災害が起きたときに、どうかすると医療行為が止まってしまうことがあります。
現在の医療行為はさまざまな場面で機械が無いとどうにもならなくなっているので、災害用の発電機が設置されてはいるのですが、災害の種類によってはその発電機が使えなくなることがあります。
そうなると、医療機械だけでは無くて手続きや電子カルテに至るまで全てが止まってしまい、まともな診療ができなくなります。
でも、例えば透析が必要な方などは待ってくれとなると生死の問題になります。
そう言った場合には被災地以外の場所へ広域移動してもらって医療行為を受けてもらうのが現実的なやり方でしょう。
被災した医療システムを復旧しようとしても、とても数日間で何とかなるものではありませんから、医療機器を使わないと命の危険がある方のために、医療機関は広域で連携しておいた方がいいと考えます。
また、避難所での生活になったとき、医療体制が安定するまでの間は診察も検査も投薬もしてはもらえません。
そのため、持病を持っている人は自分の薬をある程度非常用持ち出し袋に入れて置く必要があります。
1週間から10日分くらいは予備があると安心です。
かかりつけのお医者様に相談すれば、そう言った配慮をしてもらえることがありますので、ないと命にかかわるような薬を飲んでいる人は、事前に準備しておいた方がいいと思います。
その上で、お薬手帳があれば、万が一かかりつけの医師や薬剤師との連絡が取れなかったとしても、そのお薬手帳に書かれている薬を見ることで、あなたを診てくれる医師や薬剤師はどのような症状でどのように薬を使っていたのかが分かって事故を防ぐことができます。
生命に関するような医療行為や薬は、災害に対していくつも対策をしておいて無駄にはなりません。
自分だけで対策をするのは難しいかもしれませんが、できる手を考えて打っておくことをお勧めします。
カテゴリー: 乳幼児
経口補水液を作ろう
スポーツドリンクや経口補水液は、炎天下での必需品になりつつありますが、その都度買うと案外馬鹿にならない出費になります。
時間があるのであれば、経口補水液は簡単に作れますので、今日はそのレシピをご紹介します。
1.経口補水液の材料
(1)水 500ml(ペットボトル1本)
(2)砂糖(グラニュー糖) 27g
(3)塩 1.5g
2.作り方
(1)の水を50cc別容器に移し、(2)と(3)を入れ、溶けるまで混ぜる。
3.注意点
作ったものは要冷蔵とし、その日のうちに使い切ること。
飲む都度作るのが理想。
このレシピで作ると、市販のスポーツドリンクと経口補水液の中間の濃度のものができます。
このままだと少し飲みにくいので、レモン果汁やかぼす果汁などを少し加えると飲みやすくなります。
砂糖の量にびっくりするかもしれませんが、普段飲んでいるスポーツドリンクはこれよりも多い糖分が含まれています。
ちなみに、ユニセフのレシピだと砂糖が30gになりますので、それで作ってもいいと思います。
ちなみに、スティックシュガーや軽量スプーンなどがない場合には、ペットボトルの蓋を使うこともできます。
国産のペットボトルの蓋はJIS規格で作られているものであれば互換性があり、キャップ1杯が約7.5ml入るように作られています。なので、すりきり4杯いれると30ml=30gとなります。フタは濡れていると正しくはかれないので、水気はしっかりと拭き取って使うようにしてくださいね。また、救援物資として送られてきた日本以外のペットボトルではこの限りではないので、それも注意が必要です。
熱中症対策を考える
ここ数日暑い日が続いていますが、ここ数年、暑くなってくると熱中症についてさまざまなところで注意が呼びかけられています。
暑いところで起きる熱中症ですが、似たようなものに熱射病や脱水などがあったりして、筆者自身はどう違うのかいまいちピンときていません。
そもそも熱中症ってなんでしょうか。
今回はざっくりと熱中症について調べてみたいと思います。
1.熱中症とは?
熱中症とは、何らかの理由で体温が上がったことにより、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温調整機能が働かなくなって体温上昇、めまい、けいれん、頭痛など、さまざまな症状の総称です。
このうち、強い直射日光によって起きるものが日射病、車や部屋の中といった閉ざされた空間が高温になって起きるものを熱射病、汗や尿など体内の水分は出て行くのに適切に水が供給されずに起こるものを脱水症状と言います。
お年寄りは感覚が鈍いため、自分が熱中症になったことに気づいたときには自分が動けない状態になっていることが多いですし、地面に近く水分の調整が未成熟な子どもも発症しやすいです。
ようするに、熱中症は「高温多湿な環境に身体が適応できなくなることにより生じるさまざまなトラブルの総称」だと考えればよさそうです。
ただ、放っておくと重度な後遺症や死亡を招く場合もあるので症状の初期でいかに適切な対応をするかがとても大切です。
2.熱中症が発生しやすい条件
1)気温が摂氏25度以上のとき
2)湿度80%以上の湿度が高いとき
3)直射日光や日差しの照り返しなど日差しが強いとき
4)無風もしくは風が弱いとき
5)暑さ指数が高いとき
これらの条件が単独だったり重なったりしたとき、体調によって熱中症が発症します。環境省が運用している熱中症警戒アラートは、この熱中症が発生しやすい条件が揃うと発令されますので参考にするといいでしょう。
3.発生する症状
1)めまいや顔のほてり
2)筋肉痛や筋肉のけいれん
3)身体のだるさや吐き気
4)異常な汗(多量または出ない)
5)体温の上昇
6)皮膚の異常
7)呼びかけに反応しない、まっすぐ歩けない、一時的な意識の喪失
8)腹痛
9)水分補給ができない
といった症状があったら、熱中症を疑います。新型コロナウイルス感染症のおかげであちこちに非接触型の体温計が設置されていますので、体温はこまめに確認しておくと安心です。
4.対応方法
いずれにしても涼しい場所にすぐに移動させます。クーラーの効いている部屋が一番ですが、なければ風通しのよい日影でも構いません。
可能であれば衣服を脱がして皮膚に水をかけ、うちわなどであおいで身体からの放熱を助けます。
氷や冷えた保冷剤があるなら、首筋や脇の下、太ももの付け根など、皮膚のそばを大きな血管が走っている場所を冷やして身体の冷却を助けます。
とにかく体温を下げることを目的として身体を冷やします。
身体の深部体温が摂氏40度を超えると全身痙攣などが起きて危険な状態になることがありますから、あらゆる手段を使って身体を冷やしてください。
意識がはっきりしていて飲み物が飲めるなら、冷たいスポーツドリンクや経口補水液を飲むことで、身体の内部から温度を下げることも可能です。
ただし、意識がなかったり混濁していたり、吐き気を訴えたりしているときには無理に飲ませないでください。
「3.発生する症状」の(5)~(9)の場合には救急搬送が必要となりますので、身体を冷やす作業をしながら救急車を手配してください。
5.熱中症の予防
とにかく暑さを避けることです。涼しい服装で、クーラーの効いた部屋で過ごすこと。窓を開けていても熱風が吹き込んでくることもありますので、涼しい環境を意識して作るようにしてください。
自宅が暑くてどうにもならないときには、図書館などの公的施設に出かけてみるのも手です。
また、コロナ渦で標準装備になっているマスクは口元に熱が籠もって体温上昇を招く元です。外出時のソーシャルディスタンスを確保できないときを除いて、なるべく外すようにしてください。どうしてもつけないといけない場合には、負荷のかかる運動や作業はしないようにしてください。
こまめな水分補給も大切です。喉が渇いていなくても、30分~45分程度に一回は水分をとるようにしてください。このとき、利尿作用のあるカフェインを含む飲料、例えばコーヒーやお茶は飲むと利尿作用によって脱水症状を招くこともありますので、できるだけカフェインの入っていない飲み物を取るようにしてください。
熱中症は気がついたときには一人ではどうにもならない状態になっていることもよくあります。なるべく誰か人のいるところで水分を取りながら暑さをしのぐというのが、一番よいのかもしれませんね。
仮設トイレの考え方
災害対策を考えるときにまず最初に出す方の対策をしようということは、ここで再三再四書いているところですが、具体的にどうすればいいのかということを少しだけ触れてみたいと思います。
まずはトイレの形状を考えるというお話をしましたが、くみ取り式であれば、水害で浸かってくみ取り槽が汚泥で埋まっているというような状態でもなければ、普段と変わらずに使うことが可能です。
簡易水洗の場合には、少しだけ流す水が必要な場合がありますが、1リットルもあれば充分に流れますからそこまで神経質になる必要はありません。
それ以外の場合には、浄化槽式も下水道式もそのままトイレとして使用することはやめてください。
使う場合には、便器の内部にビニール袋と新聞紙を入れて、汚物を流さないようにする対策が必要です。
災害用の仮設トイレには便器を使用するものもあるので、その場合には取扱説明書のとおりに組み立てて使うようにしましょう。
トイレや便座が使えない場合には、段ボール箱やバケツを使ってトイレを作る方法があります。
段ボール箱やバケツの中にビニール袋を二重に設置し、その中に猫の砂やペット用シート、新聞紙などを入れて用を足し、汚物の入った袋は厳重に縛ってゴミ箱へ、そして新しいビニール袋をセットし、猫の砂などを又入れてといった感じで使います。
新聞紙の場合には、ポリマー剤などの吸水材があればそれを入れておくと取り扱いが楽になります。
段ボール箱にしてもバケツにしても、そのままだと座る部分がおしりに当たって痛いので、別の段ボールなどで座面を載せることをお勧めします。
仮設トイレ用の道具があれば、それを使ってトイレスペースを作るのもありです。
いずれにしても、汚物を入れるふた付きのゴミ箱は必須となりますので、あらかじめ準備しておくといいと思います。
携帯トイレもありますが、これはどちらかというと小水用で、大きい方で使うには向きません。また、ペットシートを地面に広げて直接排泄したり、大人用おむつをつけて排泄したりするのは案外難しいものです。うまくいかずに便秘になったりすることもあるので、できるだけ普段の排泄環境にあわせたトイレの設営をしたほうがよいと考えます。
今あるトイレをどうやって被災後も使えるようにするか、家にある資材でどんなことができるだろうかということを、平時だからこそ考えておきたいですね。
避難所設営基本の「き」その1・まず何をするか
避難所の設営についてご質問をいただくことがあります。
その時に最初に確認する内容、なんだかわかりますか。
それは「施設の水源とトイレ」です。
災害が発生して避難所を設営するとき、一番盲点になる部分であり、そして一番最初に問題が発生し、場合によっては最後まで問題になるもの。
それがトイレ問題です。
極端なことを書けば、くみ取り式で水を使わないストレート式、いわゆるボットン便所ならば通常使用で問題ありませんし、タンクレスの便器を使った下水道方式の2階以上のトイレであれば、問答無用で使用禁止を言い渡します。
わかりやすく書くと、排泄物の処理に水が必要なのかどうか、そして一回に必要な水の量はどれくらいで、どの程度、どうすれば確保できるのかが問題になるということです。
どんな人でもトイレは我慢できませんし、避難してきた被災者はトイレが使えなくなるということはまず考えていませんので、断水するとあっという間にトイレが汚物まみれの不衛生な場所になってしまいます。
それを防ぐためには、災害時にトイレを使うことが可能なのかどうか、使えるとするとどうやったら使うことが可能になるのか、また、使えないのであればどのような手段を使ってトイレを作るのかということを事前に準備しておく必要があるのです。
ざっくりとしたイメージですが、水洗トイレの場合、通常8~18リットルの水が一回の利用で必要となります。
安全を考えると、10リットル以上の水が常時確保できないのであれば、水洗トイレは使うべきではありません。
中途半端な水量だと、使用したトイレットペーパーが詰まって汚水があふれ出してしまうからです。水に溶けやすく作られているトイレットペーパーではありますが、それも水量が充分にある場合のこと。そうでなければ、溶け残ったものが固まってしまって汚水管を詰まらせてしまう原因になります。
もしも水洗式のトイレであれば、タンク式でなんらかの方法でタンクを常に満水にできる条件が整っているのであれば、1階部分のトイレは使用可としてよいと思います。
地震に限っては、2階以上は使用不可。これは汚水管が破損して漏水していた場合には階下が汚物まみれになってしまうからです。汚水管の点検が終わるまでは、2階以上のトイレは使わないようにしてください。
最近は節水型と言うことでタンクレスの水洗トイレも増えていますが、タンクレスの場合には便器に直接水を入れるとうまく流れないものもあるようですので、あらかじめ便器メーカーにバケツで水を流した場合にきちんと排水ができるかどうかを確認しておいてください。
ではトイレが使えない場合にはどうするかですが、トイレを閉鎖して、別に簡易トイレを設営するしかありません。
これは、使ってはいけないトイレの中に簡易トイレを設置すると、通常通りの使い方をしてしまった場合に汚物が溢れて仮設トイレごと駄目になってしまうことが起こり得るためです。
簡易トイレキットを複数準備し、設営場所を確保し、取り扱いにも習熟しておくことをお勧めします。
飲食は我慢できても、人間の生理として、排泄は絶対に止めることができません。
衛生環境を少しでも維持するため、まず避難所のトイレ問題からしっかりと検討し、備えておくことをお勧めします。
ダニに気をつけよう
暖かくなって人の活動が活発になってくると、よく出会うようになってくるのがダニです。
出会うだけならいいのですが、ダニ類は病気を媒介することが多い生物ですので、かまれないように注意する必要があります。
マダニでは「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」「日本紅斑熱」「ライム病」、同じダニの仲間のツツガムシが媒介するツツガムシ病なども有名なところです。
イエダニではせいぜい咬まれてかゆいくらいですが、マダニやツツガムシに咬まれると、かゆい上に取れない、その上病気にかかる可能性がありますので、できるだけ咬まれないように注意する必要があります。
1.マダニの種類
マダニと言っても種類はいろいろありますが、中国地方では主にフタトゲチマダニやタネガタマダニなどが見られるようです。
また、ツツガムシもいます。
大きさは3~8ミリと大きく、目で確認できます。また、硬い外皮に覆われているのも特徴です。
2.咬まれないようにするためにはどうするか
ダニは森林や草むら、藪、畑などに生息しています。そのため、そういった場所に立ち入るときには肌の露出をなるべく防ぐように長袖長ズボン、長靴や帽子、手袋などを着用するようにします。
ダニに潜り込まれないように服の裾は露出しないようにしておきます。
また、ダニがとりついたことがすぐにわかるように、着用する服はなるべく明るい色にし、ダニがつきにくい化学繊維素材でできているものがよいでしょう。
それらを装備した上で、マダニに効果のある防虫スプレーをしっかりと吹いておくことが必要です。
ディートやイカリジンといったマダニが忌避するような成分が入っているものを使うようにし、使うときには必ず使用上の注意を読んで正しく使うようにしてください。
帰宅したらすぐに服を着替え、脱いだ服は直射日光を当てるか乾燥機で乾燥処理するようにします。
ダニは乾燥に弱いので、乾かすことで万が一連れて帰ってしまった場合でも確実に殺すことができます。
また、着替えと併せてお風呂に入って身体にマダニがついていないかをチェックして下さい。
3.咬まれていたらどうするか
不幸にしてマダニがかみついているのを発見したら、なるべく早くマダニを撤去する必要があります。
マダニをそのまま放っておくと、マダニが取れなくなってしまうからです
ただ、マダニは構造上刺し口が皮膚の中にしっかりと入っているため、無理して取ろうとすると刺し口だけが皮膚内に残って取り除くのが非常にやっかいなことになる場合があります。
皮膚科に行って取ってもらうのが一番確実ではありますが、休日や夜間などで病院にかかれない場合もあります。
そんなときにはかみついているマダニの上からたっぷりのワセリンを塗ってやりましょう。
塗ってから30分もたつと、マダニが簡単に取れるようになります。
ワセリンだけでなく、油脂性のクリームやバターなどでも同様にマダニを取れやすくする効果が期待できます。
4.病気になるとどうなる?
ダニに咬まれたあと、そのダニが病原体を持っていた場合に発症します。
山に入ったことやダニに咬まれたことを医者に説明して、早めの診察と治療にとりかかってもらわないと、危険になる病気が多いので注意が必要です。
1)重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
SFTSでは、咬まれてから6~14日程度で発熱や食欲低下、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など消化器官系の症状がでます。
重症になると死ぬこともありますので、発症したら早めの処置が必要となります。
2)日本紅斑熱
日本紅斑熱は咬まれてから2~8日程度で発熱、発疹、頭痛、倦怠感などの症状が現れます。
ツツガムシ病によく似ている症状のため、確定がなかなか難しいようですが、早めの治療は必須です。
3)ライム病
ライム病は咬まれてから数日~数週間で発症します。初期には的のような紅斑が現れることが多く、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、倦怠感など、インフルエンザにかかったかのような症状が出ます。
一月もすると皮膚や神経、眼の症状や不整脈、関節炎などのさまざまな症状が現れます。
最終的には慢性関節炎や皮膚炎、慢性脳脊髄炎などが発症します。
4)ツツガムシ病
ツツガムシ病では、咬まれてから10~14日程度で悪寒をともなう高熱が出ます。頭痛、筋肉痛、全身倦怠感なども出ます。
発症2~3日後には全身に紅斑や紫斑がでます。
放置しておくと、脳炎や肺炎、心不全などで死亡する事例もありますので、早めの処置が必須です。
マダニは野生鳥獣、特に鹿が多い地域では非常にたくさん発生しています。
荒廃した農地や野生鳥獣の増加によって、ダニが好む環境が作られ、数が増えていると考えることができます。
ダニに咬まれないようにすることで、ダニが持っている病気にもかからずに済みます。
マダニの生息域に入る前には、しっかりとした防除する体制を取るようにしてくださいね。
お水を持って歩こう
災害が発生して断水が起きると、自動販売機やコンビニなどの店頭から真っ先に消えるのがお水です。
特に都会地ではその傾向が強く、公共交通機関が止まったときなどは徒歩で帰宅する人達がこぞって買い込んで遅れると水分が何も手に入らなくなります。
断水していなければ水道で水を汲むことができるのですが、水を汲むための容器がないとどうにもなりません。
そして、水のペットボトル以上に水を汲んで運べる容器が手に入る確率は低いです。
そこで、普段持ち歩くカバンにペットボトルや水筒を入れてお水を持って歩くようにしてはどうでしょうか。
最近は持ち歩くのにも便利な少量のペットボトルやステンレスボトルも出ていて、これならカバンに入っていてもさほど邪魔にならないと思います。
ステンレスボトルで水を持ち歩くのならば、普段使いの水筒にすれば、中の水が痛んだりすることなくいざというときの備えもできます。
殆ど中身がなくなったときに被災したのであれば、身の安全の確保をしたら、すぐに水栓で水を汲めば水は確保できます。電気やガスよりも、水道が止まるのはずっと後になりますから、容器さえあれば水の確保はそんなに難しくないと思います。
水は飲むこと以外にも、傷口の洗浄やタオルなどを濡らして身体を冷やすなど、さまざまな目的に使うことができ、いざというときに確実にあなたの命を守ってくれますから、特に外回りの多い人や非常時に長距離を歩かなければいけないような人は、是非水を持ち歩く習慣を持つといいと思います。
いざというときに備えて、小さな安心感を準備しておいてくださいね。
防災グッズと代用品
防災グッズは防災用のためにだけ準備すると考えると場所をとってしまう厄介者になってしまいます。
ローリングストックという言葉もありますが、必要なものを少し多めに準備することである程度以上はものを増やさず、生活の質も下げずにすむような災害への備えができると思っています。
ここでよく聞かれるのが代用品の話ですが、代用品はあくまでも代用品でしかなく、そのために作られた道具と比べるといろいろな意味で不便を生じることになるので注意してください。
よくあるのが、おむつの作り方。
おむつがないときにビニール袋とタオルで作るよう書かれているものが多いのですが、避難生活を過ごすときにその代用品で凌ぐとすると、いったいどれ位の材料が必要になるでしょうか。
タオルは吸水力はそこまで大きくありませんし、ビニール袋は蒸れて子どもの肌がかぶれたりします。汚れたタオルはそのままにしておくと汚臭が出てきますので、その処理についても対応が必要となります。
本当に緊急時何も無い状態ならともかく、手間や発生する問題を考えると、紙おむつを1週間分くらい余計にストックしておいた方が役に立ちます。
布おむつ派の人も、災害時には布を洗うことが難しい場合もよくありますから、数日程度凌げるだけの紙おむつを準備しておくようにしておきましょう。
そして、心配だからといって大量にストックするのも御法度です。
おむつが必要な年齢の子どもは、あっという間に大きくなりますので使える期間は短いです。そのため、目安としては1週間または普段使っているおむつを一袋多く準備しておくといいと思います。
サイズアウトしたおむつは、例えば子どもの通っている保育園や子育て支援センターなどで使ってもらえないか聞いてみて下さい。割と喜んでもらってもらえることが多いです。
そして、引き取り手がなかったからといって捨てる必要はありません。給水部分を何枚か重ねると、大人用の非常用トイレを作ることができます。これも代用品の一つですね。代用品のことは知っておいた方が絶対にいいですし、作り方もマスターしておいたほうがいいです。
でも、最初から代用品で対応することは考えず、可能な限り普段使っているもので対応できる方法を考えておいてください。
ちなみに、代用品としてよく出てくるビニール袋は、最近では地球温暖化やエコ問題から災害時に確実に手に入るとは限らない状況になっていますから、必要があれば非常用持ち出し袋に備えておくことをお勧めします。
手洗い、できていますか?
新型コロナウイルス感染症がなかなか終息しません。終息しないどころか何度目かの蔓延が起きているようです。
アルコール消毒やマスクの着用、不要不急の外出自粛を続けていても感染が拡大していることには正直驚きを感じています。
ところで、あなたは石けんでの手洗いはしっかりとできていますか。
一時期アルコール消毒液が不足したときに、石けんによる手洗いが推奨された時期があり、そのおかげでか、去年は普段流行る感染症各種が殆ど見受けられなかったようです。今年に入ってから、「コロナ疲れ」といわれるような状況になって、さまざまな感染症が小さい集団ですが流行始めているようです。
アルコール消毒はあくまでも簡易的なもので、基本的には流水による石けん洗浄が衛生を確保するための要件なのですが、アルコール消毒液が潤沢に手に入るようになった結果、流水による石けん洗浄を忘れているのではないかという気がするのです。
被災地で感染症が流行するのは、充分な水が手に入らないことに起因する衛生環境の悪化が原因です。いくらアルコール消毒液があっても、いつもしっかりとした消毒ができるとは限りません。
石けんでウイルスを浮かせて流水で流す。災害対策から見た衛生管理ではそれが一番確実で効果的な感染症対策です。
マスク着用やアルコール消毒、不要不急の外出自粛に加えて流水を使った石けん洗浄を忘れないようにしたいですね。
参考までに、しっかりとした手洗いの方法について紹介されている動画の一つをご紹介しておきます。手洗い方法で悩んだら、一度確認してみてください。
避難所と段ボールベッド
毎回書いていることではありますが、避難所や避難場所(以下「避難場所」とします。)は避難者をおもてなしするための施設ではありません。
単なる「場所貸し」ですので、自分が必要と考えるものは自分で準備して持っていく必要があります。
その中で見落としがちなのが就寝設備。毛布や布団、マットやシート、枕や耳栓など、寝るために必要なさまざまな道具は、避難場所で一夜を過ごすのには絶対に必要なアイテムです。
避難できた避難場所で獲得したスペースが土足禁止できれいに掃除されている場所であればそこまで気にしなくてもいいのですが、一般的にはゴミやチリ、埃といったものが床に舞っていることが多いものです。
これはいくら掃除をしても避難者が土足でどたばたすれば必然的に撒き散らすもので仕方ないと言えば仕方が無いのですが、こういったものが舞ったり散ったりしている場所に直接寝ると、鼻や口から吸い込むことになります。
ゴミやチリ、埃などだけでなく、それらについている雑菌や病原体まで呼吸器に吸い込んでしまうと、肺炎を始めとするさまざまな病気をもらってしまいます。
対策は、完全土足禁止にした上で、床に直接寝ないこと。ほんの少しでもいいので床から高さを上げて寝ることです。
そのために必要とされているのが空気マットや段ボールベッドで、寝るのを楽にすることだけが目的ではないことを知っておいてください。
過去、とある避難所で高齢者の方用に届いた段ボールベッドに何故かボランティアスタッフが寝ているというようなことがありました。
高齢者の方が床で寝起きしていてベッドは怖いといったことからこうなってしまったようですが、その避難所の床は土足禁止ではなく、床には細かいほこりが舞っているような状態でしたので、呼吸器疾患を招く可能性がありました。そこで高齢者の方とボランティアスタッフの両方に説明して高齢者の方にそこで眠ってもらうようにしました。
避難する人だけでなく、避難所を運営するスタッフも、なぜ段ボールベッドが必要とされているのかについてしっかり理解していただければなと思います。