点の情報、面の情報

 防災の研修会をやっていると、いただくご意見の中に高確率で「避難情報の発表が遅い!」というのがあります。
 行政に物申しておくようにと言われることも多いのですが、当研究所はあまり行政とのお付き合いがないので、直接お伝えいただくようにその都度お話はしています。
 ただ、防災の研修会でよく言われている「避難レベル3で避難に時間がかかる人の避難開始、避難レベル4でその地域の危険な場所の人は全員避難」というのを真に受けると、そういったご意見が出るのも無理はないと思っています。その地域全体が危険になる可能性があるときには、地域の中にはすでに危険になっている場所も当然存在し、避難情報だけを鵜呑みにすると避難が遅れてしまうという事態が発生するからです。
 ただ、日本の場合には、災害が予測されるときに行政から発表される各種情報は、あくまでも「お願い」にすぎませんので強制力はありません。
 同じ地域であっても、住んでいる場所によって早く避難しないといけない人もいれば、避難が必要ない人もいるわけで、それを加味したうえで自分の避難判断をしてほしいというのが、行政側の考え方になります。
 その地域の雨量や雨雲レーダーの状況、川の状態などのデータからその地域がどういった状態なのかを見ているだけで、実際に現地であなたの周囲の状況を見て判断しているわけではありませんから、行政の発表する避難情報は「面の情報」になります。
 でも、あなたも含めて多くの人が知りたいのは、地域がどうなるのかではなく、自分のいる場所がどうなるのかということなわけで、欲しいのは自分のいる場所という「点の情報」になるわけです。
 行政があなたがいる場所という「点の情報」を出すのは無理ですから、それぞれがどのタイミングで避難しなければいけないのかは、それぞれが自分で考えて行動を決めておくしか手はなく、そのためにマイタイムラインと呼ばれる自分の災害時行動計画を作ることが推奨されているのです。
 避難情報はあくまでも一つの目安であって、実際には自分で行動を決めるための鍵を作っておくことが重要となります。
 例えば、近所の側溝の水が溢れたら、とか、裏山から水が出てくるようになったら、といったピンポイントの危険情報を使うことで、あなたの安全確保ができると思います。
 あなたの周りの「点の情報」を上手に使って、あなたの安全を確保するようにしてくださいね。