トイレについて考える

手作りの簡易トイレ。便器が使えなければ、こういった感じで作る方法もある。

 災害時にもっとも最初に困るのは、おそらくトイレです。
 日本トイレ研究所のデータによると、地震後にどれくらいでトイレに行きたくなったかを被災者に確認したら、3時間以内という人が3割以上いたそうです。
 実は、水道が止まったり下水管が破断したりするとトイレは使えません。特に下水管の破断の調査はすぐにはできませんから、はっきりとわかる汲み取り式や簡易水洗でない限り、トイレは使えないと思ったほうがいいでしょう。
 でも、出るものは止められません。
 安心して使えると思われる仮設トイレが避難所に届くのが、早くても3日はかかるので、被災してから最低3日分のトイレを何とかしないといけないわけです。
 ちなみに、自宅のトイレが使えない場合にはどうするかというと、4割の人が公園などの公衆トイレ、1割強の人がコンビニのトイレを使うと回答しています。
 自宅のトイレが使えないときには、公園もコンビニもトイレは使えません。
 つまり携帯トイレや簡易トイレで仮設トイレが届くまではしのぐ必要があるのです。
 この携帯トイレや簡易トイレは、災害が起きてからでは準備が間に合いません。災害が起きる前に準備しておく必要のあるものです。
 自宅や避難先のトイレの構造や、自分が準備している携帯トイレや簡易トイレが自分で使えるかどうか実際に使ってみること、そして何より大切なのは、使えないトイレを使わないこと。
 つまり、被災後はすぐにトイレを封鎖しなくてはいけないということで、すぐにでも自分の準備した携帯トイレや簡易トイレの出番がやってくるわけです。
 さて、そのときあなたはトイレ問題をどのように解決しますか。

【活動報告】「初めての防災キャンプ」を開催しました。

 8月27日~28日に益田市立北仙道公民館で1泊2日の防災キャンプを開催し、総勢13名の子供たちが、夏の終わりの防災キャンプに参加してくれました。
 避難所開設や非常食体験、消火訓練や食べられる山野草探し、空き缶炊飯とあるもの野菜の料理、差し入れ花火で花火大会をし、そして避難所で一泊。差し入れフルーツの朝ご飯に洗濯、そして炊き出し演習と、内容盛りだくさんのキャンプでした。
 途中で数人、保護者の緊急お迎えもありましたが、それでもなんとか最後まで開催することができました。


 初めて会った子供たち同士が、普段あまり使わない包丁や缶切り、カッターナイフを使ってさまざまなことをしたり、避難所ではちょっと寝苦しいことがわかったり、大掃除をすることになったりと、さまざまな体験をしてくれました。
 また機会を見て開催したいと思っていますので、もし機会があればぜひご参加ください。
 今回参加してくれた子供たち、そして参加を許可してくれた保護者様、会場を快く貸してくださった北仙道公民館の皆様、いろいろなものを差し入れしてくれた皆様、そして、人数が少ない中で奮闘してくれたスタッフの皆様。
本当にありがとうございました。

ペットの避難

避難所で同行してきたペットの犬。トイレに向かい通路横が指定場所だったので、犬も避難者も困ったことになった。

 大きな災害が起きるたびに問題になっているのがペット。
 ペットを飼っている多くの人がペットの避難についてよくわかっていないというのが実情です。
 また、受け入れ側でもよくわかっていないので、混乱に拍車がかかっています。
 環境省では避難時にはペットと一緒に避難する同行避難を進めており、思ったよりもたくさんの避難所がペットの受け入れに関して可としているようです。
 一つ目の問題は、ペットの避難用語で「同行避難」と「同伴避難」という似て異なる言葉が使われていること。
 同行避難は避難所までは一緒に避難できるが、避難所内ではペットを別な場所に入れることで、同伴避難はペットと一緒に同じ部屋で過ごすことができるというものです。
この言葉の違いがなかなか理解できないので、避難所でペットの飼い主と避難所運営者が揉めることがよくあります。
 二つ目は、この「ペット」という言葉が何を指しているのかということ。
 同行避難可の避難所はペット用の場所や部屋を用意していますが、ここに入るのは「ペット」でくくられたさまざまな生き物です。
 犬や猫だけでなく、鳥やハムスター、蛇などの爬虫類、金魚などの魚類、そして昆虫類に至るまで、食物連鎖の関係にある生き物を一緒に押し込めることになります。
 対策としては、どんな生き物がペットとして避難してくるのかが事前にわかっていること、そしてどの種類をどこへ配置するのかを事前に決めておくことが非常に重要になってきます。
 また、飼っているペットの数が多い人は、避難所への避難は諦めたほうがいいかもしれません。
 避難所への避難を考えるよりも、自宅を災害の影響を受けにくい場所にするか、獣医師やペットホテル、そのペットに理解のある離れて住む家族や友人、知人と避難の話をしておいたほうが建設的だと思います。
 もともと指定避難所で優先されるのは「人」です。ペットを理由にして避難しない人が増えてきたので、ペットと一緒に避難するという考え方が出てきただけなので、人とペットを天秤にかけた場合、当然人を助けることになります。そういう意味でも覚悟をしておく必要がありそうです。
このペットの話はあくまでも一例。避難所の問題はさまざまありますが、普段はあまり考えられていません。
さて、あなたとペットが避難すべき場所はどこにありますか。

ペットの災害対策(環境省のウェブサイトへ移動します)

避難所と新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症の流行が避難所の環境改善をしているのはかなりの皮肉。

 スフィア基準というのがあることをご存じでしょうか。
 スフィア基準とは、スフィアプロジェクトによって国際的な人道支援の計画や管理、実施に携わる支援活動従事者向けに作られたスフィアハンドブックに記載されている、避難所や難民キャンプなどでの人道的と考えられる最低の基準のことです。
 実際にはこのとおりになってはいませんが、できるだけこの基準に近づくように、世界中のNGOや難民キャンプを運営する人たちが日々努力しています。
 さて、このスフィア基準によると、大人一人当たりの占用スペースは最低3.5平方メートル必要だとされています。
 この面積からは例えば調理場所やお風呂、トイレや洗濯場所といったものは含みませんのが、これらの設備を含んで計算する場合には、4.5~5.5平方メートルは必要だとされています。
 内閣府の「避難者に係る対策の参考資料」によると、日本の避難所は、一人当たり1.57~2.93平方メートル、多くは畳一畳分の2平方メートル前後が確保できればいい設計です。
 スフィア基準で考えると、日本の避難所は残念ながら「非人道的」な避難所となってしまいます。過去では阪神淡路大震災が一番ひどくて、一人あたり1~1.7平方メートルしかないときもあったとのことで、これではまともに体を横にして眠ることすらできなかったことがわかります。
 ただ、最近は新型コロナウイルス感染症の流行で、人同士の距離を最低2mは確保しなくてはならなくなったため、一人当たりの占用面積が5~7.7平方メートルに拡大し、スフィア基準を満たすようになったのはかなりの皮肉な感じです。
 一つ問題なのは避難所において一人当たりの占用面積が増えるということは収容能力が下がるということで、実際に避難所に入れなかった事例もあるようです。
 このことからはっきりといえるのは、自分が避難すべき対象なのかという把握と、入れる避難所を探すことになるかもしれないことを考えると、複数の避難先の設定と、早めの避難開始をすることが必要になるということです。
 以前は避難対象地域は問答無用で避難と言われていましたが、現在は基本は自宅待機で自宅が危険な人が避難所へ避難するというものに変わっています。
 平時にしっかりと自分の環境を確認しておいて、いざというときに途方にくれなくても済むようにしておきたいですね。

バリアフリーを考える

技術の普及や周囲の理解もあってか、日常生活に支援が必要な人でも地域で暮らすことができるようになってきています。
生活の支援といってもさまざまですが、自分で自分が生活する場所を選ぶことができるようになったことは非常に喜ばしいことだと思っています。
ただ、生活の支援がいる人は、全てを自力でできる人たちに比べると、どうしても避難の判断や準備、行動が遅れがちになってしまうので、対策としては事前に決められることを全部決めて、いざというときにすべてが自動で動くようにしておく必要があると思います。
さて、今回のお題のバリアフリーですが、避難所におけるバリアフリーというと、どうしても車いすや足の不自由な人が移動しやすいようにスロープや傾斜を準備するというのが最初にイメージされることが多いようです。
でも、バリアフリーというのは、そもそもがバリア、つまり「障害」がフリーの状態、障害がない状態といった意味合いになりますので、一般的に思い浮かぶような物理的なものだけではないはずです。
一般的には、生活するときのバリアには4種類あるそうで、「物理的バリア」「制度的バリア」「文化情報面のバリア」「意識上のバリア」がそれにあたります。
災害時には普段のあれこれが先鋭化してしまいますので、どうしても生活に支援が必要な人たちには厳しい状態になりがちですから、事前にさまざまなケースを考えて想定し、備えておく必要があります。
先ほどのスロープ一つとってみても、健常者が考えるスロープと必要な人の考えるスロープでは出来上がりが違うかもしれません。
同じように、避難所に掲示される情報が難しく書かれていてわからない人がいるかもしれません。
状況がわからず、一人一つの配給品をたくさん取ってしまう人がいるかもしれません。
できあがった仮設トイレが使えない人や、仮設トイレがわからない人がいるかもしれません。
そこで生活する人たちがお互いの家庭の文化が可能な限りぶつからず、必要最小限のストレスで済むような避難所にするためには、開設してからさまざまな人の意見を吸い上げる仕組みを作ることも大切ですが、事前にバリアを持っている人たちに参加してもらって実際の避難や避難所の設営や運営で気づいた点を教えてもらい、改善を続けていくしかありません。
バリアはストレスに直結しますし、へたをするとバリアを感じる人の生死にも影響してきます。
その地域に住む人たちがどのようなバリアを持っていて、どのように支援すればとりあえずの生活が確保できるのか。
避難所のバリアフリーはそういうことをしっかりと考えることが大切です。

母乳とストレス

 災害時には母乳が出なくなって乳児にあげられなくなるという話をよく聞きますが、これは正しくないようです。
 母乳はどんな状態であっても作り続けられていて、ストレスなどにより体が警戒することで、母乳が出なくなっているというのが実際のところのようです。
 つまり、まずはお母さんと乳児を安心できる環境にすることで、ストレスが軽減して母乳が出るようになるということで、できるだけ普段の生活環境に近づけることで、体の警戒態勢を緩めてやることで、母乳はきちんと乳児に与えることができるということになります。
 例えば避難所であれば、しっかりとした目隠しや仕切り、できれば人ごとに仕切られた授乳室を作ることで体の警戒態勢を緩めることができると思います。
 母乳がでなければミルクを与えるのも手ですが、ミルクが嫌いだったり、諸般の事情でミルクを受け付けない子もいますので、母乳を出すための周辺環境を整えてやることが重要だと思います。
 また、ストレスを与えないという視点で見れば、自宅や親兄弟の家といった行きなれていて見慣れた人たちがいる場所を避難先として選ぶといいと思います。
 場合によっては、被災地外に出て状況が落ち着くのを待つという方法も選択肢に入れたほうがいいと考えます。
 乳児を抱えての避難所生活はかなり大変です。
 支援体制がきちんと整っている乳児向けの福祉避難所、または避難所ではない避難先を平時に決めておいて、いざというときに途方にくれないようにしたいですね。

【終了しました】はじめての防災キャンプの開催日の変更について

 7月23日から24日にかけて益田市の北仙道公民館で開催を予定していましたはじめての防災キャンプは、益田市内およびその周辺の新型コロナウイルス感染症蔓延のため、開催日を変更することとしました。
 新しい開催日は、8月27日から28日となります。
 予定しておられた参加者の方には急な日程変更となって申し訳ありませんが、一か月伸びた分、より楽しんでもらえる内容で開催したいと思っていますので、引き続きのご参加をよろしくお願いします。

弱者ほど厳しい避難所生活

 災害の避難情報では「レベル3・高齢者等避難」と「レベル4・避難指示」に別れています。
 このうち、レベル3の高齢者等の「等」には障がい者や乳幼児、妊婦といった生活に対してさまざまな配慮のいる人達が含まれていて、そういった人達は元気な人よりも早く避難を促されています。
 その理由はいろいろとあるのですが、一番大きな理由は、元気な人と同時に避難を開始したら、生活に配慮のいる人達は元気な人に避難する速度が負けてしまうからです。
 生活に配慮のいる人いない人の区別は、避難所にはありません。考え方としては、避難者は平等に避難者としての取り扱いがされてしまいます。
 そのため、生活に配慮のいる人達は元気な人と同時に行動を開始すると、どうしても速度で負けてしまって、避難しても避難所等に収容してもらえないという事態が発生します。また、元気な人に交じって避難するのが難しい場合もありますのから、せっかく避難したにもかかわらず、結局自宅に戻ってしまう例も起きています。
 これはまずいということで、現在は配慮のいる人達は最初から福祉避難所に避難できるように法改正されているのですが、普段から施設を利用している人達はともかく、乳幼児や妊産婦を最初から受け入れてくれる場所は、保育園や病院、助産院などになり、福祉避難所としてはあまり聞きません。
 また、元気な人でもアレルギーを持っている人がいますが、避難所で避難者に支給されるさまざまな支援物資はアレルギーの配慮はありませんので、自分でものを見て判断していくしか手がありません。
 これも避難者として平等に扱われることから発生する問題です。
 一般的に生活になんらかの配慮がいる人達は避難所では隅に押しやられ、その上生活再建することも時間がかかってしまうために最後まで避難所にいる羽目になることが多いです。
 あなたがもし、生活になんらかの配慮が必要な人だとしたら、避難所に避難するとひどい目に遭うことは目に見えていますので、避難所以外で自分が安心して過ごすことのできる避難先を用意しておくことをお勧めします。
 生活弱者ほど厳しい生活になってしまうのが避難所です。
 避難しなくても済むような場所に住んでいることが一番の理想ですが、さまざまな事情でそれが難しい場合には、最低1カ所、できれば複数箇所、自分の安心できる避難先を見つけておいてください。

ただ寝るだけでも立派な避難練習

ただの段ボール箱でも使い方で立派な寝具に早変わり。

 災害時、特に雨や台風の場合には、大抵の場合一晩を避難先で過ごすことになります。ホテルや親戚宅などならとりあえずの寝具はあると思いますが、避難所に行くとそういうわけに行かない場合があります。
 事前に避難先に準備しておくか、早めの避難で一緒に寝具を持ち込まない限りは、寝るときには布団が無い状態です。
 そして、基本的に体育館の備品は一時避難では使わせてはもらえませんので、寝るための方法を考えなければいけません。
 最近ではコッドや段ボールベッドなども準備されるようにはなってきましたが、それも基本的に高齢者が優先で数が足りているわけではありません。
 つまり、寝るための道具も自分で準備しておく必要があるのです。
 テント泊に馴れている人なら寝袋やその下に敷くマットなどは持っていると思いますのでそれなりに快適な就寝ができると思いますが、そうでない場合にはどうするか。
 そのためには、家で布団を使わずに快適に寝るにはどうしたらいいかを練習しておくといいと思います。
 やってみると、意外なものが役に立ったり、使えるとSNSで言われていたようなものが案外役に立たなかったりと、さまざまな体験ができます。
 その中で、携帯性に優れていて自分がそれなりにしっかり寝られるような道具が見つかっていくと思います。
 衣食住は大切ですが、それ以上に必要なものの一つが睡眠です。
 可能な限り眠りの質を落とさなくてもすむように、しっかりと練習をして自分に向いているアイテムを見つけるようにしてください。

【終了しました】初めての防災キャンプを開催します【日程変更有】

 2022年7月23日から24日にかけて、益田市の北仙道公民館で「はじめての防災キャンプ」を開催することになりました。
 避難所に来てから、開設、食事やトイレ、洗濯やお片付けなどを、途中遊びながら実際に体験してみてもらいます。
 「はじめての防災キャンプ」とありますとおり、当研究所も今回初めて実施する企画、どうなるかは参加者とスタッフの皆様によります。
 夏休み、子どもさんの一つの体験として、興味があればご参加下さい。
 なお、定員になり次第締め切らせていただきますので、それにつきましてはご了承下さい。
 また、詳細については、問い合わせフォームからお問い合わせ下さい。

(2022年7月15日追記)新型コロナウイルス感染症蔓延のため、日程が変更になりました。新しい日程は8月27日~28日になりますのでご注意ください。