災害に関する講習会をするとき、地震とそれ以外とに分けて説明することが割とあります。
というのも、地震は予知できませんが、それ以外の災害は予測できること、そして発生する被害が違うことが挙げられるからです。
例えば、大雨や台風はある程度被害の発生は予測できると思いますが、地震の発生場所や被害を正確に予知できたケースは存在しません。
また、大雨や台風では水や土砂でものが埋まったりえぐれたりという被害が多いですが、あらかじめ被害が発生するであろう場所は予測ができます。
でも、地震では発生エリアの地中、地表問わずにあちこちが動いて予測できない被害が起きるのです。もちろん液状化現象など、地勢的に被害が予測できるものもありますが、何が起きるのかは起こってみないとわからないのが地震の怖いところです。
そのため、地震とそれ以外については説明を分けておく必要があるのです。
地震以外の災害は徐々に被害が予測できるので、災害発生前に自分の命を守るための手が打てますが、地震はいきなり襲っていますので、起きたときには終わっています。
何も起きない平時に対策を講じていない限り、地震は命を守るための手の打ちようがないのです。
災害をひとまとめにして説明をすると、聞いた人は地震のときにでも「起きることが予想できて、かつ起きてから避難の判断ができる」ような誤ったイメージに繋がります。
災害を考えるときには、いきなりやってくる地震と予兆のある地震以外の災害に分け、それぞれに対策をするようにしてください。
テレビとラジオと防災無線
テレビやラジオである地域の災害情報を提供したとしても、その地域でそれを見てすぐに避難やその他の行動を起こす人はどれくらいいるでしょうか。
また、同じ情報が防災無線で流れてきたとしたら、それを聞いた人はどんな行動をするでしょうか。
テレビやラジオなど、いわゆるマスメディアによる報道というのは、映像で見ても音声で聞いても、どこか他人事な感じがしてしまうようです。
これは普段から取り扱っている情報が日本や世界ですので、災害の情報も割と見慣れている日常の光景だからなのかもしれません。
では、防災無線で同じ内容が流れるとどうなるかといえば、それを聞いたら、自分がどのように行動するのかについて考え出すと思います。
普段は災害情報が流れないところから流れてくる身近な情報だと考えるのです。
最近では経費削減と称して防災無線を廃止するような行政の動きもあるようですが、もし廃止した場合、ある程度はメールやマスメディアを聞き流してしまう人達が出ることを想定しておくべきです。
防災無線は、あるだけでは無駄と言われることも多く、行政からのお知らせなどを流していることも多いのですが、本来は非常事態を告げるものですから、日常的にさまざまな情報を流しているとこれまた聞き逃されてしまう可能性が出てきます。
非常事態を告げるものは、普段は役に立っていないと思われるくらいでちょうど良いのかもしれません。
テレビやラジオは自分の日常とは別世界の話、そんな風なイメージがある以上は、防災無線はまだまだ活躍してもらわないといけないのではないかという気がします。
大きな一枚布と安全ピン
非常用持ち出し袋の中に、できるなら大きな一枚布と安全ピンを入れておくことをお勧めします。
できるだけ大きくて丈夫で持ち運びのしやすい布、例えば大きな風呂敷が一枚あると、避難後にさまざまな使い方ができます。
よくあるのは目隠しとして。着替えや排泄、乳児への授乳など、周りから見られたくないときに、大きな一枚布があると、それで目隠しを作ることができます。
複数枚あれば、ひもと安全ピンで部屋の仕切りとしても使うことができ、開けっぴろげな避難所でも他人の視線を防ぐことができます。
また、着替えがないときに身にまとって安全ピンで留めれば、簡易的な服にすることもできます。
他にも、荷物の持ち運びに使ったり、ベッドのシーツ代わりにしたり、水の濾過装置や三角巾の代わりなど、一枚あるだけでさまざまな生活の補助をしてくれます。
エマージェンシーブランケットでもいいのですが、目隠しや布団代わりには使えても、着たり三角巾の代わりにはなりませんので、エマージェンシーブランケットと合わせて、一枚の布と安全ピンを準備しておくことをお勧めします。
刺す虫への対処法
夏場には涼しい水が恋しくなるものです。
近くに渓流などがある場合には、なんとなく涼みに出かけたりすることもあるのではないでしょうか。
そんなときに出くわす大敵が、ヤブ蚊とアブとブヨといった吸血性昆虫です。
この手の吸血する虫は産卵のために効率よくエネルギーを摂取するという理由で血を好んで吸います。
ヤブ蚊は刺された後で猛烈にかゆくなりますし、アブやブヨは刺されるというよりも皮膚をかみ切って吸血するため、刺されるとものすごく痛く、やられた後の傷跡の出血も止まりにくい感じです。
マダニにやられると、血を吸われた上にさまざまな病気をうつされてしまう危険性だってありますから、刺されないに超したことはありません。
これらの吸血性昆虫にやられにくくなる方法は、筆者の実体験上は次の2つです。
1.服装
なるべく明るい服装を選んで着ることです。
野生動物は濃い色の生き物が多いせいか、同じ状況なら明るい色よりも暗い色に対して寄ってくるようです。
ハチも同じような傾向がありますので、自然の中で遊ぶときには白などの明るい服装を着るのがいいと思います。
また、可能なら長袖長ズボンでできる限り露出部を減らすことも重要です。
最近では虫除けネット付きの帽子もホームセンターなどで売られていますので、そういったものを使うとより安心です。
ただ、安いものは目が粗いので、ブヨだと抜けて入ってくる可能性もあります。
2.虫除けスプレー
虫除けスプレーには大きく分けると配合成分がディート、イカリジン、そしてユーカリ油などの天然ハーブのものにわかれます。
ディートは古くから使われている忌避剤で、ヤブ蚊やアブ、ブヨだけでなくマダニやサシバエ、ヒルなどにも効果があります。
濃度が高いほど効果も持続時間も高いので、刺す虫対策という視点で見ると、選ぶ虫除けスプレーはディート一択です。
ただ、ディートには神経毒性の疑いがあるとされていて、厚生労働省の通達では30%のものは12歳以下には使用してはならないとされています。
また、子どもへの使用にはさまざまな制限がありますので、子どもに使うのであればイカリジンの配合されているものにしてください。
小児用虫除けと言われるものは、このイカリジンが主成分になっています。
イカリジンは神経毒性については問題ないのですが、ディートほどさまざまな虫に効くというわけではなく、ヤブ蚊やアブ、ブヨには効きますがマダニなどには効果がありません。
最後に、天然ハーブは天然成分ですのでディートやイカリジンほどの効果は期待できませんが、市販薬が苦手な方はそういったものを使うのもありだと思います。
ちなみに、市販薬で2022年7月現在だと、ディートは30%、イカリジンは15%が上限のようです。効果と濃度は比例しているので、ご自身のスタイルに応じて使うようにしてください。
それから、虫除けスプレーを噴くときには、肌の露出部にまだらにならないようにしっかりと吹き付けてください。うまく塗布できると、最初は虫が全く寄ってきませんし、時間が経過して肌に止まるようになっても、薬効成分で虫が逃げていきます。
服の上からでもある程度の効果はあるのかなと感じていますので、均等にしっかりと噴いておくといいでしょう。
おまけ・よくあるその他のアイテム
1.蚊取り線香、蚊取りマット
開放されている屋外ではあまり効果は期待できません。
蚊取り線香は、燃焼によって蚊取り線香に含まれているピレスロイド系の薬が気化・拡散することによって効果を発揮し、効果範囲は2~3mと言われています。
忌避剤として効く虫もいますが、天然ハーブの虫除けスプレーよりも効果は薄いと考えてください。
あまり動かない場合や、肌に問題があって虫除けスプレーを使えない方はこちらを選ぶのもありだと思います。
2.虫除けパッチ、虫除けリング
貼ったり付けていたりする場所はそれなりに有効ですが、それ以外の場所はほとんど役に立ちません。
効果時間もあまり長くないので、お勧めはしません。
吸血する虫にはできる限り近寄ってほしくないものです。
特に水場には吸血性昆虫がたくさんいますので、涼みに行くときに血を吸われたくない人は、しっかりと装備を調えてお出かけしてくださいね。
アイススラリーってなんだろう
熱中症のニュースを連日聞くようになって結構立ちますが、あなたは熱中症対策にどのようなことをしていますか。
いろいろとあると思いますが、最近の考え方では、体表温度と身体の奥の深部温度の両方を下げないと危険な状態になることがあるということのようです。
体表面は水浴びをすれば取りあえずは下がりますが、身体の奥の深部温度はなかなか下げるのが難しいようです。
アイスクリームや氷菓子などを食べて体温を中から下げるのはいい手なのですが、氷が溶けながら体内に入っていくので、身体の奥ではすっかり常温になって、思ったほどの冷却効果は期待できません。
また、冷たい飲み物も同様で、飲み過ぎると胃の温度が下がって深部温度が下がる前にお腹が下ってしまうようなことも起こります。
そこで登場してきたのがこのアイススラリーなるものだそうで、直訳すると「泥状の氷」といった意味になりますが、細かく破砕した氷と冷やしたドリンクを混ぜ合わせることで氷が深部まで届き、効果的に冷やすことができるそうです。
このアイススラリー、メーカーとしては大塚製薬が「ポカリスエットアイススラリー」というものを、主に通販で取り扱っているようですが、手間を惜しまなければ自分でも作ることができます。
おおざっぱに書くと、凍らせたスポーツドリンクをかき氷器などで細かく粉砕し、冷やしたスポーツドリンクを注ぐというもの。氷が2~3に対して液体が1の割合だと飲みやすいと思います。
飲んでみるとわかりますが、お腹の中が涼しくなる感覚がはっきりとわかります。
飲み過ぎるとお腹が急降下しますので、経口補水液と同じように、ちょっとずつ飲むのが正解のようですが、その辺りに放置するとあっという間に常温になってしまいますので、持ち歩く場合にはしっかりとした魔法瓶に詰めてください。
夏、身体の表面温度を下げる工夫はいろいろすると思いますが、体内温度を下げる工夫も、考えてみると楽しいと思います。
ただ、繰り返しになりますが、お腹が冷え過ぎると下痢で苦しむことになりますので、冷やしすぎにはご用心ください。
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公衆電話を確認しておこう
とある携帯通信会社の回線が長時間ダウンしてしまっています。現在では概ね復旧したようですが、未だに繋がらないところもあるようで、該当するユーザーさんはかなり大変だと思います。
普段何気なく使っている携帯電話ですが、データ通信も含めた通信環境が全てダウンしてしまうと、思った以上に困ってしまうことが分かった方も多いのではないでしょうか。
以前は家庭に普通に置かれていた固定電話も、そもそも引いていない家が結構ありますし、家族割りなどもありますから、家族全部が同じ携帯通信会社という方も多いでしょう。危機管理上は固定電話はあった方がいいと思っていますし、家族でも事情がない限りは携帯通信会社は別である方がいいとは思います。
とはいえ、それは普段の生活とを天秤にかけての選択肢になりますので、普段からかかる経費をなるべく安くしたいと考えると、現在の状態になってしまうのでしょう。
ただ、今回のようなケースだと、家から緊急時に電話をする手段がなくなってしまっているわけで、何らかの代替え手段を考えておかないといけません。
そこでお尋ねしますが、あなたは自分の近くにある公衆電話の位置を2台以上思い出すことができますか。
携帯電話が使えないときには、公衆電話を使うしかありません。
一時期公衆電話不要論なども出ましたが、現時点ではまだ数百メートルに一台程度は残っていますので、いざというときに備えて場所を把握しておきましょう。
また、その公衆電話で使える支払い方法もきちんと確認しておくことです。
公衆電話は、基本的には10円玉は必ず使えるようになっているはずですので、公衆電話の位置の把握と同時にお財布には数十円が常にあるようにしてください。
それと、当たり前のことですが、公衆電話のかけ方をきちんとマスターしておいてください。
公衆電話も止まっているかもしれませんが、それでも携帯電話よりも使えなくなる確率は低いと思いますので、散歩のついでに確認しておいてくださいね。
小銭を少しだけ持つ
災害後にはさまざまなところにいつもとは異なる問題が発生します。
よく起きるのが、支払いの問題。
最近ではスマホ決済やカード決済などで普段は支払いが簡単にできてしまうのであまり意識されませんが、いざ災害が起きると、被災地域の電源や通信が失われてしまうことも多いです。
そうなると、買い物をしようと思っても手元に現金がないと何一つ手に入れることができなくなります。
コンビニによっては対策をしているところもあるようですが、多くは電気や通信が止まってしまったら代替手段は人力ということになっているようです。
そして、高性能なレジは電気や通信環境がなければただの箱なので、人力計算時にはまったく役に立ちません。
おつりもレジからだせませんので、できるだけ細かく、できればちょうどの支払いが要求されてしまいます。
よくある「念のために1万円しまっておいた」というのは、災害時には自分の助けになってくれないこともあるということを知っておいてください。
では、いくらくらい持っていれば良いのかというと、あまり高額になると非常用持ち出し袋などが盗まれてしまうかもしれませんし重たいですから、1~2千円程度をくずして持っておくといいのではないでしょうか。
もちろんある程度は持っている方が安心なので、あとはその人のお財布事情に合わせてと言うことになりますが、そんなにびっくりするほど持っていてもしかたがありません。
あくまでも急場しのぎとして、常に小銭を持ち歩く習慣をつけておきましょう。
ただ寝るだけでも立派な避難練習
災害時、特に雨や台風の場合には、大抵の場合一晩を避難先で過ごすことになります。ホテルや親戚宅などならとりあえずの寝具はあると思いますが、避難所に行くとそういうわけに行かない場合があります。
事前に避難先に準備しておくか、早めの避難で一緒に寝具を持ち込まない限りは、寝るときには布団が無い状態です。
そして、基本的に体育館の備品は一時避難では使わせてはもらえませんので、寝るための方法を考えなければいけません。
最近ではコッドや段ボールベッドなども準備されるようにはなってきましたが、それも基本的に高齢者が優先で数が足りているわけではありません。
つまり、寝るための道具も自分で準備しておく必要があるのです。
テント泊に馴れている人なら寝袋やその下に敷くマットなどは持っていると思いますのでそれなりに快適な就寝ができると思いますが、そうでない場合にはどうするか。
そのためには、家で布団を使わずに快適に寝るにはどうしたらいいかを練習しておくといいと思います。
やってみると、意外なものが役に立ったり、使えるとSNSで言われていたようなものが案外役に立たなかったりと、さまざまな体験ができます。
その中で、携帯性に優れていて自分がそれなりにしっかり寝られるような道具が見つかっていくと思います。
衣食住は大切ですが、それ以上に必要なものの一つが睡眠です。
可能な限り眠りの質を落とさなくてもすむように、しっかりと練習をして自分に向いているアイテムを見つけるようにしてください。
ゴミをどう処分するか
災害が発生すると、必ず出るのがゴミです。
普段の生活分だけでなく、被災したものを処分するためにさまざまなゴミが発生し、それが一度に集中するために、なかなか処分が追いつかないという問題があります。
そのうえ、災害ゴミは可燃物、不燃物、家電金属、プラスチックを問わず、まとめて出されてしまうために、全てを埋め立てることになり、処分場は一杯になってしまって新たな騒動を生み出すこともあります。
また、古い町並みのところが被災すると道路のあちこちにゴミだまりができて車が通れなくなるような事態も発生しますから、安全な場所までゴミを輸送する手段も必要になります。
災害時だからこそ、しっかりとした集積方法や分別方法の周知をしてゴミを出してもらい、それをきちんと処分していくことが必要になってきます。
これは避難所でも同じで、仕分けしてあるゴミは処分経路に負担はかかっても、処分できない事態にはなりませんので、できるだけ発生元に近いところでしっかりと仕分けをするようにしてください。
最近では中間保存場所を作って、そこで種類ごとに仕分けすることも始められていますが、充分に広い場所を確保できるのかという場所の問題があって、完全にやるのは難しいようです。
ただ、工夫次第でうまくいく場合もかなりあるようですので、地域にあわせたゴミの処分について、何も無いときにしっかりと取り決めをしておくといいと思います。
災害とゴミは切っても切り離せないほど関係性が高いものです。
素早い復旧には、ゴミの処分計画はかなり重要な位置を占めますので、自治会や行政機関などが平時から準備をしておくことをお勧めします。
電気をどう確保するか
災害が起きて困るのが停電です。
発送電分離とかで電力会社の体力はかなり削られていますので、昔のように数日で復旧ということが期待しない方が良さそうです。
でも、生活に必要な電気はできるだけ早く確保したいですから、ある程度は事前準備しておく必要がありそうです。
例えば、スマートフォンなどであれば、乾電池や充電池があればとりあえずは凌げます。防災用ラジオなどには発電機能を持っているものもありますから、自分のスマートフォンなどが充電できる出力があるかどうかを確認した上で用意するのもありでしょう。
また、最近よく目につくのが蓄電池と太陽光パネルのセット。寒い地方の冬だと発電できないかもしれませんが、ある程度の発電量は期待してもよさそうです。
少し規模が大きくなると、自家発電機が選択肢に入ってきます。燃料供給の問題はありますが、正弦波タイプの自家発電機ならパソコンなどの精密機器にも使えますし、ある程度まではいろいろな家電製品も使うことができます。
気をつけないといけないのは、絶対に屋内では使わないこと。
排気ガスで一酸化炭素中毒になって、毎年亡くなる方が出ていますので、面倒でも発電機本体は屋外に設置して、電源コードで家の中に給電するようにしてください。
余談になりますが、最近は災害対応住宅として屋根にソーラーパネルをつけ、屋内に非常用電源のあるものがあるようですが、使えるかどうかは蓄電機の出力とコンセントの位置次第。本当に使いたいものの電力量と相談の上で使われたらいいと思います。
普段の生活通りに電気を使おうとすると、自家発電機では追いつかないくらいの電力量を使っているかもしれません。
省エネや節電という話にも繋がりますが、普段から自分がどれくらい電気を必要としているのかを確認した上で、準備をしておくといいと思います。