書く道具を用意する

 油性ペンや鉛筆、ボールペン、クレヨン、万年筆、黒墨など、一口に書く道具といってもいろいろとあります。
 災害時、書き付けるためのものは、紙が無くても何とかなりますが、書く道具がないと相当苦労します。メモ帳や付箋、ノートは忘れても、書く道具だけは絶対に忘れず持ち歩くようにしてください。
 では、非常用持ち出し袋や防災ポーチに入れるとしたらどのようなものがいいのでしょうか。
 災害後、いろいろな出来事が起きますが、何にでも書くことができるということが前提になりますので、万年筆やボールペンは必須にはなりません。
 油性ペンで太い芯と細い芯がセットになっているようなものがよさそうですが、カバンなどに入れてそのままにしておくと、いざというときに乾いていて使えないということが起きるかもしれませんので、管理はきちんとしておきましょう。
 鉛筆は、つるつるとした面以外は結構さまざまなものに書くことができるので重宝します。芯が折れたら使えなくなるので、そこだけは気をつけておく必要があります。
 意外ですが、クレヨンやダーマトグラフは大抵のものに書くことができ、落ちにくく、落とそうと思うとすぐにきれいに落とせるという魅力があります。

ダーマトグラフ。結構何にでも書けて便利。

 これも鉛筆と同じく、芯が折れてしまうと使えなくなるので、保管の方法には気をつけておきましょう。
 どのような書く道具も一長一短がありますので、結局は使いやすいものになっていくのだと思いますが、手に入りやすさで油性ペン、ずぼらな人はダーマトグラフを用意しておくといざというときにもいろいろ掛けて便利ですよ。

足湯と手浴

 大規模災害で被災すると、さまざまな原因から被災した人は精神的に緊張した生活を送ることになってしまうことが多いです。
 精神的に緊張すると、身体も緊張してしまい、気がついたら寝不足や体調不良が身体や心に出てきますから、できる範囲でも緊張をほぐす時間が必要になります。
 日本人の特性なのかどうかはわかりませんが、大きなお風呂にゆっくりと入るとかなりリラックスできる人が多いのですが、大規模災害後には水や燃料、設備の不足や衛生面の問題などから、なかなかそういったことは難しいようです。
 その代わりに、足湯や手浴をしてみてはどうでしょうか。
 バケツや洗面器にお湯を入れて手や足をつけるだけなので、誰でもできますし難しい技術も必要ありません。
 そして、身体全体が暖まって緊張をほぐすことから、安眠やこころの緊張の緩和効果も期待できます。
 被災地への支援では、ボランティアによる足湯や手浴が行われることもあり、マッサージが追加されていることもあってか、非常に評価は高いようです。
 大規模災害もある程度落ち着いてくるとお湯は手に入りやすくなると思いますので、被災者の緊張緩和の方法の一つとして避難所運営やボランティア支援に入る人には知っておいてほしいと思います。

低体温症に気をつけよう

 登山や屋外での運動をやっている人は割とよくご存じだと思いますが、低体温症には季節は関係ありません。
 夏であっても、身体から熱が奪われてしまって低体温症にかかってしまい危険な状況になることがあります。
 低体温症は本人が気づいたときには一人では手の打ちようが無い状態になっていることが多いので、意識して低体温症にならないように気をつけておく必要があります。
 では、低体温症はどうやって起きるのでしょうか。
 低体温症は、身体が作る熱が何らかの原因で奪われてしまい、熱を作ることができなくなる状態を指します。
 例えば、夏にはやる方がそれなりにいる沢登りですが、水の冷たい上流部で水に浸かり続けていると感覚がなくなり、震えがきます。これは低体温症の予兆で、そのうちに手足の指の動きが鈍くなったり、肌の感覚がマヒしたりしてきます。
 その後は全身の動きが鈍くなったり、転んだり。意識がはっきりしなくなると危険な兆候です。
 最終的には寒いという感覚がなくなって眠くなって絶命してしまうので、そうなる前に手を打ちましょう。
 基本は,身体を乾燥させて保温することです。
 保温といっても、意識が混濁しているような状態のときには、かなり体温が下がっていますので、ストーブや湯たんぽなどでいきなり温めると心臓マヒを起こすことがありますので、ゆっくりと温めていくしか手がありません。
 で、この低体温症、大雪の最中に屋外作業をしたり除雪しているときにも起こります。雪に埋もれると一気に低体温症になりますし、除雪などで汗をかいたあと寒風に吹かれれば同じように一気に低体温症になります。
 とにかく小まめに休憩をとって身体を冷やさないこと。そして雪や汗で身体が濡れたら、すぐに拭き取って乾いた衣服に着替えることを基本に行動をしてください。
 低体温症は条件さえ揃えばどんなところでも起こり得るものです。
 そのことを忘れずに、どうぞご安全にお過ごし下さい。

視線を遮るものを用意する

小学校の防災クラブで試して見た視線を遮るための場所づくり。思ったよりいろいろなアイデアがでる。

 避難所に避難すると、ある程度落ち着くまでは基本的にプライバシーはないと考えた方が良さそうです。
 最近でこそ気の利いた避難所であれば授乳室やおむつ交換場所、着替え場所などを準備するようになってきてはいますが、多くの避難所は場所の提供だけという考え方ですので、広いスペースにあちこちでごろ寝というのが現在の日本の避難所のスタイルなので、授乳や着替えなど、他人に見られたくないと感じる行為をする可能性があるならば、視線を遮る道具を準備しておくようにしてください。
 例えば、自立型テントがあればプライベート空間を簡単に作り出すことができるので非常に便利です。
 ただ、避難所はすし詰めになることが多く,テントが建てられない場合も多々あります。
 そういった事態に備えて、大きめのバスタオルやエマージェンシーシート、レジャーシートなど物理的に視線を遮ることのできるものを用意しておくようにしてください。
 退屈になると、動きのあるものを無意識に目で追ってしまいがちです。
 そうすると、見ている側は意識していなくても、見られている側は落ち着かないものです。
避難所にそういった道具を備蓄するのは現実的ではないので、とりあえず自衛のために、自分の非常用持ち出し袋にはそういった道具を入れておくことをお勧めします。

かまどは使ってみよう

 個人装備に限らず、地域の避難所に準備してある各種資材は使いこなせて初めて役に立つものです。
 地方の避難所には、結構な確率で簡易かまどが備えられているのですが、このかまどはいざというときに使うことができるかと考えてみると、結構怪しいところが多いような気がしています。
 というのも、保管しているかまどは新品まっさらというものが多く,かまどはあっても薪がないとか、上に載せる鍋がないなど、せっかく備えているのに何か足りないという状態になっていることが多いからです。
 そして、この手の簡易かまどは配置の仕方によっては火がかまどの口から噴き出してきたりすることもあります。
 実際に一度は使ってみないと、癖や置き場所がわからないのではないかと考えます。
 避難所の資材は、劣化したらすぐに更新というわけにはいかないようですが、地域のイベントなどに使用することでみんながそのかまどを使えるようにしておくと、何かあったときにも困らないと思います。
 余談ですが、最近はたばこを吸う人が少なくなり、台所のコンロも電化になっているところが増えてきました。
 備蓄するついでに、火をつける道具も準備しておいた方がよさそうです。
 当研究所で実際に使ってみたかまどの口からの火の噴き出しについて映像を撮ってみたので、お時間があれば見てみてください。

【終了しました】「防災とボランティアのつどい」が開催されます。

 令和4年2月6日にオンライン上で内閣府防災担当主催の「令和3年度防災とボランティアのつどい」が開催されます。
 平成19年の能登半島地震や新潟中越沖地震ではたくさんのボランティアが参加しましたが、それと同時に被災地の支援団体の活動の支援も行われました。
 今回は当時を振り返りながら、支援者によってどのような連携や協働が勧められてきたのか、またこれらのボランティア活動についてもお話がされるようです。
 詳細は内閣府防災情報のページ内にある「防災とボランティアのつどい」のアイコンからご確認下さい。

防災ボランティア関係情報(内閣府防災情報のウェブサイトへ移動します)

善意と悪意

 大災害が起きると、発生後すぐに金品や物品の寄附をしようとする人がいますが、その行為、少しだけ待って下さい。
 現地の状態がわからないのに金品の寄附の受付を始めるところは、本当にその寄付金が現地に届くかどうか、しっかりと調べることが必要です。
 いろいろと言われていますが、日本赤十字社は赤十字社という全世界に繋がるネットワークがありますし、会計報告もきちんとされています。
 もしも寄附をするのであれば、ここを基準にしてどのような寄附の使い道があってどれくらい明朗会計なのかを確認しても遅くはありません。
 どのみち寄附したお金がすぐに現地に届くわけではないですから、一呼吸おいて、状況がはっきりしてからの寄附でも充分間に合います。
 せっかくの善意を、悪意ある人に利用されないようにしてください。
 それから、物品の寄附もできれば止めてください。
 物品の寄附をしてもよい人は、現地に直接持ち込めて受取人が明確である場合だけです。ただ、災害発生後すぐに物資を持ち込もうとするのは、現地への災害救助派遣や救助活動の邪魔になりかねませんので、持ち込むのであれば他の活動の邪魔にならないようにご配慮願います。
 そして、物品を送る人が忘れがちですが、災害が発生してダメージを受けているのは物流も一緒です。善意でものを送りつけようとすると、ダメージを受けている物流にさらなる負荷をかけてしまって、結局届いた頃には必要ない状態になっていたりすることが殆どです。
 ちなみに、災害後の個人からの任意の救援物資でかなり困るものが、生鮮食料品と古着です。物流がダメージを受けている以上、平時と同じように物品が届くなどと考えないで下さい。流通の回復には時間がかかりますので、生鮮食料品を送っても、100%腐ってゴミになってしまいます。
 また、不要な古着を送るのも絶対に駄目。あなたが着ないものは他の人も着ません。送るのならば新品のものを、できるだけ箱単位で送って下さい。
 送りつけられた古着は、ほぼ100%現地で焼却処分となっていて、そうでなくても負荷のかかっている現地のゴミ処理にさらなる負荷をかけてしまいます。
 マスコミの報道やSNSなどで「○○が足りない!」と発信されることはよくありますが、その後その○○が山のように届いて処分に困る状況になることはよくあります。
 物資の調達は現地からでもできますから、慌てず騒がず、せっかくの善意を無駄にすることの無い方法で届けてください。
 最近ではAmazonやヤフー、楽天などで現地の必要としているものと提供する人のマッチングサイトも災害時には運営されるようになってきています。
 そういったところを利用して、いるものをいるぶんだけ必要な場所に届くようにしたいですね。
 せっかくの善意が現地にとって悪意にならないように、金品や物品を送るときには、しっかりと配慮して欲しいなと思います。

参考:支援物資等を提供する(NPO法人レスキューストックヤードのウェブサイトへ移動します)

常識と非常識の狭間

 被災後の被災地での生活では、それまで常識だと信じていたことが非常識になることがたくさんあります。
 なかでも、性に関する問題は常識と非常識がぐちゃぐちゃになって、現地の当事者になってしまうと何が本当なのかさっぱりわからなくなってしまいます。
 例えば、普段の生活の中で女性が着替えをしているところを覗くと、明らかに犯罪です。
 ところが被災地の避難所でそういったことが起きてしまっても、覗いた方では無く覗かれた方が悪いことになってしまったりします。
 同じように、寝ている女性の布団に近所のおっさんが入ってきたとします。
 普段から間違いなく犯罪ですが、被災地の避難所では「それくらい我慢しろ」と言われてしまったりします。
 その避難所の男性陣からそう言われるだけではなく、女性陣からも同じような発言があったりすると、いったい何を信じて良いのかわからなくなってしまうでしょう。
 こうやって考えてみると、常識と非常識というのはその場に居る人や雰囲気、状況によっていかようにでも変化するものであり、常識などは人の数だけ存在するのでは無いかと考えることもできそうです。
 大規模災害が起きると、被災地は必ず治安が悪くなります。日本人は規律正しいと言われますが、全ての人がそうではありませんし、悪さをするやつはします。そして、災害という事態で自制心が飛んでしまった人にとっては、平時においては犯罪となる行為をやってしまうことに罪の意識はありません。
 ではどうすればいいか。
 残念ながら、同性同世代で自衛するしか手がありません。決して単独行動は取らない。避難所でも寝ずの番を複数立てるなど、犯罪に遭わないような対策を取るしか手が無いのです。非常時には、平時の常識は通用しないと思って下さい。
 自分達の身は自分たちで守るしか無い。
 「自決主義」というと言い過ぎかもしれませんが、犯罪を犯そうとしたものは自らの手で始末する。それくらいの覚悟がいるのではないでしょうか。
 一番良いのは、常識が非常識にならないような災害後の治安維持ができればいいのですが・・・。

【お知らせ】2021災害時外国人サポーター養成研修(西部)が開催されます。

 公益財団法人島根国際センターが主催する災害時外国人サポーター養成研修の西部開催が決定しました。
 内容は災害時の外国人支援で、災害で生じるさまざまなお困りごとを日本語のわかりにくい人達からどうやって聞き取るか、またどう伝えていくかについて実演を交えながら体験できます。
 また、サポーター養成研修とはなっていますが、サポーターになることを強制されるわけではありませんので、どのような問題が起きてどのように伝えるといいのかについて知りたい方も参加してみてはいかがでしょうか。
 開催場所や日程など、詳しくは島根国際化センターのウェブサイトをご確認下さい。

2021災害時外国人サポーター養成研修(西部会場)参加者募集(しまね国際センターのウェブサイトへ移動します)

20220120追記 新型コロナウイルス感染症の急増に伴い、本研修はweb研修に変更されました。詳細はリンク先をご確認下さい。

地区防災計画ってなんだ?

 最近防災界隈で騒がれているのが、いかにして地区の防災計画を作ってもらうかということです。
 国の防災計画と、都道府県や市町村が作る地域防災計画はあるのですが、これだけでは日本に住む全ての人が安全に避難をすることができるわけではありません。
 そこで、地区防災計画を当事者である住民に作ってもらおうというのがこの話のスタートなのですが、どうもここで規定されている地区を誤解している人がいるようなのでちょっと確認しておきたいと思います。
 ここに出てくる地区とは、例えば自主防災組織や自治会といったものではありません。もっと小さな単位、例えば集合住宅や、場合によっては各個人ごとに作る防災計画もこの「地区」に該当します。
 避難する判断や生き延びるための判断、避難先や受援方法などは、あまりに大きな単位だと条件が違いすぎて全く機能しません。
 より現実的に動かすためには、もっともっと小さい単位で同じような条件の人達を集めてその場所の防災計画を作ることが必要だと考えられているので、ここで出てくる「地区」というのは「地域よりも小さい単位」といったイメージで思ってもらえればいいと思います。
 そして、自分や近所の人がどのように行動するのかを定義することが、この地区防災計画の肝となるのです。
 その場所の災害事情はその場所に住んでいる人にしかわからないということがあります。そのため、その地域に住んでいる人達に自分が助かるための計画を作ってもらい、それを地域防災会議を経て地域防災計画に織り込んでいく。
 そのようなイメージで作るのが本筋です。
 行政機関によっては、自主防災組織や自治会などの単位で作らせようとしている動きもありますが、それでは結局地域防災計画の焼き直しになってしまい、行政が決めたルールの責任を地域に押しつけることにしかなっていません。
 基本はあくまでも小さな集団です。当研究所のある地域では自治会の組、つまり同じような地域条件で生活している5~10世帯を基本単位として作るくらい。
 お隣同士でも条件が異なるのであれば一緒にせず、それぞれに防災計画を作ることになります。
 正直なところ、個人の防災計画とどう違うんだという疑問はありますが、隣近所で話をしてみんなで行動することで逃げ残りや危険な目に遭う人を無くすことができるようにという意図もあるようです。
 お正月、ご家族や親戚が集まるこの機会に、あなたの防災計画についても見てもらって、助言をもらってみてはいかがでしょうか。
 そして、お正月が終わったら、ご近所の方と防災計画について話し合って、より安全に災害を乗り切れるようにしておくといいと思います。

みんなでつくる地区防災計画(内閣府のウェブサイトへ移動します)

みんなでつくる地区防災計画(日本防災士会のウェブサイトへ移動します)