防御姿勢とTPO

地震時の対応訓練の一コマ。子ども達に任せると、思い思いの防御姿勢を取っているのが面白い。

 地震時の防御姿勢として比較的普及しているのはダンゴムシのポーズだと思います。
 最近では「身を低く、頭を守って、動かない」というシェイクアウトなども広まってきているようですが、いずれにしても転倒防止のために姿勢を低くし、頭部を守るという防御姿勢は共通しています。
 ただ、どこでもこれでいいかというとそうでないところが悩ましいところです。
 以前にはとある学校で抜き打ちで地震情報を放送したら、安全なはずの校庭にいた子ども達が一斉に教室に戻って机の下に隠れたといった笑えない話もありました。
 日常生活で書くと、例えばコンビニエンスストアやスーパーなどでは、揺れたときにその場で防御姿勢をとると棚や頭上からいろいろなものが落ちてきて怪我をすることもあり得ます。
 対処法としてかごの中身を捨ててかぶれといった内容の記事を見ることもありますが、それならかごを置いて手近な開けた空間に移動する方が安全の確保がしやすいと思っています。
 ともあれ、身を守ることが一番大切なのですが、身を守るための防御姿勢はTPOによって変わるということを理解しておいてください。
 もしもあなたが訓練をするのであれば、さまざまな場所でどこだったら、どんな風にすれば安全かを考えながら訓練してください。
 また、あなたが訓練担当者なら、発生時間を教えないブラインド訓練をして、その場でどのような防御姿勢をとることができるかを考えてもらうようにしてください。
 いざというときには、訓練以上のことはできませんし、殆どの場合訓練以下のことしかできません。
 せっかく訓練するのであれば、訓練のための訓練ではなく、実際に身を守れるような訓練をすることをお勧めします。

災害に対応する損害保険のお話

 最近あちこちで地震や水害など大きな災害が起きていますが、そのたびに問題になっているのが自分の生活を再建するための費用です。
 しっかりとした貯蓄があればともかく、そうでない場合には、ある程度保険によってカバーする方法を考えてもいいと思います。
 特に大きな金額になる自宅などの建物と、生活に必要な各種家財はそれなりの備えをしておいたほうがよいのではないでしょうか。
 自治体からの見舞金や再建費用でなんとかなると考えている人も多いと思いますが、実際には生活再建さえままならない状態になっているのが現状です。
 今回は災害と保険について考えてみたいと思います。

1.自治体等からの見舞金

 災害時に自治体からの見舞金が出ることがありますが、建物が「全壊」「半壊」に対して出るのが基本となっていて、その判定は被災度判定調査によって決定されます。
 あくまでも建物の状態によって支払われるものであり、その人の事情や状況は考慮されないことに注意してください。
 他にも生活再建支援金などが出るケースもありますが、少なくとも建物や生活の再建に充分な金額ではありません。
 ここではあくまでも自助が要求される部分であることを知っておいてください。

2.対応する保険

 建物や家財は、損害保険が保険の引受先になります。
 損害保険は、加入する保険会社や保険の種類、お住まいの地域などの条件によってさまざまですが、大きく分けると今現在の価値の金額を補償する「現存価格補償」と、被災した建物や家財を再調達するための費用を補償する「再調達価格補償」があります。
 当然、条件がよい保険ほど掛け金も上がりますので、あなたの状況やあなた自身の生活再建計画に基づいて無理のない金額で保険をかけるようにしてください。
 また、災害で受けられる建物や家財に対する損害保険は発生する災害によって異なりますので注意が必要です。
 基本的には「火災保険」がベースになり、これに水害対応をつけると住宅総合保険となります。
 地震保険は火災保険が契約されていないと契約をすることができないので、火災保険のオプションのような性格を持っています。
 地震保険では、地震によって発生した火災、家屋倒壊または家屋埋没、噴火による家屋損壊、津波による家屋流出が補償されることになっています。
 ここで気をつけないといけないのは、火災保険単独では地震による火災での焼失は補償されません。あくまでも火災のみが対象になっていて、原因が災害によるものは水害や地震といった災害特約が必要となることを知っておいてください。

3.もし被災したら

 生活再建にはすぐにでもお金が必要となりますが、基本的には保険会社の調査員が現地を確認し、その損害状況を判定した上で支払うべき保険金を算定することになります。
 ただ、大規模な災害だったり、すぐに解体しないと危険な場合などには調査員の調査が間に合わない場合があります。そのため、保険会社に連絡して承諾を得ることができれば、写真を撮って現地調査に変えることができることがあります。
 自治体の被災度判定などにも使えますので、被災した場合には被災した家屋や家財など被災したものをあらゆる角度から撮影しておくことをお勧めします。
 また、保険金の算出後はかなり早く支給がされるようですが、これも保険会社によって異なりますので、被災した場合には保険会社に相談することをお勧めします。

4.災害に備えて

 火災保険や地震保険をかけていても、被災した後で速やかな手続きをとるためには保険をかけている保険会社や保険の証券番号があった方がよいです。
 ですから、あなたのパーソナルカードの中にそれらの情報を追加しておいてもいいかもしれません。
 また、大規模災害などでは損害保険協会に照会するとあなた自身がかけている保険会社や保険の証券番号を調べてもらうこともできますので、提供される情報に注意をしておいてください。

5.請求はご自身で

 被災地で見舞金や保険金の話をする頃合いになると、あなたに代わって交渉しますという団体や個人が言葉巧みにあなたに迫ってきます。
 でも、実際のところそういった団体や個人に頼んでも、あなた自身が手続きをしても、支払われる額は変わりませんし支払われるまでの期間も変わりません。
 法外な手数料や手間賃を取られるのは無駄ですし馬鹿馬鹿しいですので、手続きはあくまでもご自身で行うようにしてください。
 やり方が分からない場合でも、行政機関窓口や保険会社、その代理店であれば手数料なしで手続きの相談に乗ってくれます。
 そんなに難しくありませんので、おかしなところに頼まずに、あなた自身で手続きをするようにしてください。

なお、今回記載した損害保険についてもう少し詳しいことが知りたい方は、日本損害保険協会のウェブサイトをご一読ください。

損害保険とは?」(一般社団法人日本損害保険協会のウェブサイトへ移動します)

災害遺構を訪ねて15「中山八幡宮の復旧記念碑」

 昭和58年7月の大雨による水害は、島根県西部のあちこちに大規模な被害を与えました。
 災害からの復旧には大変な金額と労力がかかったわけですが、他の災害に比べるとあちこちに立派な復旧記念碑が存在しているのはこの災害の特徴のような気がします。
 今回ご紹介するのは、そんな記念碑の一つである益田市赤雁町の中山八幡宮境内に置かれた復旧記念碑です。


 広い境内は地域を見下ろすような高台にあって、この神社が昔から水害時の避難所として使われていたのだろうなと推察できるような場所です。
 傍らにはこの八幡宮の由来が掲示されていて、復旧記念碑はその横に置かれており、碑の裏には「建碑の主旨」としてこんなことが書かれています。
「昭和58年7月23日豪雨による古今未曾有の大水害も益田市及び国県の温かい援助により河川耕地共に全面的復旧工事が施工され再び災禍なきを祈念 ここに謝恩をこめて記念碑を建立する」

 それから工事概要や施工業者、市長やこの地域の災害復旧に尽力したと思われる方の名前が刻まれています。
 特に教訓や鎮魂、何が起きたのかを後世に伝える目的で建立されているわけではないようですが、地域が復旧するたびにこのような記念碑を作ることができた当時の勢いはすごいなと思います。

区画整理と住所割

 まるで不動産業者か行政機関のようなタイトルですが、別に土地のことをいいたいわけではなく、避難所を開設する際に大切なことを書き出してみました。
 避難所から「一時」の文字が消えると、そこは避難先から避難者の生活空間に変わりますが、一時避難所の設営時に区画整理していないと、場所を多く取る人、すみっこでじっとしている人、入り口にたむろする人など、避難所の状態が雑然として後々苦労することになります。
 避難所内で避難者が使える場所、使えない場所、用途を指定して使う場所を分け、その上で通路を確保し、一軒あたりの床面積を決めます。避難所を設置する際には、文句を言われても一番最初のこの作業だけは手を抜かないで下さい。
 一番良いのは、予め決めておくことで、そうすればいざというときにはそれに従って行動するだけなので、避難者を待たせずに済みます。
 そして、避難者の生活が始まったら、早い段階で住所割を作ることをお勧めします。
 どこの区画に誰がいるという情報は、避難所運営をするためには結構重要となりますので、これらも早めに作るようにしましょう。
 もちろん、さまざまな理由から住所割に名前を載せないで欲しいというかたもいらっしゃると思いますので、そのあたりは配慮する必要がありますが、これを作っておくと、後に尋ね人があったときに回答がしやすくなります。
 公開する住所割りの地図には、マグネットなどで人がいるのかいないのかだけわかるようにしておくと、運営がしやすくなると思います。
 区画整理と住所割。避難所運営でもっとも重要なことですので、もしあなたが避難所運営に関係している人であれば、あらかじめ準備しておくことをお勧めします。

避難所から帰る判断

(写真はイメージです)

 災害が予測されるために避難所に避難した場合、いつ帰宅する判断をすればいいのでしょうか。
 大概の場合は、災害が起きる可能性が低くなって各種警報が解除されたときになると思うのですが、ここで一つだけ気をつけて欲しいことがあります。
 それは、大規模な災害は起きていないが、あなたの住んでいる地域や住んでいる場所で災害が起きなかったという意味ではないということです。
 避難を要するような大規模な災害に対する警報が解除されるのは、けっこうな確率で夜中になることが多いのですが、解除されたからすぐに安全が確保されるというわけではありません。
 避難所の状況にもよりますが、可能であるならば避難所から自宅に戻るのは太陽が出て周辺が明るくなってからにした方が安全です。
 避難所によっては、「警報解除=避難所閉鎖」として避難者を追い出すところもあるようですが、避難するということは避難した人の安全を確保するという目的で避難しているので、解除後帰宅途中で被災しては目も当てられません。
 避難所に行くときにはできるだけ明るいうちに移動しようということは割と言われるようになってきましたが、避難所から帰るときも、できるだけ明るくなったからにするようにしてください。
 そして、避難所を運営する場合には避難者がそのような行動をとることを前提にして避難所開設・運営を準備するようにしてください。
 繰り返しになりますが、避難行動は身の安全を確保するために行われる行動です。そのことを前提にして、避難・避難解除の行動をしていきたいですね。

災害に慣れること、慣れないこと

机の下でダンゴムシ
防御姿勢はTPOに合わせて取ろう。

 宮城県や岩手県の方では大きな地震が起きて津波注意報も出たようですが、大きな被害が出ないことを願っています。
 さて、地震にしても大雨にしても津波にしても、とてつもなく大きな被害を出すようなものはそこまで多くはありません。
 ですが、普通の生活をしているとそれなりの揺れやそれなりの大雨、また津波の予測が出るのに出くわすこともよくあります。
 災害に慣れるという点では、これらが起きると防御姿勢や避難誘導、避難準備の早さなど良いことがたくさん起きるのですが、それなりの災害というのは、結果的に人の生活に影響のある災害が起きないことが殆どです。
 不思議なもので、そうなってくると何か災害の予兆があっても「どうせ何も起きっこない」と考えて身の安全を守る行動を取らなくなってくるのです。
 災害の予兆が当たり前になって、普段の生活に影響が出ないと信じ込むようになった頃、大きな災害というのはやってくるような気がします。
 99回避難して何も起きなかったからといって、100回目もそうだ誰が決められるのでしょうか。
 100回目でも1000回でも、愚直に命を守るための行動をすること。
 災害に慣れるなら、「何も起きない」と考えるのではなく、命を守る行動を取ることに慣れたいですね。

防災無線端末の電池は大丈夫ですか?

電源ランプの不規則点滅は電池交換のサイン。

 各戸に防災無線端末を配置して一斉放送するというのがここ最近の防災無線の流れのようですが、石西地域でも益田市、津和野町、吉賀町それぞれに防災無線端末が各戸に設置されています。
 益田市の防災無線端末に限定したお話になってしまうのですが、普段はコンセントから給電しているこの端末は、単3の乾電池を4本セットして停電に備えることになっています。
 停電時でも情報を伝えてくれるのは非常にいいところなのですが、問題は乾電池の寿命です。
 目安では一年毎の交換が推奨されていますが、いつ交換したのかを覚えている人がどれくらいいらっしゃるでしょうか。
 防災無線端末の説明書きによると、普段緑色に点灯している電源ランプが不規則に点滅すると電池の交換時期なのだそうです。
 たまにチェックして、肝心なときに電池切れで情報伝達がされなかったということがないようにしておいてくださいね。
 交換の仕方など、詳しくは益田市のウェブサイトを見て下さい。

ズボラか災害対策か

 我が家の廊下の壁にはお菓子の入った袋がぶら下げてあります。
 中身はスナック菓子やあめ、チョコレートなどで、家族全員が満足できる量はありませんが軽いお菓子パーティーができるくらいにはバリエーションが揃っています。
 それなりに大きな袋になるので目立ちますし、中身を知っている人からは「みっともないからどこかへ収納したら?」と言われることもあるのですが、その都度「これは非常用持ち出し袋です」と返事をしています。
 非常用持ち出し袋というと生活用品が全て揃った厳ついものを家族全員分揃えて並べてあるというイメージの人もいるみたいですが、誰もが知っていて何かあったら持ち出せるようになっていて、当座の生活を維持できるものが入っているなら、それは立派な非常用持ち出し袋になると思っています。
 もちろん、この中に携帯トイレや飲み物、着替えやエマージェンシーシートなどを入れておけば言うことはありませんし、持ち歩きしやすいようにリュックサックに入っていれば、もっといいと思います。
 でも、目的はあくまでも非常時にすぐに持ち出せるかどうか。ついでに書くと、普段の生活の中で不自由がないようにしておくことも大切です。
 我が家の場合には、そのバランスを取った場所が廊下のお菓子袋だということです。
 非常用持ち出し袋も準備はしてありますが、小分けで持ち出せるものの数が多ければ多いほど生存確率はあがります。
 ぱっと見にはズボラに見えても、見方を変えれば立派な災害対策になるということを知っておいてくれるとうれしいです。

【お知らせ】「しまねいきいきねっと」で紹介されました

 公益財団法人ふるさと島根定住財団様の機関誌である「しまねいきいきねっとvol.154」で新設NPO法人として紹介していただきました。
 同財団様が運営するウェブサイト「島根いきいき広場」に団体として登録させていただいたのですが、そのおかげでご紹介いただけたようです。
 最後の方にちょこっとだけなので、よく見ないと見落としてしまうかもしれませんが、よかったらご覧下さい。

しまねいきいきねっとvol.154」(ふるさと島根定住財団様のウェブサイトへ移動します)

車の燃料に気をつける

 車の燃料の量と行動の自由は直結しています。
 特に車が普段の生活に必要な地域に住んでいる人にとっては、車の燃料はある意味生命線を握るといってもいいでしょう。
 もしあなたが車が普段の生活に必要な地域に住んでいるとしたら、あなたは車の燃料をどんなタイミングで注いでいるかを考えてみて下さい。
 もしもあなたが燃料警告ランプがついて補給する癖がついているようなら、できるだけ早めにその癖を直すことをお勧めします。
 できれば、燃料計が半分を切ったら燃料を注ぐ癖をつけておきましょう。
 大規模災害に襲われると、当面の間は燃料が届きません。そして、車が無事だった場合には、本来の用途以外にもいろいろと使われることになります。
 例えば止まるための簡易寝床として。あるいは暖房・冷房器具として。それから発電機としても使われることがあるでしょう。
 非常に便利な道具なのです。
 でも、基本は燃料があるからそれらに使うことができるわけで、燃料が切れてしまうとただの金属の塊と化してしまいます。
 被災地だけではありません。
 どこかで大規模な災害が発生すると、それ以外の地域の燃料供給が途切れがちになることも多いですから、燃料があると言うことは自分の自由を保障するという意味でも大切なのではないかと思います。
 東日本大震災では、発生から半年くらいは燃料輸送用のタンクローリーが不足したことから被害のなかった離れた地域でも燃料の給油制限が行われていました。
 災害が直接起きていない地域であっても、燃料不足が起こる可能性があるのです。
 万が一に備えて、車の燃料はできるだけ残量があるようにしておいてくださいね。