棚にはかごwith地震対策ジェル

 地震対策はどんな人に聞いてもやるべきだという答えが返ってくるのではないかと思います。地震が起きるとさまざまなものが転倒したり落下してきたりして危険なので、できればしっかりとした対策を取っておきたいものです。
 とはいえ、いきなり家の耐震補強をやれといっても難しい人もいると思いますので、とりあえず手近な地震対策から手をつけてみませんか。
 今回は、棚からものが落ちにくくなる簡単な作業をやってみたいと思います。

 写真の棚は、我が家にあるものです。棚の上にはいろいろなものが置いてあるのですが、写真のとおり滑り止めも落下防止対策も全然していません。災害対策を皆様に発信しているのにもかかわらず、自分の家ではできていないというのもあんまりなので、今回はここを耐震化したいと思います。

 といっても、道具は二つだけ。一つは棚の大きさにあったかご。もう一つは、貼り付いて揺れを制御するタイプの地震対策ジェルです。どちらも百円均一ショップで調達してきました。

 地震対策ジェルの中身はこんな感じ。一応25kgまでは対応しているとのことですので、このかごを支えるくらいなら十分だと思います。

 かごの底に貼り付けます。かごの下には高台があるものもありますので、ジェルの高さを考えて準備します。高台の中にジェルが収まってしっかり固定されていると、見た目がかなり美しくなります。

 ジェルをかごに貼り付けて、棚に置いてみました。最初はくっつきかたが微妙ですが、すぐにしっかりとくっついて仕事をしてくれます。

 で、棚にあったものをかごに収めてみます。見た目もすっきりして、少々の揺れではものが落ちてこない状態を確保できたと思います。で、ここまでやってきて、温度湿度計の固定のことを全く考えていなかったことに気づいてしまいました。この温度湿度計、固定台の中は空洞になっているのでジェルでぺたりというわけにいかない代物。結局これの固定は後日また考えることにしました。
 地震対策では「目の高さよりも高い場所にものを置かないこと」が基本です。ただ実際のところそうも言っていられませんので、直接貼れるものは地震対策ジェルを貼り付けて、直接貼れないものは貼れるものに収めてなるべく落下してこないようにしておきましょう。
 使い勝手をあまり変化させずにできる地震対策。気になるところにやってみてください。

自分ができる地震時の安全な姿勢を決めておく

 地震が起きたとき、まず最初に周囲の安全を確認してからダンゴムシのポーズを取る、というのが最近の耐震姿勢のはやりのようです。
 ただ、何らかの事情でダンゴムシのポーズがとれなかったり、周囲の安全確認に時間がかかったりする人がいることも事実ですので、自分がすぐにとれるできるだけ安全な姿勢というのを確認しておきましょう。例えば高齢者の方などは素早い行動を取るのが困難な人も多いですから、安全確認しているうちに揺れで転んで怪我をしてしまうかもしれません。それを防ぐためには、普段歩くコースに危険なものがないかを意識しておくことです。
 それから、転倒しないためには重心を下げる必要があります。人間の身体は構造上異常に頭が重たくなっていますので、なるべく低い姿勢を取ることが大切です。しゃがんだり、座ったりすると揺れに対して転んでしまうリスクはかなり下がります。階段では、必ずてすりをつかんで移動し、揺れを感じたら手すりをつかんだまましゃがむこと。そうすれば何もせずに立ったままよりもかなり安全になります。
身体が揺れを感じたらすぐに低い姿勢をとること。もし地震でなかったとしても、転倒する危険は防げます。
 地震そのもので死ぬことは殆どありません。揺れによる転倒や倒壊、崩落などに巻き込まれて死ぬのですから、その原因をなくせばいいのです。
 普段からの生活スペースの片付けや移動経路にものを置かないことなどしなければいけないことはたくさんありますが、ちょっとした意識の変化で生存確率を変えることはできます。あなたにあった地震時の安全な姿勢を見つけ、その姿勢が無意識にでも取ることができるように、見つけて練習しておいてください。

まずは安全確保から

 地震にしても、水害にしても、津波や台風にしても、まずは自分の安全を確保するところから始まります。いくら生き残った後の避難訓練や復旧手順の確認をしても、災害時に死んでしまっては何の役にも立ちません。でも、どのように安全確保すると生き残る確率が上がるのかについては、案外とまじめには考えられていないものです。
 例えば、学校や施設では、生徒や入居者の安全確保についてはうるさいくらいに言いますが、肝心の教員や職員は安全確保が非常におざなりだと感じています。普段指導する側やお世話する側なので、そうなってしまうのは仕方が無いことなのかもしれませんが、正直なところうるさく指導する人ほど自分の安全対策はないがしろにしているなと思います。どのような人であれ、災害が起きたときにはその災害が特定の人だけ避けてくれるわけではありませんから、他人に指導しながら自身も安全確保をするための行動を取る必要があります。
 さまざまな訓練を見てきていますが、指導するときには格好の指導はしますが、なぜその行動を取らなければいけないのかという説明は殆どされていません。
 防災訓練での前提となる「安全確保」について、当たり前だとは思わずにきちんと対象者に説明すること。そして言っている本人も自分の安全確保はきちんと意識し、行動すること。
 まずは生き残る確率を上げるためにどのように安全確保したらいいのかについてしっかりと意識し、確認し、自分の中や周囲の人と、しっかりと共有して行動するようにしてくださいね。

土砂災害ってなんだろう?

NHKニュースのサイトから抜粋

 先日、神奈川県逗子市で土砂災害警戒区域に指定されていた斜面が突然崩壊して一人の方が亡くなったというNHKニュースを見ました。(記事リンク先はNHKニュースのページです)
 亡くなった方のご冥福をお祈りいたします。
 ところで、今回の事故でいろいろなニュースを見ていると、「土砂災害警戒区域」と呼んでいたり「イエローゾーン」と呼んでいたりとまちまちで、知らない人が聞くと内容がさっぱり分からない記事になっているものもありました。
今日は土砂災害について簡単に考えてみたいと思います。

1.土砂災害の種類

 土砂災害は大きく分けると「崖崩れ(急傾斜地崩壊)」「土石流」「地すべり」の3つに区分されます。

1)崖崩れ(急傾斜地崩壊)

大田市ホームページから抜粋

何らかの理由によって急激に斜面が崩れ落ちる現象。

2)土石流

大田市のホームページより抜粋

大雨など急激な水量の増加によって山や川の石や土砂が水と一緒になって激しく流れ下る現象。

3)地すべり

大田市のホームページから抜粋

表土の地下の粘土層の間に水が入り、斜面が滑り出す現象をそれぞれ指します。

2.土砂災害警戒区域とは

 土砂災害警戒区域とは、土砂災害防止法により土砂災害が起きる恐れのある場所を指定したものです。平成11年6月に広島で発生した豪雨災害で広島市内の山沿いであちこちが崩れて31名の方が亡くなった事故をきっかけに、危険な場所をきちんと住民に知らせて避難の目安にしてもらおうと設定がされているものです。
 「イエローゾーン」と呼ばれる土砂災害警戒区域と、「レッドゾーン」と呼ばれる土砂災害特別警戒区域があり、「イエローゾーン」は土砂災害の恐れがある区域、「レッドゾーン」は土砂災害の恐れがあり、土砂災害が発生した場合には建築物に損壊が生じて住民等の生命または身体に著しい危害が生じるおそれのある地域として、さまざまな制限がかけられています。
指定される諸条件や規制の内容など、詳しくは国土交通省の土砂災害防止法を簡単に説明しているPDFファイルをリンクしておきますのでご確認ください。

 この土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域は都道府県の砂防事業を管轄している課のサイト、そして市町村が作成しているハザードマップに必ず記載がありますから、該当部分を必ず確認しておいてください。
 この区域にお住まいの方は、大雨時には他の場所よりも早めに避難行動を開始する必要があります。また、避難所までの避難経路にこういった場所が含まれている場合には、同様になるべく早めに避難してしまうことをお勧めします。
 今回の神奈川県逗子市のケースを見ても思いますが、指定されている区域のうち、崖崩れについてはいつどんなタイミングで起きてもおかしくありません。
 雨だけでなく、地震などの揺れでも簡単に崩壊しますし、どうかすると大型車が通行するときの振動でさえきっかけになる可能性もあります。天気がよくても気をつけて通行するようにしましょう。
 また、普段と異なるような兆候を見たり感じたりするときには、念のために避難しておくことをお勧めします。何もなければ、何もなかったねと言う笑い話で済みますので、面倒くさがらずに自分の身を守るようにしてください。

火のおこし方を知っていますか

  地震や水害が起きたとき、それがもし冬場ならば何らかの方法で暖を取る必要があります。特にライフラインが使えなくなっていたり、着の身着のままで逃げ出したりしている場合には、焚き火のお世話になることも多くなります。
 ところで、あなたは火をつける方法をいくつくらい知っていますか。最近はたばこを吸う人もめっきり減って、ライターやマッチを持っている人も少なくなりました。あなたがライターやマッチを持っていなかったとしたら、焚き火をつけるための種火をどうやって起こすか、その方法を知っておく必要があります。

虫眼鏡は集光率と燃えるものにより火がつかないこともある。

 例えば、虫眼鏡やペットボトルを使って光を集約させて種火を作る方法、乾電池やアルミを上手に使って種火を作る方法、はたまた木同士を擦り合わせて摩擦による熱で種火を作る方法、その方法はいろいろありますが、いずれもいきなりやろうとしてもすぐにはできないやり方です。なかなか普段焚き火ができる場所はありませんが、種火を作ることだったらさほど難しくないと思いますので、時間のあるときにやってみて手数を増やしておくといざというときに役に立ちます。
 生き残るために暖を取ることはかなり重要ですから、安全に火をおこせるように練習しておくようにしてくださいね。

大切なものは階上で保管する

 思い出の写真や貴重品など、普段どこに置いていますか。地震や水害などに被災したとき、それらががれきの下になったり流されたり、泥水に浸かったりすると大切に保管していたものが単なるゴミになってしまったり、流出や汚染ですぐに使えなくなったりすることもあります。そういうことのないような場所に保管できていればいいのですが、実際のところなかなか難しいものです。
 もしもあなたが一戸建にお住まいであれば、そういったものはなるべく高いところにしまっておくことをお勧めします。
 二階建てのおうちであれば二階に、三階建てなら三階にと、できるだけ高い場所にしまっておくことで、地震による建物倒壊や水害による流出からある程度までは守ることが可能になります。また、土砂災害などにもある程度は有効ですので、崩れてきそうな斜面から最も遠い階上の部屋に置くようにします。
 これで万全とは言えませんが、自分の大切なものを守るためにできる簡単で効果的な手段の一つですので、よかったらやってみてください。

災害に対応する保険に入っていますか

 災害に備えた保険はいろいろとありますが、生活の中で一番身近なのは「火災保険」なのではないでしょうか。
 名前だけ聞くと家屋の火災だけの保険に聞こえますが、内容は地震や風水害、落雷といった自然災害で被災したときに発生する損害もカバーができるようになっています。最近首都直下型地震や南海・東南海地震などで目立つようになってきた地震保険は、この火災保険に付帯してかけられるようになっているもので、実は地震保険単独ではかけることができないことに注意してください。
 さて、この火災保険、内容はピンキリで補償の内容によっては火事以外では支払いがされないものから、地震や風水害、破損や盗難までカバーのできる手厚い物までさまざまで、もちろんお値段もさまざまになっています。何にでも対応できる保険は当然高くなりますから、保険をかけるにあたってはハザードマップなどから家のある場所のリスクを確認し、そのリスクに対応した保険を準備しておけばよいと思います。
 住宅の再建には多額のお金が必要であり、公的な被災者支援制度ではとても再建できる金額にはなりません。ですから、被災後の自分の生活再建をイメージし、自分の復旧に必要な保険をかけておくことは、自分の生活を保障する基本となります。
 火災保険をかけている方は、自分の保険がどのような災害に対応しているのかいないのかについてしっかりと確認し、いざというときにそれが使えるのかどうかをチェックしておいてください。
 借家やアパートにお住まいの方は、家財の補償がどうなっているのかをご確認ください。ものがないようでも、いざ復旧するとなると思わぬ金額がかかるものです。保険をかけるのがもったいないと考えるなら、その分を積み立てて自分の生活再建が確実にできるようにしておきましょう。
 大規模災害では、住宅の再建の可否がその後の生活に大きな影響を与えています。家屋の耐震強化とともに、家が使えなくなった場合に生活の拠点をどう再建するのかについて、保険の見直しのときでいいので検討してみてはいかがでしょうか。

避難所で子どもとどう遊ぶか

 突然やってくる地震を除けば、殆どの災害は事前に避難が可能なものばかりです。あらかじめ危険箇所の分析ができていれば、自分のところが避難しなければいけない災害に対して早い段階で安全な場所への移動を完了することができるのですが、その安全な場所が自宅ではない場合、そして子ども達が一緒に避難している場合には、その子ども達が退屈しないように少し知恵を絞る必要があります。
 普段から彼らが遊んでいるものを持参することと、電源が不要な遊びを一緒に楽しめるようにしておくこと。
 例えば、ネットゲームやアニメ、インターネットといった電源や通信環境が必要な遊びでは、災害が発生して電源や通信環境を失ったしまうと遊ぶことができなくなります。そこで電源不要な遊びをできるように準備し、また、ある程度は一緒に遊んで慣れ親しんでおくことも必要です。
 例えば、折り紙やあやとり、落書き帳や筆記具、絵本、カードゲーム、ボードゲームなどを持ち出しセットに準備しておき、一緒に遊ぶことで、子どもだけでなく大人も気が紛れます。
子どもが大騒ぎしたり暴れたり泣いたりするのは退屈ですることがないせいの場合が多いので、彼らを退屈させないように準備をしておくのです。
 もしもそういったものが準備できなかった場合には、新聞紙やその辺にあるものでどうやって遊ぶかを子どもと一緒に考えて、周囲に迷惑がかからない程度に遊ぶのもよいと思います。
 避難所の運営が始まれば、彼らも立派な戦力です。仕事をどんどん割り振って、退屈にさせないようにしましょう。

おうちの耐震補強を考える

 耐震補強の目安とされているのは、昭和56年以前に建築された木造建物です。これは明らかに揺れに弱い構造のものが多いため、住み続けるのであれば耐震診断を受けておく必要があります。
 ところで、それ以降の建物であっても耐震基準を満たしていない建物がかなりあるようです。震度6程度であれば完全に倒壊することはないとのことですが、念のため耐震診断をしてもらって、耐震補強がいるかどうか判断した方が良さそうです。
 石西地方には筒賀断層と弥栄断層が活断層として確認されていますが、これが動くと石西地方全域がその影響を受けることになり、想定されている震度は5~6ということですので、耐震補強をしておいた方がよさそうです。
 参考までに、耐震補強した場合としない場合の実物の家屋を使った実験がされていますので、興味のある方はご覧ください。

 もっとも、家屋の耐震化にはある程度の予算が必要となります。そのため、最低限自分が長時間過ごす寝室や居間だけでもやっておくという限定耐震補強も考えの一つとして持っておいていいと思います。
 それも難しい場合には、建物の倒壊から身を守る簡易シェルターが発売されていますので、それを利用するのも一つの方法です。
 どうしても予算をかけたくない場合には、2階建てであれば2階で寝るという方法もあります。これは倒壊は1階を中心にして崩れるため、2階の方が生存確率が高いということなのですが、生き残れるかどうかは運次第と行ったところです。
 いずれにしても、耐震補強は地震対策の基本的なことの一つです。面倒がらずに、まずは耐震診断から始めましょう。耐震診断ができる建築士については、お住まいの地域の市町役場の建築課で教えてもらえます。

危険なときほど「STOP」で考える

 どんなに準備していても予想していなかったこと、いわゆる「想定外」というのは必ず起きるものです。そして想定外なことに出くわしてしまうと、「どうしよう、なんとかしないと」と慌ててしまいますが、そのまま場当たり的に対処を始めると、時間が経つごとに悪化していくことが普通です。
 慌てている時こそ、一度「STOP」。大きく深呼吸して、手順に従って新しい行動計画を作り上げなくてはいけません。
 ここで使っている「STOP」というのは、危機管理の基本的な行動基準の頭文字を取ったもので、予想していなかった事態に遭遇したときの対処手順の順番でもあります。

S・・・「Stop」。とりあえず現在の行動を一度中止します。
T・・・「Think」。現在の状況について一度整理します。
O・・・「Observe」。何が起きていて、今どんな状況なのかを確認します
P・・・「Plan」。その事態で起きた問題への対処行動を実行します

 災害時には状況はめまぐるしく動くものです。あらかじめ想定した事態を超えてしまったときには、それまでの行動計画を止めて現状を確認し、助かるための行動計画をその場で作り上げる必要があります。
 自分の命が助かるためにはどのように行動すればいいのか。定めた行動計画にひたすら従うのではなく、自分が助かるために必要な行動について常に状況を確認しながら修正を加えていくことで、生き残る確率は上がります。
 危険なときこそ、一度「STOP」で考えること。
 悠長に見えるかもしれませんが、これが助かるための最短コースなのではないでしょうか。