避難所の機能あれこれ

 「災害が発生しそうなときは避難所に避難してください」というのはよく聞きます。
 行政や自主防災組織では避難するような事態に備えて避難訓練を行っているわけですが、そもそも「避難所」って何でしょうか?
 前に避難所と避難場所と福祉避難所の違いについて触れたことがありますが、もう一度避難所の定義を確認してみます。
 防災白書では「指定避難所とは、災害の危険性があり避難した住民等を災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在させ、または災害により家に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させることを目的とした施設」となっています。
 これによると、避難所というのは「災害の危険性が無くなるまでの間、または自宅を復旧させるまでの間滞在するところ」という風に読み取れますが、実際のところ、災害が発生した後、指定避難所には3つの機能が備わることになります。

1)生活の拠点
2)物資やサービスの提供を行うところ
3)情報のあつまるところ

今回はこの3つについてちょっとだけ整理してみたいと思います。

1)生活の拠点

 指定避難所本来の目的である「避難が必要な間滞在する場所」としての機能です。
 ただの「場所・空間貸し」というところもあれば寝具や食料品等を備蓄してあり「行けばとりあえずの生活が出来る状態」のところもあり、指定避難所の生活環境というのは基準もなくまちまちなのが現状です。
 一般的にはその地域の住民が主体的に動いているところほど備えが手厚く、行政が主体的に動いているところほどそうでもないというところが多いような印象を受けます。
 口の悪い方は「収容所」という言い方もするようですが、ここにいれば光熱水費がタダでさまざまな物資も集まってくるため、長期化して避難者が減り空間が使えるようになってくるとそのまま避難所に居座ってしまう人もいるようです。
 生活の拠点として使う場合には、どうなったら撤収するのかということをあらかじめ決めておいた方がよさそうです。

2)物資やサービスの提供を行うところ

 物資集積地から被災者には、避難所を経由して物資の受け渡しを行います。また、医療や看護といったさまざまなサービスもここが拠点になることが多いです。
 この場合、物資やサービスはその地域に対して提供されているもので、決してその避難所のために提供されているものでは無いということを認識しておかないといけません。
 大規模災害になると、近傍だけではなく隣県や他の市町村の被災者が「受け取りやすい」ということで小さな指定避難所に物資を受け取りに来るケースがあります。被災者に対する物資ということで配布は問題ないですが、各避難所は必要数を報告して提供を受けているため、あまり域外の人が増えると本来受け取るべき被災者に物資が届かないという状態が起きうるので、そこは検討が必要です。
 また、医療や看護、移動ATMの設置や巡回相談など、個別に巡回できないサービスはこの避難所の一角で実施される場合が多いです。

3)情報の集まるところ

 さまざまな機関が発信する情報や尋ね人など、災害時には避難所がもっとも住民に近い情報の集積地になります。
 指定避難所には出入り口などの目立つところに情報掲示板が設置されますが、提供される情報量があまりに多いため整理して掲示しないと何が起きているのかわからなくなることも多いです。
 避難所によっては、避難者で壁新聞を作って最新の情報を載せておくといったこともされていたようです。
 災害時には、避難所に情報を提供すれば住民に情報は周知されているという認識がされることが多いので、指定避難所に避難していない人は自分でそこまでは情報を見に行くしかありません。
 「知らなかった」という話にはなりませんので、充分に気を付けてください。

 良かれ悪しかれ、指定避難所はさまざまなものが集まる拠点として機能します。
 もし大規模災害が起きて指定避難所が機能を始めたなら、避難所に頼らなくてもいい場合でも定期的に覗いてみることをお勧めします。

高齢者などの要支援者ほど事前訓練をしっかりしておこう

 最近あちらこちらで自主防災組織の立ち上げが進められています。
 地域のことは地域で行うという前提の自主防災組織が編成されると、まずはその地域の避難についての計画や訓練がされるようになります。
 その避難計画や避難訓練、避難所運営訓練には、いったいどんな人の参加が予定されているでしょうか。
 多くの場合は自治会役員や地域の元気な人達が中心だと思いますが、高齢者や障害者といった支援の必要な方もちゃんと参加していますか?
 自主防災組織が作る避難計画書では、多くの場合「避難準備・高齢者避難開始情報」が発令された段階で、高齢者や障害者と言った要支援者を最初に避難所に移動させることになっているからです。
 つまり、避難所に一番最初に避難してくるのは要支援者の方々であり、恐らく一番長い時間避難所にいることになる方々なわけです。
 この最初に避難してくるはずの人達も訓練にきちんと参加していますか?
 「寝たきりだから」とか「足が悪いから」とか、「人が多いところへいくと何が起きるかわからないから」といって、要支援者が参加を拒んだり、参加を見送ったりしていませんか?
 でも、要支援者が実際に参加しないとどんな支援や準備が必要なのかわかりません。
 やってみたら、設備や資機材の関係でその要支援者がその避難所では受け入れることができないということもあるでしょう。
 それは実際にやってみないとわからないことなのです。
 要支援者によっては「家以外は病院でないと無理」という方がいるかもしれません。 そんな人は、ちゃんと非常時に病院に収容してもらえる手はずを整えているか、受け入れてもらえない場合はどのタイミングでどこへ移動させるのかを決めているか確認しておかないといけません。
 また、避難してくる要支援者の人たちは、ちゃんと持出用防災セットを準備して持ってくることができるでしょうか?
 彼らが身一つで避難してきた場合、食料や寝具といった物資の準備は避難所に備わっていますか?
 準備できていない場合、どこから誰がいつまでに用意するのか、きちんと取り決めてありますか?
 また、避難所内を安全に移動したり、トイレを使ったりすることができますか?
 食事や寝ることが問題なくできますか?
 それらはやっぱり実際にやってみないと分からない部分なのです。
 いざというとき、助かろうと思って避難してきたが、自分が生きるために必要なものが何も無い避難所で死ぬことになってしまったというのでは悲しすぎます。
 立場の弱い要支援者の人たちほど事前訓練が必要だと言うことを、自主防災組織の方は基本的な事項としておいてほしいなと思います。

 余談ではありますが要支援者の方は生活弱者でもあるので、行政の人間が一緒に参加することで地域に隠れている、本来行わないといけないさまざまな支援ニーズを掘り起こすことも可能になります。
 行政、特に福祉関係の方が参加してもらえれば、要支援者が避難所に避難できない場合の受け入れ先の問題も考えてもらえると思いますので、避難計画を作るときや避難訓練をするときには、防災関係だけで無く、福祉関係の部署にも声をかけてみてください。

避難所と避難場所と福祉避難所

避難所と避難場所と福祉避難所。
よく似た名称ですが、中身はちょっと違います。
今回は、この3つについて、その違いや中身について触れてみたいと思います。

1.避難所と避難場所の違い

避難場所と避難所。同じじゃないかと思いませんか?
少なくとも、防災のことをやり始めるまで、私はそう思っていました。
災害対策基本法の中でこの二つの違いについては、実はきちんと定義されています。
「避難場所」は法律上は「指定緊急避難場所」となっていて、該当する災害に対して安全な建物や公園などとりあえず逃げ込める「場所」が指定されています。
「避難所」は法律上は「指定避難所」となっていて、災害後、家が壊れたりして住む場所を確保できない人に提供される「施設」のことです。
同じ場所が指定されていることも多いのですが、例えば益田市の場合には「避難場所」は「校庭」、「避難所」は「屋内運動場」というような整理をしているようです。
益田市吉賀町は避難場所及び避難所は施設と住所の一覧表になっていましたが、津和野町は一覧表の他に位置図も作っていて、わかりやすいなと感じました。

2.避難所と福祉避難所の違い

避難者のうち、高齢者、障がい者、乳幼児、妊産婦、傷病者、内部障がい者、難病患者など特別の支援が必要な人(これらの人は「要配慮者」と呼ばれています)のために支援が受けられる施設を避難所として指定するのが福祉避難所です。
避難所と異なるのは、福祉避難所は災害発生当初から自動で設置されるものではなく、被災自治体からの要請で開設されるということです。
福祉避難所として指定できるのは一般避難所内の一部、老人福祉施設、障害者支援施設、保育所等の児童福祉施設、保健センター、特別支援学校、宿泊施設となっています。
自治体と各施設の間で協定を結ばなければ福祉避難所として指定できないのですが、災害時、収容する被災者支援に必要な職員数や資機材を確保できないことから難色を示している施設も多く、なかなか指定が進まないようです。
そのため、福祉避難所という名前は存在しますが、実際に運用できるのかという大きな問題があります。
また、要配慮者に対する配慮は配慮の必要な内容によって収容できる施設が変わるはずですが、現在のところそのような考え方はされておらず、妊産婦も障がい者も高齢者も一緒に収容するような感じになってます。
石西地域では吉賀町のみ福祉避難所の指定を確認できました。

3.支援はどう異なる?

食料や物資などの支援は「指定避難所」に対して行われることが原則になっています。
そのため、自治体の定めた「指定避難所(福祉避難所)」以外に避難した場合、そのままは物資やその他の支援が受けられない事態が発生します。
例えば、地域や有志で設置した「避難所」は支援の対象から外されることが多いようです。津和野町ではこれを「一時避難所」とし「行政の支援がない避難所」と定めていました。
ただ、災害対策基本法では避難所以外の被災者に対しても支援は行わなければならないと決められていますので、実際には自分たちの避難しているところから指定避難所に物資を受け取りに行くような形になると思われます。
また、避難場所に多数の避難者がいる場合には「指定はされていないが指定避難所扱いされる」場合もありますので、細かい運用は各自治体によって変わってきます。
ところで、人工透析や酸素吸入などの医療設備を必要とする人達への支援は、優先度は高いのですが支援はかなり遅れます。できれば被災地外に域外避難して安全を確保するほうが良いでしょう。
妊婦については、かかりつけの病院での出産が不可能な場合、最悪避難所での出産という可能性があります。
かかりつけの産婦人科医に、どのようなものが必要なのか、どのような支援が受けられるのかについて確認しておきましょう。

避難について考える

DIGの風景
地域の強み弱みを知って考えよう

「災害=避難」と考えている人も多いと思いますが、実際のところ、避難所を使わなくても大丈夫だったり、避難所が危険だったりする場合もあります。
では、どのように避難を考えたら良いのでしょうか?
今回は避難について少し考えてみたいと思います。

1.避難するかどうかの判断をする

避難訓練では、その地区のどこに住んでいようと全員が避難を行います。
でも、いざ本番の時に本当に避難する必要があるのかを考えておかないといけません。
家はなんともなかったのに、避難の途中で災害に巻き込まれてしまったというような場合もありますので、まずはその場所から避難する必要性があるかどうかを考えましょう。
いまあなたが居る場所で被害が起きるとすれば、どんな災害でどんな被害でしょうか?
そして、その被害は避難をしないと避けられないものですか?
被害を考えて、それに対しての行動を考えますが、避難はその一つでしかありません。
避難所で過ごすのが難しい家族がいるとか、乳児や幼児がいるので避難所に不安がある、ペットがいて避難所に行けない等その場所から動けない理由のある人もいます。
その場合には、避難しないという選択肢も考えてみます。
大切なのは命を守ることですから、避難しない場合に問題になることを考え、安全が確保できなければ、避難所以外に避難することも考えておく必要があるでしょう。

2.いつ、どこへ避難するかを決める

地震以外の災害の場合には、殆どの場合予兆があります。
いる場所が発生しそうな災害に耐えられないと分かっている場合、いつの段階で避難を開始するのかが、実はかなり大事な問題になります。
早めに避難をすると、使える手段も避難先もたくさんありますが、その分空振りが増えますし、何よりも落ち着きません。
災害が起きてからの避難だと、使える手段も避難先も限定されてしまいますし、どこで災害に巻き込まれてしまうのかがわからない。
この判断はあなたの健康状態や経済状態、交友関係によってどうすればよいのかが変わってくるので、判断が難しい部分です。
できるなら、空振り上等で早めの避難をおすすめします。
避難先ですが、あまりに早い避難だと、避難所が開設されていない場合があります。
大雨や洪水の場合、実は避難所の開設条件はまちまちです。調べた限りでは「避難準備・高齢者避難開始」情報が発令されて開設される場合が多いようですが、あなたのお住まいの地域の避難所の開設条件はどうなっているでしょうか?
自助が叫ばれ、「ちょっと危険かも」と感じて避難しようとしても、避難所の開設条件が満たされていないと、受入を拒否されてしまう場合があるのです。
最近の災害の傾向を見ると、以前に比べて随分と開設が早くはなっていますが、大規模かつ短時間で発生する災害も増え、市町村が避難の指示を出すときには、すでに避難できない状態ということも増えていますから、自分で打てる手を考えなければいけません。
この場合、対策は二通り考えられます。
一つは、自主防災組織や自治会、どうにもならなければ個人で、避難所予定の施設と予め交渉し、行政の開設指示がなくても避難者として受け入れてもらえるようにすることです。
例えば警報が出た段階で受入を開始してもらうなどという風に、地域の条件に応じて避難所予定施設と避難時の受入条件を決めておくと、いざというときに助かります。場合によっては避難所予定場所に対していくばくかの使用料等を支払う場合も出てくるかもしれませんが、命には替えられません。
もう一つは、避難所ではないが受け入れてもらえる安全な場所を決めておくこと。こちらは、例えば、ご近所や親戚、友人宅。施設のショートステイ。あるいはホテルや旅館といった宿泊施設などが該当します。
ご近所や親戚、友人宅、施設の場合には、予め了解を得ておくと後でトラブルにならなくて済みますし、知り合い同士なら、お互い助け合うという約束をしておくと、お互いに安全が確保できてより良いでしょう。
局地的な大雨や台風などであれば、針路から外れている場所に小旅行を兼ねて出かけてしまうのも有りです。
年に数回あるかないかのことなので、複数の宿泊施設をリストアップして、「危険かな?」と感じたときにはさっさと予約をとって移動してしまうようにします。
「避難=避難所」ではなく、自分の命を守ることを前提にして、避難先を複数準備しておくことが大切です。

3.避難する手段を考える

避難する手段は、避難する経路と同じで、避難を開始する時間が早ければ早いほど、さまざまな手段を利用することが可能です。
「大雨警報」や「避難準備・高齢者避難開始」情報で避難を開始すれば、移動手段の規制はありませんから避難に車を使うことができます。
タクシーも使えますから足や身体の不自由な方でも安心して移動ができますし、自家用車なら、避難所が開設されていなくても車そのものを避難所として利用することができるので、おすすめの方法です。
ただ、お手洗いの問題がありますので、その場合には避難予定先のトイレの状態は事前に確認しておきましょう。
「避難勧告」や「避難指示(緊急)」が発令されると、この時点では原則として徒歩での避難となります。
近くの避難所まで歩いて移動することになりますので、持ち出し用防災セットを忘れずに、急いで避難しましょう。
ところで、避難する際にはシニアカーは使わないことが基本です。
シニアカーは重心を下げるためにモーターやバッテリーが路面に近いところに設置されています。そのため、移動中に水に浸かり続けると動けなくなりますし、漏電の可能性もあります。また、路面が割れていたり、落ちてきたり流れてきたブロックや瓦や木を踏んだりして転倒する危険性があります。
便利ではありますが、身を守ることを第一に、自力で避難するようにしましょう。
自分で避難ができないと思われるときには、自主防災組織等の要支援者リストに掲載してもらい、手助けしてくれる人と、普段から顔つなぎをしておきます。
いざというときには避難の手助けを受けて、安全に逃げられるようにしておきましょう。

4.避難する経路を考える

自宅が危険だと判断して避難所に移動する際、避難経路や手段が安全でなければ避難する途中に遭難することがあります。
過去の災害でも、この避難の最中に遭難というケースが結構あり、その都度、防災を担当している市町村が批判されています。
自分で自分の命を守る準備がしてあれば、避難中の遭難はほぼ起きないと思われるので、避難先と経路が決まったら、避難する経路を考えてみましょう。
当たり前ですが、避難する時間が早ければ早いほど、選択肢はたくさん存在します。例えば、「大雨警報」や「洪水警報」の発令で避難を開始した場合、どこへでも避難できますし、どんな手段でも使えます。
せいぜい車の避難のときにアンダーパスや低地が冠水している可能性があるので、それを避けることくらいでしょうか。
ところが、「大津波警報」や「避難指示(緊急)」が発令されると、避難できる場所はかなり限られますし、避難も徒歩以外は使えないという状態になります。
そんな事態に追い込まれないようにしなくてはいけませんが、そんなときに備えて、どの経路を通って避難するのが一番危険が少ないかを検討しておきます。
理想は水没せず、崩れない場所を通ること。赤道や里道と呼ばれる昔からの道は、そんな場所を考えられて作られていることが多いようです。また、なるべく高いところを通るようにします。
最近増えている「津波に対するその地点の海抜高度表示」や「ハザードマップ」「過去の災害の伝承」を確認し、海抜表示の低いところやハザードマップで浸水域の深いところ、過去に被害のあったところを避けた避難経路を作ります。
出来たら、実際に避難先まで歩いてみましょう。
ちゃんと移動できるのか、避難先に着くまでどれ位時間がかかったのかを記録します。
その際、側溝やマンホール、ブロック塀や古そうな建物の位置など避難時に障害となりそうなものもチェックしておき、その上で、もう一度経路の検討を行います。
調べていると、経路を見直すことで、自分の地域の避難所に指定されている場所よりも安全に避難できる別の避難所が見つかったり、そもそも指定された避難所が避難所として不適格だったといった場合も出てきますので、その時には近場の別の避難所を検討します。
例え遠回りになっても、安全確保を第一に避難をするようにしましょう。

番外編・避難路が水没しちゃったら

避難は早めが鉄則ですが、例えば、30分間に100mm以上の雨がピンポイントで降って道路が川になってしまった場合、または上流で豪雨があって、気がついたら家の周りに水が迫っている場合などで、家が水没する恐れのある場合には、避難所に決死の覚悟で移動するような事態が起きるかもしれません。
また、水没して水が引かないため、安全な場所まで移動しなければならない場合もあるでしょう。
おまけとして、避難経路が水没しているのに避難しなければならない場合を考えてみます。
避難経路の洗い出しの時に、路面にある危険な場所のチェックもされていると思います。
その際にチェックした側溝やマンホール。
普段は重たくて丈夫な蓋がされている側溝やマンホールは、水圧がかかると蓋が割れたり外れてたりする場合が非常によく起きます。また、川と道の境界線もわからなくなることがあります。
普段見慣れた標識やガードレールを頼りに移動することになりますが、それが流されている場合もありますので、自分の足下には十二分注意を払わなければなりません。
水没した避難路に入るためには準備が必要です。
まず、自分の身長くらいのしっかりした棒。これは足下の直前をつついて安全を確認するためと、身体を支えるために使います。
足下は運動靴を履きます。長靴やブーツでは中に水が入ってしまうと重さで動けなくなってしまいますし、サンダルでは脱げてしまいます。
マリンシューズは、靴底が薄いため、何かを踏み抜いて怪我をする可能性がありますので、出来れば避けてください。
マジックテープタイプの運動靴なら、しっかり固定できる上に脱ぎやすいのでおすすめです。
それから救命胴衣。
人が水中で安全に移動できるのは、膝下までの深さ、流速50cm/sまでとされています。
水深がそれ以上になれば身体が浮いて流される危険性がありますし、流速が早ければ足下をすくわれ、やっぱり流されてしまいます。
でも、救命胴衣をつけていれば、万が一流されたとしても、生き残れる可能性は高くなります。
救命胴衣には浮力が明記されていますので、自分にあったものを選んでください。
具体的には「自分の体重÷10+1kg以上」の浮力があれば大丈夫ですが、浮力が大きくて困ることはありませんので、あとは予算と相談してください。
そして、当たり前ですが着用は必ず一人で一着です。
あとは防水リュックに着替えとタオルなど濡れた身体を乾かすものと、できればカイロなど身体を温められるものを用意して積め、避難完了後には濡れた身体を速やかに乾かし、保温できるようにしてください。
濡れたままだと体温が低下し、夏場でも低体温症になる可能性があります。
ところで、これだけの準備をしても、安全に逃げ切れるかどうかの確証を、私は持てませんでした。
結局、早い避難が一番安全ということで、周囲にしっかりと目を配り、早めの避難を行うように心掛けてください。