家の周りのお片付けと防災

 突然ですが、あなたのおうちの外回りはきれいに片付いていますか。
 水害や台風といった大きな災害がくるとわかっているときには来るまでのところできれいに片付けて風で飛びそうだったり水で流されそうなものは片付けたりしますが、できれば普段から片付けておきたいものです。
 というのも、竜巻や突風といった予告なしにくる強い風が吹くと、無防備に散らかしていた様々なものが風で吹き飛ばされてあちこちに散らかってしまいます。
 その中には道路に落ちて通行を妨げたり、飛んでいった先で建物を壊したりガラスを割ったり、へたをすると人にぶつかって怪我をさせることになっているかもしれません。そういったことを防ぐためにも、普段から家の周りはきちんと片付けておくことをお勧めします。
 全部を片付けるのが難しい場合には、風の吹く方向を確認して、風の影響を受けそうな場所だけでも片付けておくとかなり状況が違うと思います。
 風だけで無く、地震の際にも、片付いていない場所では大きな損害が起きる可能性がありますから、片付いておいて損はありません。
 もう少しすると年末大掃除をされることもあるのではないかと思いますが、その際に風にものが飛ばされないようにする対策についても考えておいてくださいね。

防災マップは見えるところに貼っておこう

 あなたは防災マップを作っていますか。
 防災マップというのはハザードマップのことではありません。ハザードマップに地域の安全な場所や危険な場所、避難経路、避難先などを記入して作るあなたの命を守るための防災マップです。
 この防災マップを一度作っておくと、自分のいる場所の情報が一目で確認できるため、現在の安全度や避難についてイメージがしやすくなります。
 もしも作っていないのであれば、一度DIGをやって作成してみてください。
 そして、それができるまではとりあえずのつなぎとしてハザードマップを見やすいところに貼っておきましょう。
 見やすいところに貼ってあると、いざというときにすぐに確認ができます。また、普段から見るところに貼ってあれば、無意識に周辺の状況を覚えていたりするものです。
 ハザードマップにしても防災マップにしても、見てすぐに片付けてしまうのでは何の役にも立ちません。
 こういった地図は使い込んでこそ価値が出てきますから、例えば玄関やトイレ、廊下や居間など、普段から目につきやすいところに必ず貼っておいて、いざというときに大切にしすぎてしまったところがわからないというようなことがないようにしたいものですね。
 余談ですが、災害対策に意識のある地域では、例えば居酒屋のトイレや駅、地域の掲示板などさまざまなところにハザードマップが貼ってあることに気づくと思います。
 災害対策については、知らなかったということを正当化できる理由はありませんから、普段からの意識付けの一つとして、自宅の中だけでなく、さまざまなところに貼っておくといいと思います。

非常用持ち出し袋の防水について考える

 水害や津波からの避難時には身体が濡れてしまうことがあるかもしれません。
 また、非常用持ち出し袋の中が浸水してしまうことがあるかもしれません。
 避難した後に濡れた服などを乾いたものに着替えるのは絶対に必要なのですが、それを行うためには乾いた衣服があることが大前提となりますが、非常用持ち出し袋に入れてあるさまざまなアイテム類の防水はしっかりとできていますか。
 衣類やタオルだけでなく、濡れては困るものが非常用持ち出し袋にはいろいろと入っています。防水型のリュックサックを使用するのも一つの方法ですが、それでも中に水が入らないと断言することは難しいと思いますので、アイテム類をそれぞれ個別に防水対策を施しておくことをお勧めします。
 防水対策といっても、それぞれのアイテムをジップロックのような水が入らない、漏れない袋に収めるだけ。
 下着類やタオルといったものを複数入れてある場合には、それぞれを個別に包装をしておくと、袋に穴が空いたときでも被害を最小限に食い止めることができます。
 防水リュックに防水対策をした各種アイテムを収めておけば、少々の水は気になりません。命を繋ぐための非常用持ち出し袋がずぶ濡れになって中のアイテムが使えなくなっていたという悲しい事態を防ぐためにも、防水対策はしっかりとしておいたいですね。
 ちなみに、完全防水と生活防水と防滴は意味が異なります。
 具体的なしっかりとした定義はないようなのですが、完全防水は文字通り完全な防水対策ができていること。水に落として水没してもきちんと使えることが前提です。
生活防水は生活するときに水没したら使えないかもしれませんが、雨や水が連続してかかってもきちんと使えるようになっています。最後の防滴は、生活の中でかかる水滴がかかってもきちんと使えるというのが条件です。
 参考までに、時計やスマートフォンなどの電気機械類ではIP(International Protection:国際電気標準会議やJISで定める電気機械の防塵・防水保護構造の等級のこと)という明確な基準が定められています。
 IPの後に続く二桁の数字のうち、最初の数字が防塵性能、末尾の数字が防水性能を表しています。該当するそれぞれの中身については以下のリンク先を参照してください。

電気機械器具の外郭による保護等級(wikipediaに移動します)

ブルーシートを準備する

ブルーシートは厚さもサイズもいろいろとある。値段と性能がほぼ比例するアイテム。

 地震で被災した後、家の復旧時に必要にして手に入らなくなるものの一つにブルーシートがあります。
 建設現場などで使うことが多い青色のビニールシートで、被災した家屋の屋根や壁などの応急修理に必ずと言って良いほど登場します。
 大阪北部地震などで屋根にブルーシートがかかったたくさんの家を覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 避難所の場所取りや間仕切り、屋根や壁の応急修理資材、場合によっては仮設テント、家の中のものを一時避難させるための仮置き場など、使おうと思うといくらでも用途があるので大規模災害になると数ヶ月程度は手に入らなくなることもありますが、家屋の応急修理では早さが必要となります。屋根などは、雨が降る前にブルーシートをかぶせて雨漏りしないようにしておかないとそこから入ってくる雨や湿気で家が駄目になってしまうこともありますから、屋根を覆えるくらいのブルーシートは備蓄しておいた方がいいでしょう。
 ただ、このブルーシート、基本は消耗品ですので数年もすると劣化していくことがありますから、なるべくしっかりとしたものを光の当たらない劣化の進みにくいところに保管するようにしましょう。

水防用に土のうとブルーシートで堤を作る。案外と丈夫だが、ブルーシートがないとできない。

 また、ブルーシートは水害時に土のうと一緒に使うことで応急的な水害対策もできますので、やり方を知っておくと浸水対策時に助かると思います。
 なお、ブルーシートについては以前触れたことがありますので、そちらを参照していただければと思います。
 これからの季節、水害はあまり心配しなくてもいいかもしれませんが、大きな災害が起きる前に準備しておきたいですね。

備えるべき災害を知っていますか

 あなたがお住まいの地域やお仕事や勉強をしているところではどのような災害に気をつけたら安全が保てるのかについて考えたことがありますか。
 防災の第一歩は、まず自分のいる場所がどのような災害に弱いのかを知るところから始まります。
 低地であれば水害や高潮などに気をつけないといけないですし、山や崖の近くであれば山の崩壊や地すべりに注意しないといけないでしょう。
 そんな地域の様子を知るのに役に立つのがハザードマップと過去の伝承です。
 ハザードマップでは、ある想定下においてどこでどのようなことが起きるのかについてが整理されて地図を作っていますから、これを見ることである程度の予測がつきます。その上で、地域の過去の災害伝承を調べてみると、思いもよらなかったところで災害が起きていたりして備えるべき災害が増えたり変わったりすることもあります。
 もちろん災害対策が取られて昔ほど大騒ぎしなくてもよくなっているところもたくさんあるのですが、よく起きる災害の参考にはなるでしょう。
 その上で、あなたが備えるべき災害を確認し、その災害対策を優先的に準備するようにすると、効率的に用意をすることが可能です。
 最後に一つだけ。地震だけは日本のどこに住んでいても備えておく必要があります。
 日本の国土が地震からは逃れられない構造になっているので、地震対策だけはどこに住んでいてもしっかりと行うようにしてください。
 命を守ることが最優先です。あなたのいるところの災害を確認するところから始めてくださいね。

避難所にテントを持って行く

写真のテントは5人用。寝るスペースと荷物を置くスペースしかないが、避難所での設営には向く。

 コロナ禍での避難所運営では行政や避難所運営委員会の方々が試行錯誤しながら安全に避難所を運営するための手法について検討されています。
 現時点での安全策として、140cm以上の仕切りを建てることや2m以上の間隔を空けるといったことがルール化されつつあるようですが、仕切りが準備してある避難所は現状では皆無なのではないでしょうか。
 ブルーシートや新聞紙などで仕切るという方法も考えられているようですが、自分の安全を確保するという視点から、自立式のテントを準備しておいてはいかがでしょうか。
自立式のテントであれば屋内屋外問わずに使うことが可能ですので、避難所でも屋外でも避難先として使うことが可能です。
 スペースの問題はあるのですが、避難者一人あたり1×2mのスペースがあれば、自立式テントは充分に立てられます。
 以前に乳幼児向けに日よけテントを持参しようということを書きましたが、自立式テントであれば生活を人に見られなくても済み、その分のストレスは軽減できます。
 新型コロナウイルス対策とプライバシー保護をかねて、非常用持ち出し袋と一緒に自立式テントを用意しておくと便利だと思います。

子どもが避難したイメージ。風の通りが悪いので、夏場は風向きや排熱に注意が必要。

 自立式テントはアウトドアメーカーに限らずさまざまな商品が売られていますが、サイズがいろいろとあります。
 快適な生活空間を維持するための大きなテントもありますが、それを避難所に持ち込むとトラブルの元になりますので、適当な大きさのテントをご検討ください。

DIGをやってみよう

地図に情報を書き足していくことで防災マップが出来上がる。写真はとある仮想町を使っての演習。

 DIGというのをご存じですか。参加する人が地図を囲み、ゲームのように災害時の対応策を考える図上訓練のことで、Disaster(災害)、Imagination(想像)、Game(ゲーム)の頭文字をとってDIGと呼ばれています。
 一枚の大きな地図を用意してそこにハザードマップの内容や道路や水路、危険に見える建物や構造物、病院や薬局といった施設などを書き込みをしながら地域の強みや弱みを洗い出していきます。
 対象とする災害やテーマを絞れば短時間でもできますし、一人でも複数人でも楽しみながら作ることができます。
 また、情報を一枚の紙にまとめて図化するので誰でも理解できるものができますから、参加した人だけでなくその地図を見る人達の防災力の向上も期待できます。
 聞くと少しだけ取っつきにくい感じがしますが、実際にやってみると非常に面白く、意外な発見があったりしますから一度やってみることをお勧めします。
 参考までにDIGの作り方について記載したウェブサイトをご紹介しますので、興味のある方はぜひ覗いてみてください。

DIGってなぁに?」(静岡県庁のウェブサイトへ移動します)

マイタイムラインを準備していますか

 災害というのを大きく分けると、地震のようにいきなりやってきて被害が発生するものと、台風や大雨のようにある程度被害が来るのが予測できる時間があるものがあります。
 地震の訓練はシェイクアウトから安全な場所への避難という一連の流れが訓練されていることが多いのですが、被害が来るのが予測できる時間があるはずの台風や大雨の訓練というのはあまりされていない気がします。
 短時間に大量の雨が降って排水量を超えたことによる内水面越水のような事態ならともかく、そうでない場合には安全を確保して備えるための時間が与えられています。
 この時間をどのように使うのかということと、自宅の危険性、そして避難が必要だとするとどの時点で避難を開始すべきなのかといったことを事前に決めておくことをタイムラインといいます。
 なくても問題ないという人もたくさんいらっしゃるのですが、いざその時になってみると例えば避難の開始などのタイミングを決めかねてしまって、結局救助をしてもらわないといけなくなったといったことがよく起こりますので、安全なときにこそ災害時の自分の動き方の計画を立てておきましょう。
 タイムラインでは、「いつ」「誰が」「どこで」「どうなったら」「どんな行動をとる・どんな準備をする」ということを決めておきます。
 作るときのポイントは、資材の調達などは少し早めに行動をするということ。
 例えば大型台風による被害が想定される場合に、台風の来る前日、前々日にガムテープを用意するとタイムラインに書き込んだとしても、お店になければ調達ができません。
 一例を挙げてみますと、令和2年8月31日に大型の台風10号が発生しました。
 9月2日くらいから気象庁が警戒を呼びかける情報発信を始めます。9月3日には特別警報級の勢力になって沖縄・九州奄美地方に接近上陸する恐れがあるとの情報も発信されました。
 9月4日夕方には925hpaまで気圧が下がり、台風が西日本を直撃するという進路予測も出、マスコミがこぞって取り上げたせいでしょうか、台風に備えてさまざまなところが計画休業などを行うところがかなり出てきました。
 9月3日から、とあるホームセンターの養生テープとガムテープの棚の動きを定点観察していたのですが、3日は通常どおり、4日には棚に空欄が目立つようになり、5日には在庫がなくなっていました。
 このことから考えると、人が動く前に必要な部材を確保しておく必要があるということがわかると思います。
 その資機材の調達タイミングは意識しなければ殆どの人が同じ時期に集中してしまいますから、わかっているのならばそれ以前に調達しておくことで確実性を揚げることができます。そういったさまざまなタイミングを決めておくのが、マイタイムラインというものなのです。
 条件を満たしたら、そこでは考えずに定めてある計画どおりに行動をする。決めてないから迷うので、スイッチと行動を決めておけば確実に安全を確保することができます。
 タイムラインは簡単にできて絶大な効果のあるものですから、ぜひ一度作ってみることをお勧めします。

耐震化する意味

 各自治体が耐震補強に対する補助を行っているようですが、なかなか耐震補強が進んでいない現実があります。
 一般住宅に限らず、会社や古いビルなどでも耐震化が進んでいないのですが、予算がないからといって後回しにしていい問題ではないことに気づいている方がどれくらいいるのかなと考えます。
 震度6強以上の地震に遭った場合、古い家や会社、ビルなどは倒壊する危険性があります。
 石西地方でもいつ揺れてもおかしくないと言われている弥栄断層が存在していますが、これが動くと最大でマグニチュード7.7程度の地震が起きる(政府地震調査研究推進本部)と予測されています。
 情報が少ないためにいつ頃動くかは不明ですが、いつ動いても不思議ではないということでもあるので、今この瞬間にも揺れるかもしれません。
 でも、もし地震が発生したら、その時になって慌てて地震対策をしようとしても手遅れです。地震で生き残るためには、とにかくものの下敷きにならないことですが、古い家屋に人がいて倒壊した場合、かなりの確率で圧死することになってしまます。これは運が悪かったでは済みません。耐震補強しておけば助かったわけですから、想定外では無く人災になるわけです。
 特に会社やビルなどで倒壊が起きたとしたら、耐震補強にかかる経費以上にさまざまな出費を強いられた上に信用まで無くなるという、ある意味では致命的なダメージを負いかねない状況になります。幸い建物全てを耐震補強しなくても一部を補強したり一室だけを補強するなど、最近ではいろいろな方法がありますので、いくらかお金をかければ対策は充分に取ることが可能な時代になっています。
 地震の怖いところはいつ来るか分からないところですが、地震は地面が揺れるだけですから、対策さえきちんとできていれば死ぬ可能性を下げることができます。
 繰り返しになりますが、地震で倒壊した家屋の下敷きになって圧死することは想定外ということができません。
 耐震補強は高く感じるかもしれませんが、あなたや従業員、関係する人のの命の値段と考えてみたら、それでも高いと感じますか。
 かけた費用の分だけは確実に安全が確保できる。そういう意味では、地震は相手にしやすい災害なのかもしれませんね。

ハザードマップの検証をしていますか

DIGの風景
地域の強み弱みを知って考えよう

 各自治体ではハザードマップを作成して自治体内の世帯に配布していますが、あなたは見たことがありますか。
 ハザードマップは特定の条件下での被災状況を図化したもので、自治体や地域の避難計画作成の基礎となる資料の一つです。
 これには地震や浸水害、土砂崩れの危険性が色分けで表示されていて、とりあえずの危険な場所がわかるようになっており、あなたが避難計画を作るときには必ずこれを見ているはずです。
 ハザードマップの検証では、自宅からの避難だけでは不十分です。勤務先や通学先、途中の経路、よく買い物や遊びに行くところ、そして自分が避難すべき避難所の災害対応状況といったものも確認しておかなければいけません。
 避難所は災害から身を守るために避難するところなので、避難すべき避難所がどのような災害に対応しているのかを正確に把握しておかなければ、避難した避難所で被災したと言うことになりまねません。
 想定される災害のハザードマップに、地域の災害伝承の情報を追加すると、より安全な避難を行うことができるようになりますので、分かる範囲で確認して追加しておきましょう。
 避難経路は状況や環境の変化によって常に見直しが必要ですし、地域としての防災マップ作りも必要となるでしょう。
 今住んでいる場所だけでなく、自分が行きそうな場所の経路と安全性を確認しておいて、いざというときに備えたいですね。