非常用持ち出し袋をどう作るか

市販品の非常用持ち出し袋セット
毎度おなじみ子ども用の非常用持ち出し袋。実際にはいるものいらないものを整理していくので、内容の参考程度に見ておくといい。

 研修会や勉強会などで「非常用持ち出し袋には何をいれたらいいのか?」とか「○○を入れろとあったが、何に使うのか?」というご質問をいただくことがあります。
 答えを先に言ってしまうと「生活に最低限必要だと思うものを入れてください」です。非常用持ち出し袋は何のためにあるのかというと、あなたが家から避難した後、避難先であなたの生活を維持するのに必要なものを入れておくためです。そのため、内閣府防災消防庁などで推奨されている非常用持ち出し品が揃っていれば大丈夫と言うことではありません。あなたが使わないものや使えないものが入っていても仕方ありませんし、あなたが必要なものが入っていないようでも困ります。
 最近はネット通販などで「防災士が考えた非常用持ち出し袋」や「被災地の経験から作られた非常用持ち出し袋」などというタイトルで売られているものもあるのですが、それらを買ってもあなたに必要なものが全て過不足無くはいっているわけではないのです。あなたが使い方がわかっていて、そして避難先で必要なものを揃えていくのが非常用持ち出し袋を作る基本ですし、実はその方が値段も安かったりします。
 では、あなたの生活に最低限必要なものはなんでしょうか。「衣・食・住」で考えれば、着替えが一セット、食事が1日分、寝るための毛布や寝袋といったところでしょうか。これに懐中電灯や雨合羽、救急箱、新聞紙、充電器、ラジオ、ゴミ袋などを組み合わせて自分の非常用持ち出し袋を作っていくのです。
 避難所では時間がたくさんありますから、文庫本や携帯できるボードゲームやカードゲーム、塗り絵、折り紙などが入っていてもいいと思います。スマートフォンが生活に欠かせない人であれば大容量の充電池も必要でしょう。テレビが趣味なら、携帯テレビが必要かもしれません。要は普段のあなたの生活が守れる最低限度のものがあればいいのです。
 人間、環境が極端に変化すると心身とも一気に弱っていきます。非常時だからこそ、いかに普段の生活の質を落とさずに凌げるかが鍵になります。
 非常用持ち出し袋や備蓄品はそのために準備しておくものなのです。
 政府は3日~1週間分の食料や水の備蓄を推奨しています。でも、これを全部非常用持ち出し袋に詰め込むと、とてもではありませんが動けません。持てないものは家に備蓄すると割り切って、非常用持ち出し袋は自分が背負える重さにしてください。
 最後に、非常用持ち出し袋となる袋は登山用等のしっかりとしたリュックサックをお勧めします。よく非常用持ち出し袋として昔のナップサックのようなものが売られていますが、あれに詰めると、紐が肩に食い込んで背負えません。

左は昔からある非常用持ち出し袋。右側は子ども用非常用持ち出し袋。
最近は右側のように普通のリュックサックになっているものが多い。

 せっかく準備するのですから、しっかりとしたリュックサックを選んで、いざというときにしっかりと背負えるようにしておいてくださいね。

続・新型コロナウイルスとBCP

 遅ればせながら政府がいろいろと新型コロナウイルス対策を打ち出し始めました。「お願い」や「依頼」「配慮」など、どうみても責任は取りませんといった文字が目白押しですが、政府はともかく、一住民としては生き残るための自衛策を考えなければなりません。
 ここのところの騒動で過去に「新型コロナウイルスとBCP」や「BCPを作ろう」といった記事を書いてはいますが、個別のBCPについて質問されることが増えてきているので、何を考えたらいいのかをもう一度整理してみたいと思います。
 BCPの究極は「いかに自分のところを構成している人・もの・金にダメージを受けずにやり過ごすか」です。このため、自分あるいは自社にとって守るべきものは何なのかを決めておく必要があります。
 ポイントは二つ。事業をどのタイミングで中断するかという判断と、事業をどのように再開するかという判断を決めておくことです。自分や自社にとって事業の中断による社会的ダメージと事業の継続による社会的ダメージのどちらが大きいかを判断することになるでしょう。
 また、経済的・人的・資材的にどのタイミングで止めたら一番再開が安定して行えるのかということも検討しておきます。どの段階でどこから何をどれくらい持ってくればどんなものが再開できるのか、自分や自社の都合だけでなく「社会的に必要とされるものの優先度はどうか」を考えながら対応策を組んでいくことです。
 準備も必要です。新型コロナウイルスは潜伏期が14日程度と言われていますから、怪しいと思ったら14日は隔離される覚悟をしておかなければいけません。そのために必要な食料品や資材は準備できていますか。自分や家族、従業員に何かあったとき、きちんと休みが取れる体制になっていますか。また、休業状態になってどのくらいの間経済的に持ちこたえることが可能ですか。
 BCPは根性論ではどうにもなりません。必要とされるものを洗い出し、対策を考え、準備することで初めて稼働できるものなのです。
 現時点ではマスクも消毒用アルコールも市中には無い状態でいつになったら安定供給されるのかについても目処が立っていません。自分たちでできる自衛策は限定的ではありますが、それでも手がないわけではありませんから、根拠のある対策を調べて実行してください。ネット情報ではファクトチェックしているサイトもありますので、そういったところで内容の真偽を確認し、少しでも安全な対策をとるようにしてください。
 長々と書きましたが「どうなったら休業するのか」「どうなったら再開するのか」、取り急ぎその二点だけ決めておけば今後の対応は格段に楽になると思いますよ。

非常用持ち出し袋の中身を考える

 災害に備えて準備しておきましょうと言われるものの一つに「非常用持ち出し袋」があります。
 ただ、この非常用持ち出し袋、政府の推奨する量を全て収めるとかなりの重さになってしまい、高齢者や乳幼児の居る世帯では持って逃げることが困難なのではないだろうかと考えてしまいます。
 試しに、内閣府の防災情報のページにある非常用持ち出し袋の中身の一例を書き出してみましょう。

飲料水、食料品(カップめん、缶詰、ビスケット、チョコレートなど)、貴重品(預金通帳、印鑑、現金、健康保険証など)、
救急用品(ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬など)
マスク、軍手、缶切、ナイフ、懐中電灯、衣類、下着、毛布、タオル、ライター、携帯ラジオ、予備電池、
使い捨てカイロ、ウェットティッシュ、洗面用品、ヘルメット、防災ずきん

 これらのものを家族構成に合わせて準備し、玄関近くや寝室、車の中、物置などに置いておくようにしようと書かれています。
 よく3日分~1週間分の準備をしておこうという話もありますが、災害は発生から収束まで長くても2~3日ですから、さほど間違った内容だとも言えません。もっとも、そちらは家にストックしておく備蓄品でも構わない訳なので、自分の体力にあわせた非常用持ち出し袋を作る必要があるでしょう。
 自分が持ち歩く非常用持ち出し袋は、当然自分が持ち歩けなければ意味がありませんから、あなたの体力や状況によっては、必要だとされる全てのものを持って避難することは無理かもしれません。
 では、最悪の場合は何を持って行けばいいでしょうか?

 前提条件は、とにかくあなたが生き残ることができることです。危険な状況で非常用持ち出し袋を持ち出せる余裕が無い状況であれば、身一つで逃げましょう。
 もしも持ち出す余裕があるのであれば、最低限として次のものを準備しておくといいと思います。

 まずは飲料水。ライフラインが絶たれたときに一番困るのは衛生的な水を手に入れることです。一人一日3リットルという話もありますが、300mlだろうが50mlだろうが、無いよりは遙かにましですので、持てるサイズのお水は必ず用意してください。
 常備薬。慢性疾患や気になる病気がある方は必要です。
 新聞紙1日分と買い物用のビニール袋。これを組み合わせることで簡易トイレや敷物、簡易防寒着やたき火の焚き付けなどに使うこともできます。
 お財布や健康保険証といった貴重品は、恐らくある程度まとめて普段から持ち歩いている人も多いと思うので、その袋をそのまま持って行きます。
 携帯電話をお持ちの方は、充電池と充電ケーブルは絶対に必要ですし、できれば充電機能をもった携帯ラジオがあるとよりよいと思います。
 タオルはバスタオルとフェイスタオルを一枚ずつ準備します。女性であれば、普段お使いの生理用品も一回分は在庫があったほうが安心です。
 ウェットティッシュと歯ブラシ、下着、使い捨てカイロはあったほうがいいです。それから、風呂敷と手ぬぐい、帽子。雨合羽。
 最後に余力があれば食料品少々。
 これらのアイテムを、濡れないように密閉できるビニール袋に収めて、背負いやすいリュックサックに入れておきます。

 人の命が危険になる順番としては、①体温低下、②脱水症状 ③飢えになりますので、ここではそれに対応した準備をご紹介しています。食料は、無いとお腹が減ってひもじい思いはしますが、食べ無ければすぐに死ぬという人で無い限り、優先順位はそんなに高くありません。でも、低体温や脱水は生命にかかわってきますので、そちらへの対応を重視していることが読み取れるでしょうか。
 もっとも、これらのものを準備したところで自分が使わなかったり、使い方を知らなければ単なる重しでしかありませんので、使えてかつ必要だと思う物を準備しましょう。また、上記にプラスして、おうち個別の事情で追加しておくべきものもいろいろあると思います。例えば乳児のいるおうちではおむつやミルクが必要になるでしょうし、高齢者の方だと老眼鏡や入れ歯が追加になってくるという風に。
 ただ、個別の事情を考え出すと、あれもこれもということになって、結局いろいろなものを準備しすぎて持って行けなくなるということが非常によくあります。せっかく準備していても、それを持って避難ができなければ何の意味もありません。
 高齢者が多く、自治会管理の避難所があるところでは、身一つでの避難を徹底する代わりに、避難所にコンテナボックスに入れた各個人の非常用備蓄品が備えることで非常用持ち出し袋の代わりができるようになっていたりすることもあります。

 何を重視するのかは人それぞれですし、地域によって備えるべき災害と準備は異なります。あなたや家族、地域の状況を考えた上で、自分が持てる重さの非常用持ち出し袋を準備するようにしてくださいね。

【活動報告】こどもメディカルラリーに参加しました

 あなたはこどもメディカルラリーというのをご存じですか。元々は大人に対して応急手当、胸部圧迫(心臓マッサージ)、119番通報、AEDの使用方法について学ぼうという目的で作られたそうですが、こどもでもしっかり学べるということで、子ども用に作った企画だそうで、島根県内でも去年から開催されるようになっています。
 今回、去る2月8日に島根県職員会館で開催されると言うことで、当研究所の誇る研究員達4名がチャレンジしに行きました。本来は3名一組でチームを組んでシナリオに従った実戦的な演習もあるようなのですが、この日は子どもがなかなか集まらず、基礎的な内容をみっちりと教えていただきました。

講師やDVDの説明を聞く。真剣そのもの。

 まずは「push」と呼ばれる胸部圧迫とAEDの使用法についてDVDを見ながら説明を聞き、実際にやってみました。訓練で使うのは心臓を模したハート型のクッション。うまく圧迫ができるとクッションから音がします。

なかなかクッションから音が出ない。自棄になって叩いても音はでない。

 さすがに小学校低学年では立て続けに音を出すことは難しかったですが、それでもしっかりと胸部圧迫について教わり、次いでAEDの装着について教わっていました。

わかりやすいイラストと丁寧な説明で真剣に学ぶ

 続いて応急手当。鼻血のときの処置、切り傷など出血時の処置、そして骨折時に折れた部分を仮固定する方法などを教えてもらいました。

スタッフの人を練習台に、新聞紙と紐を使って脚の骨折部の固定をする訓練をする

腕を骨折した場合の仮固定の方法についても教わって、どのようにするのかも理解していました。
最後は倒れている人を発見したという設定で、119番通報とマネキンを使った胸部圧迫、そしてAEDの使用方法を試験器を使って実際にやっていました。

AEDがOKを出すか、救急隊員が来るまでは胸部圧迫を続ける
根気と体力が必要

 全部で2時間弱という非常に長く、そして暖房なしという寒い環境ではありましたが、研究員達は普段からもっている知識をしっかりとアップデートしていたようです。そのうちに島根県西部地域でもできるといいなと思いながら、今回の参加が終了しました。ちなみに研究員の感想は「119番通報の練習が一番面白かった」「心臓の圧迫を続けるのが難しかった」「身の回りにあるもので応急処置できそう」といった感じで、普段やらない部分をしっかりとマスターしたようでした。
 最後に、こどもメディカルラリーでお世話いただきましたスタッフの皆様に、改めてお礼申し上げます。

手遊びのできるものを非常用持ち出し袋に準備する

 以前にボードゲームやカードゲームを非常用持ち出し袋に入れておくといざというときに気が紛れるということを書きましたが、それらで遊べない年齢の子どもの場合はどうするのかというお問い合わせをいただきました。
 答えとしては、「その子が喜んで遊ぶものをいくつか準備しておく」ということになりますが、一刻を争うときに子どものお気に入りのおもちゃの持ち出しにまではなかなか気が回らないと思います。
 そこで、折り紙や落書き帳をいれておいてはいかがでしょうか。もちろん、折り紙だと折り方を知っていなければなりませんし、落書き帳にはクレヨンや色鉛筆といったお絵かきするための道具も必要です。
 これらは子どもと遊ぶという目的だけでなく、折り紙であればコップや皿を作ることができますし、落書き帳も折り紙に使えますし、伝言メモや記録を書くときにも使うことができます。
 非常用持ち出し袋は、なるべく軽くしたいものですから、いざというときに備えて、これらの紙道具を準備しておいてはいかがでしょうか。
 なお、落書き帳ですがコンパクトな自由帳やメモでは駄目かというご相談を受けることがあります。それでもいいのですが、一枚を書いたという満足感と、作品として完結させたという満足感を持つためにはある程度の大きさが必要だと考えます。そのため、B5サイズ以上の紙の方がいいのではないかと思いますが、その子が普段どのようなものに絵を描いているのかを確認していただき、そのサイズにあったものを準備されればいいと思います。
 同様に、折り紙についてもある程度の大きさの方が、子どもの手には折りやすいのではないかと思います。こちらも子どもと一緒に折ってみて、ちょうどいいサイズを探してみてください。

身体から熱を逃がさないための方法

 寒い時期に被災すると、熱を作り出すのに苦労します。特に雨が降っている状況下では焚き火もできませんから、どうやって身体を冷やさずにいるかということに重きを置く必要があります。
 身体が冷えてくると低体温症になり、ひどくなると死んでしまいます。ずぶ濡れや熱の逃げてしまうような環境で、普通に会話ができていた人がろれつが回らなくなったり、日付や今までのことが言えなくなったりしたときには、低体温症による記憶障害を疑ってみたほうがいいのですが、まずはそうならないために、次の点に気をつけてください。

1.身体を濡らさない

 着替えがあるなら、速やかに濡れた服を脱ぎ、濡れた身体を拭いてから乾いたものに着替えてください。最初は寒く感じますが、熱を奪う水分がなくなった分は身体への負担が減ります。

2.風を遮蔽する

 風は身体から熱を奪っていきます。暑い中で冷たい風にあたると身体の熱が奪われて気持ちいいと感じますが、あれは寒い時期にも起こります。できるだけ風を通さない場所を選び、あれば防寒着や合羽、なければ大きなビニール袋でも構いませんので、身体に着て直接風が当たらないようにしてください。

3.冷たい場所に直接座らない

 金属や石、堅い木の上などに座るとひやっとするかもしれません。その場合、いくら身体を乾かして風に当たらないようにしても、座っているお尻から熱が逃げていきます。それを防ぐために、お尻の下にはエアークッションや座布団、段ボールや新聞紙といった、間に空気が貯まって保温できるようなものを敷いてください。
 新聞紙は空気の層を作る必要がありますので、できれば一日分をお尻の大きさに合わせてたたみ、その上に座るようにしてください。週刊誌や雑誌でも厚手のものであれば同じ効果が期待できます。

4.身体の熱の逃げる部位を覆う

 身体からは思っている以上に熱が逃げています。2で風を遮蔽しているはずですが、熱を逃がさないために身体の周囲に空気の層を作るようにします。エマージェンシーシートやビニールシートといった風を通さない素材で身体を覆うようにします。頭や顔からも案外と熱が逃げますので、理想は包まって目だけ出ている状態です。

5.熱を作る

 保温に成功しても、身体のエネルギーが不足すると熱を作り出すことができなくなります。そうならないように、チョコレートやようかんといったすぐエネルギーに変わる糖類を摂取して体内から熱を作り出せるようにします。

 ちなみに、1から4までを空間として作ると路上生活者の人が作っている段ボールハウスになります。断熱・保温・居住性の点で非常に有効なものを作っているなと感じており、その構造は避難所内外のシェルターとしても使えると思っていますので、もしも観察する機会があればどのようにして作っているのかを見てみてください。

非常用持ち出し袋は家のどこにおくか

 非常用持ち出し袋を作っても、押し入れにしまっておいたのではいざというときに持ち出すことができません。
 では、どこに置いておくのがいいのでしょうか。これが正解というものはなく、おうちによって違うのですが、木造の一戸建てであれば一階よりは二階に置いておく方が目的にあった使い方ができるようです。
 地震でつぶれるのは殆どの場合1階ですし水害で浸かるときも1階からです。特にさまざまな理由で家の外ではなく、家の中で上の階に避難するような場合、非常用持ち出し袋を二階に移動させる手間がないのでその分安全に避難ができます。
時間との勝負となる津波の場合はちょっと考える必要がありそうですが、その場合には非常用持ち出し袋を二つ準備しておくのもいいかもしれません。
 災害対策では、耐震補強していない場合には2階で就寝する方がいくらか安全だという話をすることがありますが、寝室が二階にあるのなら、寝室のどこかに非常用持ち出し袋を置くスペースを作っておけば安心です。また、被災後の生活再建で必要となってくる備蓄品は、二階以上の場所にストックしておくことをお勧めします。もし何らかの事情で建物が倒壊したとしても、二階であれば取り出せる可能性があるからです。
 非常用持ち出し袋と備蓄品、それぞれに目的が違いますがいづれも命を支えてくれる大切なものです。避難所にあらかじめ置いておくことが理想ではありますが、それができないのであれば、被災しづらい二階以上の階に防災グッズを置いておくことをお勧めします。

地震から命をまもる方法

 地震の時に命を守るポーズとして有名なのはダンゴムシのポーズですが、このポーズにもさまざまな流派があります。
 基本的なところは変わらないのですが、両手で頭を押さえたり、片手が頭、もう一方の手が首だったり、足首を立たせていたり寝かせていたり、どれもそれらしいもので、どれも間違いではないよなと思います。ただ、ダンゴムシのポーズを取ることができる前提条件は、ものが倒れてこない、ものが飛んでこない、ものが落ちてこないこと。つまりは周囲の安全確認が最初となります。そして、ある程度安全だと判断して初めてダンゴムシのポーズを取ることになります。
 もしもその場所が危険なところであったなら、より危険が少ない場所まで移動するしかありませんが、そのときに一月をつけて欲しいことがあります。それは、地震が来たらとにかく自分の重心を下げること。
 人間はその構造上どうしても頭が重いので、どんな人でも揺れで足下が不安定になると転倒する危険性が高くなります。そこで、まずは身体の重心を下げること。
捕まる場所があれば捕まっておくとより安定しますし、安全圏まで逃げられたなら、ダンゴムシのポーズをとればより安全を確保できます。
 学校や事務所などでは、上からものが落ちてきたりしそうであるなら、緊急避難として机の下に隠れるという方法もありますが、机がひっくり返ったりすることもありますので、その場合にはしっかりと脚を支えておくことをお勧めします。
 発生した場所によりますが、海溝型地震の場合には警報から数秒は余裕があります。その数秒でいかに自分の安全を確保するかが、そのあとに続く揺れで怪我しない、死なないための大切な手段がとれますので充分に気をつけておくようにしましょう。
余談ですが、直下型地震の場合には警報はまず間に合いません。異常を感じたらすぐにしゃがんで重心をさげるくらいしか対抗する方法がないのが現状です。

避難所で子どもとどう遊ぶか

 突然やってくる地震を除けば、殆どの災害は事前に避難が可能なものばかりです。あらかじめ危険箇所の分析ができていれば、自分のところが避難しなければいけない災害に対して早い段階で安全な場所への移動を完了することができるのですが、その安全な場所が自宅ではない場合、そして子ども達が一緒に避難している場合には、その子ども達が退屈しないように少し知恵を絞る必要があります。
 普段から彼らが遊んでいるものを持参することと、電源が不要な遊びを一緒に楽しめるようにしておくこと。
 例えば、ネットゲームやアニメ、インターネットといった電源や通信環境が必要な遊びでは、災害が発生して電源や通信環境を失ったしまうと遊ぶことができなくなります。そこで電源不要な遊びをできるように準備し、また、ある程度は一緒に遊んで慣れ親しんでおくことも必要です。
 例えば、折り紙やあやとり、落書き帳や筆記具、絵本、カードゲーム、ボードゲームなどを持ち出しセットに準備しておき、一緒に遊ぶことで、子どもだけでなく大人も気が紛れます。
子どもが大騒ぎしたり暴れたり泣いたりするのは退屈ですることがないせいの場合が多いので、彼らを退屈させないように準備をしておくのです。
 もしもそういったものが準備できなかった場合には、新聞紙やその辺にあるものでどうやって遊ぶかを子どもと一緒に考えて、周囲に迷惑がかからない程度に遊ぶのもよいと思います。
 避難所の運営が始まれば、彼らも立派な戦力です。仕事をどんどん割り振って、退屈にさせないようにしましょう。

事前準備と買い占め

市販品の非常用持ち出し袋
市販品の子供用防災セット。一通りのものがセットされているが、その中に自分が必ず必要とするものが入っているとは限らないことに注意。

 災害で避難や補給が途絶したときに備えて3日~7日程度の備蓄品を準備してくださいということが、政府広報などでさかんに言われていますが、あなたは自分が一日に何をどれ位消費しているかを知っていますか。
 あなたの生活に必要なものや用意すべきものは、あなたがいる環境や場所、体調によって異なりますので、自分が一日にどれくらいのものをどうやって消費しているのかを確認しておくことは、備蓄品の準備にあたって必ず確認をしておく必要があります。
 例えば、飲料水は料理で摂る分も含めて一日一人3リットル準備しなさいといわれていますが、汗をかく人や子どもではそれ以上必要になることがありますし、また、そこまで必要の無い人もいます。普段の生活を知ることで、自分に必要なものの数量がきちんと把握でき、無駄な備えをしなくて済むことになるわけです。
 これは災害後に起きる買い占めでよく起きることなのですが、災害が発生して備蓄がない場合、不安と焦りから自分の生活に必要以上のものを買い占めようとする心理が働きます。その結果、ある人は何も手に入れられず、ある人は手に入れすぎて駄目にしてしまったというようなおかしなことが生じます。自分が普段必要になるものと数量を把握することで、必要以上に買う必要がなくなれば、多くの人が助かることになります。事前準備がしてあれば、なおさら心に余裕ができます。
 自分が生活するのに何がどれくらいいるのかをきちんと確認し、その数量×日数分を準備しておくことで、いざというときに慌てなくて済みます。
 災害に備えて紹介されている準備すべき備蓄品はあくまでも平均的なもの。それらを全て準備したからといって、あなたにとって必要なものが全てそろっているわけではありません。
 自分の生活を確認し、それが支えられる分量を準備すること。そして準備した備蓄品は上手に入れ替えていき、いざというときに買い占めしなくてもすむこと。
 これが災害からの復旧の第一歩です。