思い出の写真や貴重品など、普段どこに置いていますか。地震や水害などに被災したとき、それらががれきの下になったり流されたり、泥水に浸かったりすると大切に保管していたものが単なるゴミになってしまったり、流出や汚染ですぐに使えなくなったりすることもあります。そういうことのないような場所に保管できていればいいのですが、実際のところなかなか難しいものです。
もしもあなたが一戸建にお住まいであれば、そういったものはなるべく高いところにしまっておくことをお勧めします。
二階建てのおうちであれば二階に、三階建てなら三階にと、できるだけ高い場所にしまっておくことで、地震による建物倒壊や水害による流出からある程度までは守ることが可能になります。また、土砂災害などにもある程度は有効ですので、崩れてきそうな斜面から最も遠い階上の部屋に置くようにします。
これで万全とは言えませんが、自分の大切なものを守るためにできる簡単で効果的な手段の一つですので、よかったらやってみてください。
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■災害ゴミについて考える
普段は燃えるゴミ燃えないゴミ、資源ゴミなどとさまざまに分類して整然と回収されているゴミですが、災害が起きるとそうもいかなくなってきます。
被災した家屋からのゴミの搬出量は一気に増えますし、分別も困難な状態になります。回収も道路状況によりできたりできなかったりしますし、処理場や処分場の能力も追いつきません。
ではどのように出せばいいのか。基本的には各自治体の清掃関係部署の指導に従うことになるのですが、これが千差万別で非常に戸惑うことが多いです。
ある自治体では、各家に片付けに入るボランティアに災害ゴミを入れるための袋を配布したそうです。回収がどうなるかわからないため「災害ゴミ」と書いた専用の袋に詰めてもらうようにしたところ、搬出時にあちこちにゴミの野積みの山ができるのを防ぐことができ、環境が衛生的に保たれたそうです。
また、家具などの大型ゴミは一気に処分場に持ち込むのではなく、地域での集積所を作ってそこへ搬入してもらい、処分場の処理状況を見ながら搬出するような手順にした自治体もあるとか。個人の搬入に任せると処理場とそこへ至る道路がパンクしてしまいますから、場所が確保できるのであればこれはかなり有効な手だろうなと思います。
できる限りの仕分けをしておくことも大切だと考えたある自治体では冷蔵庫、テレビ、エアコンといった普段から分別回収になっている家電は他の家電とわけて集積するようにしたそうで、それにより後の仕分けが楽になったという話でした。
あと、災害ゴミについては、普段と異なって汚染されていたり爆発する危険のあるような危険ゴミと、それ以外のゴミとの仕分けも必要になります。何が危険なゴミで何がそうではないのか、この部分は試行錯誤が発生する部分だと思います。ゴミは必ず出ますし、その分量や処理速度などは、実際に災害が起きてみないとわからない部分がたくさんあることは事実です。
とはいえ、実際に発生してから対応を考えるのでは遅すぎますので、過去の状況を確認しながらゴミをどのように回収していくのかについてあらかじめ防災計画の中に組み込んでおく必要はあるでしょう。また、ボランティアや被災者、地元自治会にもゴミをどうやって回収するのか、仕分けと方法についてきちんとお願いしていかなくてはなりません。場合によっては広域での救援も必要になってきますし、早く手を打てば、先日の写真のようにゴミにしなくてもすむものもあるかもしれません。何もないときにこそ検討をしておくことが大切なのではないでしょうか。
自分が死なないための対策をしておこう
災害対策というと、訓練でまず最初に出てくるのが避難または避難後の生活の組み立て方です。ですが、実際のところ、どんな災害であれ生き残れなければその先は意味がありません。地震や台風、大雨、水害といった災害が起きたとき、どうやって自分の命を守るのかを自分で考えて決めておかなければなりません。
自分と地域の状況を確認し、どんな災害が発生したら自分はどうすれば助かるのかを整理し、実際に訓練を繰り返すことで自分が死ぬ確率を可能な限り下げていく。その行動が必要なのです。
例えば地震であれば揺れたときに立っているよりも座っている方が転んで怪我をする確率は下がります。水害であれば、水があふれる前、どのタイミングでどこへどのように避難するのかを決めて行動することで、遭難する確率を下げることができます。
自分が死なないために何ができるのかを考え、それが無意識にできるようになるまで練習をしておくこと。
それが自分の生き残るために最初にしておくことです。
建物の耐震補強や家具の転倒防止、飛散物の撤去など、やるべきことはたくさんありますが、もしもさまざまな事情でハード的なものに手がつけられなくても、自分の行動を決めておくだけでも生き残る確率は変わります。
災害なんかで死なないために、まずは自分と住んでいる地域、出かけている地域の特性を確認し、災害が起きても死ななくても済むように準備しておきましょう。
情報は早めに収集を始める
インターネットが普及して、災害に関係する情報は個人で集めやすくなりましたが一斉に情報を集めようとした結果、通信回線がつながらなくなったという笑えない状態が多発しています。
私も経験したことですが、台風や大雨などで雲の動きが気になると、気象庁や日本気象協会、ウェザーニュースなどといった気象情報を提供しているサイトへのアクセスが集中してつながらなくなります。
また、地元自治体のホームページも同様で、情報が必要になったときほどインターネットがつながらない状態になっています。
これを防ぐためには、早めに情報を集めて予測し、被害が起きる可能性のある地域に住んでいるなら、被害が想定される前に安全な場所へ避難してしまうしかありません。自分の安全が確保されていれば、テレビやラジオといったマスメディアが発信する情報でも充分間に合うので、つながらないネット環境に焦る必要はなくなります。
災害が起きそうなときに知りたいのは、自分がいる場所がどうなっているのか、そしてどうなるのかといった内容ですが、残念ながらそれがピンポイントで分かるものというのは、なかなかありません。
ただ、自分が欲しい情報がどこにあって誰が提供しているのか、そしてその内容の精度や発信間隔はどうなっているのかなど、事前に調べておけばいざというときに困ることも迷うこともなくなると思います。情報はどこでどのように集めるのか、そしていつの時点から収集を始めるのかなど、あらかじめ自分の中でルールを作って決めておくと困らなくて済みます。
インターネットで情報を集めようと考えている方は、ぜひ平常時に情報を見に行く先を選んでおいてくださいね。
非常用持ち出し袋は家のどこにおくか
非常用持ち出し袋を作っても、押し入れにしまっておいたのではいざというときに持ち出すことができません。
では、どこに置いておくのがいいのでしょうか。これが正解というものはなく、おうちによって違うのですが、木造の一戸建てであれば一階よりは二階に置いておく方が目的にあった使い方ができるようです。
地震でつぶれるのは殆どの場合1階ですし水害で浸かるときも1階からです。特にさまざまな理由で家の外ではなく、家の中で上の階に避難するような場合、非常用持ち出し袋を二階に移動させる手間がないのでその分安全に避難ができます。
時間との勝負となる津波の場合はちょっと考える必要がありそうですが、その場合には非常用持ち出し袋を二つ準備しておくのもいいかもしれません。
災害対策では、耐震補強していない場合には2階で就寝する方がいくらか安全だという話をすることがありますが、寝室が二階にあるのなら、寝室のどこかに非常用持ち出し袋を置くスペースを作っておけば安心です。また、被災後の生活再建で必要となってくる備蓄品は、二階以上の場所にストックしておくことをお勧めします。もし何らかの事情で建物が倒壊したとしても、二階であれば取り出せる可能性があるからです。
非常用持ち出し袋と備蓄品、それぞれに目的が違いますがいづれも命を支えてくれる大切なものです。避難所にあらかじめ置いておくことが理想ではありますが、それができないのであれば、被災しづらい二階以上の階に防災グッズを置いておくことをお勧めします。
災害に対応する保険に入っていますか
災害に備えた保険はいろいろとありますが、生活の中で一番身近なのは「火災保険」なのではないでしょうか。
名前だけ聞くと家屋の火災だけの保険に聞こえますが、内容は地震や風水害、落雷といった自然災害で被災したときに発生する損害もカバーができるようになっています。最近首都直下型地震や南海・東南海地震などで目立つようになってきた地震保険は、この火災保険に付帯してかけられるようになっているもので、実は地震保険単独ではかけることができないことに注意してください。
さて、この火災保険、内容はピンキリで補償の内容によっては火事以外では支払いがされないものから、地震や風水害、破損や盗難までカバーのできる手厚い物までさまざまで、もちろんお値段もさまざまになっています。何にでも対応できる保険は当然高くなりますから、保険をかけるにあたってはハザードマップなどから家のある場所のリスクを確認し、そのリスクに対応した保険を準備しておけばよいと思います。
住宅の再建には多額のお金が必要であり、公的な被災者支援制度ではとても再建できる金額にはなりません。ですから、被災後の自分の生活再建をイメージし、自分の復旧に必要な保険をかけておくことは、自分の生活を保障する基本となります。
火災保険をかけている方は、自分の保険がどのような災害に対応しているのかいないのかについてしっかりと確認し、いざというときにそれが使えるのかどうかをチェックしておいてください。
借家やアパートにお住まいの方は、家財の補償がどうなっているのかをご確認ください。ものがないようでも、いざ復旧するとなると思わぬ金額がかかるものです。保険をかけるのがもったいないと考えるなら、その分を積み立てて自分の生活再建が確実にできるようにしておきましょう。
大規模災害では、住宅の再建の可否がその後の生活に大きな影響を与えています。家屋の耐震強化とともに、家が使えなくなった場合に生活の拠点をどう再建するのかについて、保険の見直しのときでいいので検討してみてはいかがでしょうか。
地震から命をまもる方法
地震の時に命を守るポーズとして有名なのはダンゴムシのポーズですが、このポーズにもさまざまな流派があります。
基本的なところは変わらないのですが、両手で頭を押さえたり、片手が頭、もう一方の手が首だったり、足首を立たせていたり寝かせていたり、どれもそれらしいもので、どれも間違いではないよなと思います。ただ、ダンゴムシのポーズを取ることができる前提条件は、ものが倒れてこない、ものが飛んでこない、ものが落ちてこないこと。つまりは周囲の安全確認が最初となります。そして、ある程度安全だと判断して初めてダンゴムシのポーズを取ることになります。
もしもその場所が危険なところであったなら、より危険が少ない場所まで移動するしかありませんが、そのときに一月をつけて欲しいことがあります。それは、地震が来たらとにかく自分の重心を下げること。
人間はその構造上どうしても頭が重いので、どんな人でも揺れで足下が不安定になると転倒する危険性が高くなります。そこで、まずは身体の重心を下げること。
捕まる場所があれば捕まっておくとより安定しますし、安全圏まで逃げられたなら、ダンゴムシのポーズをとればより安全を確保できます。
学校や事務所などでは、上からものが落ちてきたりしそうであるなら、緊急避難として机の下に隠れるという方法もありますが、机がひっくり返ったりすることもありますので、その場合にはしっかりと脚を支えておくことをお勧めします。
発生した場所によりますが、海溝型地震の場合には警報から数秒は余裕があります。その数秒でいかに自分の安全を確保するかが、そのあとに続く揺れで怪我しない、死なないための大切な手段がとれますので充分に気をつけておくようにしましょう。
余談ですが、直下型地震の場合には警報はまず間に合いません。異常を感じたらすぐにしゃがんで重心をさげるくらいしか対抗する方法がないのが現状です。
避難所で子どもとどう遊ぶか
突然やってくる地震を除けば、殆どの災害は事前に避難が可能なものばかりです。あらかじめ危険箇所の分析ができていれば、自分のところが避難しなければいけない災害に対して早い段階で安全な場所への移動を完了することができるのですが、その安全な場所が自宅ではない場合、そして子ども達が一緒に避難している場合には、その子ども達が退屈しないように少し知恵を絞る必要があります。
普段から彼らが遊んでいるものを持参することと、電源が不要な遊びを一緒に楽しめるようにしておくこと。
例えば、ネットゲームやアニメ、インターネットといった電源や通信環境が必要な遊びでは、災害が発生して電源や通信環境を失ったしまうと遊ぶことができなくなります。そこで電源不要な遊びをできるように準備し、また、ある程度は一緒に遊んで慣れ親しんでおくことも必要です。
例えば、折り紙やあやとり、落書き帳や筆記具、絵本、カードゲーム、ボードゲームなどを持ち出しセットに準備しておき、一緒に遊ぶことで、子どもだけでなく大人も気が紛れます。
子どもが大騒ぎしたり暴れたり泣いたりするのは退屈ですることがないせいの場合が多いので、彼らを退屈させないように準備をしておくのです。
もしもそういったものが準備できなかった場合には、新聞紙やその辺にあるものでどうやって遊ぶかを子どもと一緒に考えて、周囲に迷惑がかからない程度に遊ぶのもよいと思います。
避難所の運営が始まれば、彼らも立派な戦力です。仕事をどんどん割り振って、退屈にさせないようにしましょう。
おうちの耐震補強を考える
耐震補強の目安とされているのは、昭和56年以前に建築された木造建物です。これは明らかに揺れに弱い構造のものが多いため、住み続けるのであれば耐震診断を受けておく必要があります。
ところで、それ以降の建物であっても耐震基準を満たしていない建物がかなりあるようです。震度6程度であれば完全に倒壊することはないとのことですが、念のため耐震診断をしてもらって、耐震補強がいるかどうか判断した方が良さそうです。
石西地方には筒賀断層と弥栄断層が活断層として確認されていますが、これが動くと石西地方全域がその影響を受けることになり、想定されている震度は5~6ということですので、耐震補強をしておいた方がよさそうです。
参考までに、耐震補強した場合としない場合の実物の家屋を使った実験がされていますので、興味のある方はご覧ください。
もっとも、家屋の耐震化にはある程度の予算が必要となります。そのため、最低限自分が長時間過ごす寝室や居間だけでもやっておくという限定耐震補強も考えの一つとして持っておいていいと思います。
それも難しい場合には、建物の倒壊から身を守る簡易シェルターが発売されていますので、それを利用するのも一つの方法です。
どうしても予算をかけたくない場合には、2階建てであれば2階で寝るという方法もあります。これは倒壊は1階を中心にして崩れるため、2階の方が生存確率が高いということなのですが、生き残れるかどうかは運次第と行ったところです。
いずれにしても、耐震補強は地震対策の基本的なことの一つです。面倒がらずに、まずは耐震診断から始めましょう。耐震診断ができる建築士については、お住まいの地域の市町役場の建築課で教えてもらえます。
危険なときほど「STOP」で考える
どんなに準備していても予想していなかったこと、いわゆる「想定外」というのは必ず起きるものです。そして想定外なことに出くわしてしまうと、「どうしよう、なんとかしないと」と慌ててしまいますが、そのまま場当たり的に対処を始めると、時間が経つごとに悪化していくことが普通です。
慌てている時こそ、一度「STOP」。大きく深呼吸して、手順に従って新しい行動計画を作り上げなくてはいけません。
ここで使っている「STOP」というのは、危機管理の基本的な行動基準の頭文字を取ったもので、予想していなかった事態に遭遇したときの対処手順の順番でもあります。
S・・・「Stop」。とりあえず現在の行動を一度中止します。
T・・・「Think」。現在の状況について一度整理します。
O・・・「Observe」。何が起きていて、今どんな状況なのかを確認します
P・・・「Plan」。その事態で起きた問題への対処行動を実行します
災害時には状況はめまぐるしく動くものです。あらかじめ想定した事態を超えてしまったときには、それまでの行動計画を止めて現状を確認し、助かるための行動計画をその場で作り上げる必要があります。
自分の命が助かるためにはどのように行動すればいいのか。定めた行動計画にひたすら従うのではなく、自分が助かるために必要な行動について常に状況を確認しながら修正を加えていくことで、生き残る確率は上がります。
危険なときこそ、一度「STOP」で考えること。
悠長に見えるかもしれませんが、これが助かるための最短コースなのではないでしょうか。