災害が起きると、住民の避難先として注目されるのが避難所ですが、行政側も住民側も避難所がなんなのかがよくわかっていない部分があるような気がします。
そこで、今回は避難所について改めて整理してみたいと思います。
1.避難所の定義
避難所には、「指定避難所」「一時避難所」「避難場所」があります。名前と表示マークは同じなのですが、定義がなぜか自治体によって異なっているので、ここでは石西地方の市町の定義でご紹介します。
①指定避難所(していひなんしょ)
家が壊れたりして住めなくなった住民を収容して一時的に住居を提供するところです。地域の復興支援のためのボランティアセンターやそのサテライト、住民に提供する物資の集積所の機能を持ちます。
②一時避難所(いっときひなんしょ)
災害を避けるために一時的に避難をする施設で、災害が収まったら速やかに帰宅あるいは避難所に移動する必要があります。津和野町では住民が自主的に開設・運営する避難所を一時避難所として定義しています。
③避難場所(ひなんばしょ)
災害を避けるために緊急的に避難をする場所です。学校の校庭や公園など、安全の確保できる広い空間が指定されることが多く、災害後にここでそのまま過ごすのはかなり困難です。
熊本地震では自家用車で車中泊したり、被災者のテント村が設営されたりもしました。
2.避難できる災害の種類
内閣府防災が定めている避難所で定義する災害は次の5種類です。
①洪水・内水面氾濫
「○」避難可能
「×」水没するため避難不可
「△」水没するが上層階なら避難可能
②土砂災害(土石流、崖崩れ、地すべり)
「○」土砂災害の危険がなく避難可能
「×」土砂災害の危険があるため避難不可
③地震
「○」耐震・免震・制震構造等で新耐震基準に適合している施設及び公園や校庭
など建物倒壊の影響のない場所
「×」地震で倒壊する可能性のある施設または倒壊する建物の影響を受ける場所
④高潮・津波
「○」標高10m以上の場所にある施設・場所
「×」標高10m以下にある施設・場所
⑤大規模火災
「○」大規模火災の影響を受けない施設・場所
「×」大規模火災発生時に何らかの影響を受ける施設・場所
このうち益田市は「大規模火災」の定義をしていません。また、津波については津和野町、吉賀町は該当がないため、益田市の基準を紹介しています。
上記の1と2で定義したものを看板にすると次のようになります。益田市、津和野町、吉賀町の3市町では、吉賀町のみがこの掲示をしているので、吉賀町の吉賀高校体育館のものをサンプルとして表示しています。
3.指定避難所の機能
避難所というと避難している人のための施設というイメージがありますが、指定避難所のところでも触れたとおり避難者受け入れ以外にもさまざまな機能を持っています。よく誤解されるのですが、避難所に集積される物資は避難所の避難者専用ではありません。避難所は地区の物資集積所として地区全体の被災者支援に使われることが前提で物資が集まってきますので、避難所を運営する方はそれを必ず意識してください。
また、行政から発信される情報も避難所に掲示されます。避難所は地区の物資と情報集積の基地として機能するということを覚えておいてください。
もちろん、避難所は自宅が被災して住めなくなった人が身を寄せて生活する場所でもありますから、生活空間としての避難所と物資情報集積基地としての避難所を上手に切り分けて運営する必要があります。
ただ、避難所の運営は行政がしない方が無難です。行政が運営するとどうしても「平等の原則」が働きますので、届いた物資が欲しい人全員に行き渡らなければ配布しないという事態が起こりえます。乳幼児やその母親、高齢者などの弱者と健常者が同じ扱いとなってしまうということは、体力の無い人は生き残ることができないと言うことになりますので、食料や水など生活に不可欠なものの配布優先順位をあらかじめ作っておくことをお勧めします。