各地の災害発生によって避難所が開設されていますが、新型コロナウイルス感染や蔓延を警戒して収容する人数を絞っているという話を聞きます。
ソーシャルディスタンスを確保しようと思うと、従来のような詰め込めるだけ詰め込めという感じの避難者受け入れはできなくなるわけで、今後は自分が避難所に避難すべきなのか自宅避難すべきなのか、それともどこか違う別の場所へ避難すべきなのかについてしっかりと考えておく必要が出てきていると言ってもいいと思います。
現在の避難所の設計は一人あたり横1m×縦2mのスペースが確保できればという感じでなされていますが、ソーシャルディスタンスを確保しようとすると、避難者同士の距離を2m開けることになります。
その結果、避難者同士のプライバシーの保護もしやすくなり、人の視線も気にすることが少なくなって避難所ストレスが軽減できるような事態が発生しています。
おかしな話になるのですが、新型コロナウイルスの影響で避難所の収容状況が改善されるという状況になっているのです。
この先、喉元過ぎれば熱さを忘れるにならないように、あなたの避難計画についてしっかりと見直しをかけてみてください。
どのようになったら避難所へ避難するのか、それとも自宅避難でいいのか、はたまた被災地域外に高飛びするのか、それぞれケースバイケースだと思いますので、災害が起きる前にしっかりと行き先を複数決めておいてください。
また、その行動を起こすための鍵についてもしっかりと整理して決めておくようにしたいですね。
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低体温症を救うには
大雨や台風の中を安全な場所へ避難しようとすると、多くの場合全身がずぶ濡れになってしまいます。
雨風にさらされたこともありますし、道路や田畑を流れる濁流の中を移動することで、たとえ夏であっても身体は冷え切ってしまっていると思います。
雨などの水に当たらない場所で身体の水分をしっかりと拭き取り、乾いた服に着替えれば大抵元気になっていくのですが、長時間に渡ってずぶ濡れの状態でいると、身体の熱が服についた水分の蒸発で持っていかれて体温が下がっていきます。
身体を触ると冷たい状態が続くようであれば、低体温症を疑って対応をするようにしてください。特に高齢者や乳幼児では周囲の注意が必要です。
がたがたと震えているようであれば、身体を動かすことで熱を作り出そうとしています。温かい飲み物を飲ませ、携帯カイロや湯たんぽを血管の集中している脇の下や鼠径部などに置いて加温してください。
震えが止まっても意識がはっきりしない状態であれば、毛布などにくるんで周囲を暖めて安静を保ちます。
また、低体温症が悪化すると心肺停止を招くことがあります。その場合には救急車の手配を行い、心臓マッサージをして命を繋ぐようにしてください。
いずれにしても、可能な限り暖がとれる状態にしておく必要があります。
よくすぐエネルギーに変わる非常食としてチョコレートがあげられていますが、低体温症の人にはチョコレートの油を溶かす熱量がないことと、分解に水分が必要とされるため脱水症状を引き起こしやすくなります。
もし与えるのであればココアなど温かな甘い飲み物を飲ませるようにしてください。
最後に、たばこは末梢の血管を収縮させる働きで低体温症が悪化します。アルコールも同様で皮膚の血管を広げる働きが熱を奪う効果を起こしてしまいます。
安心すると嗜好品が欲しくなるものですが、嗜好品はしっかりと元気になってから適量を楽しむようにしてください。
低体温症は意識していれば悪化を防ぐことのできる病気です。避難をする際にはできるだけ身体は濡らさない。もし濡れたら安全な場所ですぐに拭き取り・着替えを行うよう心がけてくださいね。
被災地の片付けで病気や怪我をしないために気をつけること
大雨が収まると待っているのはお片付けですが、作業するときの格好に少しだけ気をつけてもらえると事故が減ると思います。
水害でみんな流れてしまったらあるもので作業をするしかないのですが、できる限り長袖長ズボンで、底の厚い長靴と同じく厚手のビニール手袋、それにマスクとあればゴーグルを着用してください。
というのも、水害で片付けなくてはいけない汚泥にはさまざまな雑菌が含まれており、ちょっとしたかすり傷でも膿んだりすることがあります。
また、汚泥の中には壊れた家具や建具が埋もれていることがあります。それらについている釘や鋲、ねじなどが足や手に刺さると、その部分から破傷風菌が入って破傷風になってしまうこともあります。
破傷風については、以前に「災害ボランティアと破傷風」で少し触れているのでよかったら参考にしてください。
そして汚泥が乾いてくると細かな砂のような感じになって辺りに舞うことになりますから、それが呼吸器や目、鼻と言った粘膜に付着すると結膜炎や炎症を起こしたりします。作業終了後は顔や手をしっかりと石けんで洗ってきれいにしておきましょう。可能であれば、着ていた服もしっかりと洗濯していただきたいと思います。
被災後は衛生環境を維持するのが大変になりますので、なるべく怪我しない、病気にならないための対策を取ることが必要です。
余談になりますが、建物や家具、建具については洗って乾かすことが基本です。特に建物の床下はそのままにしておくとカビの温床となってしまいますので、汚泥をどけたらしっかりと消毒して乾かしておきましょう。
参考までに厚生労働省のウェブサイト「被災した家屋での感染症対策」をリンクしておきます。上記に書いたような内容のより詳しいものや消毒液の作り方なども出ていますので、そちらの記事をご確認いただき、怪我や病気をせずに復旧に向けて進んでいただければと思います。
炊き出しで気をつけること
大規模な災害が起きると、さまざまな場所で炊き出しが行われます。
被災者同士が材料を持ち寄ったり、ボランティアの方が避難所まで来て調理したり、さまざまな形はありますが、行政からの配給弁当はパンか冷たいお弁当が多いですから、温かい食事ができるのは非常にありがたいことです。
ただ、その時には衛生管理を徹底することがいつも以上に大事になりますので気をつけておいてください。
例えば、水道が損傷して潤沢に水が使えない状態であるなら、素手で食材を触ることは厳禁です。手には普段からさまざまな雑菌がついていることはご存じだと思いますが、満足に手洗いのできない状態だと間違いなく汚れた状態になっています。アルコール消毒すればいいとお考えの方もいると思いますが、あれはあくまでも普段の手の状態がある程度衛生的であることが前提ですので、水と石けんによる手洗いの補助だと考えてください。
素手で食材を触らないためには、使い捨ての手袋を着用すればいい話なので、自治会などで準備する災害セットの中には必ず使い捨て手袋を加えておくようにしてください。そして、使い捨て手袋はゴム製でない方が安全です。これはゴム製が食材に悪さをするわけではなく、ゴムアレルギーの方がいることを想定する必要があるからです。
ゴムアレルギーの方はゴムに接触すると赤くなって腫れたりかぶれたようになったりします。災害後には病院も稼働できていないことが殆どですから、抗アレルギー薬も手に入りません。
非常時にはそういったことに意識が向きにくいですから、手袋はゴム製以外、例えばポリプロピレンなどの素材のものを用意しておく方がいいです。
次に食材の温度管理。肉や魚は常温だと腐敗が進みます。クーラーボックスに入っているからと言っても安心はできません。しっかりとしたクーラーボックスにしっかりと冷やせるだけの保冷剤を入れ、必要時以外は開け閉めせず、炊き出しで材料を全部使い切るようにしてください。
また、生肉や生魚を使った道具は雑菌に汚染されていると考えて、しっかりと洗浄もしくは処分を行ってください。充分な消毒ができれば良いのですが、そういった環境でない場合も多いと思いますので、使い捨ての割り箸などを使って利用後は処分するようにした方が安全です。
最後に、出来上がったらすぐに食べること。暖かいものであれば2時間以内を目安に食べきるようにしてください。食べられなかったものは、もったいないですが全て破棄をしましょう。
もし食中毒になったら助からないかもしれないと考えて、間違っても食中毒が起きないような衛生管理をするようにしましょう。
なお、発生した生ゴミは液体と固体を分離した上で固体はビニール袋などでしっかりと密閉してゴミ袋へ、液体は猫の砂や吸水ポリマーなどに吸収させた上で、ビニール袋に密閉してやはりゴミ袋へいれるようにしてください。
生ゴミは固体も液体もハエやゴキブリ等が発生する格好の温床となりますので、処分までしっかりと衛生管理をすることが大切です。
被災地では食中毒を出すと死者が出てしまうかもしれません。そうならないためにも、衛生管理をしっかりと行って、安全に暖かくておいしいものが食べられるようにしておきましょう。
災害ストレスと向き合うには
災害ストレスという言葉があります。被災した人達がさまざまな理由から受ける通常とは異なるストレスで、不安やイライラ、不眠、感情のコントロールができなくなる、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、さまざまな形で発露します。
でも、これらの災害ストレスはそれを受けるとわかっていると、ある程度の予防ができますし、何らかの事情で症状が出てきても適切な治療を受ければ症状を抑えることができます。
例えば不安やパニックを感じたときには大きな深呼吸をゆっくりと繰り返すことで落ち着きを取り戻すことができます。
また、誰かと話をすることで心に抱えたさまざまなストレスは軽くなることが多いです。家族、友人・知人、地域の人などと会話することで気持ちが楽になることもよくあります。知り合いに話すのがちょっと憚られる気がするなら、巡回相談の保健婦や傾聴ボランティアの方に話を聞いてもらうこともできます。
災害ストレスで一番よくないのは一人で頑張ろうとすること。そして頑張らないといけないと思い込んでしまうことです。
被災後、気持ちを切り替えて復旧・復興にあたることになりますが、周囲の様子は気にしないことです。あくまでも自分のペースで復旧・復興を進めること。まわりと差がついても気にしない。「まぁ、いっか」が合い言葉です。
そして頑張りすぎず、疲労を感じる前にしっかりと休憩したり、リラックスタイムを設けて気持ちを休ませてください。被災したことによるストレスを抱えているのですから、休み休みの復旧でちょうどいいのです。
どうしてもなんとかしたかったら、ボランティアなど他人の手を借りてください。一人での復旧はまず無理ですから、助けてもらうことは決して恥ずかしいことでも情けないことでもないのです。
そうやって意識していても、災害ストレスは多くの人に襲いかかります。もしもあなたがいつもと違うなと思ったら、そのときに「ああ、今災害ストレスなのか」と思ってください。そんな風に自分の状態が分かるとなんとなく落ち着くことが多いですが、おかしい状態が続きそうな気がしたら、お医者様に相談してください。
ストレスは早めに治療すれば症状を抑えることができる病気です。
そして、災害復旧は長期戦ですから、体調管理をしっかりと行いながら復旧をしていくくらいでちょうど良いのです。
災害ストレスは感じ方が一人一人みんな違います。自分の違和感、周囲の違和感、そういったものを意識して上手にいなしていきたいものですね。
応急処置を巡る小さな戦い
先日、止血法を巡ってちょっとしたトラブルがあったそうです。
伝聞調なのは、憤懣やるかたなしといった表情のAさんのお母さんからお話を聞いたから。
Aさんは当研究所のジュニア研究員としてワークショップや他所の防災イベントなどに積極的に参加してくれている子どもさんなのですが、この子と他の子で止血方法を巡って言い争いになったのだそうです。
もう一人の子、ここではBさんとしますが、このBさんが指を切ってしまいました。
結構血が出ていたようで、それを見ていたAさんはすぐにきれいなハンカチで傷口を押さえるように言ったそうです。
いわゆる圧迫止血なのですが、Bさんは「まずは傷口を洗ってから」と水道の流水で傷口をあらい、その上で切り口から心臓に近い場所の血管を押さえながら傷口を圧迫止血したそうです。
Aさんはちょうどこの出来事の少し前に応急処置の方法を習ったばかりで、そこでは「まず止血」と教わっていたのでそのように言ったのですが、Bさんも自分の通うスポーツ教室で応急処置の方法を教わっており、そこで習った方法で処置を行っていました。
このことでAさんとBさんが喧嘩になってしまって、困ったAさんのお母さんが筆者に相談してこられたのです。
聞く限り、どちらの手順も間違っていません。
ただ、災害時の処置とスポーツ事故の処置が異なるのかなと考えて調べてみたのですが、応急処置法を書いた本にはどちらのやり方も出ています。
強いて言えば、「水洗い→止血」の手順を記載している本の方が「まず止血」と書かれている本よりも古いかなといった感じですが、なんとなくすっきりしなかったので応急処置を教えている方に聞いてみました。
その答えは「怪我の程度や周囲の状況によって異なる」というものでした。
大きな怪我、特に出血が多いと、すぐに止血をしなければ命にかかわりますから、まず止血となります。
また、そこまで出血量が多くなく水洗いしたら傷口が見えるようなレベルであれば、洗えってから止血すれば汚れが残らなくてよい。
極論ですが、出血が止められるならそれでいいのです。
納得いかないAさんには、どっちの処置も間違っていないことと、まず圧迫止血で血を止める、つまりAさんの処置で良いことを説明しました。
そして方法は一つではなく「出血が止められる」という目標が達成できるならそれでいいというと、ちょっと不思議そうな顔をしていましたが、Bさんのやり方もあるんだということを理解してくれるといいなと思います。
今回、止血法を巡って子ども達がバトルを繰り広げているのを知り、しっかり目的やその根拠を伝えていかなければいけないなと感じました。
ワセリンは救急箱の万能選手
ちょっと大げさな書き方になってしまいましたが、今回は非常用持ち出し袋に入れるコンパクトな救急ボックスに入れておいた方がいいものの一つとして、ワセリンをご紹介したいと思います。
ワセリンにもさまざまなタイプがあるようですが、今回は日本薬局方に記載されている白色ワセリンで考えてみたいと思います。
薬ですので、側面には効能効果が書かれています。「手足のヒビ、アカギレ、皮膚のあれ、その他皮膚の保護」が効果効能、そして使い方である用量用法は「そのまま患部に薄く塗ってください」とあります。
皮膚のあれ、ということなので、最近よく聞くマスクかぶれ対策にも使うことができます。ポイントは、マスク使用後にできるだけ早くしっかりと石けんで顔を洗ってから塗っておくこと。保湿効果があるので、カサカサになったお肌を守ってくれるようです。ただ、塗ったままマスクをつけるとべたべたになって貼り付いて困ったことになるので、マスクをつける前にも顔をしっかりと石けんで洗うことに注意してください。
べたべたで思い出しましたが、花粉の舞う時期に鼻の穴の入り口に薄く塗っておくと花粉症が軽くなる気がします。たぶん花粉がワセリンのべたべたにくっつくからだと思うのですが、今シーズンは新型コロナウイルスのおかげで一番欲しい時期にマスクが手に入らなかったので、一時これでしのいでいました。
また、ワセリンは皮膚を保護する作用があるので、ちょっとした傷ややけどの時に塗っておいても保護効果が期待できます。ワセリンの効果は乾燥させないことなので、これを塗ってから絆創膏を貼ると、ハイドロコロイド絆創膏のような働きもしてくれます。ワセリンを塗った上でラップを巻くとよりよいようですが、あくまでも緊急時の対応と考えておけばいいと思います。
肌への刺激が少ないので、唇が切れたときにもリップクリーム代わりに塗っておくこともできますし、避難所等で乾燥していたら、薄くのばして肌に塗ってやることで肌の乾燥を防ぐこともできます。特に乳幼児や高齢者はそのあたりも考えて準備しておくことをお勧めします。
他にも、成分がほぼ油なので、緊急時には芯を差し込めばロウソクの代わりに使うこともできますし、脱脂綿やティッシュペーパーに浸せば着火剤としても使えます。
値段も安く、保管期限も長いので、防災アイテムとしても及第点。
あなたの救急箱に、ぜひワセリンも加えてやってください。
余談ですが、効果効能に書いていないことを試す場合には、あくまでも自己責任でお願いします。著者はいろいろとやってみましたが、あくまでも個人の感想であることと、まねてトラブルが発生しても責任は負いかねることをここに明記しておきます。
段ボールベッドと病気の予防
段ボールの強度をどう出すのかが問題。
避難所で必要な資材の一つに段ボールベッドがあります。
被害を受けた地域などでは非常に必要とされているのですが、供給体制がさほどしっかりとしていないため、発災後に頼んでも届くのは数ヶ月後といった状態になっています。
事前にきちんと準備しておけばいいのですが、値段と「たかが段ボール」という感覚があるのでしょうか、なかなか普及が進んでいない現状があります。
では、発災後にどうして段ボールベッドの需要が出てくるのでしょうか。
これは衛生管理と連動している話になるのですが、不特定多数の出入りがある場所では細かいほこりやゴミが常に舞っている状態です。避難施設が出入口で土足禁止になっていればそこまでひどくはありませんが、再度の避難を考えて土足のまま避難所で生活する場合もありますから、そうなると砂やゴミで床は常に汚れている状態になります。
そんな状態で床に寝るとどうなるか。
空気中に舞っているさまざまな細かなゴミは最終的には床に落ちます。そしてそこで寝ている人がそれらのゴミを吸い込むと、ゴミによる肺炎やゴミに付着したウイルスや菌による感染症の原因となってしまいます。
床面から数cmでも高い位置で寝られるとこういった病気を劇的に防ぐことができることから、高さを稼ぐために段ボールベッドが必要となるのです。
また、段ボールベッドはその構造上中に避難者の生活物資をいろいろといれることができますから、狭いスペースを効率的に活用する意味でも、ないと不便なアイテムです。
さらに言えば、寝る場所から立ち上がるのにベッドからの起き上がりだと、身体への負担が少ないので、高齢者の方の寝たきりを防ぐ効果も期待できます。
段ボールベッドは、同じサイズの箱の数があれば専用キットがなくても作ることができます。段ボールの強度を出すための工夫が必要となりますが、作り方を知っておくことは無意味ではないと思います。
また、自宅で避難生活をする場合でも、床にそのまま寝ることができない場合もあると思いますから、そういった意味でも準備しておいて損はないと思います。
もし段ボールベッドが手に入らず、段ボールもないようであれば、床から10cm以上の高さが確保できるような就寝スペースの構造を考えてみてください。
雑誌を積み重ねたり、机やいすを並べたり、その場にあるもので工夫すれば、数は足りないと思いますがいくつかを作ることは可能だと思います。
床に直に寝なくても済むように、いざというときにどうしたらいいかを考えてみてくださいね。
眼鏡と入れ歯
夜中に突然災害が起きたとしたら、あなたは平静でいることができますか。
寝込みを襲われるとどうしても気が動転してしまうものですが、なかでも避難時によく忘れてしまうものに眼鏡と入れ歯があります。
どちらも必要な人が日常生活を送るのに欠かせないアイテムなのですが、壊れたり無くなったりすると、再度手に入れるまでに非常に時間がかかるものです。
非常用持ち出し袋には、必ずスペアを入れておくようにしてください。
とはいえ、眼鏡はともかく入れ歯は普段使っていないと口の中にあわなくなっていくものですから、どうしても普段使いのものを持って逃げるしかありません。
洗浄液につけた状態で密封できる容器に入れ、身の回りに置いておくくらいしか方法が考えつきませんが、避難の際には絶対に忘れないようにしてください。
口から食事がとれないと、人間はだんだんと弱っていきます。気力や体力を維持するためには、どうしても口で咀嚼して食べる行為が必要となりますから、入れ歯の管理には充分に気をつけてくださいね。
アレルギーと食事
つい飛びついてしまうが、アレルギーには注意が必要。
指定避難所に避難して生活が始めると、さまざまな形で支援が入ってきます。
中でも大きいのは食事なのですが、避難者に配られる食事というのは個人の好みや健康状態に関係なく同じものが支給されるという点に注意が必要です。
大規模災害になると、多くの場合は最初に菓子パン、そしてその後は一度に大量に弁当を配食できるコンビニやスーパーなどが被災地外から弁当を輸送してくるようになります。これらは食中毒を防ぐため温度を下げて輸送してきますので、手元に来たときには凍っていることもあります。
また、やはり食中毒予防のため、味付けも濃いめになっていますので、塩分摂取制限のある方などが食べ続けると危険な状況になりかねません。
そして一番問題になるのはアレルギー対策。送られてくるパンやお弁当はアレルギーに対する配慮はまずないことを知っていないといけません。
アレルギーが出るものを食べなければいいと考える方もいらっしゃるのですが、避難所で食事を残そうとすると、間違いなくもったいないと言い出す方が現れて揉めることになります。
本人にとって生死を分けるアレルギー反応も、一部の人から見ると単なる甘えや好き嫌いにとらわれてしまうのです。
対策としては、アレルギー対応のできている非常食を自分で準備しておくことくらいしかできません。普通の方の備蓄は3日から1週間と言われていますが、アレルギー対応のできる食糧支援が行われるようになるのは、早くても2週間目以降になりますので、1~2週間分のアレルギー対応食を準備しておかないといけないということになります。
また、非常食は主なアレルゲンの記載が殆どのものでされていますので、食べられるものがあれば、それを優先的にまわしてもらうのも一つの手です。
災害が起きると、残念ながら日常生活にちょっとした配慮が必要な人は異端扱いされて肩身の狭い思いをすることになります。
そういう方がいるおうちは、できれば被害の出にくいおうちを作り、または被災しても避難所に行かなくて済むような環境を作って、自分で安全な食事を準備できるような体制を取っておいた方がいいと思います。
被災後に、何かの事情でアナフィラキシーショックを起こしても、搬送できる病院が無事とは限りませんから、アレルギー対応の必要な人ほど、普段から自分の身を守るための備えが必要なのではないかと思います。