悩ましいカロリー問題

 甘いものが摂りたいけどカロリーは嫌、という方が多いのか、巷ではカロリーオフやカロリー0の食べ物や飲み物がずいぶんと増えました。
 昔ながらの甘くてカロリーたっぷりといった不健康な食べ物や飲み物はずいぶんとその数を減らしているような気がします。
 そうでなくてもカロリー過多のこの時代、カロリーをいかに摂らずに済ませるかというのは贅沢といえば贅沢な悩みなのですが、それくらい当たり前に甘いものが摂取されているということなのでしょう。
 そういった日常生活の中では問題ないのですが、災害が起きたときに避難したり、長時間の徒歩帰宅などする場合には、このカロリー0が恨めしく感じることになります。
 徒歩での避難中や長時間掛けての徒歩での帰宅などの場合、身体にため込んだエネルギーだけでは活動をするのが難しくなるので、簡単にカロリーの補給できるお菓子やドリンク類は非常にありがたいものです。
 特にスポーツドリンクなどは電解質とカロリーの両方を一気に補給できる非常に優れた飲み物なのですが、ここにもカロリーオフやカロリー0の波が来ているようで、先日買ったスポーツドリンクにもでっかく「カロリー0」と書かれていました。

 このカロリー0やカロリーオフのお菓子やドリンク類を摂取すると、甘いものを食べているのに身体のエネルギー不足の状態が続くという嫌な状態になってしまいます。
 昔ながらのスポーツドリンクであれば電解質もカロリーもしっかりとある非常に頼もしいので、もしも可能であるなら、非常用持ち出し袋などにカロリーのしっかりとあるスポーツドリンクを一本入れておくといいと思います。
 ちなみに、ひたすら甘いだけのジュースだと、飲んだ後でその甘みの元を分解するための水が必要になって余計にのどが渇いてしまうので気をつけて下さい。
 常時と非常時にはカロリーの考え方も180度変わってきます。
 その場にあったアイテムを準備しておくことをお勧めします。

おんぶと抱っこ

 乳幼児とその保護者の方の研修会でよく出てくる話に、子どもとの避難では抱っこがいいのかおんぶがいいのかという質問があります。
 専門家によってさまざまな意見がありますが、筆者はどっちでもいいので子どもさんが慣れている方で、抱っこひもやおんぶ紐を使ってしっかりと固定し、保護者の両手が開けられるようにすればいいと思っています。
 というのも、最近の乳幼児は割と抱っこされ慣れているような気がするからです。逆に、おんぶ慣れしていないので、いざというときにおんぶをすると嫌がってしまうのではないかと思っています。
 人の身体の構造を考えるとおんぶの方が理にかなってはいると思うのですが、おんぶをしようとしてバランスを崩してしまっては何にもなりません。
 その子が慣れている方法で運んでやればいいと思います。
 ただ、どちらにしても子どもは運ぶ人の身体にしっかりと括られていなければ危険です。
 抱っこ、おんぶ、どちらでも構いませんので、固定は手だけではなく、道具を使って身体と身体をしっかりと繋げるようにしてください。
 また、子どもを担ぐ反対側に非常用持ち出し袋をつけると、両手を開けることができますので、子どものアイテムを追加して運ぶこともできます。
 あまり勧められるやり方ではありませんが、子どもと保護者、両方を守るためには必要な荷物ですので、そのことを考えて子どもさんを運ぶ方法を考えてもらえればと思います。
 ちなみに、ベビーカーは災害発生前の避難であれば使えると思いますが、災害発生中、あるいはその後では使うと危険なことがありますので、もしも何らかの事情でベビーカーを使うのであれば、可能な限り早めの避難をお勧めします。

自分の行動を記録してみる

 非常用持ち出し袋を準備するときによく聞かれるのが、「何をどれくらい用意すればいいのか?」ということです。
 それに対してで筆者はいつも「あなたは一日に水をどれくらい飲んでますか? トイレ、何回行ってますか?」と聞き返すようにしています。
 非常用持ち出し袋の水や食料、簡易トイレといったアイテムは、どれくらい準備すれば良いのかが人によってかなり変わってきます。
 よくトイレに行く人は簡易トイレの数も増えますし、逆は減ります。また、どれくらいの水分を摂っているかは意識していないとわからない話です。
 そのため、自分にあった非常用持ち出し袋を作るときには、まず自分の一日の行動を記録してみることをお勧めしています。
 記録してみると、案外水分を摂っていたり、思ったよりもトイレに行っている回数が多かったり、意外な発見が出てくると思います。
 そういったご自身の情報を基準にして、非常用持ち出し袋の中身を準備するようにすると、いざというときに必要なものが最低限は揃っている安心した状態が維持できます。
 さまざまなアイテム類を行政などの指示通りに準備すれはとりあえずは安心なのですが、重たいし嵩も大きいです。できるだけコンパクトにするためにも、ご自身の行動記録をまとめてみてはどうでしょうか。

非常食は何がいい?

非常食の一つの缶パン。吉賀町で作っている。ちょっと甘めが疲れたときにはうれしい逸品。

 結論から書くと、非常食は「自分のモチベーションが維持できる食べ物」を準備しろということになります。
 よく非常食として「アルファ米」や「乾パン」などが挙げられますが、これらの食事は本当の非常用です。
 例えば、地震が起きて家が倒壊してしまったといった非常事態に、調理器具が無くても食べられるこういった非常食を準備しておこうということで、災害で避難したら、何が何でもこれを食べなければならないというものではありません。
 台風や水害などでは、災害発生までの時間が割とあることが多いですので、一食分のお弁当を作ることもできると思います。
 この作ったお弁当も非常食になりますし、食べ慣れた味は自分のモチベーション維持にも貢献してくれますから、余裕があるならそういったものを準備することも大切です。
 また、普段食べないような高級食材の缶詰なども非常食にしておくといいかもしれません。非常事態だからといって、食事まで貧相にしたり非常事態に落とさなくてもいいのです。できるだけ自分が好きなものを食べて、避難中のモチベーションを落とさないようにしてください。
 ただ、多くの人がいる場所になりますので、臭いには気を遣う必要があります。あなた自身が良いにおいだと思っていても、周りにはそれが大嫌いな人がいるかもしれません。そうなると喧嘩になったりしますので、臭いの強いものは避けた方がいいでしょう。
 そして、もう一つ。
 大好きだからといって、お酒だけは避難中は飲まないでください。
 気持ちに不安がある状態での飲酒は、精神的にも肉体的にもよくありません。
 お酒は状況が落ち着いてから飲むことにして、間違っても非常食には加えないようにしてください。
 災害の起きる可能性のある期間は長くても数日ですので、自分が楽しくなるようなものを非常食にしておくとモチベーションが維持できていいと思います。
 あれこれ探して、自分が楽しくなる非常食を用意してみてくださいね。
 最後になりますが、お弁当を作る際には衛生には充分に気を遣ってください。保冷剤などで弁当が傷まないようにして、食べ残したものは処分するくらいの衛生管理でお願いしたいと思います。
 同じ理由で、生ものは止めた方が無難です。

仮設トイレと簡易トイレと携帯トイレ

これは仮設トイレ。おうちのトイレほどではないかもしれないが、それなりに快適。

 イメージがごっちゃになっているかもしれませんが、仮設トイレは現場事務所に置かれているような、独立したトイレのことです。
 くみ取りもでき、移動もできて災害後の避難所では結構よく見るトイレです。


 仮設トイレは、便器はあるが排泄物の処理をその都度行わないといけないトイレです。汚物を流したり貯めたりするのではなく、一回ごとに汚物袋をセットして、用を足したら凝固剤を入れ、汚物袋の口を縛って処分し、新しいものに取り替えるものです。
普段使っているトイレが使用禁止になってから仮設トイレが届くまで、さまざまな形で利用されます。
 そして携帯トイレは、便器はなく、消臭袋と凝固剤が一体になっていて簡単に持ち運びのできるもの。
 ざっくりとしたイメージになりますが、仮設トイレは行政などが手配するちゃんとしたトイレなのに対して、簡易トイレや携帯トイレは行政だけでなく、個人や自治会などでも準備しておく必要のあるものと考えてもらえばいいと思います。
 で、目隠しテントと簡易トイレを展示しておくと、よくいただく質問に「簡易トイレを持って避難するのは難しい」というものがあります。
 確かに、少しでも荷物を減らしたいときに簡易とはいえ便座まで持って避難しろというのはかなり難しい話です。
 ただ、ここで書いておきたいのは、避難のときに便器までは準備しなくてもよいというものです。
 あなたがトイレを使う頻度を考えてもらえればわかると思いますが、頻繁に使うのは小さい方で、大きい方は下痢でもしていないかぎり1日に数回程度ではないでしょうか。そうすると、数の多い小さい方に備えておけばいいということになります。
 小さい方はそこまでの場所をとりませんから、便座がなくても排泄は可能です。汚物袋と凝固剤さえあれば、とりあえずの排泄はできるわけです。

携帯トイレの例。男女兼用とかかれていても、大小兼用は少ないので注意が必要。

そして、簡易トイレは、大きい方でも小さい方でも、一回ごとに汚物袋を取り替えなければいけません。すると、小用まで避難所の備蓄品で対応しようとすると少々汚物袋を準備していてもあっという間に備蓄が底をついてしまいます。
そのため、携帯トイレを準備して、少しでも簡易トイレに負担をかけないようにしておく必要があるのです。
簡易トイレは大きい方用、携帯トイレは小さい方用と考えてもらえば良いと思います。
実際、携帯トイレとして売られている商品は殆どが小専用となっていて、大に対応しているものはごく少数です。そして、小専用は軽くてコンパクト。
女性は慣れないと使えないと思いますが、簡易トイレほどの設備がいらないので、非常用持ち出し袋にある程度入れても邪魔になりません。
避難する人が各自で小用を1日分持参すれば、それだけでも備蓄の消費量にはかなりの好影響を与えますし、避難中にもよおしても我慢せずに使うこともでき、精神的に落ち着けると思います。
もちろん、大小兼用の携帯トイレもありますので、それを持っていればより安心なのは間違いありません。
非常用持ち出し袋を作るときには、とりあえず1日分の小用携帯トイレを意識して準備しておくことをお勧めします。

子どもの避難と保護者のお迎え

 学校やスポーツクラブ、学童クラブなどにいた子ども達が災害にあったら、子ども達をどのようにして保護者に引き渡すのかをルール化して保護者と情報共有ができているでしょうか。
 災害で避難した子ども達は、恐らくみんな不安になっていると思います。
 保護者の顔を見るとほっとするのではないかというのは、なんとなくイメージができるのではないでしょうか。
 ただ、知りうる限りの施設では、避難や避難先は内部で共有されていますが、保護者や外部には公表されていないのか、いざというときにどこに避難していて、迎えにいけばいいのかを把握してる保護者はすくないような気がします。
 これは少しだけ困った話で、子どもを引き取る保護者側はこどもがどこにいるのかさっぱりわからずに被災地内を駆け回ることになってしまいます。
 学校もそうなのですが、できる限り保護者も避難訓練に参加してどのような訓練をしているのかをきちんと確認しておいた方がいいと思います。
 そうすれば、どこに避難する可能性があるのかがわかりますので、こどもの居場所も予測しやすくなるはずです。
 被災後は、できるだけ早めに子ども達を保護者に引き渡さなければならない。
 そのことを念頭において、さまざまな会議や文書で保護者には知らせておいて欲しいなと思います。

施設の避難計画はできていますか?

平成29年6月19日の『水防法』等の改正により、浸水想定区域などに所在する要配慮者利用施設の所有者または管理者に対し、避難確保計画の作成及び避難訓練の実施が義務となりました。
要配慮者と聞くと老人や障害者が思いつきますが、乳幼児もここに含まれるため、老人ホームや障害者福祉施設だけではなく、幼稚園や保育園、こども園も避難確保計画の策定と避難訓練の実施が義務化されています。
4月18日付けの読売新聞1面には、浸水想定区域にある幼稚園や保育園、こども園の2割が避難確保計画未策定となっているという記事がありました。
その理由は「施設側の人員不足や義務化されているという意識が薄い」と記事には書いてありましたが、行政側も人員不足やコロナ禍で立ち入り検査ができず指導が難しいようです。
正直なところ、未策定の数字が思ったよりも少ないなと感じました。
実際のところ、避難確保計画では避難の発動条件が施設管理者の判断に一任されているものも多く、誰が見ても避難と判断できる避難条件が決定されていないものは策定しているとはいえないと思っています。
また、避難開始から避難完了までは定めていても、避難先でどのように過ごすのかや、どのようになったら避難を解除するのかについても、明確に決めているところは少ないと思っています。
避難確保計画はピンからキリまでありますが、災害対策に関心のある人が作っているかどうか、そして管理者や所有者がどれくらい真剣に災害対策を考えているのかによって出来上がりの質が相当違っています。
現在は計画があればいいということで、かなり適当に作っているところも多いと思いますが、大規模災害が起きるたびに要配慮者利用施設で死者やけが人がでる現状を考えると、もっと真剣に取り組むことと、防災に通じた人と一緒に考えるなどして、生きた避難確保計画を策定し、生きた避難訓練をし、本番ではだれも死なないようにしてほしいなと思います。
 

カセットコンロと電磁調理器

よくあるカセットコンロの一つ。

 災害後に温かな食事を作るため、調理器は準備しておいた方が安心できると思います。特に災害直後はライフラインの全てが止まっている可能性が高いので、単独で使えるカセットコンロを準備しておくことをお勧めします。
 ただ、カセットコンロはその名の通りカセットガスがなければ使えません。
 調理する時期と内容によってカセットガスの使用量が異なるためになんとも言えませんが、通常2~3食分を作ってガス1本を消費すると考えて準備するといいと思いますが、たくさんのカセットガスが必要なのも確かです。
 田舎であれば廃材で焚き火などをして、そこで調理する方法もあるのですが、都会地でこれをやろうとしても廃材が手に入らないと思いますから、電気調理器を準備しておくといいと思います。
 ライフラインの中で、プロパンガスを除くと一番復旧が早いのが電気ですので、特に都市ガスの地域では電磁調理器を準備すれば、暖かいものを継続して食べることができると思います。
 最近は携帯できるタイプの電磁調理器もあるようですので、あらかじめ準備しておくことをお勧めします。
 特に乳幼児やお年寄りと一緒に避難する場合には、熱源を複数確保するのを忘れないで欲しいと思います。
 ちなみに、お住まいの地域が田舎でプロパンガスであれば、ボンベさえ無事なら、直結できるガスコンロで暖かいものを作って出すことが簡単にできます。

水は重い

水の確保はTPOにあわせて量を考えよう。

災害時に不足するものとして、トイレと水があります。
トイレは絶対に我慢できないものですし、水分補給できなければ3日以内に動けなくなります。
食べ物は、成人の場合1週間程度は食べなくても生きていけるようですので、とりあえずトイレと水について確保する方法を考えておきましょう。
トイレについては過去に何度も触れていますので、今回は水について考えてみます。
非常用持ち出し袋に水を入れると、とにかく重たくなります。
一日の飲料水とされる3リットルだけでも、3kg。これを3日分持って避難しようとすると、恐らく他のものは持てなくなります。
山歩きなどでリュックサックになれていて、リュックサックも山用の丈夫なものであればよいのですが、普通に町歩きで使うようなリュックサックだと、9kgでもへとへとになると思います。
そうすると、水はあらかじめ避難先に保管しておいたり、家の中に分散しておいたり、車の中や倉庫といったさまざまな場所に分散して保管するという対策を考えておく必要があります。
非常用持ち出し袋には500mlのペットボトルを3本程度にして、あとは2リットルのペットボトルで保管しておくようにすれば、腐敗や重さをそこまで気にしなくてもよくなります。
また、ウォーターサーバーが停電時でも動くのであれば、そういったものを上手に使うとより快適に安全な水が確保できます。
繰り返しになりますが、水は重たいです。
しかし、あなたの命を繋ぐためには絶対に必要なものでもありますから、あなたの知恵を絞って、災害後に確実に手に入れられるようにしておいてくださいね。

歯磨きセットは必須アイテム

 非常用持ち出し袋を作るときに見落としがちで、市販品の非常用持ち出し袋に入っていることが殆どないものの一つが「歯磨きセット」です。
 歯ブラシと歯磨き粉、それにうがい用コップをひっくるめて歯磨きセットと呼んでいますが、あなたの非常用持ち出し袋にはこの歯磨きセットが入っていますか。
 実は、被災後の生活では口の中の衛生環境を維持できるかどうかで病気にかかる率がまったく違うことがわかっています。特に高齢者の方の場合は、歯磨きは絶対にしないといけません。
 口の中はさまざまな雑菌の温床になっており、それを歯磨きしてうがいで流すことで一定以上の数を増やせないようにしています。
 でも、災害が起きて歯磨きができない状態になると、口の中にさまざまな雑菌が繁殖し、特に高齢者ではその雑菌が肺炎を起こしたりすることが非常に多くなります。
 避難生活で体調を維持するためには、口の中の環境を維持することが必須なのです。
 歯ブラシが無ければ、口をゆすぐ洗口液や歯磨きシート、ティッシュペーパーなどでも構いませんので、口の中の汚れを落とす習慣だけは忘れないようにしてください。
 災害後の避難生活では、さまざまな理由から免疫が弱ってきます。そうすると、身体のあちこちにいる雑菌が一斉に悪さをしようと活動を始めます。その中でも、口は内臓に直結している部分ですので、口の衛生を死守することが元気に災害後を過ごすことの絶対条件です。
 入れ歯の方の場合には、入れ歯洗浄剤なども非常用持ち出し袋に入れておいて、口の中の衛生環境をできる限り守るようにしてくださいね。