防災グッズと代用品

代用品作りの一つとして防災クラブでやっているゴミ袋で作る防寒着作成の一コマ。あるのなら普通に合羽の方が確実で安心。あくまでも代用品を知ることが目的の講座。

 防災グッズは防災用のためにだけ準備すると考えると場所をとってしまう厄介者になってしまいます。
 ローリングストックという言葉もありますが、必要なものを少し多めに準備することである程度以上はものを増やさず、生活の質も下げずにすむような災害への備えができると思っています。
 ここでよく聞かれるのが代用品の話ですが、代用品はあくまでも代用品でしかなく、そのために作られた道具と比べるといろいろな意味で不便を生じることになるので注意してください。
 よくあるのが、おむつの作り方。
 おむつがないときにビニール袋とタオルで作るよう書かれているものが多いのですが、避難生活を過ごすときにその代用品で凌ぐとすると、いったいどれ位の材料が必要になるでしょうか。
 タオルは吸水力はそこまで大きくありませんし、ビニール袋は蒸れて子どもの肌がかぶれたりします。汚れたタオルはそのままにしておくと汚臭が出てきますので、その処理についても対応が必要となります。
 本当に緊急時何も無い状態ならともかく、手間や発生する問題を考えると、紙おむつを1週間分くらい余計にストックしておいた方が役に立ちます。
 布おむつ派の人も、災害時には布を洗うことが難しい場合もよくありますから、数日程度凌げるだけの紙おむつを準備しておくようにしておきましょう。
 そして、心配だからといって大量にストックするのも御法度です。
 おむつが必要な年齢の子どもは、あっという間に大きくなりますので使える期間は短いです。そのため、目安としては1週間または普段使っているおむつを一袋多く準備しておくといいと思います。
 サイズアウトしたおむつは、例えば子どもの通っている保育園や子育て支援センターなどで使ってもらえないか聞いてみて下さい。割と喜んでもらってもらえることが多いです。
 そして、引き取り手がなかったからといって捨てる必要はありません。給水部分を何枚か重ねると、大人用の非常用トイレを作ることができます。これも代用品の一つですね。代用品のことは知っておいた方が絶対にいいですし、作り方もマスターしておいたほうがいいです。
 でも、最初から代用品で対応することは考えず、可能な限り普段使っているもので対応できる方法を考えておいてください。
 ちなみに、代用品としてよく出てくるビニール袋は、最近では地球温暖化やエコ問題から災害時に確実に手に入るとは限らない状況になっていますから、必要があれば非常用持ち出し袋に備えておくことをお勧めします。

「なぜそうなるのか」の理屈も知っておこう

 とある防災関係の講座で聞いた講師さんのお話です。
 あるところで防災講座を頼まれたその講師さんは、受講者と一緒にツナ缶ローソクを作ってみようと考え、依頼先のスタッフに「ツナ缶を用意してください」とお願いをしました。
 本番当日。ツナ缶ローソクの作り方を実演して見せた講師さん、最後の点火の場面で、ツナ缶ローソクにいつまでも火がつかずに慌てふためく羽目に。
 ツナ缶をよく見たら「水煮缶」と書いてあり、講師さんも受講者も「水煮じゃ火はつかないね」と原因がわかって大笑いしたそうです。
 講師さんは「ノンオイルのツナ缶」があることを知らず、依頼先スタッフは「ツナ缶ならなんでもいいのね」と思って準備した、その勘違いがこんな結果を生んでしまいました。

ツナ缶各種。左が水煮缶。上がノンオイルタイプ。右側が油漬けされているもの。一口にツナ缶と言ってもいろいろある。

 ツナ缶ローソクがなぜ燃えるのかと言えば、中にあるサラダ油が燃えてくれるのであって、ツナそのものが燃えているわけではありません。
 当研究所でも以前ツナ缶ローソクを作ったことがありますが、オイルが燃え切った後のツナ缶はしっとり気味のツナがきれいに残っていて、ロウソク使用後はおいしくツナをいただくことができます。
 オイルが入っていればとりあえず燃えると言うことはわかれば、例えばオイルサーディンなどの油漬けの缶詰であればロウソクがわりに使えそうだということがわかります。
 また、芯と燃える液体があればとりあえずのロウソクができることがイメージできれば、牛脂やバターなどでもロウソクが作れると言うことがイメージできるのではないでしょうか?
 災害時にはあるものでなんとかしないといけません。そのため、なるべく生活の質を落とさないための工夫をする必要があるわけですが、こういったちょっとした知識があるだけで「ツナの水煮缶」で「火がつかない?!」と慌てなくて済むわけです。
 世の中では防災時に使えるさまざまな代用品の提案がなされています。それを鵜呑みにするのではなく、なぜその代用品が使えるのかまで考えれば、他のもので代用できるかもしれません。
 さまざまな防災のテクニックやお話を聞くこともあるかと思いますが、道具の話では「なぜそんな風に使うことができるのか?」まで目を向けて見ていくと、いざというときに役立つと思います。