復旧は長期戦を覚悟する

 行政や企業、自治会などの組織によくあることですが、災害が起きるととりあえず全ての職員や社員、役員に非常招集がかかるようです。
 全員が庁舎や会社といった拠点に集合するというルールを作っているようですが、正直なところナンセンスだなと思うことが多いです。
 とりあえず人手を集めるというのは「集まってから何するかを考える」と言っているのと同じで、危機管理能力がないことを露呈しているようなものです。
 組織で作成する災害時BCPの基本的な考え方は「構成員の安否」と「何をいつまでにどうするためにどんな人が必要なのか」です。
 その結果としての全員動員であるならば、それは問題ないと思います。
 例えば電力会社や通信会社、ガス、水道、電話など地域のインフラを支えるようなお仕事の場合だと、全員で対応しないと手が回らなくなるかもしれません。
 また、自治会であれば安否確認や避難、救助などでたくさんの仕事がありますから多くの人手が必要になるでしょう。
 でも、例えば小売店や販売店はそこまで緊急にしなければいけない仕事があるかどうか。
 街中で大渋滞や混乱を起こしてまで出社を促さないといけないかどうかをよく考えてみる必要がありそうです。
 去年の大阪北部地震では、大規模な地震であったにもかかわらず通常通り仕事に行こうとする人達が大勢いて、結果として大阪府内では最大で普段の倍の渋滞が発生したという記録があります。
 これは仕事に行こうとした人達ではなく、その人達を使っている組織が災害について何も考えていなかったことが原因です。
 災害が発生したらどのように対処するのかをきちんと取り決めておくことは、組織としての最低限必要な事だという認識を持たないといけません。
 ところで、緊急対応が落ち着いてきてもそれで仕事が減るわけではありません。
 災害からの復旧はとてつもなく時間がかかりますから、長期戦に備えたローテーションを確立しておくことが必要です。
 組織の構成員を交代でしっかりと休ませることで、長い復旧に立ち向かう気力が維持できます。
 災害への対応経験が豊富な自衛隊でも、派遣される隊員は交代で休息をとるようになっています。そうしないと士気が維持できず、事故も増大することを知っているからです。
 旧態依然とした組織、特に行政機関は意味不明に「全員対応を要求する」ところが多いため、発災から半月もすると疲労でまともな仕事ができなくなっている被災自治体の職員が殆どを占める状態になります。 公務員として「働かなければ、働かせなければ」と言う意識はわかるのですが、人間も消耗品であり定期的に休養させなければ壊れてしまうということを指揮官である首長はしっかりと認識する必要があります。
 増大している仕事量は「自分たちでないとできないこと」「他人に任せても大丈夫なこと」「今しなくてはいけないこと」「今しなくてもいいこと」のマトリクスを作って整理することで、他所からの応援部隊に思い切って任せてしまうことが重要です。
 支援できている人達に遠慮する必要はありません。お任せできる部分はお任せして、自分たちで出来る仕事に専念すること。それによってより良く過ちのない仕事が素早くこなせることになるのではないでしょうか。
 緊急時対応だけでなく、その後の長期戦にたいする対応まで考えておくことで、いざというときに安心して行動ができるようにしておきたいものです。

缶詰とレトルト食品

缶詰とレトルトパウチの食品は災害時には強い味方になってくれます。
 ものによっては一度温めないといけないものもありますが、アルファ米やインスタント食品と異なり、基本的に何かで戻すことも何か加工することも必要なく開封すればそのまま食べられます。
 また、さまざまな食品が提供されているので好みのものを用意することができますし、賞味期限が近づくほど味が馴染んでおいしくなる特徴があります。
 今回はこの缶詰とレトルトパウチのメリットデメリットについて考えてみたいと思います。

1.缶詰のメリットデメリット

・メリット
1)保存期間が長い(3~5年程度)
2)容器の耐久性が高い(金属製の缶なので簡単には中身が出ない)
3)空いた容器が他のことに使える
・デメリット
1)重たい(金属製の缶なので、その分重量がある)
2)高い(容器分だけ値段が高くなる)
3)残った容器が嵩張る

2.レトルトパウチのメリットデメリット

・メリット
1)値段が安い
2)軽い
3)残った容器がコンパクトにできる
・デメリット
1)保存期間が短い(半年~1年程度)
2)容器の取り扱いが必要(尖ったものに当たると破れて中身が出てくる)
3)容器はタダのゴミ

 現在は軽さと持ち運びのしやすさからレトルトパウチ食品に完全移行しましたが、以前は戦闘食として陸上自衛隊では缶詰の糧食セットも提供されていました。
 非常食というとついアルファ米やインスタント食品に目が行くのですが、これらのレトルトパウチ食品や缶詰も取り入れることで、コストを掛けずにおいしく好みの非常食を作ることも可能です。
 また、レトルトパウチ食品や缶詰は基本的に水が不要なので、準備する水の量を減らせるというメリットもあります。
 せっかく準備するのであれば、日常生活にもこれらの食品を上手に取り入れて非常食にかける手間とコストを減らし、被災時でも普段とあまり変わらない食生活で気力と体力を温存していきたいものですね。
おまけですが、現在自衛隊で使っている戦闘糧食Ⅱ型(レトルトパウチ)の民生品をご紹介しておきますので、興味がある方は一度食べてみてください。

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【活動報告】保育園の避難訓練に参加しました

先日、防災研修で押しかけ講師をさせていただいている保育園様の避難訓練の様子を見学させていただくことができました。
 この保育園では月に一度避難訓練を実施しており、今回の想定は「地震+火事」でした。

子ども達の手はしっかりと頭と首をカバーしているダンゴムシです。

 「地震です」の園内放送を聞くと、子ども達が一斉に部屋の中央部に集まって「ダンゴムシのポーズ」を取り、クラスによっては防災ずきんも被ってじっとしていました。

 その後「火災発生」の園内放送と同時に鳴り響く非常ベル。
 子ども達はさっと立ち上がると騒ぎもわめきもふざけもせずに粛々と列を組んで非常経路に従って避難をし、赤ちゃん組はおんぶ&お散歩車で避難を行い、訓練開始から避難完了までわずか5分で安全圏に避難が完了していました。

脇目も振らず粛々と避難行動をしている子ども達。みんな真剣です。

 小学校や中学校ではもう少し賑やかでドタバタした感じになるのですが、この静けさはすごいなと思い、訓練終了後に園の先生にお話を伺いました。
 それによると「4月に子ども達が入れ替わってすぐの訓練では泣いたり騒いだりすることがありますが、この時期だともう普通に避難ができます」とのこと。
 以前に研修させていただいたことを元にして津波からの避難訓練も実施されたそうで、避難開始から高手の避難所までの避難が17分だったことも伺い、かなり素早いなと感心しました。
 普段から訓練することで避難という行為に慣れることができ、その結果として安全を確保することができるということを教えていただきました。
 後日、見た内容について修正点があれば教えて欲しいということでしたので、また気づいた部分をお話しさせていただこうと思っていますが、災害時に保育園での死傷者が少ないという理由がちょっとだけわかったような気がしました。
 惜しむらくは、これだけしっかりとした訓練が日常に組み込まれている保育園から小学校に行くと、途端に訓練回数も内容も貧弱なものになること。
 どのように働きかければうまくいくのだろうかと、少々考えさせられる体験でした。貴重な経験をさせていただいたすみれ保育園の園長先生を始めとする先生方に厚くお礼申し上げます。

災害のピクトグラムを知ろう

災害関係に限らず、あちこちで見ることの多いピクトグラムは、あなたも一度は目にしたことがあると思います。
「絵文字」や「絵単語」とも言われるようですが、その絵を見ることでそれは何を示すことなのかがわかるような表示のことです。
ところで、災害に関係するピクトグラムはつい最近まで全国で統一されたものがありませんでした。
そのため、地域地方によって同じ意味でもさまざまなピクトグラムが採用されています。
平成28年にこれをようやく統一するということになりましたが、義務ではなく努力規定なので、看板等が更新されるまでは、当分さまざまな表示が混在することになりそうです。
今回は、この統一された基準について見ていきたいと思っています。

1.避難場所

左の図は「避難場所」を表しているピクトグラムで白地に緑の絵で構成されています。
私はこれを最初見たとき「マンホール注意」と勘違いしたのですが、この絵は決して落とし穴に人が落ちることを示しているわけではありません。
緑色の丸は安全地帯を表し、そこに人が駆け込む絵を合わせることで、避難場所の表示を構成しています。

 「丸い地面+駆け込む人」で表示するこのマークは平成28年に決められたもので、割と急速に普及しつつありますが、それまでの「緑十字+青枠」という表示も併設表示されていたり、切り替えが終わっていないところもあるようです。これらの避難場所の表示は細かくみると仕様が微妙にちがっていたりしますので、観察してみると面白いです。

名古屋市港区役所の表示

  津波に対する避難場所は、他に津波から高台に逃げる人を描いたものや左のような津波と逃げる人、それにビルを表示した津波避難ビルの避難場所図も存在します。

2.避難所

右の図は「避難所」を表示しているピクトグラムで、緑地に白の絵で構成されています。
建物と人が駆け込む絵を合わせることで、避難所の意味を表現しています。

3.災害種別注意

高潮、津波、土石流、崖崩れ・地すべりには、その区間に注意を促すピクトグラムが黄色時に黒の絵で三角表示されています。
津波は「波」を、土石流は「川+岩」を、崖崩れ・地すべりは「崖と岩」を表現しています。

4.災害種別一般図

割とシンプルです。

災害を表すための図で白地に黒の絵が四角の黒枠で表示されており、主に避難所がどの災害に対応しているのかを表すために用いられます。
災害種別注意図と同じような絵ですが、「水」を示す波線二本で表示される「洪水・内水はん濫」、「家と火」を表す大規模火災が追加になります。

5.地図記号

国土地理院が作成する地図データに表示される時にはまた異なった表示を使っています。
国土地理院が提供している避難所データには、以下のような表示がされますので、確認するときの参考にしてください。

出典:国土地理院

 インバウンドが増えていることや東京五輪があるということで災害関係のピクトグラムをようやく統一する気になったようですが、一度表示したものはなかなか変わることはありません。
 中には両方併記している避難所もあるみたいですが、いずれにしてもわかりやすい表示で避難者が迷わないようにしてあるといいなと思います。

 そういえば、今日のニュースで避難所で使うピクトグラムについて学生さんが作ったものが大阪市東淀川区で正式採用されたというニュースがありました。日本語の読めない人たちでも避難所に避難してくれば中のどんな場所で何が行われているのかがわかるようなわかりやすいピクトグラムとのことなので、標準化していけばいいなと思っています。
 ちなみに当研究所のある市では、一部地域を除いて災害関係の表示をみることはありません。といいますか、そもそも表示がされていないような・・・。

避難口誘導灯

「非常口」というのはご存じですよね?
消防法では「避難口」と呼ばれていますが、緊急時にその場所外部へ脱出するための出口のことで不特定多数の人が集まるところには設置が義務づけられています。
建物や地下街といった施設や鉄道車両やバスなどの乗り物もこの「不特定多数の人が集まるところ」という条件を満たすので、定めることが義務づけられています。
さて、その避難口を示す誘導灯の存在を意識したことがあるでしょうか?
建物の扉部分から左側向きに脱出する人のピクトグラムは、意識したことがない人でも見れば一発でわかるはずです。
この避難口を示すピクトグラム、現在は国際標準になっているそうで、よく見ないと分からないくらいの違いでしかない避難口のピクトグラムがISO7010の中に規定されています。
それはともかく、今回はこの避難口を示すピクトグラムの書かれている避難口表示標識、避難口誘導標識についてまとめてみました。

1)避難標識とは?
文字通り非常時に避難口及び避難口へ避難者を誘導する誘導標識のことです。
暗闇や煙でも見やすくするため、自光式や蓄光式など最低20分程度は光り続けることを始めとするさまざまな条件が「誘導灯及び誘導標識の基準」で定められています。
これらの表示は離れたところからでも見やすいという理由で天井に近いところに取り付けられることが多いようです。
余談ですが、不特定多数の人が集まる施設の場合には、避難誘導標識に加えて避難経路や現在地を示す地図が備えられていないといけないことになっているのですが、あなたはその施設に入ったとき、すぐにそれを確認していますか?

2)避難誘導灯の種類
避難誘導灯には二種類存在します。一つ目がそこが非常用出口であることを示す避難口標識で緑地に白色、そしてもう一つが避難誘導標識で、白地に緑色となっています。
避難口標識は人のピクトグラムが左を向いていますが、避難誘導標識では人は避難する方向に向いています。また、避難口が両側にある場合には左を向いています。
避難するための流れを図で見ると次のようになります。

3)避難誘導灯の素朴な疑問

煙の中で見るとこんな感じ。

災害等による停電の場合はともかく、火災の場合には煙は高いところに立ちこめます。その際に避難誘導灯が見えなくなるのではないかなと感じるのです。
以前にとある消防の方に尋ねてみたところ「排煙設備のある施設では高いところのみが多いが、排煙設備のない施設では高いところに加えて壁や床などの低い位置にも表示がされている」ということでした。
それからいろいろな施設を観察してみましたが、低い位置に設置された避難誘導灯はあまり見ることがありません。
災害時の暗闇では避難口表示灯は高手に、そして避難誘導灯は低い位置にある方がわかりやすいのではないかと感じています。

床に避難誘導灯がある場所もある。
いざというときに安心できる。

特にスーパーや百貨店などは表示だけ見て避難すると棚や商品にぶつかったりすることがあって危険ではないのかなと感じています。
避難口の位置と避難経路の事前確認、それに強力な懐中電灯を持っていれば危険は回避できそうですが、施設の誘導灯に全面的に頼るのは危険かなと感じています。
また、古い施設だと避難誘導標識もピクトグラムでなく文字だけで表示されているものも残っています。これは古いものについては施設の改修までは法律が適用されないために起きることで、見慣れた「緑+白」だけでなく「赤+白」というものも存在しますので意識して確認するようにしておいたほうがいいですね。

なぜ備蓄が必要なのか

 世の中グローバル化が進んでいるなと思います。
 例えば、スーパーに出かけて野菜を見ても、地元産のもの以外に全国や世界中からさまざまなものが集まっているのが分かります。
 そのおかげで、地元では時季外れになっている野菜も普通に買えて、一年中いろいろな料理を楽しむことが可能になっています。
 ところで、このいつでも「野菜が買える状態」は物流が支えています。
 夜昼日本中を走り回っているトラックや鉄道、船舶輸送のおかげで、私たちは意識せずにいろいろなものを楽しむことができるわけです。
 これらを支えているのが、道路や鉄路、港湾施設になるわけですが、災害が起きてそれらが被災すると物流は一気に停滞します。
 去年の夏、西日本豪雨で岡山から広島東部にかけて被災して道路と鉄道が寸断されました。
 その結果、山陰側の道路は流入するトラックで一時大混乱に陥り、鉄道も山陰側を迂回したことから1日以上多く時間がかかることになってしまいました。
 今話題になっている南海トラフ地震が発生したら、日本の物流の大動脈である太平洋沿岸はほぼ全て被災地域となります。
 道路や鉄道は全て止まり、災害支援のものが最優先されるため被災地以外ではまともな物流はできなくなります。
 海外から入ってくる野菜類はほぼ太平洋岸の港から陸揚げされますので、港湾施設が被害を受ければ当然これらも入ってこなくなります。
 また、本来私たちのところに供給されるはずの消耗品類は生産工場が被災して作れなくなったり、数多くの被災者を救済するためそちらに優先して供給されるために購入制限などが発生することになるでしょう。
 物資の供給には相当な混乱が起こるとみて間違いありません。
 南海トラフ地震では、恐らく石西地域では直接の大きな被害はでないと思われますが、物資の欠乏という間接的な被害が出る可能性は極めて高く、そのためにある程度の備蓄が必要になるのです。
 政府は3~1週間の備蓄を推奨していますが、出来ればそれ以上のものを。普段使っているものは+1で準備しておき、常に予備があるようにしておくこと。
 それだけで心の余裕が生まれます。
 「うちはコンビニが備蓄倉庫だから」というお話を聞いたことがありますが、コンビニの豊富な物資は流通がなければあっという間にすっからかんになってしまいます。
 特に東京等の人口が多い場所にあるコンビニでは、東日本大震災後、短時間でほぼ全ての物資が無くなってしまったという事実もあります。
 物流が支えているからこそ、コンビニは成立するのです。
 「いつでもなんでも買える」のは当たり前ではない。
 そのことを忘れないようにしたいものです。

アルファ米を試してみるその2

 前回は尾西食品の五目ご飯を試してみました。味がかなり塩辛かったので、労働後には最適かなという評価でしたが、今回はアルファ食品の五目ご飯を試してみることにしました。

アルファ食品の五目ご飯。出来上がり量は270gとなっていて、尾西食品の五目ご飯よりも10g多い。
中身はこんな感じ。尾西食品同様にスプーンと乾燥剤が入ってるので取り出します。

 注ぐお湯の量は、170ml。前回の尾西食品の五目ご飯よりも10ml多いです。注ぐと、こんな感じ。

ちょっと湯気でもやっています。

待つこと15分。開けてみます。

出来上がりはふわりとした感じです。
お皿に盛り付けるとこんな感じ。出来上がりは2人前です。

さて、当研究所の食いしん坊な子ども研究員達のコメントは次のとおりです。
「味が濃い」
(塩辛いのでは無く、だしが濃いのだそうです)
「柔らかいのでお年寄りも食べやすそう」
(仕上がりが普通の炊き込みご飯より軟らかい感じでした)
「んまい」
(この研究員はこれしか言わない)

アルファ食品が島根県の会社だというのを知らなかったのでちょっとびっくりした。

 ところで、パッケージを眺めていたら左の写真のようなものがついてました。
・・・ハラール認証取ってるんですね、この五目ご飯。
 原材料の産地情報を示すQRコードも一緒についていました。
 災害時にそこまで気にすることはなかなか難しいですが、ハラール認証や産地情報が確認できるなら、ムスリムの方も安心して食べられそうです。

 また、「鍋や炊飯器でも作ることができます。詳しくはお客様相談室までお問い合わせください」との表示もついていました。
 どんな風に作るのかを聞いてみたい気もしましたが、それはまたそのうちに。

防災のラストワンマイル

 災害対策をやっていると、さまざまな情報や物資や支援体制はここ十年くらいで随分と充実してきたなと感じています。
 物資では、国から被災地の要求を待たずに支援物資を届けるプッシュ式が運用されるようになりましたし、情報は気象庁や国土交通省、都道府県、市町村と行政機関から驚くくらい提供されるようになっています。
 支援体制についても、自治体間の相互応援や災害ボランティアセンターの充実、災害NPOの活躍など、量はともかく、必要なものがほぼ提供される環境になってきています。
 ところが、実際には被災した人達の状況というのはさほど変わっていない現状があります。
 これは多岐に渡るさまざまな被災者の要求や要望と、提供する側のマッチングがうまくいっていないことが原因で、私自身は「防災のラストワンマイル」と呼んでいます。
 どのように解決するとよいのか、思案をまとめてみました。

1)物資のラストワンマイルをどうするか?

 災害時の支援物資については、大規模災害のたびに国がやり方の改善をしています。
 大まかな流れを書くと、次のようになります。

備蓄基地→第一次集積所(被災地外かつ近傍地)→第二次集積所(被災地内かつ小規模)→指定避難所(分配拠点)→被災者

 このうち、国が責任をもつことになっている第一次集積所までの物資と流通経路はかなり早く確保することが可能になっており、被災して早ければ翌日、遅くとも数日以内には対応ができるようになっているようです。
 第二次集積所については市町村が責任を持つことになっています。さまざまな問題は残っていますが、流通業者との協定や公共施設の転用によりこちらの設置もさほど時間はかからないと思われます。
 問題となるのは、この第二次集積所から指定避難所、その先にいる被災者にどうやって届けるのかという部分。
 宅配業者に配送をお願いする協定をしている自治体もありますが、全ての自治体が協定しているわけでもないので、この部分を誰が担当するのかということが第一の問題。
 そして、指定避難所に届いた物資をどうやって被災者に配るのかということが第二の問題になります。
 行政が避難所を運営すると「平等・公平」の視点から必要な人に必要なものが必要な数配られないという事が起きますし、自治会が運営をすると、自治会に入っていない、また避難所に避難していない被災者には物資を渡さないという事例が発生しています。
 そのため、どんな人にどのような物資をどれくらい渡すのかということを事前に整理し、情報を共有化しておかないといけないでしょう。
 このあたりは、災害NPO等にやり方を教えてもらうのが手っ取り早いかもしれないと思います。

2)情報のラストワンマイル

 大規模災害が起きるたびに「情報が遅い」「知らなかった」「聞いてない」という被災者の意見が飛び交い、マスメディアがそれを使って「だから行政はダメだ」と叩くのが毎度の光景です。
 去年の西日本豪雨では、気象庁を始め各行政機関がこれでもかというくらいさまざまな災害・避難情報を出しましたが、今度は「情報が多すぎて被災者はわからない」とやっぱり行政を叩いています。
 それを受けてかどうかはわかりませんが、行政が発信する災害・避難情報がレベル表示されるようになるとのことですが、問題になるのは「知る気のない人にどうやって知らせるのか」ということです。
 テレビやラジオ、スマートフォンなどによるエリア配信や防災メール、広域・各個の防災無線と、広域的に出来る手は殆ど出尽くしているのが実際です。
 西日本豪雨では全ての人が助かった自治会は「自治会役員や消防団が一軒一軒訪問して避難させた」ということですが、いつも人海戦術が使えるとは限りません。特に独身者や単身者、高齢者の多い地域では各戸訪問して避難を促しても、文句を言われるか逃げないと言われて押し問答になるかを覚悟しないといけないでしょう。
 「おかしいな」という感覚と「情報はここで確認すること」を住民が意識して常に確認するクセを付けておくこと、何よりも「災害で死なないことは義務であること」を徹底しない限りは、どれだけ手を尽くしても誰かが必ず文句を言うのだろうなと感じます。

3)支援体制のラストワンマイル

 災害が収まって復旧・復興が始めると、被災者にはさまざまな疑問や不安、悩みが発生します。
 それに対するさまざまな対策や対応はだいたい用意されているのですが、被災者がそれを知る術がない。支援が必要な人とその人を支援できるところがうまく繋がっていないのが原因です。
 行政や災害ボランティアセンター、被災地を巡る災害NPO等に来るニーズをどのように対応できるところに繋ぐことができるのか。
 現状は「誰がそれを調整するのか」が決まっていないのですが、本来は行政機関の防災計画にそれを盛り込んでおいたほうがいいのかもしれません。
 熊本地震や九州北部豪雨では市町村や支援団体、災害NPOや地元自治会も加わった協議会が定期的に開催されてそれぞれの得意分野で活動を行うようになってきました。
 発災後だけでなく、普段から交流しておくとお互いのことがよくわかり、被災地の復旧・復興も早く行えるかもしれません。

 最近は「自己責任論」が闊歩していて何でも自分がやらなくてはいけないという風潮があるように見受けられます。
 ただ、実際のところ災害から立ち直るため、自分一人でできることには限度があります。そのため、いかに早く的確に必要とされているものやサービスを必要とする人に届けてその人が立ち直れるのかという仕組みを作っておく必要があるのではないでしょうか。
 自分でできることと助けがいる部分、これをしっかりと見極めて必要な支援を必要なときに受けられるようにしていきたいものです。

レンタルで試してみる

 以前災害対応用品とアウトドア用品は非常に親和性が高いということを書きましたが、災害に備えるための装備を準備をするにあたって、自分にどのようなものがいるのか確認ができていますか?
 いろいろなアイテムが出てきたと思いますが、その中にアウトドア用品が出てきたとしたら、一度借りて試してみてください。

 アウトドア用品というのは、やはりそれなりのお値段がするので買ってはみたが自分には合わなかったというときのダメージは結構大きいものです。
 よく知っている道具ならともかく、初めて使う道具が自分にあっているかどうかを確認するためには、持っている人に借りてみるのが一番です。

 最近のキャンプ場ではレンタル用品が充実しているので、身につけるものを除いたら大概借りることが出来ますから、いろいろと試してみて、その中から自分にあったものを見つけて買いそろえていくというのも楽しいものですよ。
 また、キャンプ場まで行かなくても、家に届けてくれるレンタルもできるようになってきているみたいです。
 特にレインウェアなどは「値段=性能」ですから買える範囲で予算をケチらないことがよいのですがやっぱり相性があります。
 人によっては何万もするレインウェアよりも数千円の雨合羽の方が使い勝手がよいと言う人(私のことです)もいらっしゃいます。
 また、寒さを凌ぐだけならウインドブレーカーを使うという方法もありますよね。とにかく一度試してみて、なるべく自分にあうものを購入するようにしたいものです。
 さまざまなアウトドア用品をレンタルしてくれるお店で郵送対応してくれるお店をご紹介しておきます。
 レインウェアなどもありますので、成長の早い子どもさんやお試しで使ってみるといった使い方が出来そうです。
 ちょっとお値段は張りますが、買って後悔することを考えれば安いもの。
 借りてみて、ぜひ使い勝手を確認してみてくださいね。

キャンプ用品レンタルならそらのした

ハザードマップの功罪

 ハザードマップというのをご存じですか。
 自治体によって表示されているものはいろいろ違いますが、ある想定の中で被害の発生する場所を地図に落とし込んだもので「被害予測地図」とも呼ばれます。
 去年の西日本豪雨では、岡山県真備町での洪水ハザードマップと浸水域がほぼ一致したと言うことで脚光を浴びました。
 あなたが住んでいる地域やお勤め先のハザードマップ、一度は見たことがありますか?
 もしまだなら、良い機会ですので自分が住んでいる場所や勤め先にどのような危険が潜んでいるのか確認してみてくださいね。
 ハザードマップは、殆どの自治体が自分のところのホームページ内で見ることができるようにしています。
 該当部分を印刷して、とりあえず安全かどうかを確認してください。

益田市の洪水土砂災害ハザードマップ

津和野町の洪水土砂災害ハザードマップ

吉賀町の洪水土砂災害ハザードマップ(防災マップの冊子の一部になっています)

島根県砂防危険箇所検索システム(土砂災害の起きそうな指定地域の地図です)

国土交通省浜田河川国道事務所(高津川系河川浸水想定区域情報)

 ところで、東日本大震災のとき、被災地に住む多くの人はこのハザードマップを知っており、ちゃんと読み込んでいました。
 でも、そのハザードマップでは「浸水しない」とされた地域の人に大きな被害が出ることになりました。
 最初に書きましたが、ハザードマップというのは「ある想定の中で被害が発生する場所」を表示したものですので、前提条件が変われば当然浸水域も変わることになります。
 余談ですが、上記で掲載しているURLの中でも、国土交通省が想定している条件と益田市が想定している条件が異なるため、両方のハザードマップを比較すると浸水域にかなりの違いがあるのがわかると思います。
 東日本大震災前に出されたハザードマップの想定は明治・昭和三陸津波で、想定波高は8.8mとなっていました。それ以上の津波が来れば当然ハザードマップ以上の浸水域が発生するわけですが、見た人はハザードマップに表示された「津波で浸かるか浸からないか」だけを見て自分の居場所が安全かどうかを判断していたそうです。
 危険を知らせるためのハザードマップが「ここは安全だと誤解させる安心マップ」になってしまっていたのです。
 ハザードマップというのは、自分がいるところの危険度を目で見ることの出来る便利な地図です。
 ですが、条件が変わればハザードマップに書かれる影響範囲も相当変わるということを頭に置いた上で、内容を確認するようにしたいものです。