あれから10年

 今日は東日本大震災が起きた日です。
 あれから10年。早いような遅いような10年。
 復旧や復興が進んではいますが、さまざまな出来事があって未だにご苦労されている方もいらっしゃると思います。
 亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災した全ての人が幸せになれることを願っています。
 被災地での出来事はさまざまなところが特集をしていると思いますので、自分のあの日を振り返ってみたいと思います。
 筆者自身は東日本大震災発生当時、島根県益田市で仕事をしていました。
 発生後、自分を始め職場の人達のスマートフォンが一斉に緊急地震速報を鳴らし始めました。
 何が起きたのかスマートフォンを取り出して確認していると、いきなり揺れました。
 そんなにたいした揺れではなかったのですが、揺れるときには動けません。
 緊急地震速報が鳴ってから実際に揺れるまでの数秒の大切な時間に身を守る行動を取らない限り、安全は確保できないなと言うことを揺れの後でなぜか考えていました。
 その後は普通に仕事を再開し、やってきたお客様に言われてテレビをつけたら、大きな津波の映像が中継されていて、そこで初めて東日本大震災という大きな災害が発生したことを知りました。
 あれから10年。自分自身も周囲も、当時とあまり状況は変わっていないなと感じます。災害対策についていろいろとやっている今でさえ、緊急地震速報が鳴ったらまず身の安全確保ができるかには自信がありません。
 やはり10年前と同じようにスマホの画面を確認し、同じように身の安全確保が間に合わないのではないかと思っています。
 毎年この日が来るたびに考えるのですが、なかなか妙案は思いつかず、自分が進歩していないことに呆れる日でもあります。

小さな子の避難で気をつけること

災害下で避難するときの格好の一つ。できるだけ肌は露出させないこと。

 地震などの災害では、自分の荷物を背負って歩ける年齢であれば自分で歩いてもらった方が安全に避難をすることができることが多いです。
 ただ、大人とは異なる危険がありますので、今日はそのことに少しだけ触れたいと思います。

1.粉じんを意識する

 地震後や水害後など、災害時や災害後には地面から1m程度はさまざまな粉じんが舞っている場合が多いです。
 地面を見るとうっすらとかすんだように見えることもありますが、小さな子はその中を自力で突っ切っていかなければなりません。
 その時、目や呼吸器に粉じんが入ると炎症を起こしたりさまざまな呼吸器や目の病気が発生することがあります。
 そのため、ゴーグルとマスクは必須アイテムだと考えて下さい。
 ゴーグルは水泳用、マスクも普通のもので構いません。なるべく粉じんに触れる時間や量を減らすことが目的です。
 また、粉じんを身体につけないために、避難中は夏場であってもポンチョのような雨具を着て肌の露出を防ぐようにするとかぶれたりせずにすみます。また、自転車用で良いのでヘルメットを被っておくとより安心です。
 非常用持ち出し袋にいれる救急箱の中には、目薬と保湿剤は必須、余裕があればうがい薬を入れておくと粉じんによるさまざまな病気を防ぐことができます。

2.できる範囲で自分のものは持たせる

 小さな子だとついつい大人が全ての荷物を持ってしまいがちになりますが、もしもはぐれたとき、子どもの荷物を全て大人が持っていると、子どもは何もできなくなってしまいます。
 幼稚園や保育園ではリュックサックで自分のものを持って移動するような日常を過ごしていることも多いと思いますが、自分の持てる量でいいので、水、食料、着替え、そして名前や連絡先を記入したパーソナルカードを必ず持たせるようにしましょう。
 また、水や食料については持っているだけでなく、いざというときに食べたり飲んだりできるように練習もしておくようにしてください。

3.靴は滑りにくいものを普段から履く

 小さな子の靴は、どうしてもデザイン優先になりがちですし、長距離を歩けるようになっていないものも多く見られます。
 ただ、災害時には自力で避難することが原則となりますので、靴底が滑りやすいような構造のものだと危険になりかねません。
 地面がしっかりとグリップできるような靴を普段から履かせるようにしてください。
 場合によっては、長靴なども選択肢にはいるかもしれませn。

4.両手を空ける

 小さな子はちょっとしたことで身体のバランスを崩しやすいので、非常用持ち出し袋は必ずリュックサックにします。
 そして、空いた両手には軍手でいいので手袋をつけるようにしてください。
 そうすることで、がれきの間をバランスを保って移動するときや転びかけたときに手をついて身体の安全を確保することができます。

5.普段から地域を歩いておく

写真を撮るといろんな変化が分かって面白い。

 歩く習慣をつけておくことで、いざというときでもへたらずに避難することができます。
 特に田舎では移動手段が車ということも多いですから、どうかすると一日に歩く歩数が千歩いかないこともあると思います。
 意識して歩くこと、できれば家族で散歩する習慣をつけて、家の周りにどんなものがあって、どこが安全か危険かを確認しておくと、最悪こどもだけでも安全に避難できる確率が上がります。
 また、会話することで家族の仲もよくなりますし、歩くことはいろいろな意味で身体にいいです。

 どれくらいの年齢から自分で自分の荷物を持って歩けるのかという質問をいただくことがあるのですが、それはその子次第という回答をしています。
 歩き慣れていない子は小学生になっても難しい場合もありますし、年少さんでも自分の荷物をもってトコトコと歩ける子もいます。
 普段から子どもといろいろとやってみたら、その子がどういった状態になるのかはわかると思いますので、しっかりと子どもの様子を見て、その子にあった準備をするようにしてください。
 ちなみに、幼稚園や保育園では避難訓練をやっていると思いますので、その様子を見学させてもらうとわかりやすいかもしれません。

 また、ぬいぐるみとリュックサックの選択で悩まれていた保護者の方がおられましたが、子どもが安心できるなら、ぬいぐるみは持って避難して下さい。その時、ぬいぐるみが粉じんまみれにならないように、ビニールなどでくるんでおくことを忘れないようにして欲しいと思います。

 いずれにしても、こどもは親が思っているよりはずっとタフです。ちょっとしたことでいろいろなことができるようになりますので、一緒に楽しんで災害対策をしてみてくださいね。

おんぶはできる?

写真はおんぶできるモンベルのリュックサック。抱っこひもおんぶ紐兼用のものも出ているそうです。

 先日、研修会で助産師さんのお話を聞く機会がありました。
 その中で、「最近の子育てではあまり子どもをおんぶせず、おもに抱っこで対応している」とのお話があり、乳幼児の避難では子どもをおんぶしてくださいという説明をしている身としては、ちょっと気になって講師の方にお話を伺ってみました。
 話を聞いてみると、最近の抱っこひもはおんぶ紐にもできるようになっているそうで、おんぶ紐自体がなくなっているわけではないとのこと。
 ただ、普段抱っこでしか使っていない抱っこひもを、災害からの避難だといって急におんぶをすることは難しいのではないかというお話でした。
 抱っこではどうしても重心が前側に来るため、地震の揺れに遭遇すると高確率で転んでしまったり、避難するときの移動の安定も悪いのではないかとの認識を伝えてみると、助産師さんもおんぶをすることに慣れてもらうことが大切だし、おんぶは子どもにもいいのではないかと思っているという回答をいただきました。
 親と同じ目線で同じものを見ることができるのは、おんぶしているときにしかできない特権です。
 子どもの顔を見ながらあれこれするのは安心ですし、目の前にいることで話しかけやすいのも確かなのですが、やはり災害時の避難のときまで抱っこというのは危険なのではないかと感じています。
 おんぶはおんぶしている側の腰の負担の抱っこに比べると軽くて済みますから、もっとおんぶする機会を設けてもいいのではないかと思います。
 「やったことのないことはできない、やり慣れないことはうまくいかない」から訓練するのが防災の考え方です。
 いざというときに備える意味でも、普段からある程度はおんぶしておくことをお勧めします。ちなみに、下でご紹介しているのは4種類の抱き方ができる抱っこひも。リンク先の紹介文では20kgまで対応しているそうなので、値段はしますが選択肢として考えてみてもいいのかなと思っています。これに限らず、もしもこれから準備するのであれば、おんぶ機能をもった抱っこひもを準備するようにしてくださいね。

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簡易トイレと猫の砂

 大規模避難所などで多くの人が避難する場所では、トイレの衛生環境が急激に悪化することがあります。
 特に水洗式トイレの場合には、断水が発生すると水で流せなくなった汚物がどんどん溜まっていき、大惨事になることもよく起こります。
 そうならないためには、断水が発覚した時点でトイレの使用を一時的に禁止すること。そして早急に流すための水を確保することです。
 水が確保できた上でトイレの利用を再開すれば、臭気や汚染を防ぐことができます。
 ただ、水が確保できない場合にはいつまでもトイレを使用することができませんから、念のために簡易式トイレの準備をしておいたほうがよさそうです。
 簡易式トイレには持ち歩くのに便利な個包装型と多くの人が使うのに適した大人数用があります。
 準備するのはどちらでもいいですが、利用するにあたっては排泄を見られないようにするための工夫も考えておいてください。

 また、臭気という点では猫の砂が非常に優秀です。
 もし猫を飼っているのであれば、猫の砂の常備量を増やして非常時に備えるのは有効だと思います。
 猫の砂の難点は、人が用を足すとあっという間に砂がなくなること。
 また、人が猫の砂を使っていると、猫が怒るかもしれません。
 いずれにしても、水や食料だけでなく排泄にも目を向けて、どのように準備したらいいかについて考えておくことをお勧めします。

口の衛生を保つ

 非常用持ち出し袋の中身としては非常に地味な存在ですが忘れてはならないものに歯ブラシがあります。
 災害時には、普段にもまして口の中の衛生環境を維持するように意識しないといけませんが、食事や水、簡易トイレは入れても歯ブラシを入れ忘れることがよくあります。
 ティッシュや歯磨き用のクロスでもいいのですが、歯茎への刺激や歯間の衛生を維持するのには歯ブラシがあったほうが衛生環境を維持しやすくなります。
 歯ブラシを持って行くということは、うがいもする必要がありますから、そのための水も確保しておく必要があります。
 災害時であろうとも、一日一回でいいのでしっかりと歯磨きをする習慣を忘れないようにしたいですね。

水と食料

 非常用持ち出し袋に入れるものの中で頭を悩ませるものに水と食料があります。
 入れなければいけないことはわかっていても、水であれば「量=重さ」ですし、食料も何を用意すればいいのか考えてしまうと思います。
 防災関係の資料を見ると、一般的には成人一人が一日に必要な水の量は2~3リットルとされていますが、これはあくまでも目安なので、自分がどれくらい水分を摂取しているかを知っておいてください。
 人によって、一日3リットルでは足りない人、2リットルでも多い人、さまざまだと思います。目安はあくまでも目安。自分の消費量と、自分が持って移動できる量のバランスで考えればいいと思います。
 持って歩くのであれば、2リットルのペットボトルよりも500mlのペットボトル4本の方が運ぶにも使うにも便利です。あくまでも自分で持ち歩ける量を前提に検討してください。
 そして食料ですが、非常食とはいえ、食べ慣れないものを食べて、それが口に合わなかったら一気に気落ちしてしまいます。
 備えようと考えている非常食があれば、とにかく一度は食べてみることです。そうすることで、自分がよりおいしいと感じる非常食を準備することができますし、食べる過程で作り方やできあがりの分量を確認することができます。
 しっかり噛むのが難しい人であればレトルトパックのおかゆは重要な食料になるでしょうし、乳児がいるのであれば液体ミルクを準備しておくといいと思います。

 非常食というとアルファ米を思い浮かべる方も多いと思いますが、常温保存できて作る場所を問わない食料であれば、非常食としては問題ありません。
 人によっては非常食でポテトチップスを準備しているかたもいますが、それも有りです。どんなときにでも自分が食べやすい食事を準備しておきましょう。
 また、一食一品ではなく、最低もう一品。つまり主食と副菜を考えて用意しておくと気分的にご機嫌になれます。
 重要なのは、いかに普段の生活に近い環境を維持できるかということですので、普段の食生活を意識しながら非常食の準備をするようにしてください。

非常用持ち出し袋のかたち

 「非常用持ち出し袋はリュックサック」だと言われていますが、なぜリュックサックでないといけないのかを考えたことがありますか。
 リュックサックは背中に背負った形で固定ができるため、両手が自由になることと重心が背中にあるため、移動するときに変な方向に引っ張られたり、ひっかかったりしなくても済むという利点があります。
 ただ、これは災害発生後に避難する場合に有利と言うことであり、災害が予測されるときにする予防避難の場合には無理にリュックサックにする必要はありません。
 普段お使いの肩掛けカバンや手押し車、旅行用のキャスター付きのカバンでも問題はないわけです。
 早めの避難を心がけるのであれば、袋の形はさほど意識しなくても構いません。
 どちらかというと、カバンの形状よりもカバンをどこへ置くかの方が大切です。玄関や裏口、倉庫など不意にやってくる地震のときに持ち出すことができる場所に分散して置いておくのがコツです。
 もう一つ付け加えるなら、最優先で守るべきは自分の命です。もし非常用持ち出し袋が見つからないようであれば、探すのに固執せず、逃げ出すことを優先してください。
 ちなみに、リュックサックでもその形状によっては非常に背負いにくい、あるいはものが入れにくいものがありますので、改めてリュックサックを準備する場合には、口の広くて大きいものを選んだ方が使いやすいです。
 登山用のリュックサックなら、口が広く、重量物にも耐えられる設計になっているのでお勧めですよ。

装備によくあるホイッスル

 防災時に持ち出すさまざまなアイテムの一覧表を見ると、かなり高い確率でホイッスルが入っています。
 これは生き埋めや孤立状態になったとき、声を出さなくても音で周りに自分の所在を知らせるために入っているのですが、防災セットを背負った状態で、必要な状況になったときにこのホイッスルを吹くことが可能でしょうか。
 例えばホイッスルが肩当てや胸ポケットに入っていれば吹くことは可能かもしれません。
 でも、買ってきたそのままの状態で保管されていた場合、ホイッスルを吹こうと思ったら相当な手間がかかりますから、生き埋めや閉じ込められている状態では、吹くことはかなり難しいのではないでしょうか。
 つまり、自分が助かる目的でホイッスルを準備するなら、常にすぐ取り出せる場所につけておかないと意味がないと言うことです。
 ホイッスルの構造に関して言えば、できるだけシンプルであることが望ましいです。
 照明とセットになっていたり、中に自分の情報を記載したパーソナルカードを収納できるものもありますが、異なる機能のものを一緒にすると、本来のホイッスルの目的が達成できないものが多いので選ぶときには単純なものをお勧めします。
 その中でも、水に濡れたり埃の中でも吹けるように、本体内に音玉のない単管タイプのものがおすすめです。また、市販品でも「防災ホイッスル」としていろいろ販売されています。
 値段は単純な単管のものよりは高くなりますが、値段の分だけ性能はしっかりとしていて、例えば人に聞こえやすい周波数を出すとか、少ない息でも大きな音が出せるとか、値段相応の付加価値がつけられています。
 もちろんそうでないものもたくさんありますので、選ぶときには自分にあったものをよく考えて選ぶようにしてください。
 それから、別に一本だけ持つことにこだわる必要はありませんので、安いものをあちこちに入れておくというのも一つの方法です。
 自分がやりやすい方法を考えて準備しておきましょう。
 ちなみに筆者の場合、ホイッスルは家や車の鍵の束に一緒につけています。
 四半世紀くらい前に防災研修会でもらったものですが、単純な単管式で管自体が肉厚のおかげか、未だにしっかりと甲高い音が出せます。
 たまに音を出してみて、どんな音がするのかも試しておいてくださいね。

Twitterの災害時の使い方マニュアルができました

 災害時に活躍するSNS。
 LINEやFacebook、Twitterといった様々な媒体がさまざまな情報をリアルタイムに発信していて、支援や救助に威力を発揮しています。
 ただ、あまりにいろんな人が情報を発信することで、デマや誤報、情報の古さなどにより見ている人が混乱してしまう現状も出てきています。
 そんな状況でfukko_design、Twitter社、JVOADなどが中心となって、災害でも活用できるTwitterについてわかりやすく整理したものが公表されることになりました。
 SNSを使っている人は、Twitterに限らず参考になることがわかりやすく書かれていますので、以下のリンクから是非一度目を通しておいてください。

#Twitter防災(fukko_designのnoteへ移動します。)

コーピングリストを作っておこう

 コーピング、とは聞き慣れない言葉かもしれませんが、災害や事故など何らかの事情で精神に負担がかかる状態を解消するための方法だと考えてもらえばいいと思います。
 精神に負担がかかる状態、よくストレスと言われますが、このストレスを与えるものが無くなるのがストレス解消には一番の解決法です。
 ただ、大抵の場合にはストレスを与えるものが無くなることはありません。
 そこで、何か起きたときに自分が安心できたり落ち着いたりできる方法を紙などに書き出して平常時にリスト化する、このことをコーピングリストを作ると言います。
 そのリストを普段からいろいろと試してみると、その方法が自分のストレス解消に向いているかどうかがわかると思います。
 具体的には、ストレス解消なので、ある程度は自分が楽しいと感じられることが要件になると思います。
 それが寝ることでもダンスすることでも音楽を聴くことでもいいです。なるべくたくさん見つけておきましょう。
 そして、いざストレスを感じたときにその厳選されたリストに載っているあれこれをやってみることで精神的に落ち着きを取り戻すことができます。
 短い期間であれば我慢するのも一つの方法ですが、長期戦ではそういうわけにもいきません。
 心を折らないためにも、自分が楽しいと思えることをリストにして、ストレス解消の準備をしておくようにしてくださいね。