鍵の貸し出しや保管方法のルールも定められているのではないでしょうか。
 地域で災害が起きそうなとき、その地域の人が誰でも避難所の扉の鍵を開けることができているのは、避難所の基本です。
 では、大規模な避難所はどうかというと、大規模な避難所では、殆どが施設管理者しか鍵を持っていません。
 施設が開いている時間に避難所になるのなら問題ありませんが、施設が閉まっているときに避難所を開設しようとしても、鍵が無いので避難所には入れないということになります。
 そのため、学校や大きな施設などは、災害時には施設は解放せず、災害が収まってから避難所として解放するというところもあるようです。
 施設の鍵が複数あることは、防犯上好ましいことではありませんし、平時にその鍵を使ってトラブルが起きることは、施設管理者としては認めることができないことだと思いますから仕方がないことなのですが、避難してくる人から見ると施設側の都合はどうでもよくて、避難してきたのに避難所は鍵がかかっていて入れないという事実だけが残ります。
 かといって避難してきた人が鍵を壊して勝手に入ってしまうと、これは不法侵入になってまた別の騒ぎになってしまいます。
 本来は避難所の開設の一番最初の手順である鍵の問題は平時に取り扱いを決めておかないといけないのですが、災害が来ると騒がれている地域でも、それが完全にできているわけではないようです。
 あなたが避難することのできる避難所の鍵は誰がいつ、どうやって開けられるのか、避難訓練などのときにでも確認しておいた方がよさそうです。

情報入手方法は多重化しておく

 あなたは地域で起きる災害情報の入手をどのようにしていますか。
 テレビ、ラジオを初め、地域の防災無線や防災メールなど、さまざまな手段をお持ちだと思います。
 災害時には、普段以上に正確な情報が必要となります。
 そして、正確な情報の入手手段は、平時から整えておかないとデマやウソに振り回されてしまうことになりますので注意が必要です。
 お勧めはお住まいの市町村や都道府県が発表している防災メールに登録しておくこと。なかにはお住まいの地域の指定ができるものもあるようですので、割と細かく情報が届けられます。
 防災無線は、電池交換や充電装置などの整備をきちんとしていればある程度使えますが、地震などで大規模な被害を受けた場合には、無線そのものが稼働しなくなる危険性があります。
 また、SNSなどでは憶測に基づいた未確認情報が飛び交いますので、信頼できる知り合いや公共機関の情報に限定して収集した方が惑わされずに済みます。
 他には、他の地域に住んでいる人とお互いに住んでいる地域の防災メールを登録し、何かあったら電話連絡してもらう方法もあります。
 「逃げなきゃコール」と言われているものですが、当事者ではない人から連絡を受けることで、情報の受信漏れを防ぎ、安否確認を取ってもらうこともできますので、情報収集に自信のない人はどなたかに頼んでおくといいと思います。
 最後に、災害後には人の憶測という悲喜こもごもの感情がこもった情報がたくさん発信されます。これはSNSに限らず、マスコミなどでも同じ。
 発信されている情報から感情を省いた客観的事実を読み取れるようになっておくと、普段から騙されなくて済むと思いますので、そういった練習をしてみてもよいのではないかと思います。
 いずれにしても、情報があなたの手元に届くかどうかはあなたの意識次第です。
 普段から正確な情報が手に入るような環境作りをしておきたいですね。

地震が起きたら何をする?

地震がきたら・・・?

研修会で筆者がよく参加者の方にする質問です。
「火を消す」「扉を開ける」「外へ逃げる」「机の下に入る」などなど、さまざまな答えが返ってきます。
筆者なりの答えを書くと「まずは身を守れ」となります。
何をするにしても、その行動の基本は身を守ることにあります。
身を守るというのは、「死なない」「怪我しない」ということなのですが、これは地震のときにあなたがいる環境と状況によって答えが変わります。
例えば、だだっぴろい広場の真ん中にいるなら、しゃがむだけでいいでしょうし、古くて耐震補強されていない建物なら、まずはそこから逃げ出すことが正解になります。
吊り天井の建物なら、化粧板の落下で怪我しないために机の下に入ることが重要ですし、割れそうな窓のそばなら、すぐにその場から離れなければ危険です。
最適解はあなたがいる環境と状況によって正解にも不正解にもなりますから、常に自分が居る環境でどのような事故が起きそうなのかを考えた上でとりべき行動を決めておくことになります。
この作業、最初はものすごく頭を使います。面倒くさいと思うことも非常に多いと思います。
ただ、慣れてくると場所を見るだけで「地震が起きたらこうしよう」という自分の行動が自然に決められるようになります。
また、よほどあちこちを点々とする人でない限りは、普段行く場所というのは驚くほどたくさんはありません。
目をならして取るべき行動を決めておく。それだけでも身を守れる可能性は格段にあがります。
地震が来たら「机の下」、ではなく、地震が来たら「身を守る」。
そんな風に覚えておいてくださいね。

専門家ってなんだろう

 災害が起きた後、または起きそうな雰囲気があると、その災害に関して語る「専門家」が必ず登場します。
 最近であれば、首都直下地震や南海トラフ地震などが、週刊誌のネタがないときなどによく出てきますが、ご存じの通り、この専門家の言うことのうち、「いつ」「どんな規模で」といった部分については、当たらないなと思われる方も多いと思います。
 実際のところ、専門家はその災害については何でも知っているかのような気がしますが、一般の方と比べてそんなに違いがあるわけではありません。
 起きたことをあとから検証してその時何が起きていたのかを検証することが専門家の仕事で、過去に起こった災害については非常に詳しいのですが、現在進行形の災害を予測したり、これから起きるだろう災害のことを正確に予測できる人はまずいないと考えて下さい。
 例えば、進路予測がある程度可能な台風でも、予測精度はずいぶんと高くなっていますが、100%当たるというわけではありません。
 気象庁といえば天気の専門家が揃っていて、その上で予測には高性能なスーパーコンピュータまで投入しているのに、外れてしまうこともある。
 規模や針路が予測できる台風ですらそんな状況だと考えれば、これから起こる災害を予測すると言うことがどれくらい難しいのかがわかるのではないでしょうか。
 また、専門家という肩書きは楽観的な予測はまずしません。専門家が大丈夫といって大丈夫でなかった場合には、マスメディアなどにさんざん叩かれて専門家としての経歴が終わってしまうからです。
 「想定される最悪の場合」という言い回しで説明をしている専門家の言葉を聞いたことがある方は多いのではないのでしょうか。
 災害を研究している専門家でもそんな感じなのですから、何をしているのかよくわからない肩書きの専門家もどきがとんでもない想定でとんでもない話をするのも仕方の無いことなのかもしれません。
 重ねて言いますが、専門家の仕事は起きた災害を検証し、そのとき何が起きていたのかを明らかにすることです。
 現場で何が起きていて、どのような手を打てば最適解なのかが分かっている人ではないということを理解した上で、発表されるコメントを確認することをお勧めします。

とりあえず書き出してみよう

校内安全点検の一コマ。

 災害時にどのような行動を取るのかについては逃げ地図マイタイムライン目黒巻き地区防災計画に至るまでさまざまなアイテムが用意されています。
 ただ、割と多くの人が災害時の行動については頭の中にはあっても目で見えるようにはしていないみたいです。
 災害時を含む非常事態というのは、トラブルが加速度的に増えていきますので、早め早めに対応しないと行動ができなくなってしまいます。
 早めの行動というのは、考えていたことを目で見えるように書き出しておくことで、考えなくてもそれを見るだけで行動に移せることです。
 非常事態や緊急事態に備える必要のあるところには、ほぼ100%非常事対応マニュアルというのが用意されていて、考えられるさまざまな出来事と対応策、対応する順番が整理されていますが、これは非常時にはどんなにしっかりとした人でも100%の能力は発揮できないこと、そして考えられなかった異常事態が起きたときにそちらに対応するための能力を集中させるために存在しています。
 例えば、マイタイムラインを作成すると、備える必要のある災害、取るべき行動、そして最終的な対応まで一目でみることのできる一枚紙ができます。
 この紙を、玄関や冷蔵庫、トイレなどに貼っておくと、無意識に中身を見て覚えることができ、その結果、そこに書かれた事態になったときに考えなくても行動を取ることができるようになり、結果的に身を守ることができるのです。
 平時にあれこれと考えて対応策を決めるのであれば、それは必ず書き出して目で見えるようにしておきましょう。
 そうすることで、少なくとも災害時の行動に迷うことはなくなると思います。

避難所の開設・運営方法を確認しておこう

 島根県では、避難所を開設するのは市町村が基本になっているようですが、災害時には職員でないと対応できない事が加速度的に増えていくので、災害時にあってはできる限り地域にお任せしたいところだと思います。
 本当は平時から避難所運営委員会を立ち上げて誰がどのような権限をもって何をするのかをしっかりと決めておきたいところですが、地域コミュニティがしっかりしているところばかりではありませんので、それを決めるところに至るまでが大変なようです。
 ただ、避難所の設営や運営について具体的にどのようなことをするのかについては、ぼんやりとしたイメージしかないのではないでしょうか。
 勘違いしがちですが、避難者はお客様ではありませんので、避難所の運営や維持について自分たちで出来ることは当然自分たちでやらなければなりません。
 避難所の開設手順や運営については、さまざまな地方自治体がマニュアルと設定していますが、今回はいろいろと見た範囲で筆者がわかりやすいと感じた千葉市の避難所開設・運営の映像をご紹介したいと思います。
 避難所の開設基準やトイレの状態、備蓄品の状態などはさまざまな自治体ごとに異なりますので全てがその通りになるわけではありませんが、必要な手順はきちんと触れられていて一通りの流れが理解できると思いますので、よかったら参考にしてください。

「避難所は住民の力で ~目で見る避難所開設・運営の流れ~」(youtubeのchibachityPRに移動します)

地区防災計画ってなんだ?

 最近防災界隈で騒がれているのが、いかにして地区の防災計画を作ってもらうかということです。
 国の防災計画と、都道府県や市町村が作る地域防災計画はあるのですが、これだけでは日本に住む全ての人が安全に避難をすることができるわけではありません。
 そこで、地区防災計画を当事者である住民に作ってもらおうというのがこの話のスタートなのですが、どうもここで規定されている地区を誤解している人がいるようなのでちょっと確認しておきたいと思います。
 ここに出てくる地区とは、例えば自主防災組織や自治会といったものではありません。もっと小さな単位、例えば集合住宅や、場合によっては各個人ごとに作る防災計画もこの「地区」に該当します。
 避難する判断や生き延びるための判断、避難先や受援方法などは、あまりに大きな単位だと条件が違いすぎて全く機能しません。
 より現実的に動かすためには、もっともっと小さい単位で同じような条件の人達を集めてその場所の防災計画を作ることが必要だと考えられているので、ここで出てくる「地区」というのは「地域よりも小さい単位」といったイメージで思ってもらえればいいと思います。
 そして、自分や近所の人がどのように行動するのかを定義することが、この地区防災計画の肝となるのです。
 その場所の災害事情はその場所に住んでいる人にしかわからないということがあります。そのため、その地域に住んでいる人達に自分が助かるための計画を作ってもらい、それを地域防災会議を経て地域防災計画に織り込んでいく。
 そのようなイメージで作るのが本筋です。
 行政機関によっては、自主防災組織や自治会などの単位で作らせようとしている動きもありますが、それでは結局地域防災計画の焼き直しになってしまい、行政が決めたルールの責任を地域に押しつけることにしかなっていません。
 基本はあくまでも小さな集団です。当研究所のある地域では自治会の組、つまり同じような地域条件で生活している5~10世帯を基本単位として作るくらい。
 お隣同士でも条件が異なるのであれば一緒にせず、それぞれに防災計画を作ることになります。
 正直なところ、個人の防災計画とどう違うんだという疑問はありますが、隣近所で話をしてみんなで行動することで逃げ残りや危険な目に遭う人を無くすことができるようにという意図もあるようです。
 お正月、ご家族や親戚が集まるこの機会に、あなたの防災計画についても見てもらって、助言をもらってみてはいかがでしょうか。
 そして、お正月が終わったら、ご近所の方と防災計画について話し合って、より安全に災害を乗り切れるようにしておくといいと思います。

みんなでつくる地区防災計画(内閣府のウェブサイトへ移動します)

みんなでつくる地区防災計画(日本防災士会のウェブサイトへ移動します)

輸送を軽視しない

 災害が発生して大規模な被害が発生すると、国からプッシュ式と言われる支援物資のお届けが行われます。
 必要なものを必要な場所へ限りなく早く、というのがこのプッシュ式の目的ではあるのですが、残念ながら被災地までは届いても被災者までは届かないというのが殆どの自治体の現状です。
 支援物資は被災者に届かなければ意味がありません。
 では、被災地まで届いた支援物資はどうやって被災者に届くのでしょうか。
 通常は中間物資集積場所(以下「デポ」といいます。)が作られて、国からの支援物資はそこへ届きます。
 そして、そこで仕分けされて各避難所などの持つ物資集積所(以下「地区物資集積所」といいます。)へ送られ、そこでさらに仕分けされて被災者に届くことになっています。
 それでは、これをシステム的に設計している地方自治体の防災計画がどれくらいあるかというと、非常にお寒い状況で、デポと物資集積所の輸送手段については全く考えていない地方自治体もあります。また、考えている自治体でも、宅配業者などと協定を結んでいて、その輸送力を使って輸送する計画にしているので、業者に丸投げ状態。
 業者はいつの段階でどこから何がどのようにくるのかを把握できていなければ、受け入れ計画を立てられませんし、業者の施設をデポとして利用する計画になっている場合、発災時点でその施設の中に置かれている荷物をどのようにするのかは考えられているのでしょうか。
 デポになるであろう施設は防災計画に明記されていますが、デポから地区物資集積所への輸送手段は特に書かれていないことが非常に多いのです。
 被災地でまず最初に不足するのは輸送力ですから、届けられるのを待つのではなく、最悪デポまで受取に出向くような動きが必要になってくるかもしれません。
 田舎の場合であれば、最悪地元の軽トラックなどを使うことが可能だと思いますが、それにしても事前にその軽トラックを動かすための燃料や保険、何か起きたときの補償などを決めておかないと、後で揉める元になります。
 物資は放っておいたら勝手に運ばれるわけではありません。
 デポと地区物資集積所、そしてそこから被災者の手に渡るまでの輸送手段についても、自治体の防災計画や地区防災計画の中で考えておきたいですね。