ヘルプマーク・ヘルプカードをご存じですか

 見た目では判断がつかない身体の内部の障害や難病の人、妊娠初期の人など、援助や配慮が必要だが見た目ではわからない人が身につけ、周囲に援助や配慮が必要であることを知らせるためのものです。
 東京都が考案して全国に普及されてきているそうですが、残念ながら筆者自身はまだ本物を見たことがありません。ただ、調べてみると島根県でも障がい福祉課がこのヘルプマークやヘルプカードの普及を行っているようです。
 ヘルプマークは、赤地に白い字で十字マークとハートマークが掲載されています。そして裏面には、その人がどういったことで援助や配慮が必要なのかという記載がされています。
 ヘルプカードも同様で、このカードの中に支援が必要な内容が書かれていますので、もし障がいのある人からこれらのものが提示されたら、記載されている内容に沿って支援をして欲しいとのこと。
 また、これらが併用される場合もあるようですので、もし提示されたらマークの裏側やヘルプカードの有無を確認をしてください。
 災害時には情報がうまく伝わらない・伝えられないことが数多く発生しますので、こういったことを知っておいて、いざというときにその人を助けることができるといいなと思います。
 内容など詳しいことについては、島根県障がい福祉課のウェブサイトをご確認ください。

ヘルプマーク・ヘルプカードについて」(島根県障がい福祉課のウェブサイトへ移動します)

被災地域での自己防衛

 いやな話になりますが、被災した地域ではさまざまな犯罪が発生します。
 暴力や盗難、性犯罪に至るまで、びっくりするくらいさまざまな事件が起こります。そして、警察力は災害対応で低下しますので、犯罪抑止も難しい状態になります。
 これらから完全に身を守る方法で一番手っ取り早いのは、普段の生活をミニマリストにすることと、被災後は可能な限り早く被災地から待避してしまうことで、被災地にいなければ発災後に起きるさまざまな犯罪から、自身の身と財産を守ることはできます。
 でも、被災地から避難できない人もいるでしょう。そういう場合には、まずは一人にならないことが重要です。
 普段からあいさつを交わして顔を売っておくことで、被災後に不審者と思われずに済みますし、声をかけることで孤立を防ぐこともできます。
 犯罪は対象が無人、もしくは一人であるところを狙って起きることが殆どです。集団化しておくことで、犯罪の発生を未然に防ぐことが可能になります。
 また、可能であれば自治会単位で地域パトロールもすることです。被災地域には、復旧支援の人よりも遙かに早く火事場泥棒がやってきます。それらに活躍させないためには、できる範囲で地域を巡回することです
 犯罪者は人の目をとても嫌がります。複数の目が地域やお互いを見ていることがわかれば、犯罪に遭遇する確率はきわめて低くなります。
 こう書いてくると分かる人も多いと思いますが、被災地域での犯罪発生率の抑制は、平時にどれだけ地域コミュニティが円滑に保たれていたのかと言うことと反比例します。地域コミュニティがしっかりしているところは犯罪発生確率が下がりますし、そうでないところはその逆となります。
 最後に暴力と性犯罪のお話をしておきます。
 防災関係の自己防衛の話では、女性に対しては「被災地では地味で目立たない格好をしろ」「女性を意識させるな」という話をされます。それも大切なことだとは思いますが、それ以上に大切なことは、絶対に一人にならないことです。
 普通、周囲の目があると考えると、犯罪行為を企んでいる人間から見ると非常にやりにくいものです。そのため、さまざまな手を使って狙った相手が一人になるチャンスを伺っています。
 どこへ行くのにも絶対に一人にならないようにすること。できれば同性で群れ、夜中にトイレに行くときでも絶対に複数で行動してすること。これを常に意識して行動してください。そして、女性用トイレや更衣室、授乳室を可能な限り早く整備し、利用する場合には必ず見張りを立てること。顔見知りでも関係ありません。近づけない、見せないようにすることが重要なのです。
 どんな人でも被害者にも加害者にもなり得るのが災害後の環境ですので、特に女性や子どもについては、必ず複数で行動し、昼夜問わず、複数の人の目が常にある状態にしておくことが大切だと思います。

デマと真実

商品の無くなった棚は不安感をあおる。

 何か大規模な災害が起きると「○○が足りなくなる」という情報が飛び交います。
 今年の上半期に新型コロナウイルスが流行したときにも、トイレットペーパーが無くなるというデマが流れて、店頭から品物が消えました。
 ここまで読んで矛盾を感じた方がいらっしゃるかもしれませんが、トイレットペーパーが無くなったことが事実なのではなく、トイレットペーパーが無くなるという話が店頭からトイレットペーパーをなくしてしまったということです。
 新型コロナウイルスの流行とトイレットペーパーとの間には何の関係もないのですが、流れを追うとこんな感じになります。

1.トイレットペーパーがなくなるという噂が出る。
2.噂を聞くと、心理的にあるうちに買っておかないと買えなくなるという不安感が起こる。
3.お店でトイレットペーパーを見かけると、噂を思い出し、あるうちに買っておこうと考えて、すぐには必要がないのにたくさん買い込んでしまう。
4.買い込む人が多いと、いつも売れる量以上に売れてしまうので、お店の在庫がなくなる。
5.いつも以上の生産能力を要求された工場ではトイレットペーパーの生産が間に合わなくなる。
6.店頭から在庫が消える。

 ここで気をつけたいのは、大量に買い占めたからと言って使う量が爆発的に増えるわけではないと言うことです。
 この後どうなるかというと、こんな感じになります。

7.店頭に無くなったためにトイレットペーパーを増産しろという世間の圧力がかかる。
8.やむを得ずメーカーが増産する。
9.結果的に消費量は変わっていないので、ある程度充足すると売れなくなる。
10.メーカーやお店がトイレットペーパーが売れなくて困ることになる。

 今回のコロナウイルスの流行では、製紙メーカーが生産はしており流通も動いているため買い占めなくても大丈夫というアナウンスを何度もしていたのですが、マスメディア的にはトイレットペーパーが無くなった絵の方がインパクトがありますので、そういった放送を繰り返し、それを見た人達が慌てて買い占めに走り、という悪循環の輪が広がりました。
 冷静に考えれば新型コロナウイルスが流行したからといってトイレットペーパーがなくなる理由にはならないのですが、店頭から在庫が無くなったことが心理的に不安を抱えている人達の後押しをすることになりました。
 消毒用アルコールでも同じようなことが起こり、日常生活で消毒用アルコールが必要な人達を困らせることになりました。ちょっと不思議だったのは、自分用の消毒ボトルを持って歩いている人が店頭や施設の入り口でそこに備え付けてある消毒液を使っていたことです。他所の消毒液を使う気なら、消毒液を自宅に大量に買い占めた意味はなんだったのでしょうか。普通の人であれば、石けん+流水で手洗いをしっかりと行えば大丈夫ということが理解できていれば、こんなおかしなことにはならなかったでしょう。
 マスクの場合は少し事情が異なっていて、生産国である中国が国内を優先したために入荷がなくなり、多くの人が買い占めに走ってしまいました。マスク不足を解消すると称して、アベノマスクなどと揶揄された政府公認で配布する布マスクが出てきたりしましたが、現在は生産が追いつき、以前よりも安くなっているものも出てきています。アベノマスクも、結果だけ見ると大金を使って役に立たないマスクが配られたという、ある意味ではデマに踊らされたような形になってしまいました。
 デマはどのような大規模災害でもついて回るものですが、それを見抜く力がないとデマが結果的に真実を生み出すことになってしまいます。
 マスメディアの偏向報道は今に始まったことではありませんが、SNSでも自分が見たい情報ばかりが整理されて集まってくるため、デマをデマと見抜けなくなっていることが増えてきています。
 まずは因果関係を考えること。そして、それが無くなるとしてどれくらいまでは耐えられるのか、また、必要とされる量は1日どれ位なのかなど、その物品に関する自分の消費情報をしっかりと整理しておくことです。そして、1週間なり10日なりの数量が確保できていればそれでよしと考えることです。どこまで買い占めればいいのかという終わりを決めていないと、消えない不安によりいつまでも買い占めを続けることになってしまいます。
 最後に、自分の信じようとしている情報とは真逆の情報を読んでみることです。
 情報には正の情報と負の情報の両方が存在しているはずですから、自分の思っていることと反対の主張を読むことである程度客観的に物事を見ることができるようになると思います。
 大規模災害ではさまざまな流言飛語が飛び交います。出所不明のデマもたくさん出てきます。それらの情報を鵜呑みにせず、いろんな角度から考えてから行動することを習慣にしたいものですね。

3年目に入りました。

 おかげさまで当研究所も研究所発足から3年目に入ることができました。これもさまざまな形で活動を支援していただいている皆様のおかげと感謝しております。引き続き、できる範囲で構いませんのでご支援をいただけると助かります。今後ともよろしくお願いいたします。
 当研究所が立ち上がってからも、全国的にはさまざまな大きな災害が起こり、そして現在は世界的に新型コロナウイルスの流行が続いています。
 狙ってこんな時期にこのようなものを立ち上げたわけではなかったのですが、気がつくと少しずつこういった防災をお手伝いする場所が必要な状況になってきているなと感じます。
 あまり大きなことはできない零細任意団体ではありますが、さまざまな場面で必要とされるお手伝いをできればと思っています。
 当研究所の最終的な目標は、それぞれが災害対策が当たり前にされている世の中になることですが、必要ではあるが緊急度が低いというのが防災ですので、なかなか多くの人にはこちらを向いてもらうことができません。
 でも、目標を目指して活動は続けて参りますので、引き続きお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

カセットボンベの取り扱いについて考える

 取り扱いが簡単で危険性も少ないことから、カセットボンベはいろいろなところで燃料源として使われています。
 ただ、ちょっと気をつけないといけないなと思うことがありますので、今回はそこに触れてみたいと思います。

1.メーカー推奨と異なるガスボンベを使う

 メーカー純正のカセットガスは、そうでないものに比べるとかなり割高になっている感じがしますので、値段の安いカセットボンベを見つけて中身が変わらないのであれば、そっちの方を使ってしまうことがよくあります。

カセットコンロの外箱に記載されている注意書き。他のガスコンロが使えないとは書いていない。

 カセットコンロに限らず、カセットボンベを使用する製品は特定のカセットボンベで製品試験を受け、販売許可を得ています。
 そのため、製品試験を受けていない組み合わせは基本的に想定されていないと考えてください。
 カセットボンベの規格自体は、現在はJIS規格で殆ど標準化されているためどのカセットボンベでも殆どの場合互換性があって使うことができるようにはなっていますが、もしも指定されているカセットボンベ以外のものを使った場合、仮に事故が起きてもメーカー保証は一切ないことを覚えておいてください。

2.カセットガスの対応温度

 カセットガスはガスを充填している構造上、温度の変化に注意をしておかないと火がつかなくなったり爆発を起こすことがあります。
 低い方では5~10度以下になるとガスが気化しなくなるために火がつかなくなります。カセットコンロの中にはボンベを温めるような構造を持っているものもありますが、低温対応になっている一部のものを除くと、低い温度では使えないと考えておいた方が無難です。
 また、温度が上がるとガスが膨張します。それなりの強度は計算されて作られてはいますが、ボンベの表面が高い温度にさらされると気化が進んでガスが膨張し、爆発してしまうことがあります。
 ガスボンベを夏の自動車の中や火のそばに置かないようにというのは、膨張したときに爆発する危険性があるからだということを知っておいてください。
 よくある事故の一つにはカセットコンロのガス収納部の上に鍋の底などの加熱部分が乗り、ボンベが爆発するというのがありますので、ガスボンベ単体だけでなく、使用中のガスボンベの加熱についても気をつけておく必要があります。

3.ガスボンベの処分

 ガスボンベは必ずガスを使い切ってから処分してください。
 中途半端に残ったままゴミに出すと、爆発事故が起こることがあります。
 中のガスについては、ボンベに穴を空けてガスを排出しておく必要がある自治体と、ボンベをそのままガス抜きせずに出すことになっている自治体の二つがあります。
 必ずお住まいの自治体のゴミの回収案内の中のガスボンベの取り扱いについて確認しておいてください。

 ガスボンベは非常に身近な存在ですので、多くの人が利用しています。
 でも、取り扱いを間違えると非常に危険なものでもありますので、何気なく使うのではなく、安全に使えるようにボンベやカセットボンベを使う機材に書かれている注意書きをしっかりと読んで使うようにしてくださいね。

地図を使いこなす力をつける

防災マップ作りの一コマ。地図作りは地味な作業になってしまうので、飽きてしまう子どもが多い。うまく乗せられていないのが当研究所の現在の課題。

 地図を使いこなす力といっても、別に方位磁針を持ってオリエンテーリングをやってくださいという話ではありません。
 防災では、まず最初に防災マップという地図を作るところから始めます。
 危険な場所、安全なところ、役に経つものなどを区分けして色づけし、どこをどのようにすれば安全が確保できるかという作業なのですが、この地図が出来上がったらそれで終わりというケースがとても多いです。
 当研究所でも年に1回防災マップ作りをしているのですが、やはり完成して終わりになっているのが現状です。
 本当はこの地図を使って危険な場所の危険度を下げ、安全な場所は安全であることを確保し、役にたつものはきちんと使い方をマスターしておくといった作業が必要となります。
 これが本来の地図を使いこなす力ではないかと思います。
 日本損害保険協会様が主催している「ぼうさい探検隊マップコンクール」の応募用紙では、実はこの部分もきちんと記載するようになっていて、実施してできた地図をどのように地域に落とすのか、応募する際に頭を悩ましている部分でもあります。
 防災マップは作成して終わるのではなく、それをいかに地域の安全に反映させていくかという作業が、地味ですが非常に重要な内容です。
 当研究所でも地図の作成と出来上がったものを地域にどうやって波及させていくのかというところで試行錯誤しているところですが、この作業を確実に行うことが地域の安全を守る上での大きな鍵になる気がしています。

災害時の履き物について考える

当研究所にもさまざまな履き物がある。

 災害発生時に移動するために何らかの履き物を用意しておくように推奨されていることはご存じだと思います。
 非常用持ち出し袋にも丈夫なスリッパが入っていますし、地震の時に備えて着替えや履き物を寝る場所の近くに備えておくといったこともされているのではないでしょうか。
 ただ、一概に履き物といってもいろいろと存在していますので、登山靴から折りたたみ式スリッパまで人によって準備しているものが様々なのが現状です。
 今回はこの履き物について考えてみたいと思います。

1.なぜ履き物を準備しておかないといけないのか

 屋外にいるときはともかく、屋内では多くの場合素足か靴下を履いているだけの状態だと思います。
 地震で建物が揺れた場合、大きい地震だと窓ガラスが割れたり、棚のものが散乱したり、天井が落ちたりして人が歩く場所にものが散乱してしまいます。
 そのとき、素足や靴下だけだと移動時に落下物によって足の裏を怪我してしまう危険性があります。
 また、水害などで水に浸かった場合には、水に浸かっている部分の底は見えないので、危険なものを踏んでしまう可能性があります。
 そして、どのような災害であれ外を歩いて避難しようとすると、今の日本人の多くは裸足のまま歩くことは困難だと思います。
 そのため、履き物を準備して足を守ることが必要になるのです。

2.どんな履き物なら安全か

 履き物に求められるのは
1)脱げないこと
2)何かあっても足に怪我をしないこと
3)安全に歩けること
ですから、それらの条件を満たすものであればいいということになります。
 スリッパだと、(1)を満たせないものが多いので、かかとつきスリッパなど固定できるような機能をもったものでないと困ると思います。
 こういうところでよく出てくる運動靴だと、紐やマジックテープをしっかり留めれば(1)は大丈夫ですが、(2)で釘などを踏み抜く危険性があるので、踏み抜き防止のインナーソールが入っている方が安心だと思います。
 長靴は(1)も(2)もそれなりに条件を満たしているのですが、非常に滑りやすいという特性を持っていますので、災害時に履いて避難する場合には歩き方に注意が必要です。
 (1)~(3)の条件を満たせる靴で一番いいのは登山靴でしょうが、はき慣れていないと歩きにくいという大きな欠点がありますので、登山する趣味のない人にはちょっとハードルが高い気がします。
 極論から書くと、かかとがついていて足首から下が露出しておらず、踏み抜き防止のインナーソールなどの対策が取られていて、滑りにくいこと、と条件を満たせれば何でもいいということになるので、結局お気に入りの履き物に手当をすればいいのではないかということになります。
 もちろん使い捨てのスリッパでもないよりは遙かにマシですから、何かを準備しておいてください。

3.どこに置くといいか

 最後に、置き場所について考えてみます。履き物が必要な理由を考えると、着替えと一緒で枕元に置くのが一番安心できますが、靴を部屋に持ち込むのは抵抗がある人もいると思います。
 枕元には着替えと使い捨てスリッパ、廊下に靴というのでもいいかもしれません。
 また、履き物を配置するときには、災害時に飛ぶ破片が履き物の中に入らないようにあらかじめ袋に入れて置いておくと安心だと思います。

 避難するにしろ、片付けをするにしろ、足を怪我すると素早い移動が困難になってしまいます。
 靴を履いて寝る必要はないと思いますが、いざというときにすぐに行動が開始できるように、身近に履き物を準備して置いてくださいね。

非常用持ち出し袋や備蓄品の意味

市販品の子ども用非常用持ち出し袋の中身。これだけでは足りないし、いらないものもあるかもしれません。

 非常用持ち出し袋や備蓄品はそれぞれきちんと準備しておきましょうという説明がされますが、非常用持ち出し袋や備蓄品をなぜ備えないといけないのかについて考えたことはありますか。
 それは避難や避難先、避難生活で自分が直面するであろう困り事を解決するためにあらかじめ準備しておくものだということです。
 お困り事解決袋と考えれば、中身に何を準備しなければいけないのかがわかってくると思います。
 そして、非常用持ち出し袋や備蓄品の中身はみんな違うということも理解できるのではないでしょうか。
 例えば、老眼鏡や入れ歯、杖などは必要とされる人以外には準備しなくてもいいものですし、スマートフォンや携帯電話を持たない人であれば充電池を持ち歩く必要はありません。
 井戸や貯水タンクがあって水の心配がいらなければ飲料水の優先度は下がりますし、野菜や米が確保できるのであれば備蓄食を準備する必要がないかもしれません。
 避難所に毛布や布団がふんだんにあるのであればエマージェンシーシートやエアマットは不要でしょうし、周囲に薪がふんだんにあるのであれば燃料はいらないかもしれません。
 もし災害が起きて逃げるとき、そして逃げた後、あなたが直面すると思われるさまざまな困り事を解決するためには何を用意しておいたほうがいいのかを考えて準備をしておくこと。
 それにより、初めて非常用持ち出し袋や備蓄品が意味を持ってくるということを知っておいて欲しいと思います。

とりあえず数値化してみる

 防災に限らず、物事を考えていくときには客観的な視点が必要となります。
 「客観的」という言葉を辞書で引いてみると「誰が見てももっともだと思われるような立場で物事を考えるさま」とあります。
 誰が見てももっともだという状態にするためには、可能な限り数値化できるものは数値化することです。
 数値は嘘をつきません。その数値に意思が関わることでいかようにでも考えられてしまうのですが、基礎となる数値は数値でしかないのです。
 数値化できないものは対策を考えることも難しくなりますから、できるかぎり数値化してみることが客観的に考える第一歩だと思います。
 防災に関していえば、例えば「家から歩くと何分で避難所へ移動できるか」や「近くの高台まで避難するのに何分かかるか」、「自分の居る場所から階段を使って外へ出るまで何分かかるか」などがあります。
 これらを知ることで、対策するための時間が具体的にわかるようになってきますから、より安全が確保できるようになります。
 他にも「自分が背負って歩ける重さ」を知っていると非常用持ち出し袋の重さをどれくらいまでで作ればいいのかがわかります。
 自分がトイレにいく回数を知っていれば、携帯用トイレの準備もしやすいでしょう。
 一食に食べる量がわかっていれば、非常食の準備も的確にできます。
 自分の情報を数値化しておくと、防災に対する備えにも有利になってきます。
 何から手をつけようかと悩む前に、まずは自分の情報を数値化してみてくださいね。

避難の時にゲーム機は持って行ってはいけないの?

 ある子どもさんからこんな質問を受けました。
「避難の時に携帯ゲーム機を持って行ってはいけないのですか?」
 これについてはいろいろな考え方があると思うのですが、筆者は条件付きで持って行くべきだという考えを持っています。
 その理由ですが、避難中や避難後にはできるだけ普段の生活リズムを崩さないことが精神的な負担を減らす大切な方法です。
 もしも息抜きや楽しみとして普段から携帯ゲーム機をやっているのであれば、持って行ってやることはいいと思います。
 「条件付き」の条件は
1.電力は自力で確保すること
2.音が周辺に聞こえないようにすること
3.周辺の音や指示の声が聞こえるようにしておくこと
4.避難所の場合には、避難所の生活時間に従うこと
5.ネットワーク接続ではなく、単独で遊べる状態であること
というものです。
 これらの条件は、周囲から文句を言われそうな内容をあらかじめ避けるために設定しているものです。
 1の「電源を自力で確保」は、避難所で限られた電源を占拠してしまうと必ず他の人からの苦情がでます。蓄電池や太陽光発電システムとセットで持って歩くようにすることで避難所の電源タップを使わなければ、周囲からの苦情を減らすことができます。
 2は、やっている本人は全く気になりませんが、その音を聞かされている周囲の人間に取っては非常に不快な音になります。特に災害で神経が高ぶっているときに聞かされる電子音は、間違いなく騒動の元になります。音を消すか、どうしても聞きたいならイヤホンで繋いで周囲に音が漏れないようにしておくことが大切です。
 3は、自分の安全を確保するために必要なことです。音や声が聞こえないと、万が一の時に逃げ遅れたり、不利益を被ったりすることがあります。集中していると周りの音が聞こえなくなるかもしれませんが、それでも周囲の音を聞き取れる状態にしておいてください。2との関連で考えると、イヤホンは片耳掛けタイプのものがいいのかもしれません。
 4は当たり前のことなのですが、避難所での生活は避難所運営委員会で取り決めた時間に従わなければいけません。そのため、就寝時間が来たらそれ以降はやらないことです。また、朝も起床時間まではおとなしくしていましょう。
 最後の5は、ネットワーク接続のゲームだと、被災後の通信環境にかなり負荷をかけることになってしまうからです。また、被災した環境ではネットワークを安定して維持できる状況にもないと思います。そのため、遊ぶのであれば単独で通信環境の影響を受けないゲームにしておくことをお勧めします。
 避難所では、本当は個人が一人で遊ぶゲームよりも周囲の人と一緒に遊べるゲームの方が気が紛れることが多いですが、全ての人がそれで気が紛れるわけでもありません。
 自分の気持ちが平穏に維持できるのであれば、避難用荷物の一つに携帯ゲーム機を加えておいてもいいと思います。
 ただ、携帯ゲーム機は音や光で周囲にいやな思いをさせることも多い遊び道具ですから、周辺への配慮を忘れずにいたいものですね。