日のあるうちに避難する

 災害の発生が予測されるようなときや災害発生後、自分の住んでいる場所に不安がある場合には避難をすることになります。
 避難先は避難所だけではなく、ホテルや旅館、友人宅などいろいろとあると思いますが、共通して言えるのは、日中、太陽が出ているうちに避難を完了することです。
 避難するのを迷っているうちに周囲が真っ暗になり、そのなかで避難をしなくてはならなくなった場合、足元も周囲も見にくくて状況がつかみにくくなります。
 そうすると、日中避難の何倍も危険度が増し、避難速度も遅くなるために災害に巻き込まれてしまう場合も出てきます。
 数時間で一気に水かさが増すようなゲリラ豪雨などの場合は仕方のない場合もありますが、可能な限り明るいうちに安全な場所への避難を完了させてください。
 そして、避難完了後は翌朝までそこにいるようにしてください。
 確実に危険性がない場合には夜間の帰宅もできると思いますが、確実性がない場合には夜明けまで待ってからの帰宅をするようにしてください。
 自分の安全確保を安全に行うためには、できるだけ明るい状態での避難が望まれます。夜間に地震などが起きた場合にはどうにもなりませんが、予測できる災害では、迷ったらとりあえずは避難する。日のあるうちに避難を完了する。
 該当する災害で避難をする必要がある場所に住んでいる場合には、それを徹底するようにしてください。

安心リストを作っておこう

 人間というのは普段からさまざまな不安を持っているものです。
 そして、その不安を解消するために、さまざまな行動をしていることもご存じのとおり。
 こと、災害になるとそういった不安がさまざまな形で精神に悪影響を及ぼしますので、そうならないために対策を考えておかなければなりません。
 そこでやっておいてほしいことが一つあります。
 それは、普段から自分が安心できる状態になれる「モノ」「コト」「場所」「人」などを考えてリストアップしておくことです。
 数が多ければ多いほど、いざというときに役立ちますので、思いつく限りのことをリストアップしておいてください。
 出来上がったそのリストは、非常時に持ち歩くものの中に入れておきます。スマートフォンのメモ機能などでもいいのですが、電源確保が不安ですので、できれば紙に書きだしておきましょう。
 そして、避難完了時や被災後に自分が不安な気持ちになったときは、そのリストを見てその時の自分のコンディションに応じた安心できる状態を探して試してみましょう。
 記憶しているから大丈夫なような気がしていても、いざというときにはなかなか思い出せませんから、可視化したものでチェックをしていくと、意外に気持ちが安定してくるものです。
 また、普段から意識していることで、自分が安心だと思える傾向も見えてきますから、不安にならないための行動をあらかじめとることもできるようになると思います。
 災害からの復旧・復興は意外と長期戦になりますから、気持ちが落ち込んだりくじけたりすることが恐らく出てくると思います。
 そんなときに役に立つ「安心リスト」。災害時でなくてもこころの不安時には必ず役立ちますので、普段から意識して作ってみてくださいね。

【終了しました】救急救命講習会を開催します

来る5月21日13時から、益田市の益田スイミング様において、日赤島根県支部の方を講師にお招きし、救急救命講習会を開催します。
誰もがいつどこで必要になるかわからない心肺蘇生法やAEDの使い方などを、丁寧にしっかりと教えてもらうことができます。
普段なかなか接することのない救命法について、こういった機会を通して学んでみませんか。
詳しいことはチラシをご覧ください。
興味のある方のご参加をお待ちしております。

当日の様子はこちら

SNSでの情報を見極めるには

 最近の災害で、発生地域の人たちが情報を得ている大事な情報源としてSNSがあります。TwitterやLINE、FacebookといったSNSは、素早くピンポイントの情報を得ることができるため、非常に重宝されています。
 ただ、こういった非常事態の時に間違っている情報を面白がって流す人は必ず発生しますし、それを真に受けて間違った情報を拡散する人もかなりいます。
 先日、読売新聞を読んでいると、LINEみらい財団が情報リテラシー教育の中で、「情報は「だいふく」で確かめる」ということが書いてありました。
 LINEみらい財団のウェブサイトの「情報防災訓練(情報収集編)」の資料の中に出ているのですが、

1.「だ」れが言っているのか
2.「い」つ言ったのか
3.「ふく」数の情報があるか

を確認しろというのがありました。
 「誰が」「いつ」その情報を発信しているのかは、内容の重要度にかなりの差が出ます。
 誰が言っているのかはよく見落とされるものですが、よくあるのが「友達が自衛隊の人に聞いた話」や「知り合いが市役所の職員の話を聞いた」など、また聞きになっているようなものは、基本的に信用しないほうが無難です。また、信用しすぎることは危険ですが「公式」が表示されているものはある程度信用ができると思います。
 それから、できればその人のアカウントを確認し、普段どのような情報を発信しているのかを確認しておいた方がいいです。普段からおかしな情報発信をしている人は信用できませんし、普段と異なる流れの情報発信の文体や写真などの場合には、アカウントが誰かに操作されている可能性もあります。
 また、その情報がいつ時点のものなのかはしっかりと確認しておかないと、よく見ると数時間前の話といったことがよくあります。
 過去、「避難所で水が足りない」といった情報で、いつ発信されたものかを確認しないで真に受けたたくさんの人が水を送り付けて収集がつかなくなったケースもありますので、「いつ」は必ず確認するようにしてください。
 最後の「複数」は同じ情報が複数の人から発信されているかどうかを見極めることになります。とはいっても、同じ記事をたくさんの人がシェアすることもよくありますので、例えば「使われている写真が異なっているか」や「シェアではなく別な人が発信した情報であること」などには注意をする必要があります。
 また、災害時に限りませんがSNSでは似たような意見の人が集まるというクセがありますので、SNSで出ている情報判断が常に正しいというわけではないということを覚えておいてください。
 玉石混合の情報をどう使うのかは受け取る人次第です。
 しっかりと見極めて、どう活かすのかを考えてくださいね。

災害時の情報とのつきあい方・デマなどの見極め方を学ぶ情報リテラシー×防災の教材「情報防災訓練(情報収集編)」を開発(LINEみらい財団のウェブサイトへ移動します)

災害に備えるのは自分

 災害時の対応については、行政の不手際がいろいろと指摘されることが多いのですが、こと避難に関する限りは自分で対策を備えておくしか方法はありません。
 行政サイドは人的不足、経験不足、研修不足などなど、さまざまな理由でまともな対応はできないと考えてください。
 これら行政サイドの不足を補うために自主防災組織を作るということになったのですが、自主防災組織も行政から地域の防災対応を丸投げされ、高齢化や人口減少、近所付き合いの減少などで活動不全に陥ってしまっているところもかなり多いです。
 どんな人であれ、自分の身を守るのは自分しかいないということを肝に命じておきましょう。
 情報は自分で取りに行く、避難の判断は自分でする、避難は自分でする、といった、自分で判断するための情報を集めて自分で決定し、自分で避難するという手立てを考えておかないといけないのです。
 その過程の中で、自分ではできないことが出てくることがあります。その自分でできないことをどのように周囲に助けてもらうのか、これが重要になるのです。
 自主防災組織も何もしない人をおんぶにだっこで助けて避難させるほどの能力はありません。助けてほしい人が助けてほしいことを伝えることができて、初めて助けてもらえるということを知っておきましょう。
 自力で何とかなる人や、自分の情報を出したくない人は、自分でなんとかすればいいので人の助けは不要でしょう。でも、人の助けが欲しい人は欲しいと言わなければ伝わらないのです。
 現在作成することとされている要支援者の個別避難計画も、避難準備や避難、避難後の支援に至るまですべてを誰かに押し付けるというのでは計画は必ず破綻します。
 その人が何をどこまでできるのか、どうすれば安全が確保できるのかは人によって異なります。まずは自分が自分の身を守るために考えて準備すること。もし自分で何をすればいいのかわからなければ、わかる人を探しましょう。
 繰り返しますが、災害時には誰も助けてはくれません。もし助けがきたとすれば、かなり運がよいか、それとも準備がしっかりとできていたかのどちらかです。
 災害時に身の安全を確保できるように、自分で準備を整えておきましょう。

点の情報、面の情報

 防災の研修会をやっていると、いただくご意見の中に高確率で「避難情報の発表が遅い!」というのがあります。
 行政に物申しておくようにと言われることも多いのですが、当研究所はあまり行政とのお付き合いがないので、直接お伝えいただくようにその都度お話はしています。
 ただ、防災の研修会でよく言われている「避難レベル3で避難に時間がかかる人の避難開始、避難レベル4でその地域の危険な場所の人は全員避難」というのを真に受けると、そういったご意見が出るのも無理はないと思っています。その地域全体が危険になる可能性があるときには、地域の中にはすでに危険になっている場所も当然存在し、避難情報だけを鵜呑みにすると避難が遅れてしまうという事態が発生するからです。
 ただ、日本の場合には、災害が予測されるときに行政から発表される各種情報は、あくまでも「お願い」にすぎませんので強制力はありません。
 同じ地域であっても、住んでいる場所によって早く避難しないといけない人もいれば、避難が必要ない人もいるわけで、それを加味したうえで自分の避難判断をしてほしいというのが、行政側の考え方になります。
 その地域の雨量や雨雲レーダーの状況、川の状態などのデータからその地域がどういった状態なのかを見ているだけで、実際に現地であなたの周囲の状況を見て判断しているわけではありませんから、行政の発表する避難情報は「面の情報」になります。
 でも、あなたも含めて多くの人が知りたいのは、地域がどうなるのかではなく、自分のいる場所がどうなるのかということなわけで、欲しいのは自分のいる場所という「点の情報」になるわけです。
 行政があなたがいる場所という「点の情報」を出すのは無理ですから、それぞれがどのタイミングで避難しなければいけないのかは、それぞれが自分で考えて行動を決めておくしか手はなく、そのためにマイタイムラインと呼ばれる自分の災害時行動計画を作ることが推奨されているのです。
 避難情報はあくまでも一つの目安であって、実際には自分で行動を決めるための鍵を作っておくことが重要となります。
 例えば、近所の側溝の水が溢れたら、とか、裏山から水が出てくるようになったら、といったピンポイントの危険情報を使うことで、あなたの安全確保ができると思います。
 あなたの周りの「点の情報」を上手に使って、あなたの安全を確保するようにしてくださいね。

防災散歩のススメ

 新しい生活環境になった人も多いと思いますが、住み始めた地域のハザードマップは確認しましたか。
 地域によってはすでにハザードマップを配られなくなっているところもあるようですが、国土地理院の重ねるハザードなどを利用して、住んでいる地域のハザードはしっかりと確認しておいてください。
 そして、お休みの時にでもハザードマップを持って実際に地域を歩く防災散歩をしてみてください。ハザードマップを見ながら歩いてみると、ハザードマップを見ているだけではよくわからないことがたくさんわかります。
 また、歩いてみると安全な場所や危険な場所が案外たくさんあることに気づくと思います。
 ついでに地域の特性や地形などもわかりますから、時間を見つけては防災散歩をやってみることをお勧めします。

国土地理院「重ねるハザード」

安全な場所?

 地震が起きると、「安全な場所に避難しましょう」ということがよく言われますが、この安全な場所というのは、具体的にはどんなイメージを持っていますか。
 こういった質問をすると、案外と大人の人は考え込んでしまうことが多く、逆に子どもはいろいろと答えを考えてくれます。
 これは大人は100%安全かどうかで考え、子どもは「ここよりも安全な場所」という視点で考えるからだと思っています。
実は、日本には地震が起きた時に100%安全な場所は存在しないと考えていいと思います。相対的に安全な場所と危険な場所はありますし、絶対危険な場所も存在しますが、安全確実な場所を考えてしまうと、答えが出てこないのではないかと思います。
 質問に回答する子供たちのように、その場所で比較的安全なエリアはどこかということを探す視点はとても重要で、普段から見慣れていないと見つけることは難しいと思います。比較的安全なエリアで、自分の身を守るための格好をしっかりととることができれば、怪我をすることはほとんどないと思いますので、その場のどこなら安全だろうという視点が自然にできるように、普段から意識しておくといいと思います。
 ちなみに、大人と子供で地域の安全点検をすると、子どもの方が危険なものや危険な場所を良く知っていることがわかります。同じところを普段歩いていても、大人は割と漫然としていることが多いのかなとも思います。
 地震がきた時には、訓練とは違って誰もあなたにどうすればいいのかの指示はくれません。自分で自分の身を守れるように、目線や訓練をしておきたいですね。

【活動報告】研修会「となりのタイムライン」を開催しました

 去る2023年4月8日に益田市民学習センターにて、ワンコイン研修会「となりのタイムライン」を開催しました。
 当日は参加者おひとりでしたが、マイタイムラインの説明から、実際に作っている人たちの実例を紹介し、どのような考え方で作成していけばいいのかについて考えてみました。
 「マイタイムライン」というのは、内閣府や国土交通省が推奨しているもので、来ることが予測される災害に対して、あらかじめどうなったら何をするのかを決め、本番時にはその決めたとおりに行動することで手おくれや漏れを無くすという、時系列にまとめた災害時行動計画です。
 ただ、実際に作成してみると何を書いたらいいのか結構悩むことが多いので、実際に作った人たちのものを参考にすることは、やってみて役に立つなと思いました。このマイタイムラインは、自分が必要とする行動を分解して全て可視化する作業を行うので実は結構大変ですが、一度作っておくとかなり役に立つものなので、その作成方法を知ってもらって、自分用のものを作成しておいてほしいなと思います。
 今回参加してくださった方に、こころからお礼申し上げます。

まずは身の安全を確保する

机の下でダンゴムシ
机の下でダンゴムシはお約束です

 防災の普及啓発をやっていると、災害に対してどんな備えをしたらいいのかと聞かれることがよくあります。
 災害に対してどんな備えをするのか、という問いに対する回答は結構難しくて、人によってさまざまな回答をすると思いますし、恐らくはどの回答も間違っていないと思います。
 筆者なら、まずは自分の身の安全を確保するための方法を身に着けることを推奨します。どんな備えでも、本人が死んでしまったら何の役にも立ちません。まずは自分の安全確保が最優先になるからです。
 安全確保とは、物理的安全、精神的安全、身体的安全になると思っていますが、災害発生時にはまず身体的安全を確保することが優先であり、そのための方法を学ぶことが必要です。
 東日本大震災の時に流行った「津波てんでんこ」は、まずはそれぞれが自分の安全を確保するための言葉です。地震に対する備え、準備、対策、水害や台風、津波に対する情報収集、準備、対策をしっかりと行っていくことが大切になると考えています。
 そして、そのための訓練は怠らないようにしてください。
 訓練はうそをつきません。
 身の安全を確保するための行動は、普段から意識していなければ行うことは難しいですので、物理的な備えを行うのと同時に、想定される被害に対して安全確保をするための訓練も、しっかりと行うようにしてください。