避難所の開設・運営方法を確認しておこう

 島根県では、避難所を開設するのは市町村が基本になっているようですが、災害時には職員でないと対応できない事が加速度的に増えていくので、災害時にあってはできる限り地域にお任せしたいところだと思います。
 本当は平時から避難所運営委員会を立ち上げて誰がどのような権限をもって何をするのかをしっかりと決めておきたいところですが、地域コミュニティがしっかりしているところばかりではありませんので、それを決めるところに至るまでが大変なようです。
 ただ、避難所の設営や運営について具体的にどのようなことをするのかについては、ぼんやりとしたイメージしかないのではないでしょうか。
 勘違いしがちですが、避難者はお客様ではありませんので、避難所の運営や維持について自分たちで出来ることは当然自分たちでやらなければなりません。
 避難所の開設手順や運営については、さまざまな地方自治体がマニュアルと設定していますが、今回はいろいろと見た範囲で筆者がわかりやすいと感じた千葉市の避難所開設・運営の映像をご紹介したいと思います。
 避難所の開設基準やトイレの状態、備蓄品の状態などはさまざまな自治体ごとに異なりますので全てがその通りになるわけではありませんが、必要な手順はきちんと触れられていて一通りの流れが理解できると思いますので、よかったら参考にしてください。

「避難所は住民の力で ~目で見る避難所開設・運営の流れ~」(youtubeのchibachityPRに移動します)

避難所の運営は誰がする?

 災害が起きて避難所が設置されると、それからは避難所運営という仕事ができます。
 ただ、この避難所の運営については誰が行うのかが結構曖昧な状態で置き去りにされていて、避難所になった施設の職員や教員、行政の職員、自治会関係者、どうかすると「自分以外の誰か」という方までいらっしゃいます。
 避難所は、本来はその避難所に避難する対象となっている地元の自治会や自主防災組織が運営をすべきなのですが、残念ながら開設時に準備した人がそのまま運営に巻き込まれてしまうというのが実際のようです。
 ただ、施設の職員や学校の教職員、行政職員は本来は災害時、災害後にやらなければならない業務が山積していて、避難所の運営にかかわっている場合ではありません。
 例えば、熊本地震ではある市町村で職員が全て避難所運営に出払ってしまったために応急復旧や被災地支援、支援受け入れといった本来行政がやらなければならない業務が全て停止し、現地に応援で派遣された他所の行政職員によってその市町村の災害対応業務が行われることになり、さまざまなことが遅れに遅れる結果となりました。
 また、ある学校ではその地に転勤してきたばかりの教員が避難所運営に巻き込まれてしまい、何も分からないまま右往左往する羽目になりました。
 その地元をよく知っている人が運営の主体となり、施設職員や教員、行政職員はそれぞれの立場から運営を支援するという状態を作れていれば、それぞれが自分の得意な部分で復旧や支援に取り組むことができるようになります。
 また、地域を知っているからこそ避難所の機能である「避難者の受け入れ」と「被災地区の物資や情報支援」という業務を効率よく行うことができます。
 「自分たちは素人だから」とか「税金払ってるんだから行政がやればいい」というスタンスだと、いつまでも復旧が前に進まず、結果的に自分が苦しむ羽目になっていきます。
 避難所をきちんと運営するためには、避難所の訓練だけでなく、いろいろな組織や行政との連絡や段取りをつけ、それを的確に避難者や住民に伝える必要があります。
 防災訓練をするのであれば、そこまで踏み込んだ訓練を行って、いざというときにきちんと機能する避難所運営をしていきたいものですね。

避難所の種類と機能について考える

 災害が起きると、住民の避難先として注目されるのが避難所ですが、行政側も住民側も避難所がなんなのかがよくわかっていない部分があるような気がします。
そこで、今回は避難所について改めて整理してみたいと思います。

1.避難所の定義

出典:国土地理院

 避難所には、「指定避難所」「一時避難所」「避難場所」があります。名前と表示マークは同じなのですが、定義がなぜか自治体によって異なっているので、ここでは石西地方の市町の定義でご紹介します。

①指定避難所(していひなんしょ)

 家が壊れたりして住めなくなった住民を収容して一時的に住居を提供するところです。地域の復興支援のためのボランティアセンターやそのサテライト、住民に提供する物資の集積所の機能を持ちます。

②一時避難所(いっときひなんしょ)
災害を避けるために一時的に避難をする施設で、災害が収まったら速やかに帰宅あるいは避難所に移動する必要があります。津和野町では住民が自主的に開設・運営する避難所を一時避難所として定義しています。

③避難場所(ひなんばしょ)
災害を避けるために緊急的に避難をする場所です。学校の校庭や公園など、安全の確保できる広い空間が指定されることが多く、災害後にここでそのまま過ごすのはかなり困難です。
熊本地震では自家用車で車中泊したり、被災者のテント村が設営されたりもしました。

2.避難できる災害の種類
内閣府防災が定めている避難所で定義する災害は次の5種類です。

①洪水・内水面氾濫
「○」避難可能
「×」水没するため避難不可
「△」水没するが上層階なら避難可能

②土砂災害(土石流、崖崩れ、地すべり)
「○」土砂災害の危険がなく避難可能
「×」土砂災害の危険があるため避難不可

③地震
「○」耐震・免震・制震構造等で新耐震基準に適合している施設及び公園や校庭
   など建物倒壊の影響のない場所
「×」地震で倒壊する可能性のある施設または倒壊する建物の影響を受ける場所

④高潮・津波
「○」標高10m以上の場所にある施設・場所
「×」標高10m以下にある施設・場所

⑤大規模火災
「○」大規模火災の影響を受けない施設・場所
「×」大規模火災発生時に何らかの影響を受ける施設・場所

このうち益田市は「大規模火災」の定義をしていません。また、津波については津和野町、吉賀町は該当がないため、益田市の基準を紹介しています。

上記の1と2で定義したものを看板にすると次のようになります。益田市、津和野町、吉賀町の3市町では、吉賀町のみがこの掲示をしているので、吉賀町の吉賀高校体育館のものをサンプルとして表示しています。

3.指定避難所の機能
 避難所というと避難している人のための施設というイメージがありますが、指定避難所のところでも触れたとおり避難者受け入れ以外にもさまざまな機能を持っています。よく誤解されるのですが、避難所に集積される物資は避難所の避難者専用ではありません。避難所は地区の物資集積所として地区全体の被災者支援に使われることが前提で物資が集まってきますので、避難所を運営する方はそれを必ず意識してください。
 また、行政から発信される情報も避難所に掲示されます。避難所は地区の物資と情報集積の基地として機能するということを覚えておいてください。
 もちろん、避難所は自宅が被災して住めなくなった人が身を寄せて生活する場所でもありますから、生活空間としての避難所と物資情報集積基地としての避難所を上手に切り分けて運営する必要があります。
 ただ、避難所の運営は行政がしない方が無難です。行政が運営するとどうしても「平等の原則」が働きますので、届いた物資が欲しい人全員に行き渡らなければ配布しないという事態が起こりえます。乳幼児やその母親、高齢者などの弱者と健常者が同じ扱いとなってしまうということは、体力の無い人は生き残ることができないと言うことになりますので、食料や水など生活に不可欠なものの配布優先順位をあらかじめ作っておくことをお勧めします。