緊急連絡先は覚えていますか?

 自分の家族や職場、友人や関係者といった、もし自分に何かあったときに連絡しなくてはいけない人たちの電話番号を覚えていますか。携帯電話の普及前は手帳などに電話番号記入欄があってそこに必要な人の電話番号を書き出しておいたものですが、携帯電話やスマートフォンが普及してからは、おそらく電話番号ではなく名前や履歴で電話をかけている人が多いのではないでしょうか。
 災害発生時には着の身着のままで逃げる人がかなりいます。特に地震だと、揺れや衝撃で携帯電話がどこかに行ってしまったり壊れたりすることがあったり、他にも電話番号の記録されているスマートフォンや携帯電話を持って避難することを忘れてしまったり、電池切れで立ち上げることができなくなったとき、どうやって連絡をしますか。
 電話番号を全て覚えているのならいいのですが、できれば重要な人を紙に書き出し、非常用持ち出し袋に入れておくことをお勧めします。そうすることで、いざというときのリスク分散になり、慌てて避難しても緊急連絡先を持っている可能性が上がります。
 災害時には通信規制が行われることも多く電話のかけ直しが続いたり、基地局が電気切れで動かなくなると、スマートフォン等は電波を探すためにかなりの勢いで電池を消費します。
 その点、紙に書いておけば電池切れで見られなくなる心配はありません。個人情報が気になるようであれば、自分だけが分かるような場所に隠しておいてもいいかもしれません。
いざというときに備えて緊急連絡先がわかるように、紙や手帳に書き出しておくといいですね。

避難訓練と本番の違い

 避難訓練と本番では、やる内容が大きく異なるなと思うことがあります。
 避難訓練での子ども達への合い言葉は「お・は・し・も」で、これは「押さない」「走らない」「しゃべらない」「戻らない」の頭文字を取ったものです。
 でも、いざ本番の時にこれをこなしたらどうなるかというと、逃げ遅れたり周囲の人が気づかなかったりすることが起きるでしょう。
 災害時の避難は「身を守る」「急いで逃げる」「周りを巻き込む」「戻らない」が基本となると思います。まずは身を守り、そして安全な場所に逃げる、そのときにはできるだけ周りの人も避難するように声かけて巻き込み、避難した後は安全確認ができるまで絶対に戻らない。東日本大震災では、釜石の子ども達がこの行動をとり、多くの人たちを救うことができました。
 ではなぜ避難訓練では「お・は・し・も」になってしまうのでしょうか。
 これは訓練を実施する側の都合と、近所から紛らわしいという苦情が入るからではないかと思われます。
 訓練する側は、できるだけ統制のとれた避難をしたいと考えます。そのため走らせないししゃべらせないのだと思います。また、単独訓練で「津波だ、逃げろ!」と子ども達が騒ぐと、学校の周囲のお宅はパニックになってしまうかもしれません。いっそのこと、ご近所も巻き込んだ避難訓練を行えば実戦さながらの訓練になると思うのですが、なかなか準備が大変なようで、そこまでの訓練を大規模校でやっているところは少ないのではないかと思います。
 避難訓練というと、訓練のための訓練になってしまいがちです。できれば専門家を交えてより実戦的な訓練を行ったり、そこまではしないまでも、訓練の様子を見てもらって講評を受けるだけでも緊張感は変わると思います。もちろん当研究所でもそういった業務を行っていますので、お気軽に相談いただきたいと思いますが、せっかく避難訓練をするのですから、「問題なし」で終わるのではなく、小さな問題でもいいので見つけて改善していくようにしていければなと思っております。

手袋を考える

 警視庁警備部災害対策課さんがTwitterでいろいろな情報を発信されていて、当所もよく参考にしているのですが、12月18日の記事で手袋について触れているものがありました。
 寒くなってきましたし、いざというときに手を守ってくれますので、ぜひつけて欲しいですし、そうでない場合でも、非常用持ち出し袋や防災ポーチに自分用の手袋を入れておいて欲しいなと思いましたので、今回は手袋について考えてみることにしました。

 手袋は、危険なものや寒暖、さらには水や汚染物から手を守ってくれる道具です。種類としては、
(1)軍手のように編み上げられていたり、布をカットして作られているもの
(2)皮でできているもの
(3)ビニール等でできているもの
に大きく分けることができると思います。

 それぞれのメリットデメリットを考えてみたいと思います。
 (1)のメリットとしては、中に空気の層が作られるために暖かいこと。そして値段が安いこと。デメリットとしては、隙間から液体や汚染物質がしみこんでくること。
  (2)のメリットは、よく手にフィットして汗がたまりにくいこと。また、縫製にもよりますが汚染物質がしみにくい構造のものが多いです。デメリットとしては、値段が高いことと手に合うものを見つけるのがちょっと大変なこと。
 (3)のメリットは、液体や汚染物質を通さないことと、値段が安いこと。デメリットは蒸れること、そして厚手になると細かな作業がしにくくなり、薄手になると破れやすくなることです。

 それぞれに特徴があるので、目的に応じた使い方をするとよいと思います。
 私自身はこの4種類を使い分けているのですが、寒い時期の泥出しなどで細かくない作業の時には軍手+厚手のビニール手袋を使うと暖かくて汚染もされず、非常に仕事がしやすいと思います。
 写真や書類の回収や整理などをする場合には、薄手のビニール手袋を使います。また、被災時の外傷の手当をするときにも使えます。
 オールマイティで使っているのが革手袋で、ひどい汚染状態でなければこれが一番使い勝手がいいなと感じています。


 4種類を全部揃えておけば一番ですが、備蓄として持つなら、軍手+ビニール手袋が一番いい組み合わせかなと考えますが、いろいろと試してみて、自分が納得いく組み合わせで非常用持ち出し袋に入れておくとよさそうです。
 最後に、子どもの手は成長によってどんどんサイズが変わってきます。最低でも半年に1回はサイズを確認し、小さすぎて入らないということがないように気をつけておいてくださいね。

災害時のデマの見分け方

 災害が起きると情報が混乱しがちです。そして、そういうときに限って愉快犯が「おかしな情報」を流して混乱に拍車をかけようとします。
 「おかしな情報」は、悪意ではなく善意で広がるので始末が悪いのですが、デマだろうなということを見抜くいくつかのポイントがありますので、今日はそれをご紹介したいと思います。

1)やけに時間がはっきりしている

「今日の午後6時に大きな余震が来る」というように地震が発生する時間がはっきりしているような情報は、まずデマだと思っていいでしょう。いろいろと言われる人はありますが、現在の科学で地震の発生時刻を正確に予想することはできません。災害が発生することを予測できるのは、せいぜい大雨による水害か、あるいは台風くらいでしょう。そしてこれらは伝聞ではなく、気象庁や自治体からきちんとした情報が出されていますので、そちらを確認してみてください。

2)職業だけが具体的で正体のわからない人が伝聞調で未来の災害について話している

 「知り合いの自衛官から聞いたんだけど・・・」「友達のいとこの警察官が・・・」などというような、職業ははっきりしているにもかかわらず発信者の正体がわからない情報は、ほぼデマだと考えて間違いありません。
 基本的にこれら現場で業務に当たる人が未来で起きる災害のことを伝えられていることはありません。あるとすれば、予測が可能な災害でしょうが、その場合にはこういった人だけではなく、気象庁や自治体が同じような情報を発信しています。

3)写真が添付された情報なのに、具体的な場所や人物が特定できない

 熊本地震のすぐ後で逃げ出したライオンの写真がSNSで拡散されたことがありましたが、いつ、どこで、誰がどんな状況で撮影したのかということは一切書かれていませんでした。記事の中に、読んでいる人をミスリードするような情報を書くことで、読んだ人は誤解するが書いた本人は言い逃れができるような書き方をされていることが多いです。
 本当に問題となる記事の場合には、多くの場合「いつ」「どこで」という情報が大抵の場合記載されています。また、もし何か重要なことをSNSで発信する場合には、いつ、どこで、だれが、どんな状況かということは記事として記載しなくてはいけないと考えます。

 とりあえず、今回は3つほどあげてみましたが、災害時には普段なら一笑に付すような内容でも真剣に受け止められてしまうものです。
 被害に遭っていない地域の人から見れば、他人事で面白いかもしれませんが、当事者にとっては死活問題。
 災害に関する情報を発信する際には、とりあえず上の3つを確認してみて、どれかに引っかかるようだったら一度確認をするという作業をした方がよいと思います。あなたが発信する情報が被災地で混乱を巻き起こさないためにも、その情報が客観的に見てどうなのかを考えてみてくださいね。

災害時の子どもの安全

緊急時に子どもがどこへ避難するのか知っていますか?

 災害時には自分の身を守ることを最優先で行うことが大切だと思っているのですが、自分の身を守った後、あなたと家族はどのような行動をするのかを決めていますか。
 大人であれば、とりあえずは安全な場所に移動するというところでしょうが、学校や保育園、幼稚園に通っている子ども達の場合、それぞれの施設がどういう判断でどんな行動をとるのか、きちんと把握していますか。
 学校や保育園、幼稚園などの教育機関の場合、子ども達は教師や保育士といった大人の指示に従って行動することになりますが、子ども達が何が起きたらどこにいるのか、どこへ避難するのかについて、きちんと教育機関側に確認が取れていますか。災害が発生したとき、または発生が予測されるときには、原則として教育機関まで保護者が迎えに行くということになっているところが殆どだと思いますが、どんな状況なら保護者に引き渡しがされて、どんな状況なら引き渡しを中止するのかについて、きちんと把握していますか。
 というのも、学校やこどもたちが無事であっても、お迎えに行った保護者がその途中で被災する可能性が非常に高いからです。東日本大震災では、災害時には保護者に子どもを引き渡すという取り決めに固執してしまったため、お迎えに向かう途中で被災したり、お迎え後の避難中に被災した方もいらっしゃったようです。
 災害時に教育機関から保護者に子どもを引き渡すことができるのは、状況が落ち着いて安全に引き渡しが可能な状態がそろっている必要があります。逆に、そろっていない状態では引き渡しはせず、学校で安全を確保する必要があるのだと思います。
 むろん、先生方に全ての責任を取れというわけではありません。災害時の避難や引き渡しについてきちんと保護者との間で取り決めをしておくことが大切だということが言いたいのです。保護者が同意するなら、自分で判断できる年齢の子ども達であれば、災害時の避難について自主的に行わせるというのも選択肢としてはありだと思っています。危険から逃げるという能力については、ひょっとしたら大人よりも子どもの方が優れているのではないかと思うこともあるからです。
 子どもが自分のいる場所で状況が落ち着くまできちんと命を守ることができること。そして子どもが自分の命を守っていることを信じることで、保護者もまた自分の安全を確保することができます。
 これこそが「津波てんでんこ」なのではないでしょうか。
 自分の身の安全というのは、結局のところ自分にしか守ることができないのですが、災害時に教育機関として集団行動をするのであれば、先生方が日々の災害対策についてきちんと学習し、訓練や教育を継続して行っていく必要があります。でも、それがきちんとできているでしょうか。
 「釜石の奇跡」は防災教育を受けた中学生達の自主的な行動の結果でした。あなたがお住まいの地域の子ども達の災害対策はきちんとできていますか。
 そして、あなたの子どもは、災害後にどこであなたを待っていますか。

消火器の使い方を知ろう

 昨日は「災害時には早めに手を打つ」という内容を書きましたが、その中で、かなり重要な位置を占めているのが初期消火です。
 今回は消火器の使い方と、消火器を使った消火の方法について少しだけ書きたいと思っています。
 あなたは消火器を使ったことがありますか。本番でなくても構いません。例えば職場や地域、あるいはお祭りなどに出店している消防署や消防団のブースなどで消火器の操作体験をしたことがあれば大丈夫です。というのが、消火器は構造は簡単なのですが、使用するための手順を知って、実際にやっていないと、本番で使えないという状態が起こりうるからです。

(1)消火器を持ってくるまでの手順

 さて、消火器を持ってくる手順として、次の順番になります。
 まず火を見たら、大きな声で「火事だ」と叫びます。周囲の人に火事であることを知らせると同時に、自分や周囲に状況を確認させる意味もあります。
 次に消火器を取りに行きます。消火器が普段どこに置いてあるのかをしっかりと把握しておかないと、消火器を探してうろうろする羽目になります。
 最後に、消火器を持って火元へ移動します。このとき、消火器はハンドルの下を持って移動してください。消火器を抱っこして移動すると、転んだときに大けがをします。そして、消火器をもって火元に来たら、次は消火器を使って火を消しますが、消火作業に入る前に自分の退路が確保されていることをしっかりと確認してください。目の前の火だけに気を取られてはいけません。

(2)消火器の使い方

1.まずは上部の黄色いピンを抜きます。これが安全装置ですので、ここを外さない限りは消火液は出ません。
2.ホースを留め具から外してノズルを火元に向けます。このとき、できるだけ火の根元を狙っておきます。
3.噴射装置を握り、火に向けて消化剤を吹きかけます。通常、およそ15秒程度で空になります。
4.火の周りを移動しながら、火元の根元にしっかりと消火液がかかるように撒きます。

(3)消火器の使える範囲

 通常置いてある消火器で消せる火の大きさは、およそ目の高さくらいまでだそうです。少し前までは天井に届いたらあきらめて避難という指導がされていたのですが、天井に燃え移ると火の周りが格段に早くなってしまうことから、現在は目の高さという指導をされているところが多いようです。

 初期消火がうまくいけば、さまざまな人が助かります。もしもやったことが無い方は、是非一度消火体験をしてみてください。
 また、職場や学校、地域などでも人数と日程があえば、消防署や消防団の方が来て指導もしてもらえますので、防災訓練の際には、ぜひ初期消火を取り入れるようにしてください。

訓練用の水消火器。使い方は普通の消火器と同じ。


 最後に、いくら消火器を使いこなせるようになっても、肝心の火元に消火器がないのでは何にもなりません。万が一に備えて、家庭にせめて1台は消火器を備えるようにしましょう。
 消火器の使い方や詳しい手順などは、以下のリンク先を確認していただければと思います。

消防防災博物館・消火器の使い方

災害対策は「早く手を打つこと」が基本です。

 災害対策は、何事も「早く手を打つこと」が基本です。災害が発生してから起こるさまざまな問題は、時間が経っていくとどんどん増えていきます。
 ですが、問題が発生した時点、もっと言えば問題が発生する前に対処しておけば、問題を一つ消すことができてそれに投入しなくてはならない力を他のことに振り分けることができます。
 例えば、大地震が起きたと想定します。そこで発生するのは倒壊した家屋、多くのけが人、火災で、これらに対応するのは全て消防となります。地域の消防力はそんなに多くありませんから、これに全部対応しようとすると手が回らずに全てを中途半端にするか、または心を鬼にして最優先事項以外の全てを切り捨てるかということになるでしょう。現に阪神淡路大震災では、消防力の不足からそのような事態になりました。
 でも、全ての家屋が耐震補強され倒壊しなければ、また、家具の固定やガラスの飛散防止などの対策がしてあれば、緊急に救助を要する人の数は格段に減らすことができますし、各家庭に消火器が備えてあってそれをきちんと使うことができていれば、発生する火災の件数もぐっと減らせるはずです。そうなれば、消防はそれでも必要とされる怪我や火災にのみ対応すればよくなりますから、誰も何もしていない状態よりもずっと手早く確実に仕事をこなせます。
 病院などで問題になるのは電気と水ですが、例えば水は井戸からくみ上げて浄水できるようにしておき、電気は自家発電機だけでなく、太陽光発電システムや蓄電池などを併用することで、電気や水がないことにより起きうる病院の受け入れ中止を防ぐことができます。電気や水の復旧は年々遅れる傾向にありますから、場合によっては普段から敷地内で発電したものを使うようにしてもいいのかもしれません。
 また、普通の人たちも家庭や職場、学校に非常用持ち出し袋が置いてあれば、それをもって避難すればいいので、当座の水や食料、衣類やトイレなどの心配はしなくてもすみますし、さまざまなものを持っている人と持っていない人の間で発生するであろういざこざも防ぐことが可能です。
 こんな風に、起きる前に手を打っておくことで、そこから発生するであろうさまざまなリスクを消滅あるいは軽減することが可能になり、発生するさまざまな問題を少なくすることが可能になります。
 ここまでお話ししてきたのは事前準備になりますが、発災後に問題が起きたときも、放置せずすぐに対応できればそれ以上問題が大きくなりません。
 例えば、避難所のトイレが閉鎖前に使われてしまって汚物で汚染されていたとして、その場で掃除して消毒した上で閉鎖すれば、その後トイレが汚染源になって発生するさまざまな問題を防ぐことができます。照明についても、生活リズムが異なる人たちが一緒に生活すると明るい暗いというトラブルが必ず起きます。そのとき、それを放置せずに同じような就寝リズムの人たちで部屋や場所をまとめて照明を調整するようにすれば、そこから発生する睡眠不足やさまざまな病気、トラブルを避けることができるでしょう。
 災害に限らないことですが、問題を先送りすると大概の場合にはさらに問題が大きく深刻化するものです。物理的に解決できないことは仕方がありませんが、工夫ややり方で解決できることはその場で解決してしまうこと。そうすれば、その先に広がるさまざまな問題の発生を防ぐことができます。それに対処するため、予測できることをあらかじめ準備しておくのが「BCP」といわれる「事業継続化計画」で、これがあるのとないのでは災害が発生した後の対応が驚くほど違います。
 作るのは事業に限りません。家庭でも、学校でも、あなた自身でも、自分が被災してから復旧するまでの計画を一度きちんと作ってみてください。そうすることで、本当に災害が起きたとき、驚くほど早く日常を取り戻すことができると思いますよ。

階段を使っていますか

 あなたがお住まいのところや通勤、通学をしている先、遊びにいくところなど、ある程度の高層階になるとエレベーターやエスカレーターがあり、多くの人はそれを利用すると思うのですが、それらの施設の階段の位置を、自信をもってわかりますと言える方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。
 また、行き先が階段しか無い施設だとして、いざというときに普段使っている階段以外の階段がどこにあってどこに通じているのかをきちんと把握していますか。
 災害時に避難で使うのは基本的に階段になりますが、階段の場所を知っていないと途方に暮れることになります。よくあるのが、商業施設や病院などで職員以外は全てエレベーターやエスカレーターしか使えないようになっているもの。非常灯の誘導に従えばちゃんと非常階段にたどり着けるようにはなっているはずですが、普段から階段を意識していないと、エレベーターだけの施設だと閉じ込められたと感じるでしょうし、止まっているエスカレーターに人が押し寄せると、群衆雪崩や、最悪の場合エスカレーターが外れて落下することも考えられます。
 よくいくところ、よく使う施設であるなら、たまにでいいので階段の位置や、できれば階段を使って移動してみてください。そうすると、いざというときに階段で逃げるという選択肢が思い浮かぶと思います。
 人の心理として、非常時になるほど知っているところを使おうとするものです。よほど場数を踏んでいるか、冷静な方でも無い限り、混乱している中で使ったことの無い非常階段を使おうとは思わないのではないでしょうか。また、階段しか移動手段のない施設の場合、普段自分が使わない階段を意識して使うようにしてください。そうすることで、混乱の中でも自分の持つ選択肢が増えて助かる確率が上がります。
そうでなくても、地震発生時にはエレベーターでは閉じ込められる可能性が、エスカレーターでは緊急停止による将棋倒しが起きる可能性が高いです。
 よく「健康と省エネのために階段を利用しよう」と言われますが、いざというときに自分の身を守るためにも、普段から階段の位置を意識して、できれば使っていきたいですね。

ちょっとずつ防災のすすめ

 災害対策としていろんな準備をしないといけないことは、おそらくたくさんの人が理解していると思います。でも、実際に行動している人はごく少数。「万が一に備えるのはかっこわるい」「逃げられればあとは行政が面倒を見てくれる」「防災にかける金はない」などなど、理由はさまざま。
 ここでの問題は、災害対策をしていない人たちも「自分が生き残ると思っていること」です。災害、とくに地震については発生時にどこにいるかと運不運もあるのですが、生き残るための方法を知らなければ、生存確率は格段に下がります。
 では、死なないためにはどうするかというと、自分が死ぬ要素を排除していけばよいということです。
 例えば、寝室で寝ているときにタンスが倒れて下敷きになったとしたら、よくて骨折、悪ければ死にます。もしもタンスを固定していれば、下敷きになる可能性は低下しますし、そもそもタンスが寝室に無ければタンスに潰される心配は考えなくてもよいわけです。

 こういった死ぬ危険がある要素を排除することは、そんなに難しいことではありません。でも、一気にやってしまおうとすると、時間もお金もかかるものです。
 そこで、毎月ちょっとずつ安全度を上げていくのはいかがでしょうか。今は師走で、ちょうど大掃除の時期でもあります。そのついでに、寝室の危険度点検を行って倒れてくるものや割れたり折れたりしそうなものを撤去してしまえば、寝ている時間の安全は確保できます。そしてこの作業だけで、人生の中で三分の一を過ごす寝ている時間の安全はかなり高くなります。
 そんな風に、自分が過ごす時間の長いところから、できるところから少しずつ対策を進めていけば、最終的には居住環境の安全は確保されることになります。転倒防止装置や飛散防止フィルムなど、一度に揃えると高くなるものでも、毎月ちょっとずつなら、さほど経費はかかりませんし、一度設定してしまえば、安全度は格段に上がります。家具や荷物がたくさんある状況でも、その配置や器具の据え付け方によっては、ある程度の危険を防ぐことも可能です。
 何もしないよりは、何かしてある方が生き残る確率は格段に上がります。
 無理しない範囲で、ちょっとずつ居住環境の安全対策を進めてみてはいかがでしょうか。

正確な情報を得るには

 災害発生時に必要なものは正確な情報です。これを得ることができるかどうかで、行動が大きく変化することを意識しておかなければなりません。
 では、正確な情報はどうやって集めればいいのか。ツイッターやラインを初めとするSNSは、かなり情報が早く、多く流れますが、信憑性はイマイチです。愉快犯などが登場して被災地外からおかしな情報を流して現地を混乱させたりすることが、過去の大きな災害では必ず起きています。
 テレビはどうかというと、これは映像に見入られて判断すべきタイミングを逃してしまうことが予測されます。予想外の災害を目の当たりにすると、思考停止してしまう危険性があるのです。
 そのため、ながら作業に向いているラジオをお勧めします。音声だけですので行動を束縛することはありませんし、携帯型であれば避難行動しながら最新の情報を集めることができます。ラジオの情報により広域的な情報を、SNSなどでローカルの状況を確認できれば、情報の正確性はかなり高まるのではないでしょうか。
 いざ災害が起きた、または起きそうなときに自分がどのような方法で正確な情報を集めて行動を判断するのか、一度考えて、その準備をしておくことをお勧めします。