誰が迎えに行くのか?

 家族一緒に一日中毎日生活している人は、恐らくいないと思います。
 子どもが学校に出かけたり、親は仕事に出かけたり、家にいるお年寄りもディーサービスに出かけていたりして、案外と家に誰もいないということも多いのではないかと思います。
 さて、そんな状況下でもし災害が起きたとしたら、子どもと年寄りをどうやって家に帰らせますか。
 学校や施設が責任持って家まで送ってくれるのであれば問題なのですが、そんなケースはほとんどないと思います。
 多くの場合、何か起きたなら学校や施設まで利用者を迎えに来るように決められているのではないでしょうか。
 もしも災害時の引き渡し方法がきちんと決められていない、または知らないようでしたら、すぐに確認されることをお勧めします。
 保育園や幼稚園では、ほぼこの引き渡し方法が確立されていて、園児の親も大体ルールは知っているのですが、学校に入った途端どうなっているのか分からない場合も多いからです。
 また、お年寄りが出かけている施設でも同じ事が言えます。普段は送迎してくれていても、災害時にどうするのかについては取り決めがないこともあるのではないでしょうか。
 そして、ご家族が学校の近場でお仕事をしているのであればいいのですが、家族が全て遠くに働きに出かけている場合もよくあると思います。
 そういった場合には、家族以外で誰に迎えに行ってもらうのかをあらかじめ決めておかなければなりません。
 誰が迎えに行くのかという情報は、迎えに行く側だけで無く引き渡す側にも伝わっていなければ、引き渡しの際に揉める元になります。
 学校や施設、あるいは避難先に誰が迎えに行くのか。
 ご家族で検討して、家族みんなが知っているようにしておいてくださいね。

低体温症に気をつけよう

 登山や屋外での運動をやっている人は割とよくご存じだと思いますが、低体温症には季節は関係ありません。
 夏であっても、身体から熱が奪われてしまって低体温症にかかってしまい危険な状況になることがあります。
 低体温症は本人が気づいたときには一人では手の打ちようが無い状態になっていることが多いので、意識して低体温症にならないように気をつけておく必要があります。
 では、低体温症はどうやって起きるのでしょうか。
 低体温症は、身体が作る熱が何らかの原因で奪われてしまい、熱を作ることができなくなる状態を指します。
 例えば、夏にはやる方がそれなりにいる沢登りですが、水の冷たい上流部で水に浸かり続けていると感覚がなくなり、震えがきます。これは低体温症の予兆で、そのうちに手足の指の動きが鈍くなったり、肌の感覚がマヒしたりしてきます。
 その後は全身の動きが鈍くなったり、転んだり。意識がはっきりしなくなると危険な兆候です。
 最終的には寒いという感覚がなくなって眠くなって絶命してしまうので、そうなる前に手を打ちましょう。
 基本は,身体を乾燥させて保温することです。
 保温といっても、意識が混濁しているような状態のときには、かなり体温が下がっていますので、ストーブや湯たんぽなどでいきなり温めると心臓マヒを起こすことがありますので、ゆっくりと温めていくしか手がありません。
 で、この低体温症、大雪の最中に屋外作業をしたり除雪しているときにも起こります。雪に埋もれると一気に低体温症になりますし、除雪などで汗をかいたあと寒風に吹かれれば同じように一気に低体温症になります。
 とにかく小まめに休憩をとって身体を冷やさないこと。そして雪や汗で身体が濡れたら、すぐに拭き取って乾いた衣服に着替えることを基本に行動をしてください。
 低体温症は条件さえ揃えばどんなところでも起こり得るものです。
 そのことを忘れずに、どうぞご安全にお過ごし下さい。

必要なものと代替品

災害対策の物品でよく出てくるのが「○○の代替品として」というものです。
「○○があるとこんなものが作れますよ」といった内容なのですが、正直なところ、「必要なものはきちんと準備しておけ」と声を大にして言いたいところです。
被災して手元にまともなものが無い状態といった事態に備えてということなのでしょうが、最初からものが無い前提で代用品を考えるのは本末転倒。
まずはその目的に応じたアイテムをきちんと用意しておくことが重要です。
災害時にはさまざまなものが不足します。よく出てくるのがおむつなのですが、紙おむつの代替品としてよく出てくるのがビニール袋とタオルを使った袋おむつです。
ビニール袋は水を漏らしませんが、足やお腹の結び目から漏れ出すのでそれを防ぐためにかなりきつく結ぶことになります。
すると、出したおしっこはそのまま代用品おむつの中に閉じ込められ、蒸れて非常に不快です。
布おむつに慣れている人なら手早く交換して赤ちゃんの下半身の乾燥状態を維持できますが、紙おむつに慣れている人だと、濡れたら交換しないといけないということが理解できていない人もいると聞きます。
そんな状態になったら、赤ちゃんは泣き止みませんし肌もかぶれたりして後が大変です。
それなら、普段持ち歩くカバンにおむつカバーを一つ入れておけばそこまで困らなくても済みますし、紙おむつの予備を持ち歩ければ、そもそも悩まなくてもいい話です。
何も無い状態に備えて代替品の作り方を知っておくことは大切ですが、それを前提にして何も準備しないという考え方は困ります。
代替品はあくまでも非常時の非常用であり、可能な限りその目的に適切な道具を準備した方がストレスがかかりません。
できる限りその目的に応じたアイテムを準備しておいてくださいね。
ちなみに、代替品を準備するときの考え方は「それは何を目的にしているのか」です。
さっきのおむつの話では、赤ちゃんがおしっこやうんちをしたときに親や周りに被害が及ばないようにするのが目的ですので、考え方によってはおむつをつけないと言う選択肢もあります。
難しく考えずに、もしもアイテムがなければ、そのときに「どうやったらその目的が達成できるのか」を考えて代替品を準備すれば失敗はあまりないと思います。
変にとらわれず、柔軟に考えたいものですね。

視線を遮るものを用意する

小学校の防災クラブで試して見た視線を遮るための場所づくり。思ったよりいろいろなアイデアがでる。

 避難所に避難すると、ある程度落ち着くまでは基本的にプライバシーはないと考えた方が良さそうです。
 最近でこそ気の利いた避難所であれば授乳室やおむつ交換場所、着替え場所などを準備するようになってきてはいますが、多くの避難所は場所の提供だけという考え方ですので、広いスペースにあちこちでごろ寝というのが現在の日本の避難所のスタイルなので、授乳や着替えなど、他人に見られたくないと感じる行為をする可能性があるならば、視線を遮る道具を準備しておくようにしてください。
 例えば、自立型テントがあればプライベート空間を簡単に作り出すことができるので非常に便利です。
 ただ、避難所はすし詰めになることが多く,テントが建てられない場合も多々あります。
 そういった事態に備えて、大きめのバスタオルやエマージェンシーシート、レジャーシートなど物理的に視線を遮ることのできるものを用意しておくようにしてください。
 退屈になると、動きのあるものを無意識に目で追ってしまいがちです。
 そうすると、見ている側は意識していなくても、見られている側は落ち着かないものです。
避難所にそういった道具を備蓄するのは現実的ではないので、とりあえず自衛のために、自分の非常用持ち出し袋にはそういった道具を入れておくことをお勧めします。

災害と常備薬

 新型コロナウイルス感染症がかなり流行っているようですが、この感染症にかかると、現在は無自覚・無症状でも最低10日間の自宅待機が必要となります。
 当然のことながら、外出はできないわけで、そうなると日常生活で薬を必要としている人は死活問題となります。
 医療機関や薬局との連携がうまく取れていればいいのですが、現在の様子から見ると、しばらくは今までの想定よりも長め、10日から15日前後の薬の余裕が必要と考えた方がよさそうです。
 ただ、基本的に薬というのは手元に在庫があるようには処方されません。
 薬を手元に残すためには、かかりつけ医と相談して事情を説明し、一度多めに処方してもらうことです。
 あとは通常通り処方してもらえば、手元には多めに処方してもらった分だけ薬が残っていることになります。
 いくつかそういった取り扱いが難しい薬もあるようですが、あなた自身の健康状態を維持するために、常備薬が必要な方は備えておいてはいかがでしょうか。

アレルギー対策を整えておく

 災害が発生して避難所に長期滞在する必要が出てくると、さまざまな問題が出てきます。
 見た目や動きなどで分かる問題なら良いのですが、内臓疾患やアレルギーのある人は、ぱっと見何が問題なのかわからないために健常者とトラブルになりがちなので気をつけなければいけません。
 特に食事制限や食べものからのアレルゲンの摂取を控えるという行動は、行政などからの配給食のとき、お残しや食事をしないという選択肢になることもあって、見る人によっては「何の不満がある」と文句を言われてしまうこともあります。
 そして、避難所で配られる食料品ではアレルギーや食事制限に配慮されたものが出る可能性はまずありませんので、そういう人は自分であらかじめ食事を準備しておく必要があります。
 現在は3日から1週間程度は自分の備蓄を用意するように言われていますが、アレルギー体質の人は、それ以上に準備しておくようにしてください。
また、最悪に備えて何が食べられて何が食べられないのか、どれ位摂取してもいいのかは、あらかじめ平時に試しておいたほうが安全です。
 それから、万が一に備えて抗アレルギー薬は常に携帯しておくようにしてください。
 非常用持ち出し袋に入れておいてもいいのですが、いざというときにそれを常に持ち出せる環境にいるとも限りません。
 普段必ず持ち歩くカバンや財布などに、最低1回分は入れて持ち歩くようにして下さい。
 アレルギーは未だにたいしたことが無いと考える方がいますので、アレルギー持ちの人は、自衛手段をしっかりと確立しておいた方が無難です。
 せっかく災害から助かったのに、食べ物のアレルギーで倒れてしまっては何にもなりません。
 悲しいことですが、自分の身は自分で守るを基本にして備えるようにして下さい。

怖い感染症

 年末年始にかけて新型コロナウイルス感染症のオミクロン株が蔓延しているようですが、感染症というと、新型コロナウイルス感染症だけでなく、インフルエンザウイルスやノロウイルス、ロタウイルスといった有名どころを忘れてはいけません。
 大規模災害で大規模避難所ができると、これらの感染症が避難所内で猛威を振るうことが非常に多くなります。
 日常生活だと、例えば風邪にかかっても家で寝ていれば直るのですが、避難所の場合だと、寝ていると避難所内の人に感染させる危険性があります。
 そこで感染者を隔離するわけですが、この手のウイルスは気がついたときには蔓延しているという場合が殆どですので、多くの場合打つ手なしの状態になります。
 これらを防ぐ方法は、しっかりとした流水によるこまめな手洗いとマスクの着用。アルコール消毒もある程度は有効で、実際に2021年は新型コロナウイルス感染症対策の手洗いが励行された結果として、感染症にかかった人が激減していました。
 ただ、大規模避難所になると充分な手洗いスペースや消毒スペースが確保できないという問題があります。元々今ある施設を避難所に転用しようという発想ですので、これは仕方の無いことなのかもしれません。
 また、日常生活の延長線上にある生活の場でもあるので、衛生概念のずぼらな人が一人いると、避難所内に感染症が蔓延することになりかねません。
 必要なことは、とにかく早期発見早期隔離なので、毎日の体調管理や検温は必須だと思いますし、少しでも体調不良な人は別室で隔離するくらいの対応が必要になってきます。
 また、トイレのような場所は不衛生になりやすくウイルスが蔓延しやすいので、しっかりとした清掃が必要になります。
 これらの管理がしっかりとできると、ある程度感染症対策はできると思うのですが、あなたの避難すべき避難先ではこういった衛生管理について、どのようにすることになっているでしょうか。

冬の雪遊び

 年末年始にかけて地元の山間部でも雪が積もりましたので、状況偵察を兼ねて広島県の深入山に出かけてみました。
 コロナ禍が落ち着いてきたせいか去年よりも雪遊びをしている人達は少なかったですが、いくつかの家族がそり遊びを楽しんでいました。
 雪山というと寒くて危険というイメージがありますが、装備と段取りさえ間違わなければしっかりと遊ぶことができます。
 普段と違った景色が見られて面白いものですが、行き慣れている里山でも装備が整っていない状態では危険なので、今日はどこでもできる冬の雪遊びを少し紹介してみたいと思います。

1.足跡観察

雪の上には、さまざまな野生動物の足跡が残されています。
都会地の公園や路地裏でも、雪が積もっていると何かの生き物の足跡を見つけることができるものです。
足跡を探し、それがどのような生き物なのかを当てっこするのはとても面白いですよ。
うまくいけば、足跡の主に出会うことができるかもしれません。
足跡探しに夢中になると迷ってしまうこともあるので気をつけなくてはいけませんが、一度はやってみてもいいと思います。

2.ヤドリギ観察

 野鳥の多い地域では木にヤドリギがついていることがありますが、普段は葉で見ることが出来ません。
 でも、冬場は葉が落ちていますので、木についているヤドリギをはっきりと見ることができます。
 運が良ければ、ヤドリギの実も落ちているかもしれません。
 この実はとても甘いのですが、非常に粘っこいので、種を口から出すときに糸を引いたりすることがあります。
 このねばねばで木にへばりついてヤドリギになるのだなということがわかるくらいねばねばしてますので、一度は食べてみてもいいと思います。
 食べるときには、あくまでも自己責任でお願いします。

3.そり遊び

 意外に思われるかもしれませんが、そりは少しの雪でも滑って遊ぶことができます。
 地面が露出しているところではさすがに無理ですが、全体が白くなっていればその上で滑って遊ぶことは可能です。
 滑りやすい傾斜地を見つけることと、滑り降りた後に安全が確保されていること。
 この二点に気をつけて遊んでみると、とても面白いです。
 ちなみに、全体が白くなる程度の雪で大人が滑ろうとしても、大人の重さで雪がつぶれて滑ることができません。
 どこまでなら誰が滑ることができるのか、その境を探すのも面白いと思います。

4.雪だるまづくり

 雪だるまは雪が少量でも多くてもそれなりに作ることができます。
 積もっている雪でどこまで大きなものを作ることができるのかをやってみるのも面白いのではないでしょうか。
 雪だるまを競争で作ると雪の取り合いになることがあるので、複数の雪だるまを作るときには、雪を集める場所をそれぞれ決めておくといいかもしれません。

 少人数でも遊べるような雪遊びを少しだけご紹介してみましたが、イメージが沸くでしょうか。当研究所の冬の自然体験企画もこれらを組み合わせてやっていたりしますので、活動報告や写真を見られたときにこんなことしたのかなと思いながらみていただけるとうれしいです。
 最後に、冬の雪遊びでは濡れると身体を冷やして風邪を引いてしまいますので、遊ぶときには防水・防風のしっかりした、例えばスキーウェアなどを着て、足下を長靴など水の入らない履き物で遊ぶことをお勧めします。
 街の中と自然の中では遊ぶ格好が少し異なるので、そこだけ気をつけて楽しんでいただけると幸いです。

地区防災計画ってなんだ?

 最近防災界隈で騒がれているのが、いかにして地区の防災計画を作ってもらうかということです。
 国の防災計画と、都道府県や市町村が作る地域防災計画はあるのですが、これだけでは日本に住む全ての人が安全に避難をすることができるわけではありません。
 そこで、地区防災計画を当事者である住民に作ってもらおうというのがこの話のスタートなのですが、どうもここで規定されている地区を誤解している人がいるようなのでちょっと確認しておきたいと思います。
 ここに出てくる地区とは、例えば自主防災組織や自治会といったものではありません。もっと小さな単位、例えば集合住宅や、場合によっては各個人ごとに作る防災計画もこの「地区」に該当します。
 避難する判断や生き延びるための判断、避難先や受援方法などは、あまりに大きな単位だと条件が違いすぎて全く機能しません。
 より現実的に動かすためには、もっともっと小さい単位で同じような条件の人達を集めてその場所の防災計画を作ることが必要だと考えられているので、ここで出てくる「地区」というのは「地域よりも小さい単位」といったイメージで思ってもらえればいいと思います。
 そして、自分や近所の人がどのように行動するのかを定義することが、この地区防災計画の肝となるのです。
 その場所の災害事情はその場所に住んでいる人にしかわからないということがあります。そのため、その地域に住んでいる人達に自分が助かるための計画を作ってもらい、それを地域防災会議を経て地域防災計画に織り込んでいく。
 そのようなイメージで作るのが本筋です。
 行政機関によっては、自主防災組織や自治会などの単位で作らせようとしている動きもありますが、それでは結局地域防災計画の焼き直しになってしまい、行政が決めたルールの責任を地域に押しつけることにしかなっていません。
 基本はあくまでも小さな集団です。当研究所のある地域では自治会の組、つまり同じような地域条件で生活している5~10世帯を基本単位として作るくらい。
 お隣同士でも条件が異なるのであれば一緒にせず、それぞれに防災計画を作ることになります。
 正直なところ、個人の防災計画とどう違うんだという疑問はありますが、隣近所で話をしてみんなで行動することで逃げ残りや危険な目に遭う人を無くすことができるようにという意図もあるようです。
 お正月、ご家族や親戚が集まるこの機会に、あなたの防災計画についても見てもらって、助言をもらってみてはいかがでしょうか。
 そして、お正月が終わったら、ご近所の方と防災計画について話し合って、より安全に災害を乗り切れるようにしておくといいと思います。

みんなでつくる地区防災計画(内閣府のウェブサイトへ移動します)

みんなでつくる地区防災計画(日本防災士会のウェブサイトへ移動します)

避難時にはお湯も持って行く

 災害で避難をしなくてはいけなくなったときに、避難グッズとしてあったほうがいいなと思っているものの一つに「お湯」があります。
 一時的に避難を行う避難場所は、単なる場所の提供なので自分に必要なものは自分で持って行く必要があるのですが、避難場所で暖かいものを食べたり飲んだりするのはかなり困難です。
 場所の提供なので、居所だけで火気厳禁という場所が非常に多く、火を使うことが許されているとしても、大勢の避難者の前で火を使っているとなんらかのトラブルに巻き込まれる可能性が高くなります。
 そこで、避難するときにもし余裕があるのなら、保温できるタイプの水筒にお湯を入れて持って行くようにしてください。
 不安や緊張は暖かいものを摂取することでかなり緩和されます。お茶やコーヒーを作ったり、インスタントラーメンを食べるときにも役に立ちます。
 また、寒いときにはペットボトルに注ぐことで簡易な湯たんぽを作ることもできますし、使わなくても水に戻るだけなので使い勝手がよいです。
 避難時の飲料としてお水を持って行くことは多いと思いますが、もし余裕があればそれに追加してお湯を持って行くと、いろいろと役に立ちますよ。