大雨による水の被害は、大雨が降ったことにより内水氾濫が起きる直接的なものと、上流部で大雨が降って河川が溢れることにより発生する氾濫があります。
その場で降ってくれる大雨は目で見てわかるものですが、上流部の大雨による河川氾濫については、被災地は雨が降っていないにもかかわらず河川が氾濫してしまうことがありますので、雨雲レーダーや気象情報には気をつけておいたほうが安心です。
大きな河川になると、降ってすぐに増水するわけではなく、時間差で増水してきますので、雨が止んだからと言って安心しないようにしてください。
また、日が暮れてから避難指示が解除になったときには、可能であれば夜が明けるまでは避難所で過ごし、夜が明けて周囲が見えるようになってから帰宅するようにしてください。
水は高地から低地、山から谷へと流れていきます。
当たり前だと思われるかもしれませんが、これは大雨でも洪水でも変わりません。
そして、周囲に比べての低地というのは、調べれば事前情報としてきちんと確認できるものです。
もしも周囲に比べて低い場所にいるのであれば、大雨だと感じたら高い場所に早めに避難を開始すること。
自分の安全確保の方法として、周囲との高低差はしっかりと抑えておきたいですね。
カテゴリー: 地形情報
【終了しました】防災研修会を開催します。
最近あちこちで災害が起きていますが、あなたがお住まいの地域の避難所はどのように準備し、どのように立ち上げたらいいか決まっていますか?
避難所運営のイロハについてはさまざまなところで研修がされていますが、では、避難所設営の方法やどのような事前準備をしたらいいのかについて考えてみたことがあるでしょうか?
今回はわかりきっているようで、改めて確認してみると割と漏れのある避難所の設営について「避難所設営、基本の「き」」というタイトルで、座学で一緒に勉強してみたいと思います。
よく「段取り7割」といいますが、避難所の設置者が事前準備をきちんとしておくだけでいざというときに慌てなくて済みます。
また、自分が避難所に避難したときに、設営方法を知っておくと段取りよく混乱なく開設をすることもできます。
内容の詳細や申し込みにつきましては、当研究所のお問い合わせメールによりお願いいたします。
開催日時:2021年 8月28日(土)10:00~11:45
開催場所:益田市市民センター第103会議室(益田市元町)
募集人員:10名
募集方法:事前申し込み。定員になり次第締め切りとします。
参加費:500円(会場使用料、資料代)
携行品:施設運用をされる予定の方は避難所・避難場所予定施設の各部屋の寸法のわかる見取り図をご持参ください。
開催内容:1.避難所・避難場所の違い
2.避難所を作るための下準備(個人編・施設編)
3.実際に運用してみよう(HUG体験)
講 師:石西防災研究所・伊藤(防災士)
土木施設はなんのためにあるのか
水害や土砂災害を防ぐため、ダムや堰堤、法面施工や落石防止柵など、災害が多い日本ではさまざまな土木施設が作られています。
これらの土木施設、確かにその地域に住む人達の安全を確保するために作られているのですが、施設があるから安全というわけではないことを、あなたは知っていますか。
確かに、これらの土木施設があるのとないのでは地域が被災する確率は格段に違います。
ただ、どんな施設が作られていてもそれを超える災害は起きる可能性がありますし、適正な維持管理ができなければ役には立ちません。
こういった土木施設の目的はただ一つ。地域に住んでいる人達が安全な場所に逃げる時間を稼ぐためにあるのです。
土木施設があって何事も起きなかったのは、災害時にこれらの土木施設が目的を果たした結果として、家や道路などが被災していないのに過ぎないということを知っておいてください。
危険な場所は、何をどのように手当てしても危険度が完全になくなることはありません。あくまでも逃げるための時間稼ぎ、そのために作られているものであることを意識して、できる限り早めに安全な場所に避難する習慣をつけてほしいと思います。
ハザードマップ、確認してますか
梅雨前線が本州にかかってきて、静岡県の方では土砂災害が出ています。
新しく変わった避難レベル5も発令されたようで、梅雨前線の予想を見るとまだまだ余談を許さない状況です。
ところで、お住まいの場所のハザードマップを今一度しっかりと確認して避難の必要があるかどうか、そして避難する場合にはどのような経路をたどって安全に避難をするかについて確認をお願いします。
沖縄が梅雨明けしたということは、太平洋高気圧の勢力が強くなっていると言うことなのですが、そうなると梅雨前線は押し上げられて本州の上に来ます。
向こう72時間の予想天気図を確認する限り、梅雨前線は北上・南下を繰り返す状況のようですから、しばらく雨は続きそうです。
降る量は少なくても、時間が長くなると山が揺るんで土砂災害が起きる可能性は高くなります。
また、線上降水帯が発生すると大雨が降り続くような状態になります。
普段と様子が違うと感じたり、何かおかしいと感じたら、早めの避難をするようにしてください。
また、避難に備えて非常用持ち出し袋の中身の確認も忘れないようにやっておきましょう。
大水のときの対処法
大水が出るときには、基本的にその場所、あるいはその上流部で大雨が降ることが前提となります。ただ、大雨とはいっても、家の窓から見ているだけならそこまで危険は感じないかもしれません。
安全な場所にいる場合にはそれでいいのですが、そうでない場所に住んでいる人やそういった場所にいる人は、普段から意識を高めて予防策を打っておくことが大切です。
安全かそうでないのかを知るためには、まず住んでいる環境が大雨で避難をしなければいけない環境なのかを確認し、意識しておくこと。
土砂災害特別警戒区域や土砂災害警戒区域に入っている場合には、早めの避難をする必要がありますから、天気が怪しいなと感じたら天気予報や雨雲レーダーなどを確認し、大雨が降りそうな感じであれば早めに安全な場所に避難することです。
また、洪水はその地域では雨が降らなくても流域全体での降水量が多ければ、晴れていても氾濫を起こしてしまうようなことがあります。
川遊びや川のそばで何かしようとするときには、天気予報や雨雲レーダーだけでは無く、管理者が発表している河川情報にも目を光らせておく必要があります。
あと、過去に地域で起きた洪水で被災しやすい場所を確認しておくことがとても大切です。それから排水路、河床、谷筋など、水の道ができやすい場所や地域内での標高が低い場所も要注意です。
では避難が必要な場合にはどうすればいいのか。
大雨や洪水という文字が気象予報に登場してきたら、すぐに高台に上がって降っている雨水が止んで状況が落ち着くまで様子を見ることが重要です。
また、路上に溢れ出す水が見えたら、そこは可能な限り通らずに迂回して安全・確実性を確保して下さい。
路上の水に流れがあって、水深がわずか数cmでも、足を取られてひっくり返される危険性があります。
ひっくり返ってしまったら、骨が折れたり頭を打ってしまったりしてしまいますし、どうかするとそのままより深く早い水の流れに巻かれてしまうことになるかもしれません。
水がくるぶしより深ければ危険だと考えて下さい。特に、視界が悪くなる夜間は危険になります。
どうしても水の中を歩かなくてはならない場合は、可能な限り浅くてできる限り水が流れていない場所を探し、頑丈な棒を使って水の深さと水の下の地面の硬さを突っついて確認しながら歩くようにします。
このときに使う棒は水の中や下を探るための道具ですので、杖のように体重をかけてはいけません
また、子どもを連れているときには、できるかぎり持ち上げて流されないように運んで下さい。
たまに見かけるのですが、水の中の避難時にお互いの身体を結ぶという記事があります。これは誰か一人が転ぶと全員巻き添えになって非常に危険ですから絶対にやらないようにしてください。
また、濡れた状態で電気機器に触れたり、電気器具の近くを通らないように気をつけてください。水に濡れたり、足を水につけている状態で電気器具に接触すると感電する危険があります。
もしも大雨や洪水で家から避難するときには、必ずブレーカーを切ってから避難するようにしましょう。
ちなみに、突然大水に襲われた場合には、どこでもいいので少しでも高いところに避難します。それが無理であれば、できるだけ早く丈夫なものをつかんでください。
万が一水に流されたら、大の字になって仰向けに浮かぶようにし、大きながれきや破片が自分に向かってきたら手で押しのけてください。
また、障害物は必ず上を越えること。下をくぐろうとすると溺れる危険性があります。
流されていくなかで、もしうまく何かを掴むことができたら、しっかりとそれを手で保持し、足を下流に向けて救助を求めます。
ホイッスルがあれば無理をせずに存在を教えることができますが、ない場合には声や手の動きなど、誰かに見つけてもらえるようにできうる手段をとってください。
ここまで読んでいただいて分かると思いますが、早く避難すれば濡れなくても済み、危険な目にも遭いません。
命を確実に守るためには、空振り上等での毎回の確実な避難が第一だと覚えておいてくださいね。
水の特性とハザードマップ
災害時に備えて、よくハザードマップを見ておこうという内容の話をします。
ハザードマップは土砂災害特別警戒区域や土砂災害警戒地域、川の氾濫による浸水予想箇所などが記載されていて、災害に備えるときには非常に役に立ちます。
ただ、ちょっと気をつけておきたいのが内水氾濫といわれるもので、これは排水路の排水能力を超えた雨が降った場合に排水路から水があふれ出し、地域の低地を中心に水没してしまう状態を言います。
この内水氾濫は情報は多岐に渡るためか、ハザードマップでもこれによる浸水情報を提供しているものは少ないようです。
でも、水は高いところから低いところへ流れていくという特性が理解できていれば、とりあえずその地域でどこの土地が低いのかがわかればある程度の浸水予想場所はわかるわけです。
山のてっぺんでもない限り、内水氾濫はどこでも起こりうることなので、地図をみて地域の低い場所を確認しておく必要があります。
地図が読めない、あるいは読むのがつらい方は、国土地理院GSIMAPを使って色づけをすると一目でわかるものができます。
この地図では、等高線を任意に設定できます。地域で低そうな場所はわかると思うので、その場所の標高を測ってそこから数メートル刻みで色を設定すると、一目で状態がわかります。
オプション扱いの赤色立体地図をセットすると、よりはっきりとわかります。
標高が高いからといっても洪水は起きる可能性がありますから、こういった地図を上手に使って、地域の安全性を確認していきたいですね。
国土地理院-GSI Maps(国土地理院のウェブサイトへ移動します)
ペットの避難を考える
ここ最近の大規模災害とその後のさまざまな出来事から、避難所でもペットを受け入れようという動きが出ています。
ただ、問題なのは想定されているペットが犬や猫ということ。
そして同行避難が認められている避難所であっても、同伴避難といって避難所で一緒に生活することはできないことも多々ありますから、避難先で何が起きるかは正直なところ誰もわかりません。
現在、ペットブームというわけでもないのでしょうが、小はハムスターや鳥、蛇、フェレット、大はやぎや馬まで、ご家庭には実にさまざまなペットがいます。
そのペットの全てが避難所に避難してきた場合、果たして全てを受け入れることができるでしょうか。
例えば、ハムスターと猫が同じ部屋で一緒に過ごせますか。普段散歩で会うと喧嘩している犬同士が同じ避難所で生活できますか。フェレットはどうですか。蛇や金魚、カナリアやオウムではどうでしょうか。
そう考えると、避難所に避難する選択肢よりも、避難所に避難しなくてもすむような選択肢を考えておかないといけません。
例えば、耐震性があって、水に浸からず、崖崩れの心配のない場所で生活をすることができるなら、ペットだけで無く人間も避難しなくて済みます。そういった環境なら、万が一、人間が避難しなくてはいけない事態になってもペットは家で過ごすことが可能なのではないでしょうか。
域外避難の場合は状況が異なりますが、家が安全であれば、数日間えさとトイレの心配さえなんとかなれば、ペットだけで過ごしてもらうことは十分可能です。
また、被災地外の動物病院やペットホテル、一時預かりをしてくれるNPO団体にお願いするのもいいでしょうし、ペットがなついている人がいるなら、その人に当座の面倒を見てもらうというのもありだと思います。
キャリーケースに収まってもらったり、しつけをしておくことはもちろんですが、そもそもペットが避難所に避難しなくても済むような環境を作っておくことも、飼い主の責任の一つなのかもしれませんね。
住んでいる家の地震対策を考える
災害対策のお話をするとき、地震とそれ以外で分けて話をすることが多いのですが、それには理由があります。
それは「地震はいきなり来る」ことです。
他の災害では、被害が発生するまでに何らかのはっきりとした予兆があって対応しやすいのですが、地震だけは予兆なしでいきなり大きいのが来ることがあります。
そのため、地震だけは事前に備えておかないと、「起きたときには決着はついている」状態になります。
というのは、地震で起きる最も大きな被害は家屋の倒壊で、これは地震とほぼ同時に発生するものだからです。
地震が起きたときにどのように行動するのかを普段から意識しているのなら、揺れと同時に屋外へ飛び出して難を逃れることもできますが、そういった意識がなかったり、寝ているときなどに地震が起きたら家屋倒壊に巻き込まれてしまうでしょう。
また、大規模地震の場合に倒壊家屋が多いと避難所が麻痺してしまって路上生活を余儀なくされてしまう場合もありそうです。
そうならないためには、まず住んでいる建物が倒壊しないことが必要です。家具や機材の地震対策は、建物が倒壊しないという前提で行うものですから、建物が崩れてしまっては建物内の耐震化はあまり意味がないことになってしまいます。
ただ、建物が地震に耐えうるかどうかは建物自体を点検してみないとわからないものです。
そこで、建物の耐震診断を受けることをお勧めします。
まず、お住まいの建物が地震に耐えうるかどうかを判断し、もし耐えられないということであればどこをどこまで耐震化するのかを決める作業が出てきます。
いざというときにさまざまな対策をしていても、発災時に死んでしまっては準備した意味がありません。
地震対策、その最初に建物の耐震診断を受けて対策をするところから始めましょう。
詳細は各市役所・役場の担当課までご確認ください。
地震に備えて木造住宅の耐震化をしましょう!(住宅の耐震化補助事業)(益田市建築家のウェブサイトへ移動します)
市町村の耐震診断・耐震改修制度(一般財団法人島根県建築住宅センターのウェブサイトへ移動します)
2021.6.11追記 益田市役所さんではブロック塀の撤去についても補助金を出す場合があるようです。市内で地震対策としてブロック塀の撤去をお考えの方は、一度相談してみてもよいと思います。
土砂災害に気をつけよう
梅雨入りしていますが、びっくりするくらい天気が穏やかです。
ただ、年間の総雨量はさほど変わっていない様子なので、雨が降るときには大量に短時間で降って帳尻を合わせているような気もします。
雨が降るときに気をつけないといけないのは、川の氾濫、内水氾濫と土砂災害です。
このうち、土砂災害はあらかじめ発生しそうな場所に対して「土砂災害警戒区域」や「土砂災害特別警戒区域」と言われる地域指定がされていて、災害が予測されるような場合には早めの避難行動を取るように呼びかけられています。
俗に言う「イエローゾーン」「レッドゾーン」といわれるものですが、その地域に住んでいる人は意識していても、そこを通勤や通学経路として使っている人達はあまり意識をしていないと思います。
ただ、土砂災害は時間や相手を選んで発生するものではありませんから、いつ起きても対応が取れるように、状況に対する行動を考えておく必要があります。
島根県内では、島根県土木部が「マップonしまね」で情報を公開していますので、是非一度確認しておいて欲しいと思います。
市町村作成のハザードマップにも組み込まれているはずですが、しっかりと確認をしておいて、いざというときに備えておきたいものですね。
「マップonしまね」(島根県のウェブサイトへ移動します)
※「マップonしまね」は使用前に利用許諾の同意が必要です。
地形と避難のタイミング
災害からの避難では、「〇〇地区に避難指示が出ました」というと〇〇地区の全ての住民が避難所に避難しなくてはならないというイメージを持たれているのではないでしょうか。
言葉を正確に書くとすると「〇〇地区の被害が想定される場所にいる人に対して避難指示が出ました」というところなのですが、被害が想定される場所は非常に曖昧で行政機関が具体的に指定ができないので、「〇〇地区」というくくりで避難を促す構造になっています。
ですが、もしも避難指示を素直に受け取って〇〇地区の全ての人が避難所に避難するとしたら、よほど小さな集落でない限り、その避難所の収容能力を大きく超えてしまってパンクしてしまうでしょう。
また、家はなんともなかったのに避難中に遭難してしまうというケースもありますから、自分のいる場所はどのような災害に対して弱いのかをきちんと把握しておく必要があります。
そこで確認しておきたいのがハザードマップです。これには土砂災害警戒地域が記載されているはずですから、それを見ると大雨などで崩れる場所がある程度予測できます。また、河川氾濫もハザードマップを見ればある条件下ではありますが被害に遭うところが予測できます。
排水がうまくいかないことによって発生する内水氾濫についてはハザードマップではわからないものも多いので、国土地理院地図Vector内「自分で作れる色別等高図」で色塗りしたものを使って低い場所を確認しておきます。メートル単位のざっくりとした絵ですが、これである程度低い場所が把握できるので、その地域にいるのであれば優先して避難する必要があることがわかります。
逆に言えば、こういった避難の要件を満たさない場所にいる場合にはそこにいたほうが安全だということが言えるわけですから、慌てて避難しなくてもいいということがわかると思います。
もちろんこれらで問題ない場所だからと言って100%安全だとは言えませんから、不安であれば避難してもまったく問題ありません。
重要なのは、自分のいる場所がどんな条件の土地なのかをきちんと知っておくことで、それによって避難判断をする基準が異なるということになります。
似たような場所に住んでいるからといって、必ず同じように被災するとは限りません。隣り合わせた2件の家が、片方は倒壊して片方はなんともないということもあり得るからです。
自分が住んでいる場所の地形を把握し、避難が必要だと考えたら、その避難経路も含めた地形の安全をしっかりと確認し、どのタイミングで避難すればより安全かをしっかりと決めておきたいものですね。