「災害エスノグラフィー」をご存じですか。
災害時に起きた出来事と対応を対応した本人に赤裸々に書いてもらい、それをつなげたり組み立てたりすることでその災害でどのような判断とどのような行動が行われ、その結果何が起きたのかを検証するための作業です。
「知」の共有とも言われるこの作業は、実際に起きたことを追体験することでどのようにすればよりよい判断ができたのかを検討していく作業で、当然判断のミスやありえない行動などもたくさん出てきます。
聞き取ったことにより発言者が不利益を被らないように、一般公開が数十年後になるという場合もありますが、その時に何を考えて行動し、その結果どうなったのかを検証することは、同じ状況に置かれたときに必ず参考になるものです。
最近では被災地で被災者に対して聞き取りが行われることも多く、例えば広島県では平成30年に起きた7月豪雨で避難した人避難しなかった人から当日の行動や考えを聞き取り、「私たちはなぜうまく避難できないのだろう」という災害時の行動事例集を作成しています。
記憶は、良くも悪くも風化していきます。記録も、保全しようという意思がない限り、やはり風化していくものです。
風化を防ぐためには、記録を元に追体験をし、記憶をしっかりと固定させることが必要となります。
災害ではもはや「想定外」という発言はできなくなりつつあります。
各地で発生した災害で起きたさまざまなことをしっかりと検証して次につなげていくこと。
災害エスノグラフィーは、その手助けをしてくれるものです。
災害エスノグラフィーについては、少し前になりますが「防災の決め手「災害エスノグラフィー」~阪神・淡路大震災 秘められた証言~」という本も出ていますから、興味のある方はご一読いただければと思います。
「私たちはなぜうまく避難できないのだろう」(広島県のウェブサイトへ移動します)
防災の決め手「災害エスノグラフィー」~阪神淡路大震災・秘められた証言~(Amazonの書籍紹介のサイトへ移動します)